ツゲにツツジを接いだそれ -8ページ目

ツゲにツツジを接いだそれ

感想と解釈のブログ

ごきげんよう、柘榴です。


久々のブログ更新です。もし仕様とか変わっていて表示滅茶苦茶になっていたらすみません。けれど今はそれどころではありません。
昨日、ディアヴォ最新作『ディア♥ヴォーカリストEvolve』シリーズより「BraveChild」のヴォーカリスト・ヨシュアの新曲試聴が始まりました。そのため今はその衝撃のまま筆を握りしめています。真面目な文章とテンションのおかしい私情が混ざっているので解釈だけに読みにきた場合は適宜飛ばし飛ばしご覧になっていただけると幸いです。
なお、本記事は全項に渡りディアヴォシリーズの本編のネタバレを含みます。シリーズの「製品を視聴して登場人物の隠された側面を楽しむ」という作風の性質上、シリーズをこれから履修する場合作品の魅力を大きく損ねる可能性があるため、シリーズ未履修の方はご注意ください。






【©Rejet/『ディア♥ヴォーカリスト Evolve』公式PVより】


『ディア♥ヴォーカリスト Evolve』公式サイトはこちら。


1.はじめに

■この記事を読むにあたっての大前提
・本記事タイトルには「考察」とありますが、いつもの通り便宜上のものです。
・本記事は自傷行為(広義のリストカット)についての言及またはそれを伴うフィクション描写への感想を主としますが、本記事は「自分がこうなった・こう思ったからあなたもこうすればいい」というものではありません。
・本記事は自傷行為を推奨する意図はございませんが、自傷行為に対して否定的見解および警鐘を鳴らす内容でもございません。
・本記事で言及された自傷行為描写はすべて個人の見解、および対象キャラクターが架空の人物であることを前提とした内容です。自傷行為における動機・精神状態・方法・自傷の箇所ならびに範囲・その後の傷の状態や精神的ケアにつきましては個人差が存在します。すべての人に本記事の言及が当てはまるわけではないことをご理解ください。

■この記事を書くにあたって

改めて自己紹介しておくと、私は自傷経験があり、その動機や行動や時期が奇跡的にすべてヨシュアと被っていたことから彼の存在に精神的にとてつもなく救われたdevilsです。その辺は上記の記事を読んでください。
どころか、最近は自傷と近い部分の行動原理からまったく関係ない部分までやたらと被ってきてるんですよ。



 


なんで弾ける楽器が被るんだよ!!

 

 

 


なんで精神的安寧を感じる男が被るんだよ!!!!


 

 


なんで私が一時的な精神の逃げ道として馬鹿ほどディアヴォ新曲予約してすっきりしてた月にそっちも馬鹿ほどディアヴォグッズ買ってんの!?!?!?


えっヨシュア、私に寄せてきてない……?(自意識肥大化ジョーク)
冗談はさておき、そんな風にますますヨシュアに最高な気持ちへさせられてきた折、今回の試聴では奇跡的にアクセス混雑を潜り抜け真っ先に新曲を聴いたのですが、





表題曲「WRONG」が完全に私信だった。

 

 

 

 

 

 

※制作会社社長の公式歌詞ツイート



こんなん同胞へ送る私信じゃん……?



2.「WRONG」で見るヨシュアとこれから

■ブレチャの歴代表題曲から読み解く「WRONG」
試聴一回目で耳を疑った、直接的を超えて露骨とも言える「WRONG」の感情的な言葉選び。これまでとは違うテイストの曲調の中で列挙されたことも相まって、この「WRONG」はブレチャの表題曲としては異端であると感じました。
ヨシュアのシングルの構成は担当声優の島﨑信長さん曰く「表題曲はアーティストとしてのヨシュアの曲、二曲目はヨシュアの人間的な部分の曲」とされており、私の観測範囲でも概ねそのような解釈が一般的です。それを踏まえて歴代表題曲である三曲を比べると、歌詞の傾向の変化が見られます。

 

