おばんです。
前回、住民監査請求をやりました。
今日は、その後について書いてみたいと思います。
住民監査請求をしても監査委員が監査・勧告を行わなかったり、監査委員が勧告をしたのに議会や長等が従わなかった場合、住民監査請求をした意味がなくなります。
住民監査請求の実効性確保のために地方自治法には住民訴訟の規定が定められております。
この住民訴訟、普通地方公共団体の住民が自己の法律上の利益とかかわりなく普通地方公共団体の違法な財務会計上の行為の適正化を図る目的で普通地方公共団体の機関の法律に適合しない行為の是正を求めて提起する訴えです。
このフレーズに聞き覚えはないですか?
そうですね。
行政事件訴訟法
(民衆訴訟)
第五条 この法律において「民衆訴訟」とは、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいう。
この住民訴訟は民衆訴訟の一種に位置付けられております。
それでは条文を確認してみましょう。
(住民訴訟)
第二百四十二条の二 普通地方公共団体の住民は、住民監査請求をした場合において、監査委員の監査の結果若しくは勧告若しくは普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関若しくは職員の措置に不服があるとき、又は監査委員が監査若しくは勧告の請求があつた日から六十日以内に行わないとき、若しくは議会、長その他の執行機関若しくは職員が必要な措置を講じないときは、裁判所に対し、住民監査請求に係る違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもつて次に掲げる請求をすることができる。
一 当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止めの請求
二 行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求
三 当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求
四 当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求。ただし、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方が第二百四十三条の二第三項の規定による賠償の命令の対象となる者である場合にあつては、当該賠償の命令をすることを求める請求
1項から長いですね。
条文は前条第一項の規定とか書かれているものは住民監査請求とか言葉をあてはめて読みやすくしてあります。
この1項からわかることは?
訴えを提起できるものは普通地方公共団体の住民であるってことですね。
人数的な要件や自然人、法人等の要件、選挙権や納税なんかの要件はありません。
住民監査請求をした場合になりますので、監査請求前置主義となります。
住民監査請求をした者が監査の結果に不服がある時に住民訴訟を提起できることとなります。
それと対象となる行為ですが、違法な行為又は怠る事実になります。
これ、注意が必要です。
住民監査請求は違法若しくは不当な行為があると認めるとき、又は違法若しくは不当な怠る事実があると認めるときが対象となりました。
今回は訴訟です。
裁判所に訴える訳ですから不当な行為は対象とはなりません。
住民訴訟は4つ提起できます。
1、当該行為の差止め請求
2、当該行為の取消し又は無効確認の請求
3、当該執行機関、職員の当該怠る事実の違法確認の請求
4、職員等への損害賠償又は不当利得返還請求
過去問で、
住民監査請求によって請求できる内容は、当該行為の差止めなど、法定された4類型に限定されている。
なんて記憶を混乱させるような問題が出ていましたよ。
2 前項の規定による訴訟は、次の各号に掲げる期間内に提起しなければならない。
一 監査委員の監査の結果又は勧告に不服がある場合は、当該監査の結果又は当該勧告の内容の通知があつた日から三十日以内
二 監査委員の勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員の措置に不服がある場合は、当該措置に係る監査委員の通知があつた日から三十日以内
三 監査委員が請求をした日から六十日を経過しても監査又は勧告を行なわない場合は、当該六十日を経過した日から三十日以内
四 監査委員の勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員が措置を講じない場合は、当該勧告に示された期間を経過した日から三十日以内
3 前項の期間は、不変期間とする。
2、3項は期間ですね。
内容によって三十日以内から九十日以内ってことですね。
ここで辞書です。
不変期間=裁判所の裁量による期間の変更が認められていないもの
4 住民訴訟が係属しているときは、当該普通地方公共団体の他の住民は、別訴をもつて同一の請求をすることができない。
この4項も過去に問われたことのある条文です。
