2017 全日本フィギュア 後半 感想 | 閉じた眼

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40年以上愛好するフィギュアスケートに関する自己流観戦コラムです。
(趣味で集めた情報を提供することがありますが、最新の情報でなかったり正確でないこともあります。あらかじめご了承ください)

 

 

全日本フィギュアも終わって、代表選手も発表されました。女子は、偶然にも前回ブログでの私の予想が合っていましたが、今回は、いつもオリンピックシーズンにありがちな「なぜこの選手が選ばれたのか」「なぜこの選手が選ばれなかったのか」という疑問が少ない、スケート連盟の選択であり、全日本とこれまでのGPシリーズの結果だったと思いました。

私も今回初めて、全日本を全日程観戦し、最後のメダリスト・オン・アイスも行ったので、5日間飛田給に通い詰めました。さすがに4日目は、ちょっと疲れてしまい、1日くらいはテレビ観戦にしたほうが良かったかなと思いました。フィギュアスケート観戦は体力いりますよね~。

 

フリーでの印象に残った演技です。

「女子」

女子のフリーは、立見だったので、第2グループから見ました。周囲を見ると皆さん折畳椅子やアウトドア座布団など持参していました。

 

第2グループには、世界ジュニア代表を争う山下真瑚選手が登場。山下選手ショートで失敗して、ジュニア勢の中では4位となってしまい、世界ジュニアの代表選考崖っぷちとなった山下選手ですが、6分間練習の時から、ジャンプの着氷の流れの素晴らしさが目を引きました。上から見ていたので、特にそう思いました。演技は、ジャンプだけでなく、全体的なスケートとか表現力もすごく良かったと思います。最後のダブルアクセルで失敗してしまいましたが、演技全体の印象は良くて、立見席でしたので立ったままでしたが、座っていたら立って拍手したいところでした(そうしている人は結構いました)。本人は、「これで世界ジュニア、ダメかも」と思ったかもしれませんが、結局は選ばれてよかったです。

 

同じく第2グループで滑った松田悠良選手の音楽はすごくエッジーでいいなと思いました。出だしは、30年以上前になりますが、ソ連のアイスダンスカップルが使っていたのが、未だに記憶に残っているスペインのギターの曲。プロフィールによると、スペイン・キャラヴァンとあり、ドアーズの曲みたいですが、かなり編曲されているかなと思います。ドアーズの曲の出だしは、たぶんあのスペインの曲にインスパイアされたものだと思いますが。途中からのオーケストラのパートは、120%以上の力を出しても音楽とは対等にならないようなすさまじいパワーがありました。スケート観戦の楽しみの一つに素敵な音楽との出会いもありますよね。松田選手の演技は、立見席まで響くものとは言い難かったですが、途中のスパイラルでリンク半分を1周するところは見ごたえありでした。

 

第3グループは、有力選手ばかりの登場ですが、まず注目は、ジュニアの荒木菜菜選手。かなり緊張していたのか、動きが硬かったです。JGPシリーズで目を引いた彼女らしい大きなジャンプがなかったように思いました。転倒もして世界ジュニア代表からも外れてしまいました。荒木選手のフリーの衣装は、今シーズンの女子選手の衣装の中でベスト3に入るマイお気に入りです。

 

そして今回の全日本でのサプライズは、横井ゆは菜選手です。トリプルアクセルに挑むけれど転倒し、その後のジャンプも失敗することが多い選手という記憶でしたが、この日は別人でした。正直ショートでジュニアで2番目の成績でも、フリーでは失敗するのではと思っていました。それがトリプルアクセルは封印して、ノーミスの演技をしたのは、本当に驚きでした。見事世界ジュニアの代表にも選ばれました。

 

第3グループの最後の滑走の三原選手は、ジャパン・オープンで見た時のような勢いは感じませんでしたし、やはりショートの時と同様、動きに違和感を少し感じてはいましたが、とにかくノーミスで演技を終えて、スクリーンに感極まった彼女の表情を見たときは、こちらも泣けてしまいました。

