暴走ピノキオ 文学・音楽・地域研究

暴走ピノキオ 文学・音楽・地域研究

大学の専攻は地域研究だったが・・・

好きな音楽 BLANKEY JET CITY ,Donald Fagen ,STEELY DAN、くるり,The chang 、AIR、ゆらゆら帝国、Theatre brook,MAD CAPSULE MARKETS,RadioHead,サニーデイサービス、The Chemical Brothers,Fatboyslim,Junior jack,Tom Waits,Joao Gilberto,Lenny Kravitz,Nirvana,Garbage,EGO-WRAPPIN,Daft Punk,Primal Scream・・・・・・


好きな本 ノルウェイの森、世界の終わりとハードボイルドワンダーランド、風の歌を聴け<村上春樹> 限りなく透明に近いブルー、コインロッカーベイビーズ<村上龍> 路上<ジャックケルアック> 夏への扉、月は無慈悲な夜の女王<ロバート.A.ハインライン> キリマンジャロの雪<へミングウェイ> 京極夏彦 全作品



 

以前、NHKの番組で歴史学者が子供に歴史を教えるといった内容の番組があったが、その中で、日本がなぜ戦争することになったのか?という疑問に「資源を確保するため」と答えた歴史学者に対してXでは「アジア解放のためだぞ」とコメントしているのを目にして、かつて大本営が作ったプロパガンダに80年以上経た今でも扇動され続けている人がこれほど多いのかと驚かされた。


本書は非常にボリュームのある書籍なので、著書の中身を広く取り上げるには時間がかかる。そこで、太平洋戦争開戦の決断に至る経緯にフォーカスしてみたい。

当時の閣僚の中でも大いに鍵を握っていた一人であり、私が戦犯中の戦犯として名指ししたいのは松岡洋右である。

「戦争は外交の失敗によって起こる」というのは、松岡の外交を知れば納得できる。
 

英米とは外交せず、ナチスドイツとソビエトばかりと外交をした松岡は最初からアメリカと戦争する気があったとしか思えないほど、アメリカを見くびって日独伊三国同盟推進し、チャーチルからの書簡も相手にせず、アメリカのコーデル・ハル国務長官からの日米国交打開策、日米で協調して作成した日米諒解案も拒絶し断固として日米開戦をもくろんでいた。
 

三国同盟を結べば英米との戦争を避けることが難しくなることが明白であったにもかかわらず、大本営、陸軍、そして海軍も三国同盟を承認してしまった。

最終的に太平洋戦争の開戦を決めたのは、1940年に4回開かれた御前会議だが、この会議の議事録は戦後に処分されてしまい、今では存在しないものの、会議に出席した当事者たちの手記や日記によってその会議の内容はある程度明らかになっている。

1941年の12月7日に日本軍の真珠湾攻撃によって開戦した大日本帝国が「大東亜新秩序建設のため」「アジアの解放」という大義名分を持ち出したのは、その5日後の12月12日であった。つまり、大東亜共栄圏を作るというスローガンは後付けであって、戦争の目的ではなかったのである。実際には資源確保のためにアジア諸国へ侵攻したのは事実。1938年の第一次近衛内閣の時に掲げられた「大東亜新秩序」を開戦後に持ち出して拡大し、開戦の大義であるとしたもので、この大本営が創作したプロパガンダを多くの日本人が今でも信じているということである。

既に満州国を保有していた日本だったが、日米開戦で生産能力が10倍以上もあるアメリカと戦争するのは自殺行為だと認識していたにもかかわらず、戦争へ踏み切った。

アメリカに日米通商航海条約を破棄された時点で勝負あったにもかかわらず引き返すことができなかった。

聖戦の美名に酔いしれて、国民の犠牲に目を瞑り、少なく見積もっても310万人以上の死者を出したのである。

過去の誤りを認めない者は反省せず、反省しない者は改善しない。改善しなければ同じ過ちを繰り返すこともある。

 

本書を一人でも多くの日本人が読むことを願う。

★★★★★

 

人が神ではない以上、経済活動に参画する個人がそれぞれの知識を持ち、社会で分散化されているなかで、国家運営者が国内の全ての経済や産業などの情報や知識を得ることは不可能であり、計画的に経済を動かそうとするのは非効率的である。

合理的な経済を形成する唯一の方法は、なるべく規制の少ない社会で人々の経済活動に自由を与えること。

 

政治上の独裁主義や権威主義、あるいは経済学上の計画経済が全て失敗に終わるのは、こういった人間の行動経済学的視点や心理学の知識が無かったことが大きな原因と言えるだろう。その点、ハイエクが心理学について教養が深かったことは彼の自由主義経済理論を支える軸になったのではないだろうか?

