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緑の錨

歴史家の山本尚志のブログです。日本で活躍したピアニストのレオ・シロタ、レオニード・クロイツァー、日本の歴史的ピアニスト、太平洋戦争時代の日本のユダヤ人政策を扱っています。

10月10日午後2時より巣鴨の東音ホールにて、レオ・シロタ没後半世紀(50年)記念コンサートが行われます。私も、最初と途中にお話しさせていただきます。特に、ウィーン時代のシロタに触れることができればと思っております。お時間がおありでしたら、おいでくだされば幸いです。

当日演奏される予定の曲は、コルンゴルトの第1ソナタ第1楽章と「ピエロの歌」(渡辺泉編)。ショパンのハ短調の夜想曲遺作(第21番)と夜想曲第13番。リストのパガニーニ練習曲第4番。ブゾーニの「ジーク・ボレロ・変奏」と「序奏とアルペッジョ」。最後にショパンの夜想曲第20番嬰ハ短調の予定です。シロタにゆかりのある作曲家による、演奏機会の少ない曲がほとんどだと思います。曲目は変更になる可能性がありますのでご承知おきください。








日本ラグビ150年の歴史で、最高、最大の勝利を見ました。ブライトンの奇跡とよぶ人がいて、すばらしい人たちが人事を尽くして、地の利、天の時、人の和があっての偉業と思い、この美しい町で起こったことを奇跡と呼ぶのは最初どうかと思いました。しかし、すばらしい男たちがいて、集い、全力を尽くして、さらに条件がそろっての勝利。これこそ奇跡と思いなおしました。

戦前、半世紀凌駕できないチームを作りながら、戦争によってすべてが無に帰した。戦後、ラグビー界も復興を遂げて、オールブラックス・ジュニアに勝って世界に手がかかり、イングランドに勝ちかけながら、相手の懸命に伸ばした手に足首を払われてイングランに敗れて、名将大西はイングランドド百年の執念と嘆じた。それから曲折あって遂にここまで来ました。


9月になりました。

8月下旬から雨が多く、ヨーロッパの初秋のような天気ですね。

論文を執筆しております。

ホテル・オークラ東京については、またいくらか書いてみたいと思います。

今日でホテル・オークラ東京本館は閉鎖。

静かにすごすべく、最後のイベントにはうかがいませんでした。私にとってのホテル・オークラは、どちらかといえば静かな印象ですので。

というわけで、次の写真を。




他のことはまた書きます。

写真はオーキッドルーム建て替え前の最後の晩餐会におけるシャンパンピラミッド。


はなやかなオーキッドルームの思い出といえば晩餐会。シャンペン・ピラミッドにサブラージュ、贅を尽くした料理もオーキッドルームの一面。

そして、気軽なビュッフェもオーキッドルームの一面でした。その気楽さが好きとおっしゃる方も、特に年配の方に多かった。自分で皿を持って料理を取る内外の貴紳淑女をお見かけすることもありました。

はなやかな顔と親しみやすい顔が共存しているところに、オーキッドルームのよいところです。

誕生日の日に、その旨をお店に伝えておくと、お店の方がみなで歌ってくださるのもうれしかった。存じあげないかたが誕生日の折にも、伝統に従い、私もできるかぎり唱和するようにしておりました。

すべてが懐かしく感じられます。

洗練されていると同時に、節度を保った親密さが、オーキッドルームの特徴でした。静かでありながら、ホテルのメインロビーに面したレストランとして敷居の高さがなく開かれていました。

ホテル・オークラ本館オーキッドルームの定番。

エッグベネディクト、クレープシュゼット、パリソワールなどについてはすでに書いてしまっております。

元来料理の写真を撮る習慣がなく、最近になってあわてて撮りはじめた次第で、冬の定番レディ・カーゾン、牡蠣のカークパトリックやロックフェラー、春から初夏にかけての定番ホワイトアスパラカス、苺のジュビレの写真はありません。

さらに、皆様がオーキッドの定番と聞いて真っ先に想起するであろう料理がもう一品あるように思います。

定番中の定番たるダブルコンソメです。

しかし、これもあまりに身近ということで、写真を取り落としてしまいました。かわりに、オークラの絶対の一品頁にリンクをはっておきます。

ホテル・オークラ絶対の一品の頁

この基本中の基本は朝食のメニューにもあります。そんなわけで、朝食でダブルコンソメをいただくのは、お酒を飲んだ朝に大変にしっくりくるのです。コンソメスープの塩分や栄養分が二日酔いの翌朝にちょうどいいからと思っています。