 

最終グループは、6分間練習から、会場はすごい盛り上がりでした。樋口選手、本郷選手への声援がものすごくあったと思います。意外と本田真凜選手への声援はそれほどでもありませんでした。ファンが一杯いるのかと思っていましたが。第1滑走の樋口選手は、動きが硬いし、着氷が流れず詰まったジャンプが多かったように思います。そして、サルコウがダブルになったときに、これはオリンピック厳しいなと思いました。中国大会で見た時のあの勢いは影も形もなかったという感じでした。

 

第2滑走の紀平選手は、公式練習で見た時の勢いそのままでした。彼女のトリプルアクセルは、まったく力が入っていなくてフワッと飛んだかと思うとピタッと回転がとまってピタッと着氷するところが、これまでの伊藤みどりさんや浅田真央さんとは違うなと思いました。ただ、正直ロシア女子に勝つには、もっと何かが必要かなとも思いました。ジャンプ以外のところの工夫がもっともっと必要じゃないかと、世界ジュニアで彼女に金メダルを期待する私は思いましたね。

 

第4滑走の宮原選手は、さすがの安定感と、何といってもスケートの伸びと演技の大きさがちがうかなと思いました。ただ、ジャンプは小さいし、それほど圧倒的な強さは感じませんでした。147点超えるスコアは、そーかな、んんんって感じでした。

 

何といっても、この日のハイライトは最終滑走の坂本選手でした。6分間練習では、さすがに緊張しているのが、立見席からも伺えました。滑り始めて最初のトリプルのコンビネーションは、動きが硬いなという印象でした。全体的に硬さは、ありましたが、それでもノーミスで演技を終えたのは、すごい精神力だなと思いました。またロンドのように循環する音楽がいい感じで、会場を盛り上げたと思います。拍手は最後のスピンから止まりませんでした。シーズン初めのころ、坂本花織選手が今シーズンのシンデレラガールになるのかもと思っていましたが、予感的中です。しかし、たった2枠のオリンピック代表枠を勝ち取るまでの成長は、予想外でした。

 

「男子」

男子フリーは、スタンド席で第1グループから見ました。

第1グループで目を引いたのは、ジュニアからの出場の佐藤駿選手です。ノービス時代からテレビのドキュメンタリーとかで見ていてなじみの選手です。全日本ジュニアでは、フリー最後のジャンプをトリプルアクセルに挑んで決めたのが、とても印象に残っていますが、ジャンプ以外の要素は、印象なしでした。しかし今回見たら、ステップがすごくよくなっていたし、プログラム全体のまとまりが出ていました。残念ながら、今回世界ジュニアの代表には選ばれませんでしたが、13歳なのでジュニアでもまだまだこれからであるし、成長を楽しみにしたいです。

 

第2グループは、本田真凜のお兄さん太一選手が、大健闘。トリプルアクセル2回決めて、ノーミスで演技を終えました。そして、次に登場した壷井達也選手は、ジャンプの時に両手にお皿をもっているかのような構えが特徴的ですが、トリプルアクセルは転倒したものの、全体的にジャンプとかスピンとか流れがあっていいなと思いました。残念ながら、世界ジュニア代表には手が届かなかったですが、これからも頑張ってほしいです。彼の顔がちょっとボーヤン・ジンに似ていると思うのは、私だけでしょうか?

 

第3グループで、目を引いたのは、何といっても日野龍樹選手。ショートでは気負ってしまってミスがでましたが、フリーでは成功率の低い4回転を封印して、ノーミスで演技を終えました。驚くことにフリーでは4位という成績でした。

 

そして、全日本ジュニア優勝の須本選手は、全日本でノーミスの演技。本当にジャンプが美しいし、動きのアクセントをつけるのがうまい選手だなと思います。ただ、ショートもフリーも昔風の衣装なのが、玉に瑕とか思ってしまうんですが。本人の好みなのか。フリーは市長になったジャン・バルジャンのイメージかもしれませんが、ショートの「雨に歌えば」の衣装は、???

