2024 世界選手権 感想 | 閉じた眼

閉じた眼

40年以上愛好するフィギュアスケートに関する自己流観戦コラムです。
(趣味で集めた情報を提供することがありますが、最新の情報でなかったり正確でないこともあります。あらかじめご了承ください)

世界選手権が終わりました。

 

いつも、試合の演出にも目が行く私目ですが、

 

表彰式でのアカペラ、生演奏の優勝者国歌合唱は、私が知る限り初の演出で、よかったですが、

 

それよりも何よりもよいなと思ったのが、

 

会場の客席。

 

ものすごく傾斜が急な配置になっていて、そのために観客の姿がよく見えて、反応がよく見えるのがいいなと思いました。

 

日本だとアリーナ席とスタンド席が分かれていて、上の方の席はリンクからかなり離れてしまうのですが、

 

今回の会場は、リンク間際の席からずっとつながっている席で、

 

スタオベも各列のお客さんが立っているのとか、立っているだけでなくて手を振ったりとかが、良く見えて、いい会場だなと思いました

 

(ペアの試合で、リフトの時に手を振っているお客さんがいました)

 

それでは、各種目、結果の感想や、印象に残った演技などです。

 

クローバーペア

驚異のカナダアラフォーペアの優勝!

 

ショートで1位はありえても、フリーでもほぼノーミスの演技は予想外でした。

 

大体ベテランになるとショートはいいけど、フリーでは、、、というパターンが多いのですが、

 

長いシーズン、GPシリーズも、四大陸もフル出場で、世界選手権のあの演技は特に脱帽です。

 

私的ポイントは、あの中国ペアしかやらないフォワードアウトサイド・デススパイラルで、昨シーズンでは男性がピボット姿勢がとれていなかったのが、今シーズンはしっかりピボット姿勢を取っていて、女性も変形姿勢で、昨シーズンより低い姿勢になっていて、この成長が、今シーズンの躍進につながったのでは思います。

 

そして、日本三浦&木原組の復調もサプライズでした。ショートを見た時は、2位だけれどもサイドバイサイドもスロージャンプもクリアーでなくで、やっぱり厳しいかな、フリーで表彰台も危ないのではとおもいましたが、

 

フリーでは、会心の演技。

 

特に、ツイストリフトが、彼らの中で一番の出来栄えだったのでは思います。

 

そしてスケーティングは、他の組の追随は許さないほどの特別なクオリティーで、

 

フリーのサイドバイサイドのサルコウのパンクがなければ、逆転できていたかもしれないですが、

 

でも、四大陸の時の出来を見ると、あそこまで戻してきたのは、さすがというところです。

 

他にペアで印象に残った演技といえば、

 

アメリカカム&オシェア組のショート、エデンの東。要素の間に入っているいろいろな小技が、音楽の雰囲気にとても合っていて引き立てていて、印象に残りました。この大会ではスロージャンプに苦戦はしていたみたいで、順位は振るいませんでしたが、

 

フリーでは、ゴルベワ&ムーア組のシェルブールの雨傘が印象的でした。音楽が盛り上がる後半でのリフトの連続が、ものすごく音楽とスケーティングとリフトとお互いに引き立て合っているような、すばらしい振付で、感動しました。それから、女性のあのピンクの衣装がなんともデザインが素敵だなとシーズン通して見ていました。

 

赤薔薇女子

ショートを見た時は、ひょっとしてから初女王???

 

と思えるほど、ルナ・ヘンドリックスの演技は素晴らしいものでした。

 

フリーで崩れてしまったのは、残念ですが、

 

やはり、思っても見なかった「優勝」がちらついてしまったんでしょうかね、

 

でも、個人的には、スピンで見せ場があるルナ・ヘンドリックスの演技はとても好きで、

 

順位はともかく、クリーンなフリーの演技が見たかったでした。

 

ショートでは、まさかまさかの演技となってしまった日本坂本花織選手ですが、

 

フリーではさすがの演技でした。昨年はパンクしたフリップのコンビネーションもばっちり決めての、

 

フリーだけでは圧倒的な演技で優勝でした。

 

