黒杉にて・・アンスタン | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る

直接被災された東北のみならず、関東でもさまざまな形で影響が出ているようで心配である。
とてもブログを更新している気分ではないが、このブログはあくまで個人の記録である。
なので粛々と先週飲んだシャンパーニュを記録しておく。

震災が起こる前日の夜、翌日の大災害を知るよしもなく、大阪北新地の鮨屋「黒杉」を訪問した。
昨年秋に一度訪問して以来、2度目である。
昨年訪問した際に、酒の持ち込みも大丈夫と確認させて頂いたので、
今回は自宅からシャンパーニュ2本をゆるりと担いで訪問した。

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~
ドノン・エ・ルパージュ レコルト・ローズ NV
購入日    2010年3月
開栓日    2011年3月10日
購入先    フィッチ
インポーター ラシーヌ
購入価格   4180円

ベレッシュ・エ・フィス アンスタン NV
購入日    2011年1月
開栓日    2011年3月10日
購入先    フィッチ
インポーター 豊通
購入価格   8600円

まず1本目は、先日開栓して大いに感心したドノンさんのロゼワインである。
最初にレコルト・ノワールを開けて肩すかしを食らい、次にレコルト・ブランシュを開けて
お祭り状態になったので、急遽注文して届いたばかりのボトルである。

ほんのりとピンクの桜色は、今の季節にふさわしく、数人で開栓するには向いていると
思って持参した。
品種はピノ・ノワール100% だそうで、泡は繊細で細かく、柔らかに舌を撫でる。

赤系ベリーの風味が感じられるとどこかに書かれているが、さくらんぼのような
小さい赤系の果実で、ワインとしては軽めである。
すなわち、ミネラル感も弱めで、レコルト・ブランシュほどインパクトは強くない。

レコルト・ブランシュを知ってしまうと中途半端な印象が否めないが、
レコルト・ノワールに感じた失望感はなく、白身魚にも違和感なく楽しめた。

2本目のベレッシュは、初めて開栓するエース級のアンスタンである。
リュード村に所有する畑の中で樹齢の高い最も良い区画を選びブレンド。
205L、228L、500Lと異なる容量の樽で醸造され、ノン・フィルターで瓶詰め。
王冠ではなくコルクにて瓶熟成を60ヶ月。ドサージュなし、とインポーターの資料にある。

これはある意味相当マニアックなシャンパーニュで、ノンドザらしく妥協的な甘さは
まったく感じられず、シャープな酸味とあとのミネラル感で直球勝負してくる。
まことに潔く、これを愛でる飲み手は相当シャンパーニュの手練れではないかと思う。
香りも妖艶で、明らかにエクストラ・ブリュットとの格の違いを見せつけている。

逆にいえば素人受けをまったく狙っておらず、開栓する際にはメンバーの顔ぶれを覗わないと、
滑ってしまうだろう。
これは1人でゆっくり飲むべき逸品である。
いかにラブワインさんが、超俗的な世界で遊んでおられるのかよく分かった。

我ながら最近シャンパーニュの世界にずぶずぶと入っていっている気がするが、
半年の間1本もシャンパーニュを飲まなかったら、今の鑑定眼?は保持できない、
というラブワインさんの名言にはまことに説得力がある。

ベレッシュはシャンパーニュ界のカール・シューリヒトだ、と今回のアンスタンから確信した。
ちょっと聴きかじった初心者に聴かせる音楽ではない。