 

最終グループは、公式練習、最後の6分間練習で一番調子がよさそうだったのは、無良選手でした。本番でも、ここ2シーズンで一番いい演技だったのではないかと思います。

 

一方田中刑事選手は、公式練習で4回転サルコウのパンクが目立っていたので、「ひょっとして、無良選手が勝つかも?」と思いましたが、本番で、着氷の乱れはいくつかありながらも、最初のサルコウと、後半のトウループを決めたのが代表を射止めることになりましたかね。スコアシートを見ると、技術要素では無良選手の方が勝っており、PCSで田中選手が勝りました。確かに田中選手の方が、表現力はあるかもしれませんが、音楽表現で9点台が出るほどかなとは、ちょっと思いました。国際試合では、これはないのではと、ちょっと思いましたね。

 

宇野選手は、公式練習では、曲かけでは、ほとんどジャンプを飛ばず、4回転ループと、ダブルアクセル+四回転トウを中心に練習していました。ダブルアクセル+4回転トウは、パンクや転倒ばかりで、1度も着氷なしで、これは決まらないなとわかりました。6分間練習でも何だか、「大丈夫かしら?」と思うような様子で、いつも6分間練習で失敗しても本番でうまくいくときは、失敗してても元気なのが、この日は重い荷物を背負っているかのように、体が重たそうでした。そして、本番の演技は、ほんとうにガッカリ、「オリンピックの金メダルは無理だー」と頭によぎってしまうような演技でした。本人が一番がっかりしているのだとは思いますが。それに、ずっと気になるのは振付。2シーズン前の振付からいろいろと改良しているようですが、後半の「星をつかむ」仕草にターンを入れたり、両手で顔の横でパタパタさせる振りとか、違和感ありだし、「写真に撮りたい」と思うような”キメ”ポーズが、だんだんなくなっていっているような気もします。昨シーズンのフリーも、シーズンが進むにつれて、そんな印象がありました。その後のネットに上がっていた記事によると、オリンピックに向けてジャンプ構成を昨シーズン後半と同じ4回転3種4本に戻して、4回転サルコウとダブルアクセル+4回転トウを封印して、プログラムの完成度を高めるということらしいので、この後の四大陸とオリンピックでは、いい演技が見れたらいいなと思います(メダリスト・オン・アイスでは、気合のこもったいい演技を見せてくれました)。4回転トウループにファイナルの時から苦しんでいるみたいなので、昨シーズンのようにお正月の後、ウリアシェフの所に合宿しに行くのかどうか知りませんが、ジャンプを取り戻してほしいです。

 

ところで、男子フリーの日は、「注釈付きS席」という、車いす座席のエリアに折り畳み椅子をならべた席に座っていたのですが、いきなり隣の人から「前かがみやめてもらえますか?」と言われ目がキョトン。画面に映るスコアを読むため、すこし顔を前に出してからかなと思って、あごを引いたら、「だから、前かがみやめてって言っているんです」と再度言われ、わけが分からなくなりました。背中が椅子の背についているのに「前かがみ」と言われても。。おかげで、演技を集中してみることができなくなり、途中で首まで痛くなりました。最初は気にして姿勢を変えたり、あごを引いたりしてみましたが、途中から居直ってしまいました。”その方”は、よほど耐え難かったのか、最終グループの時にどこかに消えてしまいました。どこかのサイトで、チケットを買うときに「お客様同士のトラブルは、お客様同士で解決してください」というくだりを見て吹き出しそうになりましたが、こういうことなのかとわかりました。スケート観戦し始めて3シーズン目ですが、こんなことは初めてでした。こういう時の気分の悪さを引きずらないうまい対処方法は、何だろうと思いました。