四大陸選手権が終わりました。
グランプリファイナルに続いての中国での開催です。
昨シーズンはグランプリシリーズを含めて、国際試合が全くなかった中国ですが、
今シーズンは、上海トロフィー、グランプリシリーズ、グランプリファイナル、四大陸と、
開催ラッシュです。
中国でフィギュアスケートがどれほど人気があるか、よくわかりませんが、
今は、オリンピックでメダル候補になりそうな選手もいない中、
国全体でどれほどフィギュアスケートの振興に力を入れているのかよくわからない中
(日本や西欧諸国と違い、国の方針がスポーツ振興に大きく影響を与えそうなお国柄)
これほど熱心に開催するのに、少し違和感を感じてしまいました。
さて、この四大陸選手権で目に付いた試合進行といえば、
コロナ以降、フリーの滑走順は、ショート / リズムダンスの順位の逆順という定番でしたが、
四大陸では、滑走グループは、ショート / リズムダンスの順位の逆順で決められてましたが、
グループの中の順番は、ランダム、抽選で決められていました。
このやり方は、ユースオリンピックでも採用されていて、
調べてみたら、ヨーロッパ選手権でも採用されていました。
となると、世界選手権もこのやり方が取られるのでしょうかね?
ISUのドキュメントをチェックしたり、思い返すと、コロナ前に一度、グランプリシリーズ以外の試合ではフリーの最終グループの滑走順は、1-3位、4-6位の選手の中で抽選で決めるというルールがあって、コロナ対策の為にフリーの抽選は行わず、グランプリシリーズのようにショート / リズムダンスの結果の逆順で行うようにしていたのだったかな、、で、今シーズンになって元々のやり方に戻ったということのようです。
個人的には、グランプリシリーズのような滑走順の方が、試合的には盛り上がるような気がするのですが、どうでしょうね??
四大陸は、FODで、男女シングルとアイスダンスは、後半2グループくらい、ペアは全滑走見ました。
結果の感想、印象に残った演技などです。
女子
千葉百音選手が、ショートとフリーノーミスで揃えて、初優勝!
仙台を離れて、木下グループの浜田コーチの元に移籍した成果が出たというところでしょうか?
本人はとても緊張していたのか、演技前の硬い表情が印象に残ってしまいました。
グランプリシリーズでは、なかなか調子が上がらない時もあったので、全日本に続けての好調キープはよかったと思う一方で、
シングル選手の四大陸優勝には、バッドラックがつきまとう(世界選手権で失速、あるいは翌シーズン不調)という、これまで観戦してきての印象があるので、この優勝で気負わず、上には上がいるという気持ちで練習を続けてもらえるといいですが、、、
千葉選手の優勝と同じくらい嬉しかったのが、渡辺倫果選手のトリプルアクセル復活&表彰台。
音楽表現という点では、際立った存在感を見せてくれたのは、三原舞依選手、特にショートの戦場のメリークリスマスは、繊細な表現にこちらも心を洗われるような、素敵な演技でした。
他に、印象に残ったといえば、NHK杯でサプライズ優勝したエヴァ=マリー・ジーグラー、彼女のジャンプ、演技のパワーは、大技も、フリーではトリプルトリプルもないのに、圧倒されるものがありました。
昨年四大陸優勝のイ・ヘイン(彼女の今シーズンの不調を見ても、やっぱり四大陸優勝はバッドラックと思わざる得ないのですが)も、ジャンプは不調でしたが、プログラムは今までの彼女にはなかった曲調の音楽を使って、表現という意味では昨シーズンより見ごたえのある演技にもなっているように思いました。四大陸優勝&世界銀メダルの呪縛が早く解けるといいなと思いました。
ペア
世界チャンピオン三浦&木原組の復帰戦で注目されました。
四大陸のペアというと、北京オリンピックチャンピオンのスイ&ハン組が、しばしば女性のスイの怪我でグランプリシリーズ欠場して、四大陸でいきなり出てきて目の覚めるような演技をして優勝!ということ何度かあり、
当時のライバルでもあった、デュハメルはTSLで、「スイ&ハンがいきなり出てきて、、」とこぼす場面も、
三浦&木原組にもそんな復活劇を期待しましたが、、、
違っていました。
とはいえ、
