初日だけ美酒・・グロのオー・ブリュレ | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る

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ミシェル・グロ ヴォーヌ・ロマネ 1er オー・ブリュレ 2003
購入日    2007年11月
開栓日    2011年1月2日
購入先    かわばた
インポーター ラック・コーポレーション
購入価格   6980円

新年の1週目は暇だったが、連休明けからものすごく寒いというのに、患者さんが増えてきた。
毎年最初は初診患者さんが多いが、今年も例にもれない。

ところで昨日朝、前教授から電話で吉報が入った。
いつもお世話になっている大先生が、某大病院の総長に就任内定だとかで、
これは非常におめでたい話である。

また、一昨日だったか、肺癌治療薬のゲフィチニブ(イレッサ)の副作用死に関する
訴訟問題で、裁判所が和解勧告を出し、原告側がこれを受け入れると表明していた。
争点は色々あって複雑で、この件に関して議論するつもりもないが、
被告である国とメーカーは、和解勧告を受け入れるかどうか、ちょっと注目している。

臨床試験時の有害事象報告が隠蔽無くきちんとなされたかどうか、などが問題かと
思われるが、発売当初には、臨床試験時には予測されなかった有害事象が発現する可能性はある。
これが予測できなかった、もしくは事前説明が十分なされなかったからといって、
どこまで被告の責任がが問えるのかどうか。

原告の主張には、以下の文章がある。
 b.不法行為(民法709)に基ずく責任
 致死的な間質性肺炎を発症する危険があることを知っていたにもかかわらず,あえてこれを販売し, 被害者を死亡させたことに対して,不法行為に基ずく責任を負う。

一医師として、この文章にある「不法行為」という文言には言い知れぬ違和感を感じる。
副作用を経験した原告の1人は、「一か八か、命に直結する副作用の薬は、あってはならない」
と発言しているとの記事もあった。

市販の感冒薬ですら、年間数人の副作用による死亡例があるとされるし、
抗生物質でもまれに致死的な副作用は出現する。
上記の原告の主張が100%正しいとしたら、世の中からクスリというクスリは存在しなくなるだろう。

以下はわたしの個人的な推測である。
 意図的な臨床試験データの改竄や隠蔽などがあったとは証明されず、
 添付文書に多少の不備があると指摘されたのではないか。
 原告である国とメーカーが和解案を受け入れない場合、
 億単位の損害賠償請求額より大幅に減額された金額が言い渡されると思われる。
 判決が出たら、毎日新聞などは鬼の首を取ったように、1面トップで国とメーカーを
 名指しで批判するであろう。
 その社会的ダメージを避けるため、被告は和解勧告を受け入れるかどうか。
 わたしは、きっと受け入れないだろう、と思っている。
 これは医療の不確実性に関する問題なのである。


さて、今年初めて開けたブルゴーニュである。
昨年なけなしの2002を開けたが、2003は初めてだと思う。

グロの1級ものは造りそのものがしっかりしていて、地味だが粘り強い果実がある。
ことにこのオー・ブリュレは、看板のクロ・デ・レアよりヴォーヌ・ロマネを感じさせる畑で、
多少は色っぽいのではないかと思っている。

この2003も期待を裏切らず、開栓早々からきりっとした酸に裏打ちされた黒系果実が
感じられる。
2002より僅かながら糖度が高く、このあたりにヴィンテージの特徴が出ているように思う、

開栓すぐから絶好調だなあ、と満足して飲んでいたら、ちゃんと落ちが付いてきた。
このワインのピークは開栓すぐで、当日には顕著には落ちないものの、
翌日には見るも哀れな落ちざまが明らかになっていた。

ありゃりゃ、これはどうしたことなんだ、と思ったが、これもヴィンテージの特徴なのか。
初日の美しさを知ると、決して造り手がドジをしたとは思いたくない。

このあとのヴィンテージ、特に2004は間違えて買いすぎたため数本ある。
遅開け好きのわたしでも、そろそろ開けていった方がいいかも知れない。

残る2003の1本は早々に開栓すべきか、それとも10年くらい置いておくべきか、
ジャン・グロの時代の同じワインだったら、長熟である可能性がもっと高かったのか、
なかなか答えのでない自問自答をしてしまう。