観戦記2501 4団体統一バンタム級王座戦 井上尚弥vsポール・バトラー | 人生マイペンライ

人生マイペンライ

格闘技を愛し50歳過ぎても殴り合う

《本日のTV観賞》

 

井上尚弥選手が大橋ジムからデビューするときに『弱いヤツとは闘わない』との条項があったとされる。最近は亀田兄弟の事を揶揄したり、強さの割には人気が上がらない事に対する焦りとも言われていた。しかしWBSSでの優勝もあり、いよいよ人気も追いついてきた感があったが今度は井岡一翔選手に対して余計な横槍を入れてボクシングファンを騒がせた。何か井上尚弥選手を指示すると本物志向で、井岡選手を支持するとミーハー的な雰囲気がある異常な日本事情。これだけネット情報が氾濫している現代で、マスメディアだけの情報だけで観ている者たちの頭を覆い隠すことはできない。なにせ12月13日の4団体統一バンタム級王座統一戦の前に、リングアナウンサーがバンタム級のレジェンドとして解説席の山中慎介さんを紹介するときに 『議論のある2敗のみ、あえて言わせて頂きましょう。無敗の元WBCバンタム級王者』 と山中慎介さんを紹介する。だったらJBCは、ちゃんとWBCに抗議しろよ!スポーツ裁判所にでも提訴しろよ!

と、中継の初めからテンションが下がったが・・・自分が生きている時に日本で4団体統一戦が開催される幸せは噛みしめたい。

 

1993年4月生まれの井上尚弥選手は父親の真吾さんがアマチュアでボクシングをしていた事もあり、小学校1年生の時に父が経営するジムでボクシングを始める~史上初の高校7冠を達成し~ロンドン五輪を目指すが、アジア選手権決勝でカザフスタンのビルジャン・ジャキポフに負けて銀メダル。ロンドン五輪を諦めて父親の考えもあり、父から離れ大橋ジムに入門も 『塗装業を経営していた父が、それを捨ててまで自分たちのトレーナーに就いてくれたからもっと頑張らなきゃと思うし、親子で二人三脚でやって世界王者になる事が一番意味がある事だから他の人では駄目』 と、真吾さんもトレーナーとして大橋ジムに入る。

2012年10月のデビュー戦は、東洋太平洋ミニマム級7位のクリソン・オマヤオを4RでKO 『観戦記289』 早くも、日本ライトフライ級6位&東洋太平洋10位。2戦目は、2013年1月にTV的にはタイの王者ガオフラチャーン・チューワッタナを(知っている人は、ガオフラチャーンが日本での戦績が1勝6敗のそういうボクサー)110秒でKO 『観戦記366』そして4月の3戦目に日本ライトフライ級1位の佐野友樹選手を10RにTKO 『観戦記453』 8月に日本記録の辰吉丈一郎選手に並ぶ、4戦目での日本王者を狙って現WBCライトフライ級王者の田口良一選手の日本ライトフライ級王座に挑戦し判定で日本王座栄冠 『観戦記563』12月の5戦目に、小野心選手が返上した東洋太平洋ライトフライ級王座をヘルソン・マンシオと決定戦を行い5RにTKOで八重樫選手と並ぶ5戦目で栄冠。そして、2014年4月に当時は日本最速の6戦目で(現在は田中恒成選手が5戦目で奪取 『観戦記888』)アドリアン・エルナンデスを6RにTKOでWBCライトフライ級王座を栄冠。これは、師匠の大橋会長、大橋会長の師匠の米倉会長の6戦目での世界王者挑戦失敗の無念を晴らした50年越しの悲願達成。

 

9月には初防衛戦でサマートレック・ゴーキャットジムを11RにTKO勝ち~WBCライトフライ級王座を返上。強いな。と思いましたが、ボクシング関係者や大橋ジムの関係者や現役から聞く 『井上尚弥の減量前は怪物どころじゃない!ローマン・ゴンサレスに勝てる』 と言う言葉を信じきれなかった。 しかし・・・フライ級&スーパーフライ級で通算27度防衛しているWBOスーパーフライ級王者のオマール・ナルバエス(ノニト・ドネアにはフルボッコされたが(『観戦記38』)を衝撃の2RにKOして2階級制覇。怪物なんてものじゃなかった!とんでもない者を観た・・・同じ時代に生きていて良かったとさえ思えた 『観戦記1947』

 