今シーズン、初めて音楽を表現しているペアを見たという感想を持ちました。特にフリーで。
セリーヌ・ディオンのフランス語のバラードを使っていましたが、
日本語の、JPOPの曲にした方が、彼らの表現にマッチしていたのではと思いました。
彼らよりミスの少なかった、驚異のアラフォーペア、ステラート=デュデク&デシャン組の優勝には異論ないし、彼らのフォワードアウトサイド・デススパイラルは惚れ惚れしますが、
(フォワードアウトサイド・デススパイラルといえば、全米選手権で2位となったエフィモワ&ミトロファノフ組がフリーで実施していたのですが、よくエッジの向きを見ないとフォワードアウトサイドとは分からないような、エフォートレスな実施で、こちらはこちらで驚異的でした)
PCSは、三浦&木原組の方が評価されるべきだったのではと思いました。
世界選手権に向けて、調子を上げていってくれるといいのですが。。
ペアで他に印象に残ったといえば、 ゴルベワ&ムーア組のフリー。
サイドバイサイドのトリプルトリプルのコンビネーションは封印していましたが、ほぼノーミスの勢いがありつつ、少し可愛らしさも見せてくれたフリーのシェルブールの雨傘は、私的四大陸のペア演技のハイライトでした。
一方、こちらは、印象に残ったと言っても、悪い印象なのですが、
今はアメリカで競技しているエフィモワとロシアでペアを組んでいた、ゴロヴィン、今はに移籍して、ガメス&コロヴィン組として、昨シーズンから競技に出ているのですが、
技としては、ツイストもスローもトリプルジャンプで、悪くないのですが、男性ゴロヴィンが冷淡、演技の後のお辞儀もおざなり、ロシアで活躍していた頃に比べると、あまりに不甲斐ない成績にいら立っているのか、見ていて不快で、一生懸命やっている女性のガメスが何だか可哀そうでした。
このペアが、来シーズンも競技を続けているのか、男性が態度を改めてくれるのか、、、後者を期待したいですが。。 投げやりな気持ちって、演技に現れて、見ている側は不快になるって、知らせたいですね。
そういえば、ペアといえば、同じ時期に行われていたババリアンオープンにミニマムスコア獲得のために派遣されていた、ペアですが、全日本での感動演技が記憶に新しい、長岡&森口組ですが、
残念ながら、ショートのミニマムスコア獲得できず、、フリーは獲得できたのですけれど、、
これで、世界選手権派遣はなくなってしまうのか、また他の試合へ派遣されるのか???
一方、清水&本田組は、ジュニアのミニマムスコア獲得できたので、これで無事世界ジュニアに出場できることになりました。
長岡&森口組、プロトコルを見るとスピンで0点という、何があったのか、、、
男子
鍵山選手が、今季世界2位のスコアで優勝!
ですが、私的には何だか割り切れない思いでした。
ショートもフリーも、そんなにいい演技と思えませんでした。
ショートで4回転アクセルをやってのけたマリニンや、
4回転ルッツを入れて、ショートとフリーをノーミスで揃えたアダム・シャオ・イム・ファに比べると、
ジャンプの種類的に劣る上に、フリーではフリップはステップアウト、
ジャンプの質的にも、そんなにワオーっていう感じはなく、
サルコウは、個人的にはチャ・ジュンファンの方が見ごたえあったような、
そして、9点台が並んだPCSですが、
宇野昌磨選手やジェイソン・ブラウンに肩を並べる演技とは、とても、、、
ショートでは印象に残る部分はほとんどなく、フリーでは、最後のステップシーケンス3秒くらいでやっと何か熱いものを感じるところがあった以外は、こちらも無味無臭という印象、
ジャンプの回転や踏切りのチェックが厳しくなると、そういった欠点が少ない鍵山選手には有利で、世界選手権優勝も夢ではないかもしれませんが、
せめて、ジャンプはノーミスで揃えたうえで、優勝してほしいです。
すみませんが、ミスしても優勝して納得の演技ではありませんでした。
ジャンプという点では、佐藤駿選手の切れ味鋭い4回転ジャンプが印象的でした。
音楽表現という点では、チャ・ジュンファンが、素晴らしいものがあったなと思いました。特にショートが、音楽のダイナミズムをスケーティングで表現されていました。あの演技こそ、PCS9点台に値すると思うのですが、8点台というのが????
