コラム第66回 2015年8月31日 「馬鹿げた考え」 | GTBコンサルティング 平賀 正志(中小企業診断士)

前回のコラムを書いた前後は、究極に暑くて、

「あ~、ヤナこった!」

と思っていたのですが、盆を過ぎて月末が近付くと、今度は拍子抜けするくらい涼しく、かつ雨が続いて、ジメジメは変わらず、体調管理に非常に苦慮しております。
皆様におかれましても、まずはご自愛いただきたく思います。体調の良さは、何にも増して、活力を生み出す根本ですので。


さて、いろいろな中小事業者の方々の経営のお手伝いをさせていただいていて、近頃、大変強く感じることがあります。それは、

「今まで通りのやり方では、利益が出なくなっている」

ということです。

デフレ脱却などと、巷では言われているようですが、それは大企業と一部富裕層のお話でしょう。中小事業者様では、納入金額を下げられることこそあれど、それをわざわざ買付側から「高く買おうか?」なんて言ってきてもらえることなど、まず無いのではないでしょうか。

それに加え、原価を構成する諸々のコストだけはしっかりと値上がりしていて、そこへ来て消費税率が上がったことにより、納税のためのキャッシュも必要だ、というのが皆様の現状でしょう。

簡単に言えば、

「バケツに入れる水の量は全く変わらないのに、穴だけが大きくなってバケツから漏れる水の量が増え、水量が減った」

ということです。

入れる水の量=売上
穴から漏れる水の量=コスト
バケツの中の水量=利益

とお考えいただければ、早いでしょう。

しかし、そのままの状態で手をこまねいて見ているわけにはいきません。
何かしなくちゃいけない。

そういう時には、
「どうやったら売上を伸ばせるでしょうか」
という相談が寄せられるわけです。十中八九の相談依頼は、それについてのことだと言って言い過ぎではないですね。

ですが、日本全体で消費が冷え込んでいる状況下で、一中小事業者様の売上を伸ばそうとしたら、相当な競争力のある商品を持っていて指名買いを促せるか、体力勝負に出て薄利多売の競争を挑むか、のどちらかをしなくては売上数量を伸ばすのは大変なことです。
(額を増やすのも良いのですが、数量自体も増やさないといけません)
仮に何か特別な顧客アプローチ法を持っていても、なかなか売上の機会の数を飛躍的に増やすのは難しいのではないかと思います。

「そんなこと言ったら、どこに希望があるって言うんだよ!(怒)}
とお叱りを受けること必定です。
しかし、そういう世の中になってきているのは間違いないと思います。

だとすると、どこに活路があるのか。


もう、今まで通りのやり方を壊していくより他ありません。
つまり、商流やビジネスモデルを変える、いじる、ということです。


例えば、皆様「産地直送」という言葉をよく耳にされるでしょう。


これは消費者目線で言えば、
「作った(取った)ところから、直接持ってくるのか。なら新鮮そうだな」
で終わりですが、中小企業経営においては、大問題なワケです。


多くの方はお気付きと思いますが、産地⇔小売店の間に存在した業種をすっ飛ばされているということです。つまり、


①産地
②産地卸売問屋
③仲介業者
④消費地卸売問屋
⑤消費地専門問屋
⑥小売業者
⑦消費者

のうち、②~⑤ないしは③~⑤は省略されてしまったのです。
こういう動きは既に浸透していまして、多くの中間業者様(≒卸売業者様)が、苦戦しておられます。では、それらの中間業者様たちはどうやって生き残ればいいのでしょうか。


彼らは彼らで、今までの商流のどこかを切り落としてしまって、中間マージンが薄くなってしまうのを回避する、という方法が理屈上もっとも簡単であることはすぐにお気付きになることでしょう。
しかし、彼らとては長く付き合ってきた取引先の首を絞めてしまうことになることは、すぐにお分かりになりますから、

「そんなこと、できない」

とおっしゃいます。
今までの取引の流れからして、そう言いたくなる気持ちは分かります。
今までのモノづくりの常識からすれば、順番があることが当然でしょう。
それを無視したり、飛ばしたりすると、


「あの会社は、行儀が悪い」


という評判が立つからです。特に私が本拠とする京都は、そういうことにやたら厳しい。しかし、それを敢えて壊して掛からないと、それ以上のことは何も起こらないし、だんだん自分が痩せ細っていくだけです。

いかがでしょうか。行儀の良さはある意味「美学」に通じるものがあるのかも知れませんが、それで、会社を守れますか?従業員の方々を、その生活を守れるのでしょうか。
無理に破壊者になってください、とは申しません。しかし工夫できることは何でもやらないとすぐに大企業に踏み倒されてしまいます。


また、仕入の時でも同じです。
今はインターネット氾濫時代です。情報はそこかしこに転がっています。英語さえ少しできれば、海外の大抵のホームページだって読めてしまう。となれば、何が起こるか・・・

 

人件費の高い国内から買わずに、海外から仕入をする、なんてことが起こります。
(実際、中国や東南アジアの国々に、大手企業が進出したのは製造コストを下げたいがためでしたよね、つまり人件費が安いという理由だけで、国内の仕入=人の雇い入れを止めてしまった、ということです)


今となっては、当たり前のことでしょうけれど、当初は、


「そんな馬鹿な!」


と言われていたのです。
わざわざ日本国内の会社から買わずとも、外国からそれを仕入れるだけで、相当額もの経費削減が可能になるのです。

どうしてそうしないのでしょうか?
やらない理由はないはずです。


確かに国内の取引先をつぶしてしまうかも知れません。しかし、あなた自身は生き残らなくても良いのでしょうか?

「あり得ない!」
というところに皆さんの会社やお店の突破口がある、ということはお分かりいただけたと思います。実はそういう「馬鹿げた考え」にこそ、進歩や進化が詰まっています。

ビジネスは、人付き合いでもあるけれど、お互いの生存を賭けた競争でもあります。時には理念理想なんてぶっ飛ばしてでも、なりふり構わずに、生き残りのために戦わなくてはならない時もあるのです。ですから、時には

「いやいや、そんなことすると爪はじきにされるかも、有り得ない。でも改善のタネにはなる」

というような、馬鹿げた考え方をしてみては如何でしょうか。
案外、解決策はすぐそこにあったりするものです。

それを見つけるためのお手伝いもしております。ぜひそれを探し当て、しっかりと生き残っていきませんか?