こんにちは。
今日は記述式ですね。
先日、行政事件訴訟法でちょこっと書いたんですが、今日の解答は判例のものです。
最初に言っておきますね。
と言うことは、行政書士の試験勉強をしていると判例を良く見かけますが、ある程度の内容は記憶しておかなければならないと言うことになりますよね。
そう言えば、判例で言う「第三者」も記述式で出たことがありましたよね。
完璧に記憶することは出来ませんが、書かれていることのポイントを押さえることを心掛けましょう。
今日の過去問は、平成20年度問45の問題をやってみようと思います。
それでは、早速。
問題
不動産の賃貸借において、賃料の不払い(延滞)があれば、賃貸人は、賃借人に対して相当の期間を定めてその履行を催告し、もしその期間内に履行がないときには、賃貸借契約を解除することができる。また、賃借人が、賃貸人に無断で、賃借権を譲渡、または賃借物を転貸し、その譲受人や転借人に当該不動産を使用または収益させたときには、賃貸人は、賃貸借契約を解除することができる。ただ、上記の、賃料支払いの催告がなされた場合や、譲渡・転貸についての賃貸人による承諾が得られていない場合でも、賃貸人による解除が認められない場合がある。それはどのような場合かについて、40字程度で記述しなさい。
最初に内容を確認してみますね。
不動産の賃貸借で賃料の不払いがあった場合について書かれています。
「賃貸人は、賃借人に対して相当の期間を定めてその履行を催告し、もしその期間内に履行がないときには、賃貸借契約を解除することができる。」
これは、契約一般に関するものを不動産の賃貸に当てはめたものですね。
(履行遅滞等による解除権)
第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。
この条文です。
賃借人が賃料を払わなければ、賃貸人は「払ってちょうだ~い。」って言えてしかるべきです。
「○○日まで待つからよろしく頼んます。」ってことですね。
この期間までに賃料が支払われなければ契約を解除することが出来る訳です。
次に、
「賃借人が、賃貸人に無断で、賃借権を譲渡、または賃借物を転貸し、その譲受人や転借人に当該不動産を使用または収益させたときには、賃貸人は、賃貸借契約を解除することができる。」
これは、賃貸借契約一般について定められた内容です。
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
1項と2項を上手くつなぎ合わせて書いてますね。
これは、まぁ、当たり前ですよね。
「契約」ですから。。。
「Yさんだから貸す。」、「Aさんだから貸す。」ってことを契約する訳です。
それを勝手にXさんやZさんに「譲り渡し」や「転貸」されても賃貸人としては「どこの馬の骨」状態な訳です。
素性もわかりません。
そんな人には貸したくはないじゃないですか。
賃借人は、賃貸する立場の人ではありませんからね。
無断ですることは出来ず、賃貸人の承諾を得ればOKってことです。
そして、問題です。
賃料支払いの催告がなされた場合や譲渡・転貸についての賃貸人による承諾が得られていない場合でも、賃貸人による解除が認められないケースがあると言っています。
どんなケースに認められないのかを記述しろってことですね。
どうですか難しいですよね。
判例はどんなことを言っているのかってところになる訳なんですが、ようは、条文にそった形で、どんな場合でも、賃貸人が契約を解除できるとは限らないってことを言っている訳です。
それでは、考えてみましょう。
今日の問題はヒント自体も難しいですね。
ただ、不動産の賃貸借は、先ほど見たように、「Yさんだから貸す。」、「Aさんだから貸す。」って言うように、信頼関係の上に成り立つものです。
そして、継続的になされる契約です。
と言うことは、条文にそって契約を「スパッ」と解除されたら、賃借人としても「えぇ~。ちょっと困るんですけど~。」って状況もあり得る訳です。
「長年、きちんと支払ってきたじゃないですか。」「いやいや、ちょっと事情がありまして転貸させていただいたんです~。」
ってことですね。
この問題、センターとしては2つの正解例を用意してます。
どちらの内容でもOKですね。
それと最後に大ヒントです。
この手の問題は、だいたいは「特段の事情」って言葉が使われてます。
〇〇〇〇〇〇〇〇〇と言う「特段の事情」がある場合
こんな形になります。
さぁ、考えてみましょう
賃貸借は、「信頼関係の上に成り立つもの」「継続的になされるもの」ってところから考えると良いかも知れません。
・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・
作成できたら確認してみましょうね。
正解例
賃借人の行為が、賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合。(40字)
試験センターの正解例1.
賃借人の行為が、賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情がある場合。(39字)
試験センターの正解例2.
賃貸人と賃借人との間の信頼関係が破壊されたとは認められない特段の事情がある場合。(40字)
参考
それでは内容を確認して見ますね。
と言っても今日は判例をご紹介するだけになりますけど。。。
昭和25(オ)140 建物収去土地明渡請求 昭和28年9月25日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
元来民法六一二条は、賃貸借が当事者の個人的信頼を基礎とする継続的法律関係であることにかんがみ、賃借人は賃貸人の承諾がなければ第三者に賃借権を譲渡し又は転貸することを得ないものとすると同時に、賃借人がもし賃貸人の承諾なくして第三者をして賃借物の使用収益を為さしめたときは、賃貸借関係を継続するに堪えない背信的所為があつたものとして、賃貸人において一方的に賃貸借関係を終止せしめ得ることを規定したものと解すべきである。
したがつて、賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用収益を為さしめた場合においても、賃借人の当該行為が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足らない特段の事情がある場合においては、同条の解除権は発生しないものと解するを相当とする。
それともう一丁。。。
昭和37(オ)747 家屋明渡等請求 昭和39年7月28日 最高裁判所第三小法廷 判決 棄却 大阪高等裁判所
この判例はいろんな事情が絡んでいるようです。
おおむね賃料の延滞はなかった、延滞賃料の一部を供託した(これ、この前見ましたね。)、台風で壊れたところを修繕した修繕費の償還を求めていなかったことなどが書かれています。
修繕費については、修繕費の償還を受けるまでは延滞賃料債務の支払いを拒むことができますよね。
一部抜粋です。
延滞賃料の支払もしくは前記修繕費償還請求権をもってする相殺をなす等の措置をとらなかったことは遺憾であるが、右事情のもとでは法律的知識に乏しい同被上告人が右措置に出なかつたことも一応無理からぬところであり、
右事実関係に照らせば、同被上告人にはいまだ本件賃貸借の基調である相互の信頼関係を破壊するに至る程度の不誠意があると断定することはできないとして、上告人の本件解除権の行使を信義則に反し許されないと判断しているのであって、右判断は正当として是認するに足りる。
「信頼関係の上に成り立つもの」裏を返せば、裏切りや、判例で言うところの「背信的行為」、「信頼関係の破壊」そんな言葉になりますよね。
あ、判決で「裏切り」とかは使わないか。
今日も最後までお読みいただき有難うございました。
今日のところはここまでです。
んでまずまた。
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