それなりの アイシテル 今は 伝えないけどさ
ためらえば もてあまし 筆を握りしめている
まっ黒なキャンパス

(『ディア♥ヴォーカリスト Wired エントリーNo.2 ヨシュア』収録、ヨシュア『アーティストナイト』より)

比較論でいうなら、ボクはどうしようもない
崩れ落ちる階段に、いつも捕らわれて

(『ディア♥ヴォーカリスト Xtreme エントリーNo.2 ヨシュア』収録、ヨシュア『アメィジング』より)

同じ空気 吸う価値がない
“生きててごめんなさい”と叫ぶ
街にすがり、いつもいつでも
承認欲求

(『ディア♥ヴォーカリスト Evolve エントリーNo.2 ヨシュア』収録、ヨシュア『WRONG』より)


このように三期分の歌詞を抜粋してみると、表題曲は基本「アーティストとしてのヨシュア」を謳っているはずなのに、回を重ねるごとにどんどん「どうしようもない」本来ヨシュアが隠したいであろう部分に焦点が当てられてきていることがわかります。
前期「アメィジング」の時点からこの傾向は顕著でしたが、今回は「同じ空気 吸う価値がない」「“生きててごめんなさい”と叫ぶ」「すがる」「承認欲求」とワードがより直接的に精神不安定な面を思わせるものとなっています。
これを天才的な自分とどうしようもない自分の双方を自分と認めた自己統合と見るか、不安定さ以上に訴えたい言葉がなくなるほど追いつめられてきている逼迫と見るか、私は前者であると信じたいし、後者だったら全力で彼を受け止めたいです。

■ブレチャのキリスト教的モチーフから読み解く「WRONG」

【©2015 Rejet/『ディア♥ヴォーカリスト Wired エントリーNo.2 ヨシュア』のジャケット。ヨシュアの背後に十字架が飾られている】

以前にも述べましたが、ヨシュアならびにブレチャにはキリスト教的と言えるモチーフが採用されています。そこで、上述より「WRONG」をヨシュアの内情が強く反映された歌と仮定した上で、以下では現在公開されている歌詞を、新約聖書とりわけパウロ書簡の『ローマの使徒への手紙』7章と照らし合わせて解釈していきます。

 

「鏡をうまく見れない夜は 汚れた肉を咀嚼する」

⇒ローマ書で「肉」は現世の肉体であり現世を生きる自分の意味合いで用いられています(ローマ7:18,25等)。ヨシュアにとっての「肉」は自傷した身体という前者の意味でも不安定な自身すべてという後者の意味でも捉えられ、ヨシュアは汚れた己を押し潰す。

 

「そこらに散らばるファストマン 流し込んで、働いて」

⇒「ファストマン」の部分を「最初の人類」の意だと直訳すると、多くの他者の中で汚れた己を隠匿し何事もなさげに生きるヨシュアの姿を指すフレーズだと考えられます。

 

「同じ空気 吸う価値がない “生きててごめんなさい”と叫ぶ」

⇒言うまでもなくヨシュアの不安定な内面の吐露。自罰的感情を生への罪悪感として表現していながら「死にたい」とは決して口にできない点に、ヨシュアの苦しみ方の方向性がありありと噴き出しています。また、聖書では天国に叫びはない(『ヨハネの黙示録』21:4)とされている中、このときのヨシュアは物事を発する単語に「叫ぶ」を選んでしまっているのも示唆的か。

 

「街にすがり、いつもいつでも 承認欲求」

⇒後述する「故郷の空」の解釈から連想し、「街」は今生きる現世、転じてそこにある人的環境。他のフレーズは言わずもがな。ブレチャのヨシュアとして振る舞うことで他者からの承認にしがみつく。

 

「夢見た愚かな私なら」

⇒ヨシュアは過去複数回バンド解散をしており、内一つは前作『Xtreme』内で語られたような実情を孕んでいます。自分最優先のキャラだらけのディアヴォでは異様に映るレベルの他者配慮・些細なことですぐ謝る言動・ドラマパートで恋人へ衝動を打ち明けられない堂々巡り等の一連の傾向は先の経験が残した爪痕とも捉えられ、そんな彼が夢を見る自己を「愚か」と定義してしまう。

