おばんです。
前回に引き続き取消訴訟を見ていきたいと思います。
取消訴訟を提起するには訴訟要件を満たさなければなりません。
訴えが適法になされていない場合、内容の審理に入ることなく却下されて終わりです。
一番最初の要件ですが、取消訴訟を提起する訳ですから取消すべき、処分又は裁決等がなされていなければなりません。
これは、当たり前。
これがなければ何を取消すのってことになりますから。
二番目の要件ですが、原告適格があること。
訴訟を提起することができる資格、権限があるのかってことです。
三番目は、取消訴訟を訴える利益があるのかって言うことです。
これは条文を確認しましょう。
(原告適格)
第九条 処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(取消訴訟)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。
二番目の要件の原告適格ですが、取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができると書かれています。
この法律上の利益を有する者の意味ですが、処分を受けた相手方に限りません。
処分の相手方ではないけれども、取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者も含まれます。
三番目の訴えの利益については、処分又は裁決の取消しによつて現実に法律上の利益が回復すべき状態にあるってことを言います。
処分や裁決があり、原告適格があっても取消しによって現実に法律上の利益が回復すべき状態にない場合は却下されてしまいます。
処分の相手方以外の者については次項に定められております。
2 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。
この法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するっていうフレーズと内容は確実に押さえて下さいね。
ここで一応辞書です。
参酌=他のものを参考にして長所を取り入れること。
勘案=あれこれと考え合わせること。
四番目は、出訴期間です。
(出訴期間)
第十四条 取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
この処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月と言う期間は、主観的出訴期間と言います。
それとやはり例外規定ですね。
正当な理由があるときの例としては、災害や不慮の事故による傷害等があたるとされております。
2 取消訴訟は、処分又は裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
3 略。
処分又は裁決の日から一年と言う期間は、客観的出訴期間と言います。
こちらもやはり例外規定はあります。
五番目は訴える相手(被告)ですね。
(被告適格等)
第十一条 処分又は裁決をした行政庁(処分又は裁決があつた後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、当該他の行政庁。)が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、次の各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める者を被告として提起しなければならない。
一 処分の取消しの訴え 当該処分をした行政庁の所属する国又は公共団体
二 裁決の取消しの訴え 当該裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体
処分、裁決ともに行政庁の所属する国又は公共団体を被告として提起することになります。
2 処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属しない場合には、取消訴訟は、当該行政庁を被告として提起しなければならない。
国又は公共団体に所属しない行政庁の場合は、直接行政庁を被告に訴えるってことですね。
3 前二項の規定により被告とすべき国若しくは公共団体又は行政庁がない場合には、取消訴訟は、当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体を被告として提起しなければならない。
被告とすべき国若しくは公共団体又は行政庁がない場合には、その処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体を被告とするんですね。
4 第一項又は前項の規定により国又は公共団体を被告として取消訴訟を提起する場合には、訴状には、民事訴訟の例により記載すべき事項のほか、次の各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める行政庁を記載するものとする。
一 処分の取消しの訴え 当該処分をした行政庁
二 裁決の取消しの訴え 当該裁決をした行政庁
基本は民事訴訟の例により記載すべき事項であり、+訴えの区分に応じた記載が必要と規定されております。
5 略。
6 処分又は裁決をした行政庁は、当該処分又は裁決に係る第一項の規定による国又は公共団体を被告とする訴訟について、裁判上の一切の行為をする権限を有する。
相手方の国又は公共団体の窓口は処分をした行政庁になるんですね。
それと訴えたけど故意や重過失がなく間違っちゃった場合の規定もあります。
(被告を誤つた訴えの救済)
第十五条 取消訴訟において、原告が故意又は重大な過失によらないで被告とすべき者を誤つたときは、裁判所は、原告の申立てにより、決定をもつて、被告を変更することを許すことができる。
法律とはいえ、許すことができるって言葉に違和感を感じるのは私だけなんですかね。
2 前項の決定は、書面でするものとし、その正本を新たな被告に送達しなければならない。
裁判所がすることですから書面でしょうね。
3 第一項の決定があつたときは、出訴期間の遵守については、新たな被告に対する訴えは、最初に訴えを提起した時に提起されたものとみなす。
訴えの提起も最初に提起したときにされたものとして扱われます。
4 第一項の決定があつたときは、従前の被告に対しては、訴えの取下げがあつたものとみなす。
これは当然そうなりますよね。
5 第一項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
6 第一項の申立てを却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
これは辞書です。
即時抗告=裁判上、迅速に確定されることが必要な決定について、期間を定めて認められる不服申立て方法。
7 上訴審において第一項の決定をしたときは、裁判所は、その訴訟を管轄裁判所に移送しなければならない。
いろいろと原告に優しい規定が並んでいます。
最後に裁判所はどこに?
(管轄)
第十二条 取消訴訟は、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所又は処分若しくは裁決をした行政庁の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。
基本は被告側の所在地の裁判所ですね。
それと処分若しくは裁決をした行政庁の所在地を管轄する裁判所にも提起できます。
2 土地の収用、鉱業権の設定その他不動産又は特定の場所に係る処分又は裁決についての取消訴訟は、その不動産又は場所の所在地の裁判所にも、提起することができる。
不動産や特定の場所に係るものについては、その不動産又は場所の所在地の裁判所にも訴えることができるんですね。
3 取消訴訟は、当該処分又は裁決に関し事案の処理に当たつた下級行政機関の所在地の裁判所にも、提起することができる。
4 略。
5 略。
基本は被告側って考えれば、処理をした下級行政機関の所在地の裁判所でも良いってことになるんでしょう。
取消訴訟は重要ですのでキチンと把握しましょう。
また、判例なども重要ですが、判例は過去問を解きながらやっていきましょう。
今日のところはここまでです。
んでまずまた。