こんにちは。
行政手続法が前回で打ち止めになりましたので、代わりのものをってことでボリュームのある民法を昨日に引き続きやりたいと思います。
満遍なく見ることをお勧めしますので、時々、行政手続法の過去記事も覘いてみて下さいね。
「忘れたら大変です」m(__)m
今日の過去問は、平成26年度問34の問題を○×式でやりたいと思います。
生命侵害等に対する近親者の損害賠償請求権に関し、民法の規定及び判例に照らして考えてちょって問題です。
それでは、早速。
問題
他人の不法行為により夫が死亡した場合には、その妻は、相続によって夫本人の慰謝料請求権を行使できるので、妻には固有の慰謝料請求権は認められていない。
正解は?
×
この問題は、不法行為により旦那さんがなくなった場合ですね。
と言うことは、加害者の方は不法行為責任を負うことになります。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
旦那さんは亡くなっているので損害賠償請求権を行使することは出来ませんが、この権利は相続することができますよね。
問題にあるように配偶者の奥さんが相続できます。
それでは、奥さんには「固有の慰謝料請求権は認められていない。」のか
(近親者に対する損害の賠償)
第七百十一条 他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。
加害者=他人の生命を侵害した者
「被害者の父母、配偶者及び子」例示的に列挙されていますが、配偶者も書かれていますね。
「その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。」
これは、旦那さんに対する不法行為の場合、近親者は何ら財産的な被害を受けていません。
ですが、旦那さんが死亡したために被る、近親者(被害者の父母、配偶者及び子などの遺族)が受ける精神的苦痛に対し損害を賠償する慰謝料請求権について規定したものです。
と言うことは、配偶者である奥さん固有の慰謝料請求権が認められているということですね。
旦那さんの損害賠償請求権を相続し、奥さん固有の慰謝料請求権も認められると言うことです。
問題は両方OKなのって点ですが、、、
被害者の奥さんが、相続によって旦那さんの損害賠償請求権を行使できる場合に、奥さん固有の慰謝料請求権が認められないっていう判例は見当たりません。
「妻には固有の慰謝料請求権は認められていない」は×ですね。
問題
他人の不法行為により夫が即死した場合には、その妻は、相続によって夫の逸失利益について損害賠償請求権を行使することはできない。
正解は?
×
この問題は、即死した場合は、損害賠償請求権を行使することはできないってことを言っています。
この場合の不法行為に基づく損害賠償請求権が発生するって言うのは、時間的経過によるものです。
不法行為が行われてから死亡するまで痛み苦しむ時間がある訳です。
そのため、損害賠償請求権が発生するって言う考え方です。
即死した場合は、その時間がない訳ですよね。
まぁ、経験がありませんので解りませんけど、実際には一瞬でも時間的経過は観念できるのではないでしょうか。
奥さんは慰謝料請求権は行使できるけど、相続して損害賠償請求権を行使できないとなった場合、亡くなった旦那さんが可哀想ですよね。
「不法行為により即死した場合」=損害賠償請求権を行使することはできない。
これは、あり得ませんね。
「即死させる」ことが肯定されかねません。
これは普通に考えてみましょう。
即死ではなく、数時間後、あるいは1年くらい生存していて亡くなった場合には、損害賠償請求をすることができ、即死の場合はできないでは、同じ被害者でも明らかに不公平じゃありませんか
ですので、「その妻は、相続によって夫の逸失利益について損害賠償請求権を行使することはできない。」は×と言うことです。
問題
他人の不法行為により死亡した被害者の父母、配偶者、子以外の者であっても、被害者との間にそれらの親族と実質的に同視し得る身分関係が存在するため被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた場合には、その者は、加害者に対して直接固有の慰謝料請求をすることができる。
正解は?