 

「刺されてる あの日のWRONG 騙し、騙す 笑顔の数だけ」

⇒タイトルにもなっている「WRONG」は、パウロ書簡中の己に宿る悪を表現する語の英訳としても登場します(ローマ7:19~21)。欲していない悪を行うこと(ヨシュアの場合は自傷行為)は罪とされ、ヨシュアは過去から今日までのそれら罪を隠し、理想的なブレチャのヨシュア像を保つことで他者との関係性を繋ぎ止めています。過去に何度も絶交を経験してきた彼にとって、曲中で言う承認欲求を満たす手段が見放される不安のある部分を晒さないよう必死に自他を騙すことになるのは自然なのかもしれません。

 

「故郷(くに)の空 失う」

⇒同じパウロ書簡の『ピリピ人への手紙』では「しかし、私たちの国籍は天にある」(3:20)つまり「生まれ故郷とは天国を指す」とされています。ここから「故郷の空」は「天国」を意味し、天国へ行くことができない=苦しくても死ぬ意思すら持てない・あるいは天国へ行けないような罪の意識に苛まれているヨシュアの心情の顕れとなります。

 

「けど なぜか 今は、だらしないまま───…………」

⇒ヨシュアのドラマパートでわかる通り、彼の物語は嘘をつくこと然り自傷行為然り、わかっていても同じ過ちを繰り返すことが幾度となく描写されてきました。このままでは天国にも行けないことはわかっていても改善しようとはならない、改善できていないこともわかっていながらなおできない、だからまた彼は苦しんでいくのです。

すなわち、「WRONG」の一番は故郷の空=天国にすら行けないヨシュアの現在の苦しみと現状を謳った内容なのではないでしょうか。

ローマ書7章では終盤「だれが、この死のからだから、わたしを救ってくれるだろうか」「神は感謝すべきかな」(7:24~25)と続くのですが、この歌一番の時点だとまったく救いがない上に神に祈る気力すらヨシュアに残されていなくて、楽曲の歌詞と密接に関わるドラマパートではどうなってしまうんだと記事を書いていて恐ろしくなりました。 二番以降にもドラマパートにも救いがあってほしいです。内情を隠そうとする彼が歌の中とはいえ「価値がない」「承認欲求」と隠せていない言葉を選んでいる点もある種の表出ですし、また何らかの過ちを行い苦しむのではと思うと買うのが怖いです。めっちゃ予約した。

 

「わたしは自分のしていることが、わからない。なぜなら、わたしは自分の欲する事は行わず、かえって自分の憎む事をしているからである。」

(『新約聖書』:ローマ人への手紙:7章15節)


■死ねないヨシュアと死にたく生きたいエーダッシュ
さて、ディアヴォで死生の話をするにあたって避けて通れぬ道はエーダッシュとの対比です。このブログでは毎回ヨシュアとエーダッシュの対比解釈を大なり小なり書いてきていますし、いい機会なので今記事ではがっつり突っ込みます。


【©Rejet/公式PVより。二人が何かとセットで映るのは意図的なものか】

勘のいい方は序盤のくだりで察したかも知れませんが、私は元々エーダッシュの曲からディアヴォに入った人間で、本命ヴォーカリストが彼と仲の良いヨシュアで落ち着いたのはまったくの偶然です。Wired未発売無印未購入で両者の自傷の件知らなかった頃ですし。
前述ではなんで被るんだよと冗談で言いましたが、蓋を開ければなんでも何も、私とヨシュアが共にエーダッシュを視野内に入れてしまうのは自然なことでした。

