2017 全日本フィギュア 前半 感想 | 閉じた眼

閉じた眼

40年以上愛好するフィギュアスケートに関する自己流観戦コラムです。
(趣味で集めた情報を提供することがありますが、最新の情報でなかったり正確でないこともあります。あらかじめご了承ください)

 

 

音譜全日本がいよいよ開幕音譜

1日目、2日目現地観戦しました(女子の第1、第2グループだけは仕事で見れませんでしたが、ビデオでチェックしました)。

 

「女子」

女子は、まず第3グループ滑走の紀平選手が、トリプルアクセルをやるということで注目していましたが、トリプルアクセルはきれいに決まった後のトリプルルッツのパンクは痛かった。これで6.6失ってしまったので、決まっていれば3位以内確実でした。

 

オリンピック代表2枠争いに注目が集まっていますが、この大会は世界ジュニアの代表(3枠)も決まる大会です。全日本ジュニア優勝の紀平選手は内定ですが、他2枠は、この大会の成績で決まることになっています。その中で注目だったのが、全日本ジュニア4位の横井選手が、ダブルアクセルで手をつくミスがありながらも、ジュニアでは紀平選手に次ぐ成績9位(62.68)になったこと。全日本ジュニア2位の山下選手は、コンビネーション予定のフリップでミス、次のルッツをコンビネーションにしましたがダブルで、60点に届かず15位(57.8)スタートとなりました。全日本ジュニア3位の荒木選手は、大きなミスはありませんでしたが、緊張していたのかスピンの乱れ、動きの固さが目立ちました。結果、60点届かず12位(59.66)となりました。女子では、5点差は、結構大きいものがあるので、国際試合ではあまり活躍しているとは言えない横井選手が、全日本の成績で、世界ジュニアの切符を手にするのか注目です(個人的には、山下選手と荒木選手が好きなので二人に行ってほしいですが)。また、世界ジュニア代表争いには入らないかもしれませんが、全日本ジュニア5位の渡辺選手は、ジャンプは小さいのですが、スケーティングがきれいだと思いました。カナダで練習しているという事で、カナダ仕込みなのかしらと思いました。

 

第4グループに、いわゆる神戸組の三原選手、坂本選手が登場しましたが、6分間練習の段階から二人の明暗は、はっきりしていました。三原選手はジャンプをあまり飛ばず、ちょっと消極的とも思える動きをしていた一方、坂本選手には練習時点からオーラがあり、大きなジャンプをバンバン決めていました。それと、6分間練習中坂本選手はよく中園コーチのところに行っていましたが、三原選手は多分1回しか行っていなかったのも、なんだか気になるところでした。いつもそうなのかもしれませんが。本番になると予感は的中。三原選手は今年のショートは、やはりミスマッチなのではと思いました。滑り出したときから、「え、その足、その腕、違う」と違和感を何度も感じました。ダブルアクセルの転倒はありましたが、それよりもスピードもなく、全体の動きが小さくちぐはぐで、そして振付がまったく自分のものにはなっていない印象が強く、本当に一言でいうと「違和感」が残る演技でした。スコアシートを見るとPCSがすべて7点台というのも納得です。これは、個人的な感想&想像ですが、三原選手は大変まじめで努力家であると思うので、振付に一生懸命自分を合わせようとして空回りしているような気がします。努力だけではどうにもならない部分もあると思うので、何かをきっかけに自信と取り戻してほしいと思います。

 

個人的に坂本選手にとても期待していたので、ショートの演技はうれしいものでした。ただノーミスであるだけでなく、勢いが抜群でした。最後のスピンでふらついた(勢いが余った?)のは残念ではありましたが。

 

第4グループでは、6分間練習の時に、かつて荒川静香さんがしていたようなワイルドな髪形をしている選手がいて、誰だろうと思っていたら、何と木原万莉子選手だったと知りビックリ。清純なイメージが強かったあの万莉子ちゃんが、、という感じでした。プログラムもそれに合ったワイルドなものでした。

 

最終第5グループは、代表争いをする選手は緊張しているのか、ちょっとスピードがない感じでした。樋口選手も、え、こんなにスピードなかったっけという印象で、ステップシーケンスも動きが硬い感じがしました。宮原選手は、ジャンプは小さかったですが、それ以外の部分のプログラムもまとめはさすがというところがありました。そして、第5グループで一番会場を盛り上げたのは、本郷選手でした。けれど、私はそれほど盛り上がりませんでした。ノーミスでしたが、なんだか普通の演技という感じで静観してしまいました。多分、ショートは2シーズン連続同じプログラムで、昨年もショートはノーミスだったので、なんだかデジャブという感じがしてしまったのかなと思いました。最終滑走の本田選手は、明らかにオフで、気合の気の字も見当たりませんでした。

