講演抄録 | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る

母校である高校の同窓会からトークリレーの演者を依頼された。
本番は今から約3ヶ月後だが、本日その抄録を書き上げたので、ここにアップしておく。
仕事の話はしないことにしているが、人前で話すのは、わたしの趣味であって仕事ではない。

本当はワインか音楽の話でもしたいところだが、あまり受けそうにないので、こうなってしまった。
わたしの日常の診療とは直接関係ない総論的な話で、たかが2時間で語るには
あまりに仰々しいテーマなのだが、当日は笑いをとることに専念したい。


「白い巨塔」今は昔~混迷する日本の医療はどこに向かうのか

かつては「白い巨塔」の財前五郎のように、大学教授に憧れ、精進してそれを目指す医師も多かった。
大病院の外科部長なども、医師にとって羨望の地位であったはずだ。しかし今では、
明らかに事情は変わってきている。

大学や大病院の勤務医には、独立開業などで病院を離れたがっている医師が増えており、
優秀な医師がどんどん一線の病院から退職している、という現実がある。
その結果、実際に日常診療に支障をきたす病院も出てきており、特に、麻酔科、小児科、産婦人科の
医師不足が深刻になっている。

毎年毎年8000人もの新しい医師が誕生しているはずなのに、どうしていつまでも医師不足は
解消せず、逆に医師不足に拍車がかかるのだろう。
経済的な面だけをみても、少なくとも最近までは、「医師の給料は高い」と、
マスコミは報道してきたのではないのか?
そんなに給料や待遇が良いなら、希望者が殺到してもいいだろうに。

医師不足だけの問題ではない。
現在のわが国の医療現場では、これまでになかったさまざまな問題が浮き彫りになってきている。

知る人は知るとおり、すでに多くの病院は破産寸前の経営状態に陥っており、
最小限の人員で、最低限の人件費で運営されている。患者の治療費未払いは急増しており、
それが病院の経営を圧迫するまでに至っている。

追い打ちをかけるように、この4月に医療費は3.16%切り下げられた。もしこれが5%だったら、
全国のほとんどの私立医大附属病院は倒産してしまうだろう、と言われているほどの数字である。

そして連日のように報道される医療過誤の記事。
それらはいっそうの医療不信を生み、ますます最前線の医師を追いつめる。

なぜこんなことになってしまったのだろう。そして、この先にあるのは何なのだろう。

混合診療の導入、国民皆保険の崩壊、外資を中心にした医療保険の民営化、
財ある者のみが高度な医療を享受できる格差社会・・・・

こんな時代だからこそ、医療者も患者も正しい情報を共有し、誰にとっても身近な問題である
医療を守っていかねばならない、と思う。

大学の基礎医学の研究者、大病院の外科系部長、そして開業医のすべてを経験した
一介の町医者のよもやま話が、その一助となれば幸いである。