だってエー、誰へも「いつもいつでも承認欲求」を満たしてくる存在なんですよ。

いわゆるドラマパートの「伏線」と呼ばれるTwitter上でのヨシュアの不安定な行動(事務所に顔を出さなかった真相、他者への配慮のズレ、あり得ない買い物衝動)、ここまですべてエーだけにはバレていないんですよ。
どころかエーは"おかしさへの肯定"をすることから他者が首を傾げそうなヨシュアの行動にすらも変わりない態度で接し、番外ドラマCDでもヨシュアのことを信用し、頼り、笑顔を見せます。あまつさえヨシュアのことを神や天使と彼のモチーフ的に承認欲求を満たすには的確すぎる表現で褒めそやす。つまるところ、「"ブレチャのヨシュア"という理想像を保てないこと」が不安定さのトリガーとなるヨシュアに対して、その理想的な部分ばかりを全面に出せ逸脱した部分には深入りしてこないでくれるエーダッシュは相性がものすごくいいんです。
面白いのは、このエーとの関係性ではヨシュアはあくまで現状維持に留まり、不安定さの根本的解決にはならない一定の距離感です。根本的な救済はヒロインとのドラマでやらないとだものね。

そんな平和的結びつきを持ち、だからこそヨシュアにとってエーダッシュの存在は、時としてメタ的には死で苦しみから逃げることを許さない呪縛にも転じています。
というのも、エーダッシュは希死念慮と戦い生の獲得を求めるストーリーが一貫して展開されてきたヴォーカリストです。得てして、その上でヨシュアに死を示唆させる描写を与えることはいわば描写の二番煎じになり得るばかりに、ヨシュアにとってはエーがいるからこそ、死ぬという苦しみからの逃げ道すら持つことが許されなくなります。
そもそも、今までさらっと書きましたけど、ヨシュアが「“生きててごめんなさい”と叫ぶ」と謳うのは実はとてつもないことなんですよ。ヨシュアはこれまでの衝動が「わけわかんない内にこうなる」と自覚していることがドラマ内で度々明言されています。ましてや死ぬなんて領域の発想はできません。できないから今日まで苦しいんです。もし死にたいと思うことを「死というゴールが用意されいる」という一つの気休め(こちらもこちらで苦痛ですし語弊がある言い方ですが、今回はそれら倫理的面については割愛)とするならば、死んで天国に行く発想すら許されないヨシュアが今いるのは生き地獄です。そんなヨシュアが少なくとも「生きてて」という死の輪郭を捉えた歌詞を唱えたのは、本当にとてつもない。

だから今期ヨシュアには「死にたい」の領域に入ってほしいのか、と言われたら違う気もしますけど、ただ私はヨシュアのことを同一視しているので、最悪でも何でもいいからあの苦しみから解放されてほしいなと書いてて思ってしまったのもまた事実です。この話はもう後はRejet株式会社の手腕に任せてすべてを祈ります。
エーダッシュの存在により死ぬ願望すら許されなかったヨシュアがもし今期でエーダッシュの領域まで踏み入れてしまったなら、それはとても恐ろしい兆候です。ただ彼ほどの声量で自らの苦しみを叫べるようになったとすれば、それもまた他者に救いを求められるようになった一筋の兆しなのだと思っていきたいです。


3.おわりに

■最後に
毎回のことながら、この記事はすべて個人の見解なため公式の意図、およびヨシュアと同じ状況にある人全員の総意ではありません。ご容赦ください。
というか発売前の記事なのでさっくり書こうと思ったら結局いつもと同じくらいの長さになりました。最後まで読んでくれてありがとうございます。
取り急ぎ書いたせいで誤字脱字とか文章の過不足とかあるかもなので、場合によって適宜修正しているかも知れません。CDのほうが発売したらまたブログ書きます。




【©Rejet/『ディア♥ヴォーカリスト Evolve エントリーNo.2 ヨシュア』のジャケット。引用画像クリックでCD購入ページへ】



今期も絶対お互いどうにかやってこうなヨシュア!!!!!



