おばんです。
昨日に引き続き取消訴訟の審理を行ってまいりたいと思います。
昨日の最後は第三者の訴訟参加、行政庁の訴訟参加でした。
訴訟に参加する方が増えれば争いの種が増える場合があります。
これらの争いの種を別々に提起することはもちろん出来る訳ですが、なんか経済的じゃないですよね。
同一の訴訟手続の中で審理するほうがいろんな意味で重複を防いだり、裁判上でも矛盾が発生することを防ぐこともできます。
経済的ですね。
そのための規定を行政事件訴訟法では設けています。
(請求の客観的併合)
第十六条 取消訴訟には、関連請求に係る訴えを併合することができる。
2 前項の規定により訴えを併合する場合において、取消訴訟の第一審裁判所が高等裁判所であるときは、関連請求に係る訴えの被告の同意を得なければならない。被告が異議を述べないで、本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、同意したものとみなす。
ポイントは、第一審裁判所が高等裁判所のとき、同意を得る、被告が異議を述べずに弁論した場合は同意したものとみなすです。
(原告による請求の追加的併合)
第十九条 原告は、取消訴訟の口頭弁論の終結に至るまで、関連請求に係る訴えをこれに併合して提起することができる。この場合において、当該取消訴訟が高等裁判所に係属しているときは、第十六条第二項の規定を準用する。
2 前項の規定は、取消訴訟について民事訴訟法第百四十三条(訴えの変更)の規定の例によることを妨げない。
第二十条 前条第一項前段の規定により、処分の取消しの訴えをその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えに併合して提起する場合には、同項後段において準用する第十六条第二項の規定にかかわらず、処分の取消しの訴えの被告の同意を得ることを要せず、また、その提起があつたときは、出訴期間の遵守については、処分の取消しの訴えは、裁決の取消しの訴えを提起した時に提起されたものとみなす。
ポイントは、処分の取消しの訴え+処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えに併合して提起=被告の同意は不要
あとは最後の行の出訴期間ですね。
(第三者による請求の追加的併合)
第十八条 第三者は、取消訴訟の口頭弁論の終結に至るまで、その訴訟の当事者の一方を被告として、関連請求に係る訴えをこれに併合して提起することができる。この場合において、当該取消訴訟が高等裁判所に係属しているときは、第十六条第二項の規定を準用する。
追加的併合の場合は取消訴訟の口頭弁論の終結に至るまで、訴えを併合提起できます。
また、原告、第三者による追加的併合以外にも訴訟自体を違う訴訟に変更することもできます。
(国又は公共団体に対する請求への訴えの変更)
第二十一条 裁判所は、取消訴訟の目的たる請求を当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体に対する損害賠償その他の請求に変更することが相当であると認めるときは、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、原告の申立てにより、決定をもつて、訴えの変更を許すことができる。
ポイントは、請求の基礎に変更がない限りっていう条件ですね。
それと裁判所が申し立てられたことに対して判断するってことです。
まぁ、以前にも書きましたが、許すことができるって違和感がありますよね。
2 前項の決定には、第十五条第二項(書面でする、その正本を新たな被告に送達)の規定を準用する。
3 裁判所は、第一項の規定により訴えの変更を許す決定をするには、あらかじめ、当事者及び損害賠償その他の請求に係る訴えの被告の意見をきかなければならない。
4 訴えの変更を許す決定に対しては、即時抗告をすることができる。
5 訴えの変更を許さない決定に対しては、不服を申し立てることができない。
訴えの併合や訴えの変更など、何かと時間のかかる裁判で重複防止や裁判相互の矛盾の防止等、訴える側に配慮された仕組みが整っております。
しかし、訴えを提起しても処分自体はどうなっているのでしょうか?
聞いたことがあると思います。
処分の取消しの訴えは、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。
執行不停止の原則ですね。
訴訟を提起しても取消判決が出るまでは有効な行政処分です。
このように扱うことで裁判の濫訴を防止し、行政活動の停滞を防止します。
具体例
Oさんは、ひょんなことから営業許可の取消処分を受けてしまいました。
裁判を起こせば処分は止まり営業を継続できると思っていたOさんは、訴えを起こしましたが処分は止まりませんでした。
ちゃんちゃん。。。
ようは、執行停止してしまうと具体例のように考える方がいて濫訴につながり行政活動が停滞してしまいますよね。
ここで辞書です。
濫訴=むやみに訴えること。無法な訴訟を起こすこと。
さて条文を確認しましょう。
(執行停止)
第二十五条 処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。
1項は執行不停止の原則ですね。
2 処分の取消しの訴えの提起があつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(執行停止)をすることができる。ただし、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によつて目的を達することができる場合には、することができない。
2項はすべて重要です。
一字一句間違えることなく覚えて下さいね。
3 裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。
4 執行停止は、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、することができない。
4項の執行停止ができない場合も重要項目です。
5 第二項の決定は、疎明に基づいてする。
6 第二項の決定は、口頭弁論を経ないですることができる。ただし、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならない。
7 第二項の申立てに対する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
8 第二項の決定に対する即時抗告は、その決定の執行を停止する効力を有しない。
ここで再度辞書です。
疎明=確信ではなく、確からしいという推測を裁判官に生じさせる当事者の行為。又は、これに基づき裁判官が一応の推測を得ている状態。
(事情変更による執行停止の取消し)
第二十六条 執行停止の決定が確定した後に、その理由が消滅し、その他事情が変更したときは、裁判所は、相手方の申立てにより、決定をもつて、執行停止の決定を取り消すことができる。
2 前項の申立てに対する決定及びこれに対する不服については、前条第五項から第八項までの規定を準用する。
執行停止をしたけれども、理由がなくなった場合や事情が変更したときに、相手方から申し立てることにより、執行停止を取消すことができます。
処分が継続されることに戻る訳です。
理由がなくなればしょうがないですね。
最後に管轄裁判所と規定の準用です。
(執行停止等の管轄裁判所)
第二十八条 執行停止又はその決定の取消しの申立ての管轄裁判所は、本案の係属する裁判所とする。
(執行停止に関する規定の準用)
第二十九条 前四条の規定は、裁決の取消しの訴えの提起があつた場合における執行停止に関する事項について準用する。
この辺は大丈夫ですね。
今日のところはここまでです。
んでまずまた。