今シーズン不調だった、アメリカイサボー・レヴィトは、最後の最後で調子を戻してきたのは、よかったですが、

個人的には、ヘビダンスのショートを見たかったですが、変えたことで復調で来たんですかね。。

 

北京オリンピック以降、不調が続いていた韓国ユ・ヨンも、久しぶりにダイナミックなジャンプが見れました。来シーズン以降に活躍してくれること期待です。

 

他に、印象に残った演技といえば、

ジョセフィン・タルジェガード、ショートが特に音楽に合わせて緩急をつけたスケーティング、要素の間に盛り込んでいる小技、見ていて「作品」を見ているような演技でした。

 

オルガ・ミクティナ、以前見ていて「フィギュアスケーターではもったいない」という感想を持ったスケーターで、上体の動きから音楽が飛び出してくるような素晴らしい身体表現力をもったスケーターと言うか、ダンサーのような選手で、とても才能に溢れた選手なのかなと思い、そういう選手にありがちな、ちょっと凡ミスみたいな、スピンで乱れてしまったりというのが惜しいなという感じはしましたが、それでも、あの身体表現は、なかなかないなと思いました。

 

ヒマワリアイスダンス

アイスダンスは、時間的にリズムダンスもフリーダンスも深夜になってしまい、一部ライブで見ましたが、ほとんどは後追いとなってしまいました。

 

リズムダンスもフリーダンスも最終グループはライブで見ることができたので、まずは昨年の表彰台3組のトップ争いの感想です。

 

リズムダンスは、今シーズン、選曲、プログラムが気にいているカナダギレス&ポワイエ組なのですが、世界選手権の演技は、これまでよりも状態の動きが強調されて、よりアピールするものになっているように見えたのですが、音楽と合わない、何だか違和感を感じる演技でした。曲調からして、あまり動かないで緩くビートに乗せるようにゆするような動きが合うように思えて、シーズン序盤はその雰囲気が好きだったのですが、なんだかバレエっぽい(その意味では、ラストのポーズもバレエっぽく、違和感が最初からありました)動きで、妙で、私的には残念でした。

 

その点、イタリアギニャール&ファッブリ組の方が、音楽のイメージと動きがピッタリ合っていました。

 

最後に登場したアメリカチョック&ベイツ組は、終始無理のない自然な滑りで、

 

ネットでは、リズムダンスと言えるパフォーマンスはチョック&ベイツ組だけだったという人もいるぐらいでしたが(人によっては、それに+スマート&デュデク組、アメリカキャリエラ&ポノマレンコ組)、、

 

ナンバーワンに値する演技だったと思いました。

 

リズムダンスでは、私がハートアメリカブラッティ&ソンバービル組が、まさかの予選落ち。。。、結果を知ってから後追いで演技を見たら、とても生き生きと輝いた素晴らしい演技の連続で、後半のツィーズルも無難にまとめて、「え、、この演技でなぜ??」と思った瞬間に、ソンバービル君がまさかの躓き、要素の途中だったので、要素として成り立たなかったらしく0点。OMGえーん

 

来シーズン、また頑張って代表になって、リベンジしてほしいです。

 

リズムダンスでは、他にもタシュレロワ&タシュレー組、カナダボードリー&スアアンソン組もミスや転倒があり残念でした。

 

リズムダンスで、他に印象に残った演技といえば、

 

フランスロパレワ&ブリソー組の南仏の海岸沿いで見るような衣装に、何ともロボティックな動きの組み合わせが不思議な味わいで、今シーズンハマりましたが、世界選手権でもこの摩訶不思議な魅力満載の演技でした。

 

フリーダンスでは、プログラム的にはアメリカチョック&ベイツ組のピンク・フロイドの方が、個性的だと認めつつも、カナダギレス&ポワイエ組の嵐が丘のドラマに圧倒されました。

 

「音楽が、ドラマティックすぎる」という声もありましたが、

 

坂本龍一さんの音楽の力と、二人の役のなりきり、醸し出す雰囲気は心をがっしり掴むものがあり、

 

フリーダンスだけでも1位となったのは、私的には嬉しかったです。

 

この2組に比べると、イタリアギニャール&ファッブリ組のフリーダンスは、何だかおとなしくて印象が薄く、

 