それでは。

 

 

 

ごきげんよう、柘榴です。





前回の記事では閲覧諸々ありがとうございます。
上記事では前期『イナズマイレブン アレスの天秤』から今に至るまでの吉良ヒロトの生き様についてを書きましたが、今回は最新話『イナズマイレブン オリオンの刻印』第3話「刻印を持つ者」についての感想とゆるい考察を書いていこうと思います。

今記事は前回から引き続き「家庭のコンプレックスから解き放たれた子ども」としての吉良ヒロトという視点に一貫した、最後まで吉良ヒロトたっぷりの感想になります。前回の記事をご覧になっていない方は、先にそちらに目を通してからのほうが読みやすいかもしれません。
なお、今ブログの解釈はあくまでいち視聴者が感じた個人的見解であり、公式の演出意図を決めつけたり探るものではございません。悪しからず。







★吉良ヒロトは雛だ。世界の殻を破壊せよ。世界を革命する為に

 

「卵の殻を破らねば、雛鳥は生まれずに死んでいく。
我らが雛だ。卵は世界だ。世界の殻を破らねば、我らは生まれずに死んでいく。
世界の殻を破壊せよ。世界を革命する為に」


上記引用は、その道の人間なら一度はタイトルを耳にするであろうアニメ『少女革命ウテナ』に登場する台詞です。また、ウテナ履修済の方ならご存知の通り、この台詞はへルマン・ヘッセの『デミアン』の一節が元とされています。

 

「鳥は卵の中から抜け出ようと戦う。卵は世界だ。
生まれ出ようと欲するものは、一つの世界を破壊せねばならない。
鳥は神に向かって飛ぶ。神の名はアブラクサスという」


吉良ヒロトはいわば、前期『アレスの天秤』で卵の殻を破ったばかりの雛鳥です。ヒロトは家庭という確執のある世界の殻を打ち破り、その狭い世界で(メタ的にも)死なず一人のストライカーとして生まれ出た。永世学園編を経て卵から飛び出し外界の景色を見たヒロトの視野は拡張され、掛け値ない自由意思によりサッカーを続けていきました。


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン オリオンの刻印』第3話より】

「最初っから入れときゃいいんだよ。世界がひれ伏すこのゴッドストライカー様をよ」
殻を破った途端この調子の良さよ。

アバンから早くも自己肯定感マックスでフィールドに舞い立つヒロト。今度は字義通りの「世界の舞台」で上昇すべく、家庭問題を振り切った無限の自信を必殺技オーラに変え、吉良ヒロトという雛鳥は飛ぶのです。
そんななか、上記引用に出てきた神・アブラクサスとは、善悪をおしなべて包括した悪魔的性質を持つとされる神であり「アブラクサス・デーモン」とも称されます。


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン オリオンの刻印』第3話より】

吉良ヒロトは悪魔に向かって飛ぶ。悪魔の名は灰崎凌兵という。


★吉良ヒロトと灰崎凌兵の"呪縛"と"解放"

今回のキーパーソンにあたる、吉良ヒロトと灰崎凌兵の「ゴッドデビル」ことFW新タッグ。予告時点でユーザー注目度も高かったこの二人ですが、『オリオンの刻印』の彼らには共に、「"呪縛"から解放された子どもの姿」という文脈が存在します。


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン アレスの天秤』第18話より】

『アレスの天秤』作中において、吉良ヒロトは出自と親問題に振り回されながら、灰崎凌兵は竹馬の友の復讐のために大会に出場し、サッカーをしていました。得てして『オリオンの刻印』では、家庭と復讐、それぞれの呪縛から解放されたヒロトと灰崎が描かれることになります。
吉良ヒロトと灰崎凌兵にとって世界の大舞台とは、初めて他者からのしがらみを受けずにサッカーができる自由意思の場なのです。

自己選択の権利を掴んだ彼らには、他人に振り回されている暇など最早ない!


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン オリオンの刻印』第3話より】

敵も味方も、世界大会という状況すらもお構い無し!!

