
北朝鮮からの脱北は、今ではほぼ不可能になってしまった。
ピーク時の2009年には2900人以上もの北朝鮮人が脱北したとされるが、年々、中国との間の国境警備が厳しくなり脱北者の数は減少した。
国境付近ではバッファゾーン(接近禁止区域)が設けられ、近づいた者を警告なしで即時射殺するようになり、また地雷が敷設された箇所もある。
脱北を許してしまった警備兵への厳罰も強化され、警備兵も増員された。
物理的に警備が強化されただけではなく、北朝鮮・中国の両国のハイテク監視システム(CCTV)の設置により監視は強化され、かつて警備兵と脱北ブローカーとの間での賄賂が脱北を可能にしていたが、監視カメラによって警備員が外部の人間と接触することができず、賄賂が事実上不可能になった。
このドキュメンタリーは、今よりも国境警備が緩かった頃に、北朝鮮から1000人以上もの脱北者を支援した韓国人牧師キム・ソンウンが実際に北朝鮮人一家を脱北させる実録のドキュメンタリー映画である。
祖母・父・母・幼児二人の5人家族の脱北を手伝い、中国国境にある川を渡り、中国からベトナム→ラオス→タイへ渡り、最終的に韓国を目指す。1万2000キロの脱出劇は生きるか死ぬかの紙一重の賭けだった。
もし家族が北朝鮮や中国当局にみつかり北朝鮮へ連れ戻されたら、政治犯収容所へ収容され、そこで人生は終わる。
政治犯収容所では地獄のような拷問があり、死ぬよりつらい経験をさせられる。だから収容されてしまった人は「殺してくれ」と懇願する。
北朝鮮を世界一大きな刑務所とするなら、政治犯収容所は地獄。
私が権威主義を危険視するのは権威を握った一部の人間が特権を手放したくないがために都合の良いルールを作り、それを破ったら極刑をもって処せられ、恐怖政治によって人が支配されるディストピアの国が出来上がってしまう懸念があるためだ。
人間は自分の欲望を最大限に実現させようとする生き物であり、独裁政治が成立してしまうと頂点にいる個人や団体の欲の最大化のために国民が奴隷になってしまう。そして権力の椅子を奪われないように法律を作り、権力構造をひっくり返そうとする者が現れると殺してしまう。
日本にも権威主義をかかげる政治家や政治団体はある。しかし、そういった政治団体を危険であると認識できる理由は歴史を知り、原理を理解しているからであって、わかってない人間に民主主義のありがたさは伝わらないだろう。
国民権力の上に国家権力を置いてはいけない。
日本人は北朝鮮を見てそれを学ぶべきだろう。
国民から主権を奪おうとする団体が現れたら注意が必要だ。
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