こんにちは。
昨日に引き続き、今日も不法行為について書いてみたいと思います。
今日は、特別の事情を考慮して修正を加えている特殊の不法行為について書きます。
不法行為責任は、過失責任主義と自己責任の原則をもとに定められた制度です。
これは、言葉は書きませんでしたが昨日見た内容です。
過失責任主義=損害賠償責任を負うのは故意又は過失により、行為者に責任のある行為によって他人に損害を与えた場合を言います。
自己責任の原則=責任は加害者本人が負うことが原則であること。
現代のように高度に複雑化した社会では、これらの原則に修正を加えなければ被害者救済と言う点で不十分な場合が生じてきました。
そのため、社会の複雑化に合わせて一般の不法行為に修正を加え、さまざまな形態の不法行為責任が定められました。
これが特殊の不法行為です。
一般の不法行為の場合、訴訟要件は被害者側が主張立証しなければなりませんでした。
特殊の不法行為は、過失の立証責任が被害者側ではなく、賠償者の加害者側にあるというのが大きな違いです。
故意・過失の立証責任を加害者側に転換して、被害者救済に当たっていることが注意点です。
それでは早速見ていきましょう。
監督者責任
(責任無能力者の監督義務者等の責任)
第七百十四条 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。
前二条の規定=未成年者、精神上の障害
未成年者=自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていない場合
精神上の障害=自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にあった場合
これらの場合に未成年者や精神上の障害のある者は賠償責任を負わないと規定していた訳です。
これを修正したのが第七百十四条です。
監督すべき法定の義務を負う監督義務者や代理監督者は、責任無能力者が負う第三者に加えた損害を賠償する責任を負うと修正したんですね。
監督義務者=親権者、未成年後見人
代理監督者=小学校の教員、幼稚園の保育士
但し書きがありますね。
監督義務者等は、自らが監督義務を怠らなかったことやその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったことの立証が出来れば責任は免除されます。
それと、
第七百十四条は、行為者本人に責任能力が認められない場合です。
行為者本人に責任能力が認められる場合は、この監督義務者等の責任は生じません。
ただ、行為者本人に責任能力が認められる場合であっても監督義務者等の義務違反があった場合に不法行為責任を負うことがあります。
昭和47(オ)1067 慰藉料請求 昭和49年3月22日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 広島高等裁判所 松江支部
未成年者が責任能力を有する場合であつても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によつて生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法七〇九条に基づく不法行為が成立するものと解するのが相当であつて、民法七一四条の規定が右解釈の妨げとなるものではない。
使用者責任
(使用者等の責任)
第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
これはイメージできません
ある事業のために他人を使用する者
↓↑
使用者である会社
被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害
↓↑
従業員が、事業の執行について不法行為を犯してしまった場合
他人を使用する者(会社)は、損害を賠償する責任を負う。
これ、2項で事業監督者も、同様としています。
それと1項但し書きに免責事由が二つあります。
・使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき
・相当の注意をしても損害が生ずべきであったとき
損害を被った者は、被用者(従業員)と使用者(会社)の両方に対して、損害額の全額の賠償を請求できます。
被用者は、独自に一般の不法行為責任を負い、使用者は、使用者責任に基づき賠償をしなければなりません。
被用者が不法行為を犯した場合、その被用者を雇っている使用者である事業主や会社が、その被用者に代わって又は被用者と一緒に責任を負うということです。
使用者・監督者が損害を賠償をしたときは、被用者に求償することができるんですが、求償できるのは、信義則上相当と認められる額に限られます。
注文者責任
(注文者の責任)
第七百十六条 注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。
これは、過去問であったと思います。
これは、読んだままですが、請負人の行為については注文者は原則として損害賠償責任を負いません。
但し書きにある通りで、注文又は指図について注文者に過失があった場合に損害賠償責任を負う訳です。
工作物責任
(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
第七百十七条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
この条文も本試験で問われた内容です。
十分に理解が必要です。
工作物責任とは、土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があって、他人に損害を与えた場合に、工作物の占有者や所有者が負う責任のことです。
この土地の工作物とは
人工的な作業によって、土地に接着して設置されたものを言います。
土地の工作物
建物、ブロック塀、自動販売機、踏切、電柱、工場内の機械など
一次的には占有者が責任を負いますが、占有者が、損害の発生を防止するために必要な注意をしていたことを証明したときは、所有者がその損害を賠償しなければなりません。
所有者は、たとえ自分に過失がなかったとしてもこの責任を免れることはできませんので無過失責任です。
損害を賠償した占有者又は所有者は、損害の原因について他に責任のある者がいる場合、その者に対して求償権を行使することができます。
動物占有者責任
(動物の占有者等の責任)
第七百十八条 動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。
2 占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う。
これは大丈夫ですね。
例えば、放し飼いにしたが路上に出て人を噛んだなんて場合、注意して管理しているとは言えませんよね。
そんな時に、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を規定した訳です。
占有者に代わって動物を管理する者も同様の責任を負います。
共同不法行為
(共同不法行為者の責任)
第七百十九条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
2 行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。
直ぐイメージできるのは集団暴行でしょうか。
数人が共同して不法行為をした場合。
各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。
まぁ、当たり前ですね。
暴行に加わっていて俺は免責ってことはありませんよね。
この連帯っていうのは、不真正連帯債務です。
通常の連帯債務は、免除は制限的絶対効です。
免除を受けた人の負担部分について、他の債務者の債務も減額しました。
共同不法行為の場合は、不真正連帯債務ですので弁済以外は絶対効がありません。
一人を免除をしたとしても、他の不法行為者は賠償額全額を支払う義務があります。
行為者を教唆した者及び幇助した者も共同行為者とみなされるので同犯者ですね。
教唆=ある事を起こすよう教えそそのかすこと。他人をそそのかして犯罪実行の決意を生じさせること。
幇助=手を貸すこと。手助け。援助。他人の犯罪行為を容易にするため、有形・無形の方法で助力すること。
今日も最後まで有難うございました。
今日のところはここまでです。
んでまずまた。
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