 

第5グループで1番滑走の松田悠良選手、得点は伸びず17位でしたが、個性的な振付でした。見ていて「え、そっちに行くの」と予想外の動きが多かったです。宇野昌磨選手と同じ樋口美穂子コーチの振付と思いますが、見ていて楽しめました。スタンドから見るとよくわからないですが、ジャンプの回転不足があったようで、でも、そんなことは気にならない演技で、何人かは立ち上がって拍手していたのも、同じ印象を持つ人がいたのかなと思います。

 

女子は、今日勝負のフリーですが、驚いたことにフジテレビで最終グループ公式練習の中継をしていました(さらに驚いたことに、私は公式練習中継と知らないながら、ビデオ予約していました)。公式練習を見たところ、調子がよさそうなのは紀平選手、坂本選手(坂本選手の衣装が藻のような緑色から赤に変わっていました。あの緑色の衣装好きだったのだけどえー)でした。樋口選手は、1番目の曲かけということもあり、ジャンプはチェックが多かったですが、全体的に勢いを感じませんでした。本田選手は、気持ちがあまり乗っていないように見えました。ジャンプの調子も今一つなのかもしれません。本郷選手は、ジャンプのパンク、ミスが目立ちました(本郷選手の「フリーダ」は、振付、音楽、衣装すべて素敵なので、楽しみにはしています)。宮原選手は、うまくまとめているという感じでした。

 

公式練習だけを見ると坂本選手の初優勝もありえそうな雰囲気ですが、私はその前に滑る宮原選手がキーになるのではと思っています。宮原選手が勢いある演技で高得点をあげれば、坂本選手も優勝のプレッシャーから逃れて、いい演技をして、逆に初優勝もありえる気がします。逆に宮原選手がミスしたり、得点が伸び悩んだりすると、「優勝のチャンス、オリンピックの切符」がちらつき、練習ではしたことないようなミスをするような気がします。中園コーチが、スケートアメリカの時のように「ノーミスじゃなかったら、リンクから上がってこなくていいよ」とうまくはっぱをかけてくれるといいですが。

 

私の最終結果予想は、宮原選手-坂本選手-紀平選手で、宮原選手と坂本選手がオリンピック代表になると思います。ヤマ感ですが。

 

「男子」

男子は、第1グループから観戦しました。第1グループは、何といっても全日本ジュニアチャンピオンになった須本選手のジャンプの美しさが、6分間練習から目を引きました。客席が、ちょうどコーナーで、選手がよくジャンプをとぶ位置の前だったので、6分間練習でいろいろな選手がジャンプをするのをいい角度で見ることができました。よくフィギュアの中継で、スピンを上から撮影することがありますが、違和感しかありませんでした。一方ジャンプは、上から撮影して、ジャンプの助走から着氷の軌道が見えるとより楽しめるのかなと、須本選手が美しく着氷のカーブを描くのを見て思いました。やっぱり、フィギュアスケートって、氷上に残る図形なんだな、なんてことも思いました。

 

須本選手は、練習の時の方が美しいトリプルアクセルを飛んでいましたが、緊張の中、コンビネーションジャンプで大きなオーバーターンが入ってしまいましたが、まあまあうまくまとめました。演技後舌をペロッとだしたのは、グランプリファイナルの時の宇野選手の真似かしらなどと思いました。

 

第2グループには、世界ジュニア2枠目(男子は世界ジュニアの枠は2)を争うジュニアの選手が次々出てきました。その中で、全日本ジュニア2位の三宅選手は、質のいいジャンプとは言えないものの、うまくまとめて、ジュニアの中では須本選手に次ぐ9位となりました。演技全体の印象としては、全日本ジュニア3位の壷井選手の方がよかったですが、トリプルアクセルがないのが響きました。しかし、フリーではジャンプの数も多いので、逆転もありえそうです。また、全日本ジュニアのフリーで根性で最後のジャンプをトリプルアクセルに挑んで、全日本出場を決めた佐藤駿選手も、最初トリプルアクセルがパンクしてしまい、その後のジャンプも緊張からか気負いからかミスが続きましたが、フリーでどう挽回してくるかちょっと楽しみです。

 

第3グループは、知っている選手がいなかったので、静観モードでした。

 