しかし、強打者ゆえに拳を痛めて1年のブランクをつくる~2015年12月の初防衛戦でも、WBO1位のワルリト・バレナスをガードごと吹き飛ばして2RにKO 『観戦記1036』 5月の2度目の防衛戦では、試合中に両拳を痛めながらもパレナスと暫定王者決定戦で引き分けているWBO1位のデビッド・カルモナを圧倒し判定勝ち 『観戦記1121』 3度目の防衛戦も3位と伝えられていたが、ランキング1位で31歳のペッチバンボーン・ゴーキャットジムを10RにKO 『観戦記1190』

そして、防衛戦の1週間後の9月10日にカルロス・クアドラスのWBCスーパーフライ級王座に挑戦して 『観戦記1203』 4階級制覇したローマン・ゴンザレスをアメリカで視察し統一戦の気運も高まるが・・・井上陣営はWBAスーパーフライ級王者のルイス・コンセプシオンにも対戦オファーをしたらしいが、ルイス・コンセプシオンは12月10日にボクシング熱が燃え上がっているイギリスで防衛戦(しかし体重超過の上に判定負け) そして、そのルイス・コンセプシオンに8月にWBAスーパーフライ級王座を奪われた 『観戦記1188』 WBO10位の河野公平選手と4度目の防衛戦も6Rに見事すぎるTKO勝利 『観戦記1251』2017年5月に、WBO2位のリカルド・ロドリゲスを3RにTKOで降し5度目の防衛に成功 『観戦記1321』 バンタム級に上げて山中慎介選手に挑戦の噂もあったが、山中選手が8月にルイス・ネリに4RにTKO負けし王座陥落 『観戦記1356』 9月にはアメリカで開催されたSuper FlyでWBO7位のアントニオ・ニエベスを6R終了時TKOに降す 『観戦記1367』

 

井上選手はスーパーフライ級では統一戦も望めず、2018年にはバンタム級に上げる事を宣言し2017年末にWBO6位のヨアン・ボワイヨを3RにTKOで降す 『観戦記1416』

そして2018年5月にWBAバンタム級王者のジェイミー・マクドネルに挑戦し(この時点で暫定王者にレイマート・ガバリョ、スーパー王者にライアン・バーネットがいるWBA3人王者問題)わずか1R112秒でKOして3階級制覇 『観戦記1470』

 

そして統一戦に飢えている井上選手にこれほど待ち望んだ大会はないWBSSに参戦し、2018年10月の1回戦で元WBAバンタム級スーパー王者のファン・カルロス・パヤノをわずか1R70秒でKO 『観戦記1588』準決勝は2019年5月にイギリスで、IBF王者のエマヌエル・ロドリゲスを2RでKO 『観戦記1723』

 

そして10月に、運命に導かれたかのように勝ち上がってきた5階級制覇王者のノニト・ドネアとの決勝戦!2Rにドネアの左フックで右目を負傷するも、11Rに左ボディーでダウンを奪い判定勝ちしてWBSSバンタム級優勝 『観戦記1832』4月にWBOバンタム級王者のジョンリエル・カシメロと3団体統一戦をする予定も、コロナウィルスの影響で延期~10月にWBA2位、IBF4位、WBO1位のジェイソン・マロニーをラスベガスで7RにKOする 『観戦記2053』さぁ~4団体統一へ向けて!と思われたが・・・・王座戦には4団体で1番厳格なIBFが、エマニュエル・ロドリゲスへの挑戦権を掴むもWBSS開催で挑戦を2年待たされているIBF1位のマイケル・ダスマリナスとの防衛戦を指令され、2021年6月に再びラスベガスで挑戦を3RにTKOで退ける『観戦記2181』そして、今度こそ統一戦かと期待されたが簡単には決まらず日本でWBA&IBF王座の防衛戦となりWBA10位&IBF5位のアラン・ディパエンを8RにTKOで降す 『観戦記2285』このまま防衛戦なのか!?と思われたが、再び井上選手の前にWBCバンタム級王者となったノニト・ドネアと、2022年6月に3団体統一戦が日本で開催され2RにTKO勝ちして3団体統一王者達成 『観戦記2394』

 

そして3団体統一を達成したリング上で 『自分が目標としている四団体統一、それが年内にかなうとするならばまだバンタム級で戦う。もし叶わなければスーパーバンタム級に上げて新たなステージで挑戦したい』 と話す。なにせ2021年12月にWBOバンタム級王者のジョンリエル・カシメロは、WBO1位のポール・バトラーとの防衛戦をウィルス性胃腸炎で延期~2022年4月のイギリスでの仕切り直しは、BBBofc(英国ボクシング委員会)が禁止する減量目的のサウナ使用をSNS上げて出場停止・・・

そしてポール・バトラーとWBO4位のジョナス・スルタンで王座決定戦を行い、バトラーが判定勝ちでWBO暫定王者~正式にカシメロの王座は剥奪されて、バトラーが正規王者に認定され堂々と日本に乗り込む!

