2024世界ジュニア 感想 | 閉じた眼

閉じた眼

40年以上愛好するフィギュアスケートに関する自己流観戦コラムです。
(趣味で集めた情報を提供することがありますが、最新の情報でなかったり正確でないこともあります。あらかじめご了承ください)

ついこの間、四大陸が終わったと思っていたら、もう世界ジュニアが始まっていました。

 

仕事やらピアノの練習やら家事やらに終われて、梅が見ごろの季節で梅園に行ったりと、

 

なかなか見る時間がとれず、後追いの後追いでやっとFODの見逃し配信で見終わりました。

 

とはいえ、全滑走はギブアップで、ペア以外は後半グループだけ見ました。

 

ほとんどはライブでなく結果を知ってからの観戦だったので、食事しながら見たり、演技のあとのスコアが出るまでの時間や6分間練習の間は洗い物や家事をしながらのせわしない観戦となりました。

 

ビデオなので早送りしてもいいのですが、演技の後次のスケーターまで少し時間があった方が私は好きなのと、テレビで見る場合はアップルTV経由で見ているのですが、早送りのリモコン操作がテクニック要なので、あまり早送りはしないでオンタイムで見ました。

 

見ていて、観客の少なさがとても目を引きました。さすがに女子のフリーの時はだいぶ入っていましたが、ペアやアイスダンスの時はガラガラもいいところで、運営は大丈夫なのだろうかと思ってしまいました。

 

日本でやればもう少し観客入りそうですが、そういえば、日本で世界ジュニア選手権というのは、かなり長い間開かれてないような気がしますね。大きく集客が見込めるグランプリファイナルと世界選手権を狙って、世界ジュニアや四大陸は立候補しないのでしょうか?? 

 

日本開催の世界ジュニアというと昔、伊藤みどりさんが、当時は世界ジュニアの上位3位に入れば年齢制限でシニアの試合に出れない選手もオリンピックや世界選手権に出れるというルールがあり、札幌で開かれた世界ジュニアで見事3位(ジャンプでは飛びぬけた存在だったけれど、当時はコンパルソリーがあったこともあり、ショート、フリー1位となりつつもギリギリの3位に終わっていました)となって、出場権獲得したという試合を思い出しますが、それ以降、日本で世界ジュニアってあったっけ??

 

ネットで調べたところ、やはりありませんでした。1984年札幌で開かれた大会(当時は3月でなくで11月か12月にやっていましたね)が日本で開かれた唯一の世界ジュニアでした。

 

日本は、この先も世界ジュニアだけでなくISUの選手権はまったく立候補しておらず、2019年、2023年と世界選手権を開催して、もう十分なのか。オリンピックシーズンのグランプリファイナルをいつも開催してきましたが、前回コロナで中止となり、次回のオリンピックシーズンのファイナル開催に意欲あるのかも不明です。

 

話がそれましたが、それでは世界ジュニアの各種目で印象に残った演技などです。

 

クローバーペア

ペアは、唯一全滑走見ました。一番好きな種目であるし、出場組も少ないというのもあるので。

 

優勝は予想通り、メテルキナ&ベルラヴァ組で、ショートのラテンナンバープログラムは圧巻の出来栄えの一方、フリーはミスが多く、残念な結果でした。

 

一方2位に入ったアメリカフロレス&ワン組は、コーチの名前を見てびっくり。アルベール・オリンピックのペアチャンピオン、ミシュクテノクさんの名前があり、キスクラにもしっかり座っていました。ミシュクテノクさん、リレハンメルの後に引退、その後アイスホッケーの選手と結婚して、パートナーのドミトリエフが別のパートナー、カザコワと組んで現役を続けて、長野オリンピックチャンピオンになったということもあり、アイスショーに出たりすることもなく、コーチになって出てくることも今までなかったので、驚きです。少し前に、彼女に関する記事を読んだ気はしました。これからコーチ業に力を入れていくようなことが書いてあったような。。