フレンチトーストが有名なオーキッドルームの朝食ですが、メニューには多彩な料理があります。自分にぴったりの組みあわせを捜してみるのも楽しいことです。




写真がないと寂しいので、珈琲の写真を。

いよいよ今日ですね。

ホテル・オークラ東京本館オーキッドルームの定番。

午後のお茶。


オーキッドルームの午後のお茶では、フィンガー・サンドウィッチもちゃんとおいしく、スコーンもしっかりしていて、きちんといれてくれたお茶を飲むことができます。

さらに座る前に行列を作って待つ必要もなく、席の間隔が離れているので隣の客の会話もさして聞こえてこず、時間を気にしてあくせくすることもなく、ゆったりと午後のお茶を飲むことができます。さすがに、今年の七月、八月は混雑していたようですが。

このような居心地のよい場を提供してくれるのもオーキッドルームの美点です。

グラスに入ったワインの写真だけを見せてわかっていただけるはずもないのですが、ヴェガ・シシリア・ウニコ2003。この高名なワインをはじめていただいたのもオーキッドルームでした。

この気むずかしいワインの開栓管理が抜群でした。



オーキッドルームのワインリストもグラスワインのチョイスも、保守的なものだけでなく、ニューワールドや新しい産地のワインも採りいれてくれています。さらに、ソムリエさんの努力で値段も様々な価格帯のものが用意されています。

スペインワインやカリフォルニアワインの隆盛、さらなる産地のひろがり、そして、ドイツワインの新しい流れも今では常識ですが、そのような動きを学んだのもオーキッドにおいてでした。

四半世紀にわたって、このレストランで本当にソムリエさんによくしていただきました。オーキッドルームは居心地のよいレストランなのです。

ホテル・オークラ東京別館オーキッドルームの定番。

牡蠣のカークパトリックとか、ブイヤベースとか、多くの定番については写真を撮っていません。なにしろぎりぎりまで、まさかオーキッドルームを閉鎖するとは信じられなかったので。

さらに、生牡蠣やターターステーキのような長く定番であった料理も、昨今の風潮でメニューに載らなくなりましたので、写真はありません。

というわけで迷ったのですが、やはり、これを挙げないわけには行かないでしょう。

フレンチトースト。




その美味なことは、多くの人が語っているのでもはや私があらためて付けくわえるまでもないでしょう。

フレンチトーストのレシピそのものは残り続けるでしょう。ただ、落ちついて、テーブル間の距離があり椅子も座り心地がいいオーキッドルームで、ゆったりとフレンチトーストをいただく、ということまで含めないと、やはりオーキッドのフレンチトーストが継承された、とはいえないでしょう。

朝食についても、結局は価値観です。

ゆっくり座って、少量おいしいものを食べるか、それとも盛りだくさんなビュッフェがよいのか。行列をしてでも米国から持ちこまれた最新流行の米国風朝食を食べるのか、伝統的な朝食をよいと考えるのか。

そして、レストランはリニューアルを繰りかえしながら風のように移りかわる流行を追うのか、それとも、スタイルを守るのか。

様々な立場があるでしょうが、複数のありかたがあってこそ、世界はゆたかになります。そして、オーキッドルームのような伝統的なスタイルを守るレストランは、昨今の時代の動きに照らしてみれば、ことさら貴重なように思います。

私はオーキッドルームの朝食(とともに、すべて)が、その本質を維持したかたちで残ってほしいのです。

ホテル・オークラ東京本館オーキッドルームの定番。




さらに、コンチネンタルルームからオーキッドルームに受けつがれた特徴あるメニューとして、スパゲティ・ボンゴレがあります。

日本でイタリア風イタリア料理(奇妙な表現ですが、もっとうまい言い方が思いつきません)が本当に広まっていったのは意外に遅かったはずで、私の記憶では1980年代以降です。イル・ボッカローネの開店が大きな役割をはたしたと感じています。

それ以前からスパゲティボンゴレはコンチネンタルルームで人気の一品でした。

イタリア料理は奥深い世界なのではっきりしたことはいえませんが、どちらかといえば、コンチネンタルから受けつがれたオーキッドルームのボンゴレは、イタリアのボンゴレを踏まえながらも日本で独自の発展をした料理であるように思います。

しかしイタリア人を含めてだれが食べてもおいしい料理であると思っています。好物のひとつです。

こうして定番料理を列挙していくと、オーキッドルームが、ロビーにあるホテルのメインレストランで料理においてもサービスにおいても高い質を保っていながら、同時にかなり特色のあるレストランだったことがわかってきます。

さらに、コンソメ、カレー、牡蠣料理など、オーキッドを特徴付けるメニューは多々あります(写真を撮っていなかったので載せられない)。

私にとって、牡蠣のカークパトリックはオーキッドのメニューにあれば毎冬必ず、しかも大抵は何度も食べる料理となっています。

オーキッドルームは奥の深い、他にかえがたいレストランだと確信しています。