この一見まともなサッカーに思えない一戦。ところがヒロトにおいては、己が貫いてきた個人技で駆け上がり、パートナーの基山タツヤと築いた無茶苦茶なパスを試し、灰崎との一騎打ちのようなツートップに笑み、ヒロトなりにちゃんと己のサッカーを楽しんでいるんですよ。
かつて親に認められるか否かが世界の物差し全てだった吉良ヒロトにとって、能動的にアプローチしたい相手ややりたいことを選択していく生き方は大きな希望であり、『アレスの天秤』で彼が掴んだ自由の表出といえます。

吉良ヒロトの希望と幸福は、世界戦でも留まることを知りません。彼はイナズマジャパンでも、そんな荒れ狂う己のスタイルを受容されていました。


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン オリオンの刻印』第3話より】

吉良ヒロトの歪な対人コミュニケーションのメタファーと言える荒唐無稽なプレースタイルを、最後まで目を逸らさず余裕で受け止めていた灰崎凌兵の存在はあまりにも大きい。ヒロトのキラーパスを楽に受け止められている灰崎が、ヒロトの為人を受け止められないわけがないんですよ。基山タツヤと築いたメソッドによって対人関係を拡張していく(しかもそれが絶対的に承認し合っている)吉良ヒロトの姿は、際限なく貴いのです。
それぞれが初めて"呪縛"から解き放たれた身でプレイしているヒロトと灰崎が、敵味方どころか舞台も使徒も刻印もお構い無しでただただ自由にサッカーしそれを承認し合う様は、まさしく呪縛から解放された姿そのものだったのではないでしょうか。


★吉良ヒロトは"内的な革命児"である


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン オリオンの刻印』第3話より】

ここまで破竹の勢いを誇るヒロトへ、しかし更なる敵の魔の手が。相手チーム「レッドバイソン」のエースで、実は「オリオンの使徒」という物語の超重要組織に所属している「刻印の選手」──と大々的な属性てんこ盛りのペクくんが牙を向きます。


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン オリオンの刻印』第3話より】

「刻印の選手」率いる粗暴なプレーがヒロトを襲う!どうなる吉良ヒロト!




【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン オリオンの刻印』第3話より】

「ザ・エクスプロージョン!!!」

刻印持ち相手にもやりたい放題か…………。
というか主人公チームの人間がするカオじゃないぞヒロト……そういうとこだぞ……愛しい……。

アバンでもその傾向は顕れていたが、殻を破った吉良ヒロトの価値観は極めて自分本位だ。スタメンでないこと自体には文句も垂れず「自身がいるか否か」の発言に終始し、琴線に触れた選手としかボールを通わせず、好き勝手なタイミングで必殺技を放ち、あまつさえ第一話からずっと戦力分析さえしないし、最早「オリオンの使徒」の脅威にすら関心を持っていない。サイコー過ぎて余りある性格である。
そんな直向きなまでに「己が信じるままプレーすることが赦される存在」になれた選手こそ、今まで親や家庭あるいはコミュニティといった"周囲の事情"に縛られに縛られてきた吉良ヒロトだという事実は、彼への更なる福音であると自分は思います。
吉良ヒロトは殻を破り、己の中から世界の"革命"を果たしているのです。

ここでいう"革命"は記事冒頭がウテナだっただけにな言葉の綾が第一義ですが、自分自身の在りように内的な革新を起こしてきた吉良ヒロトの気高さは、確かに革命と大仰に飾るに相応しいのではないでしょうか。
このような視点で見ると、「オリオンの使徒」として公的・外的に革命(作中でいう"調整")を起こさんとする刻印の選手と圧倒的自己意思として私的・内的な革命(自己の世界の拡張)を突き進むヒロトのプレースタイルは、ある意味では対比関係だとも言えます。対照的だからこそ、ヒロトは刻印の事情には我関せずなのかもしれません。


★吉良ヒロトは雛だ。世界を破壊し、革命をする


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン オリオンの刻印』第3話より】

ヒロトに下される唯一の「大人から指示を受ける描写」がこれなの、最高過ぎませんか……?

今日までで家庭のしがらみを断ち切り、居場所を確固たるものにし、自己肯定と自由を掴んできた吉良ヒロトにとって、恐れる脅威など世界のどこにもありません。世界の殻を破ったフルスピードに乗せて、同じく確執から解き放たれた灰崎と共に、地平線の果てまでシュートを決めていく!

雛鳥だった吉良ヒロトは、無限のパワーで更に飛翔する!!