 

このペアは、ジュニアグランプリシリーズにも出ていて、ファイナルにも進んでいたのですが、演技に記憶ないのですが、今回見て、

 

私が歴代ペアチャンピオンの中でも一番のお気に入りと言っていい、G&Gとどっちがベストか悩み、一生かかっても結論は出ない、ミシュクテノク&ドミトリエフ組を少し思い出させるような振りが入っていました。特にコレオシーケンスで女性がクレムキン・イーグルをやり、男性がスパイラルをやる部分とか、モスコビーナ・ペアっぽいなと思いました

 

そして、日本清水&本田組は、ペアの要素はまだまだ発展途上なのは明らかですが、二人のユニゾンスケーティングにビビビときました。最近では、世界トップでも、ユニゾンスケーティングで一体感が感じられることはなかなかないのですが、久しぶりにそういうスケーティングを見た気がします。

 

今シーズンは、アメリカモホワ&モホフ組のユニゾンスケーティングにビビビときて、2度目のビビビが、日本ペアからというのは嬉しい発見です。また、サイドバイサイドのトリプルルッツは、まったくスピードが落ちないまま踏み切ってのジャンプで、見ごたえありました。シーケンスが欲張りすぎ?で着氷乱れたのは残念でしたが。

 

個人的感想では、このペアのユニゾンスケーティングの一体感が軽視されてきたのは、モスコビーナ・ペアの登場からかなという気がします。以前はソ連のペアというのは元軍人コーチの指導の元一糸乱れぬ同調性があったのですが、このユニゾン重視のモスクワ派のペアでは世界で勝てなくなり、派手な振付のモスコビーナコーチのペア(当時レニングラード派とか呼ばれていたと記憶)が世界の舞台で活躍するようになり、元々ユニゾンは重要視しないアメリカのペアも個性が広く認められるようになっていく、今の流れに到達してきたような気がします。

 

けれど、ここでまたユニゾンスケーティングで個性を出せるペアがポツポツ現れてくると、ペア・フェチの私にはとても嬉しい動向です。

 

JGPシリーズで活躍していたシェロヴァ&ホブタ組ですが、昨シーズンより力強さが増したと思う一方で、体調が悪いのか、環境の問題で練習があまりつめていないのか、靴に問題があるのか、メンタルの問題があるのか、何かどこかアンバランスで集中力を欠いているような演技が、残念でした。何となく応援したくなるペアなので、来シーズン以降も競技活動継続、上向きになっていくといいなと思います。

 

ペアといえば、日本長岡&森口組は、2回目のミニマムスコア獲得のチャンス、チャレンジカップに出場しましたが、またしてもショートでは獲得できず、世界選手権には出場できないようです。世界選手権のエントリーリストには三浦&木原組の名前のみでした。プロトコルを見るとスロージャンプが抜けてしまったみたいで、全日本の時のような演技ができていれば、ミニマムスコア獲得確実だったと思うんですが、残念です。しかしながら、四大陸のミニマムスコアは獲得できたようで、来年は少なくとも四大陸には出られることになりました。

 

赤薔薇女子

こちらも、ある意味本命の日本島田麻央選手が優勝!2位3位はジュニアグランプリファイナルと同じとなりました。

 

島田麻央選手のショートは、今シーズンベストの演技ではと思いました。結果として2位となったのには驚きました。1位となった韓国ジア・シンの演技より、ずっとよかったと思ったのですが、特にステップシーケンスの躍動感が、素晴らしかったです。

 

プロトコルを確認すると、コンビネーションジャンプのフリップでエッジのアテンションがついてしまったのが、僅差の2位になった原因でした。

 

一方フリーでは逆転して優勝しましたが、フリーでは逆に、ジア・シンの方がよかったような気がしました。最後のスピンでちょっと乱れたのが残念ですが。

 

そして、日本上園恋奈選手が、みごとフリーで挽回して銅メダルに!

