――事実には直面せねばならん。民主主義は過ぎ去った時代のものだ。普通選挙にいつまでもこだわっていられるほど、いまの世界は単純なも場所ではない。烏合の衆が話し合って何になる。数年前までならそれもよかったろう。だが、今日の世界で……? とんでもない話だ」
戦前のお屋敷での日々を回顧する執事。ファシズムやボルシェビキとせめぎ合うイギリス紳士たちは、この旦那様のようなことを言っていたようです。
最近の世界では、独裁制の国が力を増しているように感じるし、またポピュリズムに混迷する民主主義にはここまで落ちるかとがっかりしています。そこで、個人的には「民主主義って、どうよ?」と思ってしまっていて……。
そこで出会った冒頭のセリフに、ハッとしました。
私は民主主義が絶対大事だと思って生きてきたけど、そうは考えられていない時代ももちろんあったわけだ。と、改めて気づいたのです。
英国紳士たちは無知蒙昧な大衆は教養がなく、国の行方を考える能力がないと考えていたのですね。現在の日本の教育水準は当時の英国よりよほど高いでしょうし、世界の情報を得ることも簡単です。しかし、真実の情報をつかみ正しい判断ができるかといえばどうでしょう。
大差ないかもしれないですね。
本作は、古臭く頭の固い執事が自分の過去と現在をファンタサイズしながら生真面目に語る物語です。本人には思いもよらず、滑稽さがにじんでしまう悲しさおかしさに彩られています。
作者の意図がどのへんにあるのかはわかりませんが、「昔のことだから」というだけで片付けるにはもったいない。いろいろと示唆するところがあると思います。
まだ後半はこれからです。