 

1988年11月にイングランドの北西部チェスターで生まれたポール・バトラーは、マルコ・アントニオ・バレラばりの 『童顔の暗殺者』 のニックネームを持つ~アマチュアで目立った戦績はなく、2010年12月に22歳でデビューしてアジワル・アルファドリに判定勝ち~さらに7連勝3KOして、2012年11月にジョン・ドネリーとBbbofc英国スーパーフライ級王座決定戦を1RにKOして王座獲得。

2013年3月にアンワル・アルファドリを4RにTKO勝ちし、4月にはヤクブ・カレンに5RでTKO勝ちしコモンウェルス英連邦スーパーフライ級王座を獲得~6月にナジーム・アリを4RにKOして初防衛に成功~9月にも、ミゲール・ゴンサレスを判定で降しWBOインターコンチネンタルスーパーフライ級王座を獲得。

12月にもルーベン・モントーヤを大差判定で降し、WBOインターコンチネンタル王座初防衛に成功とともにWBAインターコンチネンタルスーパーフライ級王座を獲得~2014年3月にも、オレステ・ベルナベ・二エバを4RにKOしてWBAインターコンチネンタルバンタム級王座を獲得~2014年6月に、スチュアート・ホールのIBFバンタム級王座に挑戦し2-1の判定勝ちで王座獲得。

 

しかし、スーパーフライ級に階級を下げる為に王座を返上~10月にIBFスーパーフライ級王者のゾラニ・テテに挑戦予定も、テテが怪我で王座戦は延期され代役のイスマエル・ガルニカに判定勝ち~2015年3月に改めて、IBF王者のゾラニ・テテに挑戦も8RにTKO負け 『観戦記857』

直ぐに再起して3連勝3KO~2016年3月に、セバスチャン・サンチェスを9RにTKOで降してWBOインターナショナルスーパーフライ級王座を獲得~さらに3連勝1KOして、2017年9月にWBA14位のスチュアート・ホールとWBAバンタム級王座挑戦者決定戦を判定勝ちしてWBA王者のジェイミー・マクドネルへの挑戦権を獲得。しかし、マクドネルはスーパーバンタム級に上げる上げないで対戦が決まらず・・・2018年2月に、ジェフェルソン・バルガスを8RにTKOで降す~5月にIBF3位のエマニュエル・ロドリゲスとIBF4位のポール・バトラーで王座決定戦となり、イギリスO2アリーナからは地元のバトラーに大歓声!しかし・・・・バトラーは前日計量で1.5kgオーバー!ロドリゲスが勝利した時のみ新王者誕生という王座決定戦になり、しかも大差判定負けしてしまう 『観戦記2087』

11月に、井上尚弥選手のWBOスーパーフライ級王座にも挑戦した 『観戦記1416』 ヨアン・ボワイヨに大差判定勝ち 『観戦記2284』 さらに5連勝1KOして、2021年6月にウィリバルト・ガルシアに2-1の判定勝ちしてWBOインターナショナルバンタム級王座を獲得~2022年4月に、ジョンリエル・カシメロのWBOバンタム級王座に挑戦するはずが・・・カシメロのサウナ減量問題で、ジョナス・スルタンとWBO暫定王座決定戦を判定勝ちで暫定王座獲得~正規王座に昇格。

 

正直言えば、2年越しの因縁となるジョンリエル・カシメロとの4団体統一戦が観たかった・・・ヒリヒリする闘いからカリスマ性が出てくるだけに、WBO王者バトラーが好敵手とは思えないところに井上選手の凄さがあるのは分かるが物足りない!しかし井上選手が登場するまでは、日本で4団体統一戦をする選手が出現する事は夢にも思わなかった・・・

 

2022年12月13日 4団体統一バンタム級王座戦 井上尚弥vsポール・バトラー

 

井上尚弥 23勝20KO無敗 WBA8度目&WBC初&IBF6度目の防衛戦

 

ポール・バトラー 34勝15KO2敗 WBO初防衛戦

 

1R、ドッシリ構えて様子をみる井上選手に、バトラーは細かく身体を振りながら左を伸ばす

 

井上選手は、バトラーのパンチを見切りながらプレスをかける~ガードが固いバトラーに、ガードの上だろうと強いワン・ツー!

