こんにちは。
今日は記述式ですね。
6月の最後にちょっとふれた他人物売買に関するものです。
問題文自体がちょっと長めなので読みやすいように書いていきますね。
今日の過去問は、平成26年度問46の問題をやってみようと思います。
それでは、早速。
問題
Xは、甲土地をYに対して売却する契約(以下、「本件契約」という。)を締結したが、Xは、本件契約時において、売却した甲土地はAが所有するものであってXに属しないことを知らなかった。
その後、Xは、Aに対して甲土地の売却を申し入れたが、拒絶されたため、結局、その所有権を取得してYに移転することができなかった。
このような場合において、善意の売主Xは、買主Yに対し、本件契約を解除する旨の意思表示をしたい。
解除にあたって、本件契約時に甲土地の所有権がXに属しないことについて、Yが悪意のときは、どのようなことをし、Yが善意のときは、それに加えてどのようなことをすればよいか。
「Yが悪意のときは、」および「Yが善意のときは、それに加えて、」に続けて、民法の規定を踏まえて、それぞれ10字~20字程度で記述しなさい(「Yが悪意のときは、」および「Yが善意のときは、それに加えて、」は、記述すべき字数には含まれない)。
問題の内容を確認してみます。
最初からビックリするような書き出しですね。
Xさんが甲土地をYさんに売却する契約を締結した。
まぁ、ここは良いですよね。
その後です。
契約したときに、甲土地はAさんが所有するものであってXさんは自分に属しないことを知らなかったとあります。
突っ込んでもしょうがないんですが、こんなんあるのって展開ですね。
勘違いなんでしょうかね、他人の物を売る契約をしてしまっている、他人物売買の典型なんでしょうか。
その後、Xさん、Aさんに対して甲土地を「売ってくれ。」って申し入れをしたようですが断られてしまった訳です。
ただ、これは、Xさんが当然やらなければならない行動ですよね。
他人物売買は、売主は権利を取得して買主に移転する義務を負いますから。。。
(他人の権利の売買における売主の義務)
第五百六十条 他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。
拒絶されてしまった結果、所有権をYさんに移転することができなかったと言う内容です。
Xさんは、所有権を手に入れることが出来なかったので、Yさんに対し、本件契約を解除する旨の意思表示をしたい訳です。
Xさん、甲土地が「自分に属しないことを知らなかった」訳ですから、「善意」の売主と言うことになります。
契約を解除するにあたって、善意の売主Xさんがどのようなことをするべきかが問われています。
この問題は行政書士試験初の二分割記述です。
1.Yさんが悪意のときは、どのようなことをすべきか
2.Yさんが善意のときは、それに加えてどのようなことをすればよいか
聞かれていることは上記の2点、買主Yさんが悪意の場合と善意の場合です。
善意の場合は、「それに加えて」追加で何かをしなければならないようです。
Yさんは買主ですからね。
それでは、考えましょう。
1.は、買主Yさんが悪意の場合ですから、甲土地がXさんに属さないと知っていたケースです。
知っていたってことは、Yさんは、手に入ればラッキーって感じでしょうね。
こんな内容を売主の担保責任の解説で書きましたよね。
2.は善意の場合です。
今日の問題は、売主側から解除権を行使する場合にすべきことです。
当然、悪意の場合と同様のこともしなければなりませんが、善意の場合は、「それに加えて」やらなければならないことがあるでしょうと聞いています。
前回見た、売主の担保責任の条文は、「買主は、契約の解除をすることができる。」って内容です。
そして、悪意の場合は○○○○出来ないって規定されていましたよね。
今回との違いは何でしょう
そうですね、前回は買主から解除をする、今回は売主であるXさんから解除をするってところです。
売主側からするってのは考える上でのポイントです。
ヒントです。
「買主であるYさんから解除をする。」「売主であるXさんから解除をする。」解除を申し入れる人は違いますが、やるべきことは「ほぼほぼ」同じですよ。
さぁ、考えましょう
・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・
作成できたら正解を確認しましょう。
「Yが悪意のときは、」
正解例
甲土地の所有権を移転できない旨を通知する。(21字)
「Yが善意のときは、それに加えて、」
正解例
損害が発生していれば、損害を賠償する。(19字)
「Yが悪意のときは、」
試験センターの正解例
売却した権利を移転することができない旨を通知する。(25字)
「Yが善意のときは、それに加えて、」
試験センターの正解例
損害を賠償する。(8字)
参考
ちなみに「Yが悪意のときは、」のマス目は25字、「Yが善意のときは、それに加えて、」のマス目は20字分ありました。
通常の記述式問題でも40字程度で記述しますが、マス目は45字分あります。
分割してあっても、合算で45字以内での解答であればOKってことなんでしょうね。
それでは、内容を確認してみましょう。
最初に悪意だった場合です。
(他人の権利の売買における善意の売主の解除権)
第五百六十二条
1 略。
2 前項の場合において、買主が契約の時においてその買い受けた権利が売主に属しないことを知っていたときは、売主は、買主に対し、単にその売却した権利を移転することができない旨を通知して、契約の解除をすることができる。
ちなみに、第五百六十二条の上にある(他人の権利の売買における善意の売主の解除権)部分を見出しと言います。
見出しには「善意の売主の解除権」とありますね。
今回のケースです。
「買主が契約の時においてその買い受けた権利が売主に属しないことを知っていたとき」とありますので、今回Yさんが悪意だった場合にあたりますね。
売主のXさんは、Yさんに対して、単にその売却した権利を移転することができない旨を通知して、契約の解除をすることができるとなります。
ここで言う「売却した権利」は、甲土地の所有権のことです。
ですので、通知すべきは「売却した権利」又は「甲土地の所有権」を移転できないことを通知しなければなりません。
前回見た買主からの解除ができるって場合でも、伝えなければ解除は出来ないので通知は必要ですよね。
それでは、善意だった場合はどうか
(他人の権利の売買における善意の売主の解除権)
第五百六十二条 売主が契約の時においてその売却した権利が自己に属しないことを知らなかった場合において、その権利を取得して買主に移転することができないときは、売主は、損害を賠償して、契約の解除をすることができる。
2 略。
書いてありますね。
「売主が契約の時においてその売却した権利が自己に属しないことを知らなかった場合」=善意です。
その権利を取得して買主に移転することができないとき
↓
売主Xさんは、損害を賠償して、契約の解除をすることができる。
前回は買主が善意でした。
ちょっと出演者を手直しして再掲載します。
Xさんに土地の所有権がないことを知らなかった(善意)Yさんは、買う気満々な訳ですから、手に入らなければショックが大きいですから損害賠償が出来る。
逆に、Xさんに土地の所有権がないことを知っていた(悪意)Yさんは、手に入ればラッキーって感じでしょうから、損害賠償が出来ない訳です。
こんなことを書きました。
前回は、買主側から解除をする訳ですが、善意だった場合、損害賠償ができる訳です。
反対に考えれば、売主より解除するには、善意の買主に損害が発生していれば損害を賠償しなければなりませんよね。
悪意のときと善意のとき、違いをしっかりと把握しましょう。
今日も最後までお読みいただき有難うございました。
今日のところはここまでです。
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