道人・・京都割烹 新しい京都の名店!  | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

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京都仁王門(三条より少し上)に今月開店した「道人(どうじん)」

 

 

 

京都の食通3人と知り合うことになって4年以上経つ。

この方々との出会いは、わたしの人生に大きな広がりと深みをもたらした。

 

このメンバーと食事する機会は月平均2回くらいで、けっこうな頻度だが

それがもう4年も続いている。

あちこちの店を食べ歩くのではなく、決まった店に着実に通い続けるというスタイルである。

 

高価なワインを開けてあ〜でもない、こ〜でもないと言っているのとは全く違って、

食を全方位から鳥瞰した会話が飛び交う。

ようやく少し会話に付いていけるようになったが、最初の頃は浅学非才にもかかわらず

不遜な発言を連発しており、よく受け入れてもらっていたものだと思う。

 

大阪には名店がいくつもあると思うが、この4年の経験から、京都との非常に大きな違いを

肌で感じるようになった。

 

ジャンルに限らず自分が行きたいと思う店は、料理人の「その日」の顔がはっきり見える店で、

大勢の客人を入れてもてなす店ではない。

 

大阪人だから書きやすいが、特に根拠はないけれど、

割烹料理に関しては大阪は京都に敵わないのではないか、と思うようになっている。

 

大阪には「もめん」という超大御所が存在するが、

この店は木綿清次という叩き上げの天才料理人がこしらえた独特の世界で、別格である。

 

「そんなもん、金だして高いもん買うてき出したら旨いに決まってるやんか」

と木綿さんが言われるように、ここには木綿さんにしか出せない味がある。

もちろん一流の食材しか使っていないのだが、非日常を感じさせないさりげなさがある。

 

実はこれが誰にも真似できないのだ。

木綿さんは吉野の出身だそうだが、この風情はいかにも大阪である。

 

一方京都には☆がついた和の名店が多く存在する。

有名な三ツ星の「菊乃井」にはテレビによく露出している村田さんという大将がいて、

和食を世界に発信するということまでやっている。

行ったことはないけれど、こういうスタイルの店には興味はない。

 

「さ○木」というこれまた有名な店には1回行ったけれど、椀物を味わっただけで

とても「もめん」の敵ではないと分かった。

ブランド志向の客を集める店のスタンスが感じられ、それが好みではないので、

2度と行かなくても良いと思っている。

 

よく通っているのが「啐啄つか本」で、予約が入らないのであまり書きたくないが

個人的には大好きな店である。

塚本英雄さんは木綿さんとはまた異なった天才的かつ繊細なセンスの持ち主で、

人柄が料理に出るというのが毎回実感できる。

 

「もめん」も「つか本」もミシュランの☆を2つ持っていたが、

現在では2店とも☆は無くなっている。

これらの店は観光客や一見客が訪れるような店ではなく、

外国企業が評価して☆を付けたり減らしたりする対象ではない。

 

さて、今回のお題の「道人(どうじん)」である。

7月1日に開店したばかりで、3日目の7月3日に京都の3人の大家とともに訪れた。

 

店主の中島道人(みちひと)さんとは、これまで3回会ったことがある。

1回目は「つか本」の店の前、あとの2回は「もめん」で食事をご一緒した。

太宰府出身の九州人で、現在36歳。

一緒に酒を飲んで語ったが、ワインにも詳しく、素朴な人柄が感じられた。

 

これまで京都の有名割烹店での仕事歴があるとのことだが、

こんな実直、いや愚直そうな人が、たった1人で伝統の京都で割烹料理店を開くという。

相当の力と覚悟がないとできないのは明白だ。

 

先斗町あたりに乱立している、外国人観光客相手のテナント飲食店は

しょっちゅうできたり消えたりしているが、上の写真のように店内を見ただけで、

格が違うのは一目瞭然だ。

 

カウンターは2段にした桧の一枚板。

天井は共木でこしらえたもので、壁の塗も茶室のような雰囲気を醸している。

椅子はカッシーナ製の白木の軽いもので、掛け心地もよく、かつ店に溶け込む。

 

どうでもいいが、和風感あふれるトイレの便器は

うちのクリニックでも採用しているTOTOの最高級機種NEORESTである。

 

食器も時間をかけて集められたであろう骨董品やオールドバカラなどが現れるが、

3人の大家はそれらも決して見逃さない。

 

 

秋田の新政酒造 秋櫻

 

3大家を前にして、料理を細かく語るという大それたことはわたしにはできないが、

文句の付けようがなかった、とだけ記しておく。

 

酒については語っておきたい。

新政が4種類も出てきたが、これで中島さんの料理と酒への志向が見える。

ことに秋櫻は酸味が強くて、キリリと締まった独特の風味の酒である。

 

昨年新政のラピスラベルを購入して飲んだことがあるが、個人的には秋櫻に惹かれる。

思わず帰宅後ネットで3本購入した。

 

今回驚いたのは、名店が多い京都で新しい割烹店を開くには

ここまでの設えをして道具も揃えなければならない、ということだ。

わたしも多額の借金をして17年前に診療所を開いたが、あの時の覚悟を思い出す。

 

蒸し暑い日であったにもかかわらず、「道人」には、不思議に凛とした空気が満ちていた。

3人の大家の中でも、最も年長で経験豊富な元材木問屋の大家が

道人さんに言われた言葉がこの店の本質を突いていた。

「あんた、ずいぶん可愛がられてるな」

 

分かりやすく言えば、手に入りにくい良質な食材を得るには、

生産者や市場の卸などから贔屓にされることが必要だ、ということである。

「ええもん入れてるな」

と直截的に言わないところが大家らしい。

 

問題はうちから少し遠いことだ。片道1時間半くらいはかかるのである。

1人の大家のご自宅(お寺)から歩いてたった3分なのだが。

 

この日の晩は、とても学ぶことが多かった。

この大家の言葉が、この店の将来の発展を予見している。

もめんやつか本のように、とても居心地が良くて清々しい。

 
やっぱり料理は人なのだ。

 

 

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