5 第一項の規定による訴訟は、当該普通地方公共団体の事務所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
法定された管轄裁判所ですね。
6 住民訴訟に基づく差止めは、当該行為を差し止めることによつて人の生命又は身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがあるときは、することができない。
この差止めができない場合も重要項目です。
7 職員等への損害賠償又は不当利得返還請求が提起された場合には、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実の相手方に対して、当該普通地方公共団体の執行機関又は職員は、遅滞なく、その訴訟の告知をしなければならない。
これは普通に自分にあてはめてみると分かりますが当然ですよね。
突然、損害賠償や不当利得の返還の話されてもってことですね。
相手方にも告知は必要でしょう。
8 前項の訴訟告知は、当該訴訟に係る損害賠償又は不当利得返還の請求権の時効の中断に関しては、民法第百四十七条第一号の請求とみなす。
(時効の中断事由)
一 請求
二 差押え、仮差押え又は仮処分
三 承認
訴訟告知は時効の中断事由の請求にあたるってことですね。
9 第7項の訴訟告知は、職員等への損害賠償又は不当利得返還請求による訴訟が終了した日から六月以内に裁判上の請求、破産手続参加、仮差押若しくは仮処分又は納入の通知をしなければ時効中断の効力を生じない。
時効中断の事由と時効中断の効力の発生とは別の話です。
請求は時効の中断事由ですが、訴訟が終了した日から六月以内に裁判上の請求等をしなければ時効の中断の効力は発生しませんてことですね。
10 第一項に規定する違法な行為又は怠る事実については、民事保全法に規定する仮処分をすることができない。
この仮処分をちょっと見てみました。
民事保全法
(仮処分命令の必要性等)
第二十三条 係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
2 仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。
3、4 略。
係争物に関する仮処分命令と仮の地位を定める仮処分命令があるんですね。
この仮処分はできませんってことですね。
民事保全法に規定する仮処分って言葉、過去問でも時々出てくるんでちょっとだけ見てみました。
11 第二項から前項までに定めるもののほか、住民訴訟については、行政事件訴訟法第四十三条抗告訴訟又は当事者訴訟に関する規定の準用の適用があるものとする。
準用規定です。
12 住民訴訟を提起した者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合において、弁護士又は弁護士法人に報酬を支払うべきときは、当該普通地方公共団体に対し、その報酬額の範囲内で相当と認められる額の支払を請求することができる。
訴訟はお金がかかります。
住民が勝訴した場合、弁護士費用とか普通地方公共団体に相当と認められる額について支払ってもらうことができます。
最後にその後です。
(訴訟の提起)
第二百四十二条の三 職員等への損害賠償又は不当利得返還請求による訴訟について、損害賠償又は不当利得返還の請求を命ずる判決が確定した場合においては、普通地方公共団体の長は、当該判決が確定した日から六十日以内の日を期限として、当該請求に係る損害賠償金又は不当利得の返還金の支払を請求しなければならない。
損害賠償又は不当利得返還の請求を命ずる判決が確定した場合は長が六十日以内に返還金の支払を請求しなければならないと定められております。
誰がいつまでってのは試験等で聞かれるところですね。
2 当該判決が確定した日から六十日以内に当該請求に係る損害賠償金又は不当利得による返還金が支払われないときは、当該普通地方公共団体は、当該損害賠償又は不当利得返還の請求を目的とする訴訟を提起しなければならない。
支払われないときは訴訟を提起しなければならないと定められております。
3 前項の訴訟の提起については、当該普通地方公共団体の議会の議決を要しない。
4 略。
議会の議決を経る項目から除外されております。
内容が内容だけに議会にかけて承認されない訳がありませんしね。
5 前条第一項第四号本文の規定による訴訟について、普通地方公共団体の執行機関又は職員に損害賠償又は不当利得返還の請求を命ずる判決が確定した場合において、当該普通地方公共団体がその長に対し当該損害賠償又は不当利得返還の請求を目的とする訴訟を提起するときは、当該訴訟については、代表監査委員が当該普通地方公共団体を代表する。
最後は長に対し訴訟を提起するときの代表者についての規定です。
住民監査請求、住民訴訟、事務監査請求と似た名称、内容のため組合せで混乱を誘うような問題もありますので惑わされることのないようにきちんと把握しましょう。
今日も長くなりましたので、この辺で。
んでまずまた。