 

ハイエクの言うように、市場が自由である状態では、知識の分業によってそれぞれ個人が持つ知識や強みを生かして合理的に活動し、最大の効用を発揮する。

 

新自由主義を批判する人は多いが、人々を動かすのは善意ではなく「欲」であり、欲が燃料となって労働意欲を促進するという。

共産主義や大きな政府(国営企業による市場の寡占や公務員の増員)では、所得に対して欲のインセンティブが働かず、労働意欲の低下を招き、経済全体が停滞する。

 

ハイエク亡き今でさえ、彼の経済理論は生き生きと社会を支えているのである。

 

★★★☆☆

 

 そういえば私の祖父も戦後にシベリアに抑留され、生きて帰ってきた男だった。

 

残念ながら、戦時中の話や戦後のシベリア抑留の状況などを聞き出すことができずに25年前に他界してしまった。

 

25年以上前の自分はそれほど歴史に興味があったわけではないので、祖父に詳しく当時の話を聞こうなんて思ってもいなかったし、歴史を知るとういう行為そのものの重要性を認識していなかった。

 

 先日、書店で偶然手にした本書をちらりと立ち読みすると、シベリア抑留の話が書かれている。

 

「祖父の体験を垣間見るチャンスかもしれない」

 

歴史を好きになり、自分のルーツにも興味を持つようになった私は、そう思って購入に至った。

 

これは本との偶然の出会いというよりも、運命が引き寄せているのではないだろうか。私はそのように解釈している。

 

よく考えたら、特別な立場にいた著名な人物が書いた回想記は数あれど、ごく一般的な男性の戦時中・戦後・現代に至るまでの回想記を読む機会は多くはない。

当時はどのような気持ちで徴兵され戦地へ赴き、戦後にシベリアへ抑留されたのか。それを知る貴重な証言である。

多くの国では戦時中は軍国主義国家に変貌し、権威的な社会制度に向かうという。それは日本も例外ではなく、いやむしろ日本こそ象徴的に国体が変容したと言っても過言ではない。

大正時代は短い期間であったが「大正デモクラシー」と呼ばれる民主主義的思想の昂揚があり、人々の自由主義思想が広がった。

しかし、治安維持法の制定により労働運動や社会主義運動が取り締まりの対象となり、徐々に民主活動は鳴りを潜めていく。

満州事変、五・一五事件、二・二六事件、国家総動員法成立、太平洋戦争突入

日本の右傾化や軍事国家成立への流れは、今を生きる私たちが検証し、二度と同じ過ちを犯さないように学ばなければならない。

1944年の毎日新聞の記事で「勝利か滅亡か」「竹藪では間に合わぬ」と執筆した記者が東条英樹首相の怒りを買い、懲罰的徴兵を受けたという話は、もはや当時の日本には言論の自由や人権、民主主義は存在せず、日本は軍隊に乗っ取られてしまった一例だ。

1945年8月9日ソ連軍が満州国へ侵攻した際、150万人もの在留邦人がいたという事実はもっと日本で知られていい重要な歴史だが、実際に日本ではこの事実を知らない人は多く、中国残留日本人孤児という存在も聞いた事すらないという日本人若年層まで増えてしまった。

シベリアのチタ州で抑留された著者の父・小熊謙二氏だが、その頃、ソビエト全体に連行された日本人は64万人といわれ、その内訳はシベリア47万2千人・外モンゴル1万3千人・中央アジア6万5千人・ヨーロッパ・ロシア2万5千人・死者6万人であるとのこと。それほど苦しい経験をした邦人が多かったことを考えると遠い異国の地で命を失った人々の悔しさや悲しさが込上げてくる。

戦後に生きて帰国を果たした日本兵たちが、戦後の日本でどのような仕事を得て生活し、家族を養ったのか。戦後の過渡期において日本人が生きていくとはどういうことだったのか。

 

謙二氏が経験した戦後の生活が普通だったのか否かは本書を読んでもわからないが、少なくとも彼は特別な立場にいる日本人男性ではなかったし、普通の日本人ではないとも言えない。ただ私の心には戦時中・戦後の空気を吸った読後感が滞留した。

 

★★★☆☆

 

 

 

果たしてどれだけの人が「民主主義」を正確に理解しているだろうか?「民主主義」ほど、その意味が一人歩きしてきた言葉を私は知らない。

「民主主義は多数決だ」「話し合いで決めるのが民主主義だ」など、認識が散乱している。

本書で語られている民主主義とは民衆が合議で決定する政治制度のように語られており、初期の民主主義は「集会民主主義」、5世紀から18世紀初頭までを「選挙民主主義」、それ以降を「牽制民主主義」と分類している。

だが、私にとって最も的確な民主主義の定義は、社会学者・宮台真司氏が語った「国民権力が上位にあり、国家権力が国民権力に従属している主従関係」である。

そして宮台氏によれば、民主主義の対義語が権威主義であるという。

本書では専制政治という政治用語が出てくるが、それも権威主義と相違ないものだと解釈している。

さて、記録に残る最も古い民主主義(集会民主主義)が始まったのはシリア・メソポタミアの都市だったという。(紀元前2500年)