 

しかし、演技の全体の印象としては、フリーはなんだか音楽と振付と演技とがバラバラな印象があり、ジャンプの失敗はあったもののショートの方が、プログラムのテイストが伝わるような演技だったかなとは思いました。

 

そして、女子で私の目線を釘付けにしてくれたのは、メダリストではなく、フランスステファニア・グラッキ

 

JGPシリーズにも出場して4位になったこともある選手のようですが、初めて見て、

 

ショートプログラムは、今シーズンの女子のプログラムで私の中でベストと言っていいほど、気に入りました。

 

曲は、難局中の難曲といわれるラベルの夜のガスパールから第1楽章オンディーヌで、絶え間ない水の音を聞いているような、キラキラした響きの中での演技している彼女もキラキラして眩しい、、、なんて思いました。まさにオンディーヌ(水の精)の演技を見た気分になりました。

 

フリーのピアソラのプログラムも素敵でしたが、なんといっても、オンディーヌが最高でした。

 

この演技を見るのが最初で最後になってしまうというのが残念、来シーズンも継続してくれること期待です。

 

ヒマワリアイスダンス

アイスダンスも優勝は本命、ジュニアグランプリファイナル出も優勝したアメリカネセット&マルケロフ組でした。この組の演技は、シーズン通して、私にはピンと来ないものでしたが、今回のリズムダンスで、音楽やプログラムの印象は薄いものの、スケーティングには目を引くものがあるなと思いました。おそらくスケーティングの技術力という点で、ジュニアの中では飛びぬけた存在なのかなと思います。スケーティング技術が長けている選手は、振付やプログラムの奇抜さで勝負せず、オーソドックスな題材で勝負する傾向ってありますよね(美人は化粧する必要がない)。

 

とはいえ、素人目で鑑賞する側としては、フリーダンスは、トカチェンコ&キリアコフ組のゴーストダンスの方が断然よかったです。1990年代のデュシュネー兄弟が初めてこの南米の失踪事件を題材にしたコンテンポラリーダンスの曲を使って、その振付をしたのがトービル&ディーン組のディーンで、トービル&ディーンとしてもアイスショーでこの曲を滑ったりしていて、いろいろフラッシュバックするところがありました。

 

そして、上位以外でも、正に「型破り」という言葉が思いつく日本岸本&田村組、女性がアイドルスターのような存在感のフランスモーデン&ビゴ組、異色な存在のクドリャーフエツェヴァ&カランケビッチ組、と、かつてはジュニアのアイスダンスというとパスしていた私ですが、楽しみなカップルがいろいろと出てきました。

 

セキセイインコ青男子

男子だけが、予想外、いや、予想通り?

 

今回世界ジュニア予想の記事はパスしてしまったのですが、

 

男子はハッキリ言って本命不在でした。

 

とはいえ、今シーズンジュニア男子の最高得点を出していた韓国ソ・ミンギュが優勝したのは、ある意味妥当な結果だったかもしれません。

 

ソ・ミンギュは、JGPシリーズで最高得点を出していましたが、もう一つ出ていたJGPで5位でジュニアグランプリファイナルには出場できていませんでした。

 

ジュニアグランプリファイナルで優勝した日本中田璃士選手は、優勝候補の一角といえましたが、ショートもフリーも優勝したい気持ちが強すぎて力んでいるのか、どちらも小さなミスが目に付く、あまり見ていて楽しめる演技ではありませんでした。

 

優勝したソ・ミンギュの演技も、何だか私にはピンと来ない、ビビッと来る瞬間はありませんでした。ジャンプも別に、スピンも別に、演技も別に、、別に別にが続いてしまいました。

 

二人共、島田麻央選手と同い年で、この先オリンピックシーズンまでジュニアで競い合うことになります。女子に比べると男子というのは、年齢改正がある前から、17歳くらいまでジュニアをメインで競技活動するのが普通であり、15歳の男子の世界ジュニアチャンピオンとか、1,2位とも15歳という若いジュニア選手で占めたというのは、近年ではあまりなかったような気がします。