○
この問題は先ほどちょっと見た「何ら財産的な被害を受けていない近親者」の問題です。
条文では、「被害者の父母、配偶者及び子」に対してはとなっていましたよね。
これらの方達には、固有の慰謝料請求権が認められるのはわかりますよね。
この問題では、「被害者の父母、配偶者、子以外の者」となっています。
ただ、この問題の以外の者に該当する人は、「被害者との間にそれらの親族と実質的に同視し得る身分関係が存在するため被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者」としています。
この以外の者に該当する人については、条文の規定はありません。
判例ですね。
昭和49(オ)212 損害賠償等請求 昭和49年12月17日 最高裁判所第三小法廷 判決 棄却 仙台高等裁判所
不法行為による生命侵害があつた場合、被害者の父母、配偶者及び子が加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうることは、民法七一一条が明文をもつて認めるところであるが、右規定はこれを限定的に解すべきものでなく、文言上同条に該当しない者であつても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうるものと解するのが、相当である。
条文の「被害者の父母、配偶者及び子」は例示的なものであって、「以外の者に該当する人」であっても、加害者に対して直接固有の慰謝料請求をすることができる場合があると言うことです。
問題
他人の不法行為により子が重い傷害を受けたために、当該子が死亡したときにも比肩しうべき精神上の苦痛をその両親が受けた場合でも、被害者本人は生存しており本人に慰謝料請求権が認められるので、両親には固有の慰謝料請求権は認められていない。
正解は?
×
比肩=肩を並べること。匹敵すること。同等であること。
お子さんが死亡したときと同等のってことですね。
(近親者に対する損害の賠償)
第七百十一条 他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。
この条文は「生命の侵害」です。
生命の侵害の場面においては、被害者の父母にも慰謝料請求権が認められています。
「生命の侵害」に匹敵するけれども被害者本人が生きている場合には、両親には固有の慰謝料請求権は認められていないのかってことですが。。。
この問題も判例です。
昭和31(オ)215 慰藉料、損害賠償請求 昭和33年8月5日 最高裁判所第三小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
ところで、民法七〇九条、七一〇条の各規定と対比してみると、所論民法七一一条が生命を害された者の近親者の慰籍料請求につき明文をもつて規定しているとの一事をもつて、直ちに生命侵害以外の場合はいかなる事情があつてもその近親者の慰籍料請求権がすべて否定されていると解しなければならないものではなく、むしろ、前記のような原審認定の事実関係によれば、被上告人B2はその子の死亡したときにも比肩しうべき精神上の苦痛を受けたと認められるのであつて、かゝる民法七一一条所定の場合に類する本件においては、同被上告人は、同法七〇九条、七一〇条に基いて、自己の権利として慰籍料を請求しうるものと解するのが相当である。
この判例では、民法第七百十一条に基づかないだけで、民法第七百九条、第七百十条に基き、固有の慰謝料請求権は認められると判断しています。
この判例の生命の侵害に「比肩」する行為とは
不法行為により顔面に傷害を受けた結果、外傷後遺症の症状となり果ては医療によつて除去しえない著明な瘢痕を遺すにいたり、ために同女の容貌は著しい影響を受け、他面その母親である被上告人B2は、右不法行為により精神上多大の苦痛を受けたというのである。
女の子が顔面に生涯残るような怪我をしたケース=近親者も生命侵害に匹敵するような精神的な苦痛を受けた
う~ん、これは女の子に限らず、男の子でも同じように、親としてはかなりの精神的苦痛を受けると思います。
固有の慰謝料請求権は認められると言うことです。
問題
他人の不法行為により、夫が慰謝料請求権を行使する意思を表明しないまま死亡した場合には、その妻は、相続によって夫の慰謝料請求権を行使することはできない。
正解は?
×
夫が慰謝料請求権を行使する意思を表明しないまま死亡した場合
先に見た、即死の場合とか意識不明の状態が継続してたけど亡くなったような場合ですね。
慰謝料請求権は相続できるってのは確認済ですが、このケースはどうでしょうか
判例を見てみましょう。
昭和38(オ)1408 慰藉料請求 昭和42年11月1日 最高裁判所大法廷 判決 破棄差戻 東京高等裁判所
ある者が他人の故意過失によつて財産以外の損害を被つた場合には、その者は、財産上の損害を被つた場合と同様、損害の発生と同時にその賠償を請求する権利すなわち慰藉料請求権を取得し、右請求権を放棄したものと解しうる特別の事情がないかぎり、これを行使することができ、その損害の賠償を請求する意思を表明するなど格別の行為をすることを必要とするものではない。そして、当該被害者が死亡したときは、その相続人は当然に慰藉料請求権を相続するものと解するのが相当である
損害の発生と同時に慰藉料請求権を取得する。
請求権を放棄したと解しうる特別の事情がないかぎり、行使することができる。
(損害の賠償を請求する意思を表明するなどの格別の行為を要しない。)
被害者が死亡したときは、相続人が当然に慰藉料請求権を相続する。
これらの内容は重要です。
今日も最後まで有難うございました。
今日のところはここまでです。
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