近代の中東諸国は民主主義が成立せず、君主制やムスリム権力者が宗教的な権威で政治を行っているので意外に感じるが、メソポタミア地域は非常に早くから文明が発達した地域なので、よくよく考えれば不思議でもない。
私はギリシャが発祥だろうと思っていたのだが、ギリシャで集会が興ったのが紀元前650年前で、それから100年が経過してアテネで民主主義へ移行したというのだから中東地域の文明社会がいかに早かったことかが窺い知れる。


やがて人口が増えるにつれ、民主主義は代議制となり、社会の発展や拡大とともに民主主義もアップデートを果たした。

しかし、憲法や法の欠陥から民主主義は一部の政党や軍隊などに奪われ、国民が時の権力者の奴隷となった歴史もある。

日本は封建社会から近代化し大正時代には大正デモクラシーという民主主義への機運が高まった時期もあったが、満州事変から日中戦争、太平洋戦争へと向かう情勢の中、軍部が政治権力を握り、国民の拝外主義も加勢して大日本帝国憲法下で権威主義の一形態である軍国主義国家へと変貌を遂げたのである。

実際に日本が真に民主主義を手に入れたのは1946年に施行された日本国憲法成立以降であり、人権規定のある憲法第十条から第十三条が民主主義の根底となっている。

日本で生活していると民主主義は当然のものであると認識しがちではあるが、民主主義が機能するためには選挙権を持つ国民の教養のレベルや民度が非常に重要である。

よき社会への切望、平和な社会への希求という社会参画者たちの認識なくして民主主義は成り立たず、国によっては民主主義から権威主義へと戻る場合もある。

また広大な土地、多様な民族、様々な宗教を抱える国では民主化したとたんに民族や宗教ごとに分裂し内戦を繰り返し、小国を乱立させる事態になりかねない。そういった国の事情もあり民主主義がすべての国に適応できるわけではないことも考慮しなければならない。

もし仮に、日本国内において政治団体が日本国憲法の人権規定を削除しようとするならば、民主主義は危機に陥るかもしれない。

日本の民主制度が、いかに洗練されたものであるかについては、現代を生きる私たちが身をもって経験しているはずだ。

★★☆☆☆

 

 

 高市早苗首相はイギリスのマーガレット・サッチャー元首相を政治的ロールモデルとして公言しており、新自由主義色の濃い政策を打ち出していくものと思われる。

 

 そのマーガレットサッチャーの経済思想はハイエクの影響を強く受けており、その思想を高市政権が採用するのであれば、日本経済政策もハイエクの経済思想を路線として進むことになるだろう。


 ならば、ハイエクの経済理論や戦後のイギリス経済史を研究することは日本経済の趨勢を予見できるだろう。

 戦後1945年から単独政権を担ったイギリス労働党は「ゆりかごから墓場まで」というスローガンを掲げて手厚い福祉政策を行い、石炭、電力、ガス、鉄鋼、鉄道を国有化した。

 その後の第二次チャーチル内閣により鉄鋼は民営化されたものの、その他は国営化されたまま維持され、ウィルソン内閣においては自動車産業も国有化されてしまった。その結果、「英国病」と呼ばれる経済の停滞が生じるに至った。

 国家による経済への過度な介入が企業の生産性や効率を阻害し、勤労意欲も低下してしまい、経済停滞がやがて大規模な財政赤字を招いた。

 1979年から政権を率いた保守党のサッチャーはフリードリッヒ・ハイエクやミルトン・フリードマンの経済理論を採用し、国営企業を民営化し政府による市場介入を減らし、自由市場を活性化させた。労働党が構築した大きな政府から保守党サッチャー内閣による小さな政府への転換であり、これによりイギリス経済が復活した。

 

 「新自由主義」や「市場原理主義」と呼ばれる経済政策は多くの左派的な政党や団体、あるいは厭世主義者たちから批判されてきた。しかし経済史は共産主義や福祉主義がもたらした経済的停滞を雄弁に語る。

 ハイエクの経済理論を要約すると、社会保障は必要ではあるものの、政府による介入は極力避け、自由な市場を守れば経済が活性化するという考え方。


 社会の構成員である国民が多様な価値観を持ちながら、その万人を満足させる画一的な基準など存在せず、多種多様な価値を通貨という代替価値へ変換し、すべての社会参加者が遍く認める共通価値としての通貨は市場で交換され、需要と供給のバランスで物価が決まる。
 

 「自由」は自動調整機能を備え、あらゆる立場や価値観を持つ国民を包括する。

 

 ハイエクの経済思想は新自由主義の名とともに生き続けるだろう。

 

★★★★★