或いはスケートは彼らの方がトップ2組よりうまいのかもしれませんが、

 

順位は私の印象に一致するもので、スッキリとした結果でした。

 

他に、フリーダンスで印象に残った演技といえば、

タシュレロワ&タシュレー組、スケーティングが印象的で、今までのアイスダンスのイメージと違うものを見せてくれる組で好きなのですが、今シーズンは怪我があったのかあまり試合に出ていなくて、見る機会がなかったのですが、「この組のスケーティング、私は好きだー」と再認識させられました

 

ムラスコバ&ムラゼク組 フリーダンスでは、たまたま彼らの前にあの何かと話題のデイビス&スモルキン組で、2組共音楽が「白鳥の湖」でした。の演技から何の印象もなかったですが(白鳥の湖らしい演技は私には一つも見えず)、ムラスコバたちのフリーダンスもシーズン中何度か見ていたものの、昨シーズンの仮面の男に比べると印象が薄いというイメージを持っていました。それで、あまり期待していなかったのですが、彼らの力強いスケーティングとチャイコフスキーの音楽のパワーが合致するのが見受けられました。この組もこれから楽しみなカップルだなと思いました。

 

の2組は東欧圏でありがちの男性と女性で苗字のスペル、発音が違うのですが、2組共兄妹組で、どちらもこれまでのアイスダンスにない個性とかスケーティングとか見せてくれていて、今後が楽しみです。

 

のアイスダンスと1970年代に世界選手権で4位くらいまでになった組、レハコワ&ドラスチッチ組(読み方不確か)がいましたが、素敵なタンゴのプログラムを滑る組で好きだった記憶があります。彼ら以来の活躍できる組になってほしいですね。

 

セキセイインコ青男子

男子は、私的には天国と地獄を味わうような試合となり、少し(かなり?)落ち込みましたが、

 

何はともあれ、

 

ショートプログラムの第1滑走者から4回転が飛び出してきて、しかもきれいに決めてきて、ビックリビックリです。

 

この選手、17歳の選手で、とてもポテンシャル高そうです。アルメニアというと以前、とても個性的な動きをする男子選手がいたのを記憶していますが、

 

セメン・ダニラントと読むのか、、名前を覚えておこうと思います。

 

ショートで、印象に残った演技といえば、

アレクサンダー・セルヴィコ、中東モノ音楽を扱いつつ、衣装はシンプルな黒で、でもだからこそ独特の動きが強調されたような、素敵で訴えかけるものもある演技でした。

 

日本鍵山優真 ずっとPCS9点台は高すぎるのではと思っていましたが、この日のショートはそれに値する演技にずいぶん近づいてきたと印象付けました。迫力は全日本の時の方があったようにも思いましたが、より洗練された演技を見せてくれたと思いました。

 

日本宇野昌磨 冒頭の4回転フリップが抜群でした。見ていてスケーティングから音楽があふれているような演技、まさに珠玉、宝石のように輝く演技でした。ステップシーケンスはグランプリシリーズの時の方がグッとくるものあったようには思いましたが、とてもいいものを見て、幸せな気分になれました。

 

さて、ショートのジャッジ別の得点で、のジャッジがマリニンにPCS8点という大変低い点をつけていて、「このジャッジはマリニンを憎んでいるのか?」とコメントする人がいましたが、

 

私からすれば、だけがまともというか、それでも高すぎるのではと思うぐらいで、9点台をつけているジャッジの方が頭がおかしいのではと思わざる得ないですけれど。。

 

(私はマリニンを嫌いでも憎んでもないけれど、彼のスケートからはジャンプの難度の高さと時折見せるアクロバティックな動き以外に何も感じるものが。。。)

 

フリーで、マリニンが異次元のジャンプ構成で圧勝、歴史に名を刻みましたが、

 

これって、私的にはフィギュアスケートの素晴らしさを目の当たりにした瞬間と呼べるものではなかったです(その瞬間はショートの宇野選手や鍵山選手にむしろありました)。

 

ジャンプだけを取って見ても、

 

フランスアダム・シャオ・イム・ファの超体操的なジャンプの連発や、

 

(まるでロイター版を使って飛び上がったかのような、跳馬のようなジャンプ)

 

