こんにちは。
今日は、不法行為について書いてみたいと思います。
この不法行為は、民法の第三編 債権の第五章にあります。
条文は全部で16ありますが、以前、第七百九条と第七百二十一条は少し見ています。
民法上の不法行為には、一般の不法行為と特殊の不法行為があります。
不法行為成立の一般原則について定めたものが一般の不法行為の規定で、特別の事情を考慮して修正を加えているのが特殊の不法行為の規定となっています。
今日は、一般の不法行為について書いてみたいと思います。
最初に不法行為の不法とは
不法=単に強行法規に反するだけではなく公序良俗に反すること。
ここで辞書です。
強行法規=当事者の意思にかかわらず、法として画一的に適用される規定。
(公序良俗)
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。
まぁ、そうでしょうね。
法律に違反する行為はやっちゃダメ、一般的常識的にそれはダメでしょってのもいかんよと言ってる訳ですね。
それでは、早速、条文を確認しましょう。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
故意=「わざと」や「意図的」にってことです。
過失=「不注意」や「うっかり」って感じです。
これらで、他人の権利、法律上保護される利益を侵害した者は、生じた損害を賠償する責任があるってことですね。
この制度趣旨は、
・被害者救済
・将来の不法行為抑止
・損害の公平な分担 にあります。
それでは、不法行為の要件を見てみましょう。
1.加害者に故意又は過失がある
2.他人の権利、法律上保護される利益の侵害がある
3.損害の発生(財産的損害、非財産的損害)
4.加害行為と損害との相当の因果関係
5.加害者に責任能力がある
6.違法性
訴訟を提起した場合、これらの要件は被害者側が主張立証しなければなりません。
これらの内容はご理解頂けると思いますが、3.5.6について少し補足を。
3.
非財産的損害=精神的苦痛に対する慰謝料、名誉棄損などの損害
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
財産以外の損害=非財産的損害についてですね。
5.
責任能力=行った行為が法律上非難に値すると判断することができる精神的能力(裁判所は、一般的に小学校卒業程度の年齢を上回ることで責任能力ありと判断するようです。)
(責任能力)
第七百十二条 未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
第七百十三条 精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。
二つともに、責任を負わない場合の規定ですね。
未成年者で、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていない場合
精神上の障害により、自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にあった場合
いずれも賠償の責任を負いません。
ただ、第七百十三条の但し書きは注意が必要です。
故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、賠償の責任ありです。
6.
違法性=生命や財産など、法律上の利益を侵害されること
民法では、法律上の利益を侵害しても違法性がないと認められるケースが定められております。
これを違法性阻却事由と言います。
この違法性阻却事由がある場合には、不法行為は成立しません。
二つ定められています。
(正当防衛及び緊急避難)
第七百二十条 他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。ただし、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げない。
2 前項の規定は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用する。
正当防衛=他人の不法行為から自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を守るためにやむを得ず加害行為をした場合
具体例
いきなりで襲い掛かられたときに身を守るために反撃すること
緊急避難=他人の物から生じた急迫の危難を避けるために、その物を損傷した場合
具体例
隣家の飼いに襲われたため、反撃して犬に怪我を負わせた場合
まず、お詫び。。。愛犬家の皆さま、申し訳ございません。
法律上、は物の扱いとなっております。
ですので、愛犬が誰かに連れ去られた場合、誘拐罪ではなく、物を盗んだと同じ窃盗罪になるんですね。
戻します。
正当防衛、緊急避難いずれも自己の身体や財産、法律上保護される利益を守るためにしたやむを得ない行為と言うことで違法性が阻却されます。
続いて条文を見ていきましょう。
(近親者に対する損害の賠償)
第七百十一条 他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。
損害賠償の請求権者ですね。
被害者本人が生存している場合は、被害者本人です。
本人が亡くなってしまった場合は、
・相続人(損害賠償や慰謝料請求権を相続し、行使することができる)
・父母、配偶者、子(損害賠償や慰謝料を請求することができる)
・胎児(既に生まれたものとみなされます。)
(損害賠償請求権に関する胎児の権利能力)
第七百二十一条 胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。
ただ、胎児については、生まれる前に親権者等が代理権を行使することはできません。
これはポイントで、過去問知識で必須です。
それと父母・配偶者・子以外の近親者はどうなのかって問題もありますね。
誰でも固有の慰謝料請求ができる訳ではありません。
これは、判例知識ですが、過去に問われていますので知識として入れておきましょう。
判例では、あくまで父母らに匹敵するほどに精神的苦痛を受け得る者、すなわち「被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存する者」は慰謝料を請求し得ると判断しています。
昭和49(オ)212 損害賠償等請求 昭和49年12月17日 最高裁判所第三小法廷 判決 棄却 仙台高等裁判所
不法行為による生命侵害があつた場合、被害者の父母、配偶者及び子が加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうることは、民法七一一条が明文をもつて認めるところであるが、右規定はこれを限定的に解すべきものでなく、文言上同条に該当しない者であつても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうるものと解するのが、相当である。
それでは、発生した損害についてどのような方法で賠償がなされるのかを見ていきたいと思います。
ちなみに、不法行為が行われると契約を結んでいなくても、債権と債務が発生しますよね。
これを、「契約によらない債権・債務の発生」と言います。
不法行為のほかに、第三章の事務管理、第四章の不当利得が該当します。
本題からずれましたが、
(損害賠償の方法及び過失相殺)
第七百二十二条 第四百十七条の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
2 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
まず、第四百十七条の規定です。
(損害賠償の方法)
第四百十七条 損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。
第七百二十二条1項で準用していますので、原則は金銭賠償を。
別段の意思表示があればその方法でと規定しています。
それと損害賠償をすべき範囲ですが。
要件の4.に加害行為と損害との因果関係ってのがありました。
あくまで損害を填補するものですので、因果関係の範囲と言うことです。
少なすぎてもダメですし、多すぎてもダメです。
公平な分担の見地です。
それと2項で過失相殺について規定しています。
損害賠償自体が損害の公平な分担を図るものですので、被害者側に過失があれば、その事情を裁判所は考慮するよってことですね。
この過失相殺ですが、被害者本人の過失だけではなく、被害者と身分上、生活関係上一体をなすとみられる関係にある者の過失も過失相殺の対象となります。
例としては、子どもの損害賠償請求における親の過失などがあげられます。
この過失相殺の他に損益相殺ってのがあります。
損益相殺=損害を受けながら、同一の原因によって利益を受けている場合に、この利益を損害額から控除して賠償額を算定すること
これも損害の公平な分担の見地から認められるものですね。
(名誉毀損における原状回復)
第七百二十三条 他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。
この条文は、金銭賠償の例外の別段の意思表示があった場合です。
名誉や信用が毀損された場合の原状回復を認めています。
参考書なんかには、新聞への謝罪広告の掲載なんて載ってますね。
それと予備校かなんかの記述式で、
「損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずること」(40字)
を問われた記憶があります。
(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
これは当たり前ですが、時効期間です。
時間の経過で責任の有無や損害額の立証や確定が困難になるケースがありますからね。
ポイントを抜き出します。
・被害者又はその法定代理人
・損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき(消滅時効)
・不法行為の時から二十年を経過したとき(除斥期間)
除斥期間=権利関係を速やかに確定するため、一定の権利について法律が予定する存続期間のこと。(中断はなく援用は不要)
今日も長くなりましたが、最後まで有難うございました。
今日のところはここまでです。
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