おばんです。
今日は取消訴訟の審理の手順や手続などをやっていこうと思います。
取消訴訟の核となる部分ですね。
取消訴訟が提起されると裁判所は訴えが訴訟要件を満たしているかを審理します。
ここで、訴訟要件を満たしていない場合は訴えが不適法と判断されて却下判決が下されます。
訴えが訴訟要件を満たしている場合、裁判所は処分の取消しを求める訴えが妥当かを審理します。
ここで審理の対象となるのが処分の適法性です。
下された処分の手続、形式、内容等をさまざまな観点から適法性の審査をする訳です。
ポイントが一つ。
不服の申立ての場合、裁量の当、不当が審理の対象になりましたが、裁判所の場合は適法性のみの判断で当、不当は判断することはありません。
ここで有名な条文を見てみましょう。
(裁量処分の取消し)
第三十条 行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。
ここで辞書を。
自由裁量処分=行政裁量のうち純粋に処分庁の政策的・行政的判断に委ねられた処分である。裁量が自由である以上、その処分が妥当か不当かの問題はありえるが、裁量権を濫用・逸脱しないかぎり、適法・違法の問題はありえないため、司法による対象とはならないとされる。
処分に違法性がある場合、審理が進められることとなりますが、審理は弁論主義によってなされます。
弁論主義=民事訴訟法上において、訴訟の解決や審理の資料の収集を当事者の権能かつ責任とする主義
ここで問題となるのは、行政上の法律関係は国民の誰にとっても適法でかつ公正な結果であることと言う問題です。
行政と処分の取消しを求めた当事者間でのみ解決をすることでは足りません。
そのため、行政事件訴訟については民事訴訟手続にはない二つの制度を規定しております。
一つ目は釈明処分の特則って言うのを聞いたことがあると思います。
早速条文を確認しましょう。
(釈明処分の特則)
第二十三条の二 裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、必要があると認めるときは、次に掲げる処分をすることができる。
一 被告である国若しくは公共団体に所属する行政庁又は被告である行政庁に対し、処分又は裁決の内容、処分又は裁決の根拠となる法令の条項、処分又は裁決の原因となる事実その他処分又は裁決の理由を明らかにする資料であつて当該行政庁が保有するものの全部又は一部の提出を求めること。
二 前号に規定する行政庁以外の行政庁に対し、同号に規定する資料であつて当該行政庁が保有するものの全部又は一部の送付を嘱託すること。
2 裁判所は、処分についての審査請求に対する裁決を経た後に取消訴訟の提起があつたときは、次に掲げる処分をすることができる。
一 被告である国若しくは公共団体に所属する行政庁又は被告である行政庁に対し、当該審査請求に係る事件の記録であつて当該行政庁が保有するものの全部又は一部の提出を求めること。
二 前号に規定する行政庁以外の行政庁に対し、同号に規定する事件の記録であつて当該行政庁が保有するものの全部又は一部の送付を嘱託すること。
この釈明処分の特則は、当事者間での情報収集能力の格差、ようは弁論主義を補完するものとして裁判所からの働きかけを認めているものです。
これは民事訴訟法の釈明権を強化したものってことらしいです。
民事訴訟法
(釈明権等)
第百四十九条 裁判長は、口頭弁論の期日又は期日外において、訴訟関係を明瞭にするため、事実上及び法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、又は立証を促すことができる。
2 陪席裁判官は、裁判長に告げて、前項に規定する処置をすることができる。
3 当事者は、口頭弁論の期日又は期日外において、裁判長に対して必要な発問を求めることができる。
4 略。
次に職権証拠調べです。
(職権証拠調べ)
第二十四条 裁判所は、必要があると認めるときは、職権で、証拠調べをすることができる。ただし、その証拠調べの結果について、当事者の意見をきかなければならない。
必要があると認めるときと、結果について当事者の意見をきかなければならないってのはポイントです。
必要もないのにすることはできませんし、裁判所の独断を許すことはできないので調べた結果については当事者の意見を聞くことになっています。
また、調べた結果や訴訟継続中に利害関係のある方が出てくる場合もあり、その規定も決められております。
(第三者の訴訟参加)
第二十二条 裁判所は、訴訟の結果により権利を害される第三者があるときは、当事者若しくはその第三者の申立てにより又は職権で、決定をもつて、その第三者を訴訟に参加させることができる。
2 裁判所は、前項の決定をするには、あらかじめ、当事者及び第三者の意見をきかなければならない。
3 第一項の申立てをした第三者は、その申立てを却下する決定に対して即時抗告をすることができる。
4、5 略。
具体例
宮城県知事から許可をもらって事業を行っているOさん。
事業が快調で笑いがとまりません。
同業者のZさんは、Oさんの経営手腕を脅威に感じ、Oさんの許可処分の取消訴訟を提起しました。
この場合、原告は訴えたZさん、被告は許可権者の宮城県知事です。
Oさんは重大な利害関係を有する訳ですが当事者ではないとの理由で裁判に参加できないのでは不合理です。
Oさんは、訴訟に参加し、経営手腕さながらの弁論で許可を守ることができました。
めでたしめでたし。。。
訴訟の結果により権利を害される第三者=具体例Oさん
(行政庁の訴訟参加)
第二十三条 裁判所は、処分又は裁決をした行政庁以外の行政庁を訴訟に参加させることが必要であると認めるときは、当事者若しくはその行政庁の申立てにより又は職権で、決定をもつて、その行政庁を訴訟に参加させることができる。
2 裁判所は、前項の決定をするには、あらかじめ、当事者及び当該行政庁の意見をきかなければならない。
3 略。
訴訟の結果により権利を害される第三者の他に行政庁側にも必要である場合に訴訟参加を認めています。
どちらも参加を決定するにあたっては当事者及び第三者、行政庁の意見を聞かなければなりません。
今日のところはここまでです。
んでまずまた。