だれが造ったの? | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る


Vicomte Bernard de Romanet(ネゴシアン) ミュジニー 1996
購入日    2005年春頃
開栓日    2005年12月31日
購入先    ピーロート
インポーター ピーロート
購入価格   ないしょ

ミュジニーと言えば、泣く子も黙るグラン・クル。
稀少さもさることながら、市場価格で対抗できる畑は、ブルゴーニュ全体でも数えるほどである。

思い出す造り手と言えば、畑の3分の2を所有するヴォギュエを筆頭に、ルーミエ、ルロア、
プリュール、ルイ・ジャド、ドルーアン・ラローズなどの名前が思い浮かぶが、
いずれも現在なら2万円以下ではまず買えない。

ところがこのVBRという、ピーロートお抱えのネゴシアンのミュジニーは、たたき売り状態で
価格は半額以下である。
ま、飲んでみようか、という軽いノリで購入。

実は1年半前にもこれは飲んだことがあって、まずまずだった印象がある。
ただこの時は10人で1本空けたので、少ししか口に入っていない。

ところが今回は、イガ味を伴って酸味も強い。
ほんの微かな臨終香?が感じられてイヤな予感がした。
約8時間を経ると、角が取れてまろやかになるが、何故か飲み手(わたし1人)を幸福にしない。

根底にあるどっしりした味わいは、そんじょそこらの安酒ではないぞ、ということを主張しているが、
味わいの要素が支離滅裂で統一感はまるで出てこない。
超1流オーケストラが、調律をさぼった上に、3流指揮者の棒の元、
ブルックナーの第7番を弾き出したかのようである。

本来はこんな音楽ではない。
チェロで奏される、オクターヴを越えて音階を駆け上がる優雅な第1楽章のテーマは、
深遠なブルックナーの宇宙へと誘うはずだが、ちっとも現世から飛び立てない。

翌日には、酸味は非常に強くなっており、もはやミュジニーの残骸と化していた。

ピノ・ノワールに王道無し。安物買いの銭失い。ブルゴーニュに掘り出し物なし。
犬も歩けば棒に当たる。

いくら畑がブランドでも、造り手の顔が見えないワインは、少なくともブルゴーニュでは
選んではいけないのである。
これまでいくらでも痛い目をしてきたのに、いまだに懲りない自分を反省している。
もう買い込んでしまった酒の中に、こういう駄酒はどれほどあるのだろうか。

ま、考えないでおこう。