 

ウィキペディアの世界ジュニアメダリストから見ていたら、2010年の羽生選手が15歳で世界ジュニアで優勝していました。それ以前は、15,16歳の世界ジュニア優勝というのは普通にあったように思います(ヤグディン、プルシェンコの時代からさかのぼって考えて)。羽生選手もそうでしたが、世界ジュニア優勝の後すぐにシニアにあがったものの、シニアで活躍するまで何シーズンかかかるというパターンが多かったような(ヤグディン、プルシェンコは例外的にすぐにシニアでトップになりましたが)。

 

これまで、世界ジュニアで優勝したりメダルを取るとシニアに上がるのが男女とも定番だったのが、今回の年齢改正で、世界ジュニア優勝者がその後2シーズンも連続してジュニアで競技をつづけるのが、モチベーションとしてどうなのか。見ていると、ジュニアのタイトルよりシニアに早く上がりたいという選手が多いので。ネイサン・チェンは全米選手権での怪我で、世界ジュニア出場できませんでしたが、世界ジュニアのタイトルには未練は全くなく、翌シーズンシニアにあがりました(ジュニアグランプリファイナルの優勝でGPシリーズのアサインメントがもらえるのも、シニアに上がる後押しにはなったとは思いますが)。

 

脱線してしまいましたが、今年の世界ジュニアの男子の演技に話を戻すと、

 

私的に印象に残った演技といえば、

 

何と言ってもアルレット・レヴァンディ、ショートもフリーも音楽に合わせた緩急をつけた演技で、スケーティング、スピンが素晴らしかったです。彼のPCSが低すぎるといつも不満で、今回も低いとは思いますが、全体の中ではPCSだけでは2位、1位をつけるジャッジも何人かいたというのは、嬉しいです(私の中では圧巻の1位ですが)。それでも、「フィギュアスケートはジャンプだけではない」信奉者の私から見ても、この試合の彼のジャンプは不安定さが目に付きました。4回転、トリプルアクセルと大技をもっていないので、安定したジャンプを揃えたいところだったのですが、何かコンディション不良があったのでしょうか?彼のコーチでお母さまのアンナ・コンドラショワさんも現役時代はジャンプが得意という選手ではありませんでしたが。

 

一方、ショートではミスが出てしまったものの、フリーではジャンプが光っていたと思ったのが、日本中村俊介選手でした。冒頭の4回転、この試合で一番の大技ジャンプだったのではと思います。他にも4回転決めた選手はいますが、中村選手が一番見栄えがしました。トリプルアクセルで転倒したのは残念ですが、ジュニアの中では年長らしい演技という印象がしました。

 

フリーで光っていたといえば、アダム・ハガラ、彼もシニアに近い演技を見せてくれて、中でも、膝をついてからのトリプル・フリップからのシーケンスはしびれるジャンプでした。膝をついてからのフリップジャンプは、ドミトリ・アリエフがジュニア時代に得意技としていましたが、アリエフより見ごたえあるジャンプでした。

 

ところで、このアリエフと同年代でジュニア時代から競っていたアレクサンドル・サマリンが最近引退を発表しました。個人的には好きな選手だったので、残念です。

 

世界ジュニアも終わって、あと残る大きな試合は世界選手権だけとなりました。

 

世界ジュニアの採点や成績を見るにつけ、やはり大技よりクオリティーが重視される傾向が見て取れました。これが、世界選手権でも見られるのかなと思いました。クオリティー重視はいいけれど、ジャンプのクオリティーが、PCSに直結する傾向は私はウェルカムでないし(演技の印象って、ジャンプより時間を要するスピンやステップとかスケーティングの方が大きな割合を占めるように思うのですが)、難度の低いジャンプをキレイに決めた選手より、大技を決めた選手に優勝してほしいと思うのですが。。。