スケーティングという所では、山本草太選手の演技が、非常に一歩が大きくて、見ごたえありました。
そして、4回転ルッツといえば元祖はこの人、ボーヤン・ジンが、久しぶりに4回転ルッツを決めて、まとまった演技を見せてくれたのは嬉しい限りです。ボーヤンは宇野選手と同い年の26歳で、26歳の選手が4回転ルッツ決めるって、すごくないですか??
また、ジャンプだけでなくて、スピンのポジションとか表現とか、シニアに上がったばかりの彼の演技からすると何倍も洗練されているのが目につきました。それが、得点に現れないのは残念な限りですが(選手は成長しているのに、ジャッジは成長しない)
アンドリュー・トルガシェフの力の抜けた自然体の演技も素敵で印象に残りました。
それから、プログラムという意味でローマン・サドコフスキ、彼の演技は今シーズン初めて見たような気がするのですが(記録を見たところ、ケガをしていたのか今シーズンはカナダ選手権が初試合で、四大陸が初国際試合の参加でした)、フリーの曲と振付が、とてもユニークで、もう一度じっくり見てみたいと思わせるものがありました。
それから、久しぶりにドノヴァン・カリージョ君の演技を見たのですが、2018年ミラノの世界選手権で強烈な印象を残したあの時に比べると、大人びたというのと、印象に残ったのがスピン。上体を前傾させて足を開いた変形スピン、多くの選手が行う形なのですが、上体が足にピッタリつくほど曲がっていて、とても見栄えのするスピンとなっていました。スピンで魅せてくれる選手、日本にも出てくるといいのですが。。。
アイスダンス
世界選手権代表の最終選考の場となり、注目されましたが、
最後はベテランが若手に力を見せた形です。
小松原&コレト組は、正直今シーズンの演技は、気の抜けたコーラのような印象が続いていましたが(私的には昨シーズンも)、
世界選手権がかかったこの舞台で、やっとエンジンがかかり北京オリンピックの団体戦で見せてくれた熱いものが戻ってきた印象がありました。
とはいえ、若手も負けずに検討していて、
私の印象では、田中&西山組はスケーティングが、吉田&森田組はプログラムの構成とか技のポジションが印象的で、小松原&コレト組は欠点がないという印象でした。個人的に一番面白みがあると思うのは吉田&森田組です。彼らは他の2組と違って、日本でトレーニングしていて、キャシー・リードさんがメインコーチでやっているのですが、今まで日本のアイスダンスでトップの組というとその頃に世界トップを教えているトレンドのコーチの元でトレーニングするのが通例ですが(小松原&コレト組も田中&西山組もトレンドであるモントリオールのデュブレイユチーム)、日本の選手として活躍したコーチの元で、日本でトレーニングして世界に出ていく組が出るのも面白いなと思います。
さて、トップ争いとなると、ギレス&ポワイエ組がリズムダンスもフリーも圧倒的でした。
フリーなどは、嵐が丘の物語、坂本龍一さんの音楽、すべてが相まって、試合であることを忘れるほどの感動の4分間となりました。
ギレスが金髪ということもあって、2人はキャサリン&ヒースクリフというより、その次の世代キャサリンの娘のキャサリンとヒースクリフな感じが最初からしていました。嵐が丘というと大抵前半(キャサリンの出産と死まで)だけが映画化されますが、坂本龍一さんが音楽担当した映画では珍しく2世代の物語を描いていました。
フリーダンスで他に印象に残ったといえば、ローレ&ルギャック組のホラープログラム、光っていました。
そして、性加害疑惑で、何だか演技を見るのに集中できない気分にもなっていたボードリー&スアアンソン組ですが、フリーのノートルダム・ド・パリでは、スアアンソンの気持ちのこもった演技が目を引きました。見かけ上は合っていないですが、あの演技の中では、エスメラレルダを真摯に思うカジモドになっていたような気がしました。
四大陸選手権も終わって、後は世界ジュニア、世界選手権を残すのみです。
その前にチャレンジカップがあって、日本選手も出場しますが、、、
私的気がかりは、長岡&森口組、やっぱり世界選手権出れないのかな~