第4グループは、オリンピック3枠目をねらう選手たちの滑走が続き、とても盛り上がりました。しかし、一番演技後大きな声援で、世界選手権を優勝したかのような熱気となったのが、第1滑走の山本草太選手でした。わたしも涙が出そうな演技でした(周りで泣いている人も何人もいました)。おそらく会場の観客全員が、彼の骨折2回と、今シーズンの初試合中部選手権で、シングルジャンプだけの演技を知っていました。そして、4回転やトリプルアクセルはないものの、彼の美しいスケーティングやスピンが心を打ちました。ジュニアで活躍した頃の演技も見たこともありますが、その頃には伝わらなかった思いが伝わってきました。この日、もっとも印象に残る演技でした。

 

続いた村上選手も悪くない演技でした。四回転サルコウも決まりましたし、ジャンプで大きなミスはありませんでした。しかし演技後、彼自身は浮かない顔をしていたのは、コンビネーションをトリプルルッツ+トリプルループのところダブルループになってしまったことでしょうかね。しかし、ステップなどは、彼らしい繊細でありながら、動きがくっきりわかるいい演技でした。

 

その後、中部フィギュア男子のドンっぽい存在の日野選手が登場。昨シーズンまで使っていたアルメニアン・ラプソディーの印象が強いですが、今年は違うプログラムで、私も見たことがある「Addicted To Love(恋におぼれて)」のサントラを使っているようです。振付は、引き続きベスティミアノワ&ボブリン(1980年代のソ連時代のトップスケーター。彼らの現役時代演技よく覚えています)。あの映画で使われてたのか記憶ないですが、途中からロシア民謡も出てきました。気負ってしまったのか、ジャンプの失敗が目立ちました。

 

一人置いて、3枠目有望の田中選手が登場。練習のビデオを見ると、自信がありそうに見えましたが、ノーミスでまとめてきました。ショートで4回転2回やるのかなと思っていましたが、コンビネーションは3回転の連続でした。この調子でフリーもいければ、オリンピックの切符は手に入りそうです。

 

第4グループ最終滑走の無良選手も、思ったほどミスはなかったかなというのと、ステップがスケートアメリカの時にはずいぶん簡単なステップをやっているなという印象がありましたが、ここでは、大きなカーブをたくさん盛り込んだステップを踏んでいました。スケートアメリカのときに簡単に見えたのは、カメラアングルのせいかもしれないですね。念願のオリンピック3枠目争いに首の皮1枚つながった感じです。

 

第5グループは、ひょっとして3枠目ダークホースの友野選手から滑走。ちょっと気負ってしまったのか、4回転サルコウが失敗でしたが、他はまとめてきました。今シーズンのショートは、友野選手の新たな一面が出たよいプログラムで、後でビデオでもう1回見ようかなと思います。

 

第5グループは、なんといっても宇野選手の演技に注目でした。衣装を変えたのは、さらに軽い生地にしてジャンプを飛びやすくするためですかね。練習では今までのグレーの衣装を着ていたということですけれど。同時期に行われているロシア選手権では、サマリンやコリヤダがショートで100点超えしているので、宇野選手の100点超え期待しましたが、やっぱり全日本の重圧は半端なかったですかねー。まあ、ステップはものすごくよくなっていたし、最後のスピンは冬のイメージが出た形で素敵でしたが、見ていて気になったのは、音楽と演技の調和。宇野選手は、つなぎやステップで音楽を1つ1つ丁寧に表現する一方、ジャンプの時には音楽が無視されるので、そのギャップが逆に目立ってしまった感じです。高級フランスパンに安い輸入肉ステーキを挟んだサンドイッチを食べさせられているような気分になりました。彼の「自分の理想とする演技には程遠い」というのは、そういうところなんですかね。ジャンプの時に音楽に合わせるのは、フィギュアではほぼ不可能といわれていますが、高橋大輔さんとかは、現役時代ジャンプの時も音楽が聞こえているという言っていました。小塚崇人さんは、コーチからジャンプの時には音楽を聞くなと現役時代言われたとか言っていました。明日のフリーで、もうちょっといい演技を期待したいです。つい海外有力選手の国内選手権の出来を意識しちゃいますが、フェルナンデスも、サマリンも、コリヤダも、フリーはそれほど良くなく、点数嵩上げ傾向のロシア選手権(ジャンプ転倒してもGOE+2つけるジャッジがいるほど)でもフリー200点は出ていないので、日本国内だけでなく、世界のトップ選手に刺激を与える演技をしてほしいです。

 

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