非凡ながら平凡 | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る


グロ・フレール・エ・スール クロ・ヴージョ・ミュジニー 2000
購入日    2004年12月/2005年2月
開栓日    2006年8月8日
購入先    かわばた
インポーター モトックス
購入価格   4980/5560円

グロ・フレール・エ・スールの看板ワインである。
これまで、多分2000と2001を2本ずつ開けている。
大当たりだったのは、今春に開けた2000の2本目のみである。
あとは、まあ価格なりに良いワインかなあ、というレベルであった。

この造り手は、リシュブールを筆頭に、エシェゾーも造っているが、別格リシュブールは別として、
畑の位置から言えばこのクロ・ヴージョ・ミュジニーの方が、エシェゾーより魅力的である。
しかし、残念ながらこのクロ・ヴージョ・ミュジニー、ボトルごとにずいぶん印象が異なる。

今回の1本は、3月のベストの1本には遠く及ばない。
しかし、もっと前に開けた2000の1本目より、ずっと美味しい。
開栓後から、それほど香りは飛ばないものの、グラン・クルの品格を堂々と主張している。

たおやかで繊細、しかも清楚で妖艶ではなく、ヴォーヌ・ロマネとは一線を画した世界がある。
もし、このワインが1本目だったら大いに感動し、もっと美辞麗句を並べ立てて賛美したに違いない。
しかし、あの3月の恐るべき深遠な広がりを持った1本と比較すると、何とも物足りない。

数時間かけて味わっているうちに、徐々に酸味が増してきて、薄っぺらさというか線の細さが
露呈してくる。
翌日もグラン・クルとして恥ずべきレベルまでは落ちていないものの、老けた名女優の風情であった。
そこで、残念ながら「神秘の液体」には達していない、非凡ながら平凡なグラン・クルであると
知るのである。

常に名演を要求されるオペラの名歌手、失敗の許されない名外科医、味わいのある演技をする名優、
それらはボルドーの1級レベルに求められる話である。
ブルゴーニュのグラン・クルに求められるのは、地道な努力に基づいた着実な演技ではない。

極めて偶発的であって再現性がない、希有な感動をもたらす天才のパフォーマンス。
これこそ最上のブルゴーニュしか期待できないものである。
そのためには金と徒労を惜しまない、という人種が世界にはある一定数存在するようである。

同時に購入した同じインポーターのワインでも、やっぱりここまで違う。
気まぐれな天才指揮者、ハンス・クナッパーツブッシュは練習嫌いの一発屋だったが、
ツボにはまるとフルトヴェングラー顔負けの感動的なステージを実現した。
これこそがブルゴーニュ・ワインの芸術性ではないか。

ハァー(溜め息)、つき合いきれません。
もうちょっと安定したグラン・クルは無いのでしょうか?