 

2R、バトラーはガード高く廻り、井上選手のリターンに気をつけながら慎重に左を出す

 

廻るばかりのバトラーに、井上選手は早くも余裕がある動きから詰めて打ち込む!

 

3R、井上選手が距離を詰める~ガードを固めて廻るバトラーをコーナーに追い込み、ガードの上だろうと右を何度も打ち込む!

 

さらに亀になるバトラーを、井上選手はボディー~力任せに右を叩き込む!

 

4R、ラウンド開始と同時にガードを固めてロープ際を廻るバトラーに、井上選手は誘いながら追い回す

 

動きながらジャブだけ出すバトラーに、井上選手はガードを下げ跳ねるように打つ~ワルリト・パレナス戦を彷彿させるガードの上からの右!ボディー!

 

5R、リング中央で左を伸ばす井上選手~ガードを固めて廻るだけのバトラー

 

やっとバトラーもカウンターを狙うが、井上選手にかわされ右を狙われ亀になる

 

6R、サウスポーにスイッチして、ノーガードで顔を突きだし挑発する井上選手

 

井上選手が一方的に攻めるが、やっとバトラーも左ボディー~左フック!

 

7R、よく分からない誘いをする井上選手に、バトラーは全くのらない~井上選手はボディーを打ち込む!

 

ガードの上から打ちまくる井上選手も、バトラーはのってこない~井上選手からロープに下がり、誘い込んで右カウンター!

 

8R、引き気味だが、バトラーから手を出していく~井上選手は、余裕でかわしながらボディー!

 

左右に廻るバトラーを井上選手が誘いながら追いかけ、バトラーの右にカウンター!しかし、当たりは浅いか!?井上選手は、腕を後ろに組んで顔を突き出し誘う!

 

9R、変わらないバトラーに、井上選手がテンポを速めてワン・ツー!

 

意外にタフなバトラーは、さらに左右に動き廻る~井上選手は、バトラーの軽いパンチは流しながら右ストレートを狙う!

 

10R、井上選手もイライラしてきているか!?投げ込むようなワン・ツー~右!ボディー!

 

それでもバトラーはガードを下げないが、井上選手がガードを割る右をブチ込んでくる!

 

廻るばかりでガードを崩さないバトラーに、井上選手がワン・ツーから左ボディー!

 

11R、井上選手が、あえて気合いを入れ直して倒しにいく!バトラーをロープに貼り付け連打!

 

 

 

見事に井上尚弥選手が11RにKO勝ちで、4団体王座を全てKO奪取でバンタム級統一!

 

圧倒的な試合展開で、井上尚弥選手が4団体統一バンタム級王者に輝く!しかも、王座決定戦を含まずに全ての試合をKOで奪取するというドラゴンボール並みの快挙!だが・・・なにか物足りなく、なにせつまらなかった。海外なら大ブーイングだっただろう4団体統一バンタム級王座戦。同じアジアのマニー・パッキャオはノンタイトル戦(マイナー団体王座や地域王座戦)でマルコ・アントニオ・バレラやエリック・モラレス、あのオスカー・デラ・ホーヤと闘い抜きなぎ倒してフィリピンの家出少年が世界的なスターに駆け上がった。

スーパーフライ級時代にも、IBF王者のジェルウィン・アンカハスがアメリカやフィリピンで100$のオファーなら闘っていただろうし、キャッチウェイトでもドリームマッチの実現は可能だっただろう。

試合後には、4団体王座を返上してスーパーバンタム級への転向を宣言した井上選手。スーパーバンタム級には、WBA&IBFスーパーバンタム級王者のムロジョン・アフマダリエフ。WBC&WBOスーパーバンタム級王者のスティーブン・フルトンが待ち構えている。どちらも簡単には日本には来てくれないだろう無敗の選手なので、今度こそヒリヒリするような闘いを魅せてもらい「怪物」では無く「MONSTER」になって欲しい。

 

★いやぁ~試合開始前の余計な口上は解せなかった 格闘技blogランキングをクリック格闘技 ブログランキングへにほんブログ村 格闘技ブログへにほんブログ村