日本鍵山優真選手のスケーティングから繰り出す流れるジャンプ、

 

の方が、私的には見ごたえありました。

 

なので、最高難度のジャンプ構成をすべて片足でおりたのは素晴らしいけれど、、、、、

 

という感じです。

 

マリニンは、ショートはシーズン前半にはものすごく闘牛士らしい立ち振る舞いで、まっすぐな足のラインとかとても印象に残っていたのですが、

 

何でもオフシーズンに、ちゃんとフラメンコのダンサーについて所作を教わっていたそうで、

 

世界選手権では、その所作はどこか行ってしまった、またジャンプだけ(しかも決めるだけのジャンプに見える)の選手になってしまい、私的には残念です。

 

ショートでは、四大陸では復活の兆しを見せていた中国ボーヤン・ジンの失速、リトヴィンツェフ様の予選落ちにはショボーンショボーン

 

そして、ショートで輝いていた宇野選手のフリーの失速は、ショックでしたけれど、

 

ベテラン選手がショートでノーミス、フリーで失速は、これまでもよくあるパターンで、

 

宇野選手は4回転3種以上のフリーで一度もノーミスしたことはないし、

 

トップ4がノーミスであれば、構成とジャンプの質で宇野選手が4位になる可能性は高かったので、

 

驚くことも落ち込むこともないのですが、

 

練習の映像で、とても軽やかで柔らかい着氷の4-3のコンビネーションを見たり、ショートの出来栄えから、

 

「ひょっとしたら」と期待してしまいました。

 

優勝できなくても、メダルはと期待してしまったのですが。。。

 

実はライブで見た時は、フリップをステップアウトしたところで、もう見ていられなくなってしまい、音だけ聴いて、後で演技を改めてみたのですが、

 

ジャンプのミスはともかく、風を感じるようなスケーティングはやっぱり珠玉で、ジャンプはあまりよくない出来が多かったものも、4分間の演技があっという間に終わってしまいました。

 

願わくば、来シーズンも競技を続けてほしいです。

 

一方、鍵山選手のフリー、クリーンなフリップは感動しました。演技全体の印象としては、ショートの方がよかったけれど、銀メダル獲得は嬉しい結果です。

 

他に、フリーで印象に残った演技といえば、

アメリカジェイソン・ブラウン、全米選手権で見た時はジャンプが不安定、演技自体も何だか印象薄でした。ショートでも、トリプルアクセルの助走の長さが気になったり、プログラム的に今一つな印象をもちましたが、フリーでは、トリプルアクセルの助走の長さはやはり気になるものの、全体として真摯なメッセージが伝わるような、さすがの演技でした。彼は来シーズンも競技を続けることを公言しているので、楽しみです。彼がアメリカの代表になりづづけられるアメリカ男子のレベルを危惧する声はありますが、こちらとしては、その状況はありがたい。マリニンは一人だけで充分です。

 

ドノバン・カリージョ 見ていて気分が明るくなるキャラの選手で、ずっと好感を持ってみていますが、この大会では、キャラだけでなく演技でも見せてくれました。力を抜いた、ラティーノらしい所作が素敵で、その中でジャンプも決まって、ここ数年で一番良い演技を見せてくれたのではないでしょうか? 来シーズンからグランプリシリーズにも出てくるようになるといいですけれど。

 

さて、世界選手権も終わり、今シーズンは国別対抗戦もないので、大きな試合は終わりです。

 

ところで、ここ数年に英語のつぶやきやソースや記事を見て気になっていることで、

 

この世界選手権の間特に気になってしまったことがあるのですが、

 

数年前自身のブログでフィギュアスケートの英語というテーマで記事書かせていただき、

 

その中で、フィギュアスケートは英語ではFigure SkatingでSkateというと名詞ではスケート靴を意味するということを書いたのですが、

 

ここ数年、英語圏の人々の間では、skatingではなく、skateと書く人が急増し、

 

この世界選手権の間でも、 Free Skateとか、Bast Skateとか目につきました。

 

ingをやめて、動詞=名詞にするというのは、英語の長らくの傾向であるものの、

 

私には、妙に違和感です。

 

ISUの公式サイトに、Figure Skateというタグができたりするときが来るのでしょうか?

 

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