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン オリオンの刻印』第3話より】

自らを格段に上昇させる!


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン オリオンの刻印』第3話より】

自らのオーラで翼を生やす!!


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン オリオンの刻印』第3話より】

「「ペンギン・ザ・ゴッドデビル!!!!」」


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン オリオンの刻印』第3話より】

雛鳥、物理的に出しやがった……(DAISUKI)

今記事におけるペンギン・ザ・ゴッドデビル最大の特筆点は、「ヒロトが翼を生やした」一点に尽きます。
吉良ヒロトはかつて家庭に自立と自由意思の翼をもがれた子どもです。そんな彼が世界の殻を破り外界へ飛び出し、数々の必殺技からその身ひとつで上昇していき、今回ついに自ら翼を生やしていった姿と過程は掛け値なく希望に満ち溢れていて眩しい。少なくともこの記事のような解釈で吉良ヒロトを見続けている自分にとっては、彼が羽ばたく瞬間が金色の必殺技オーラのように眩しく映りました。
卵の殻は既に破られ、雛鳥はついに翼を持ちました。

ちなみに蛇足ですが、タツヤとのゼロ距離必殺技こと「コズミックブラスター」とパートナーとの距離感が異なっているのが、そのままヒロトの心の距離を顕しているようでその違いが素敵だと常々感じます。


『イナズマイレブン オリオンの刻印』での吉良ヒロトの存在とは、今記事のような文脈上においては圧倒的な「機能不全家庭から脱した子どものその後」を描いた物語です。
『イナズマイレブン』シリーズは対象年齢が上がったとはいえ一側面では「児童向け作品」であり、児童とは家庭環境に関わらず家庭から離れられない存在だ。だからこそ、規定の"不和家庭像"や"問題のある家庭に生まれた子どものその後像"を希望たっぷりに破壊する様を「児童向け作品で」見せつけ続ける吉良ヒロトの姿は、きっと現実世界でもテレビの前の誰かの希望に繋がると自分は信じています。
吉良ヒロトは「幸福そうな出自の裏で問題を抱えさせられた子ども」を透明化せず、「親に認められるかよりも振り切っていいこと」「その先にもきっと希望があること」を示すのですから。

吉良ヒロトは、児童向けアニメという大舞台で世界の殻を破ってみせる、世界の破壊者であり革命児なのです。


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン オリオンの刻印』第3話より】

がんばれゴッドアンドデビル!!!!



ヒロトへの最大感情ブログは前回っきりの予定だったのですが、今話のヒロトの生き様があまりにも完璧すぎたので、結局いつも通りの文章量で書いてしまいました。恐るべしかな吉良ヒロト。
今後再びヒロトの目立った活躍のある回がきたらまた何かしら書いているかもしれません。その際にもご覧になっていただけると嬉しいです。


これからも吉良ヒロトと、吉良ヒロトと同じ道を生きざるを得ない子どもたちに溢れんばかりの祝福を。

それでは。

 

 

ごきげんよう、柘榴です。

最近、絶賛爆熱展開中の『イナズマイレブン』シリーズに絶賛再熱しております。
無印当時からの自分のお気に入り選手は風丸と佐久間とアフロディです。それはもう全員もれなくボコボコになるアニメ二期はヒーヒー言いながら観て、原作ゲームでは当然全員自チームに引き入れるくらい。
そんなわけで、新シリーズ『アレスの天秤/オリオンの刻印』からの新選手でも「まあそういう長髪の線が細そうなタイプにハマるんだろうな」と思うじゃないですか。
自分が今たまらなく大好きになっている新選手は、





吉良ヒロトです。






【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン オリオンの刻印』第1話より】

今回は吉良ヒロトの話をさせてください。







吉良ヒロトは新シリーズ『アレスの天秤』からの新選手(正確には無印時代からいるにはいるのですが、説明するとややこしいので割愛)で、作中大財閥である吉良財閥の御曹司にして自他共に認める不良少年です。
『イナズマイレブン』シリーズではしょっちゅう人が事故に遭ったり、不適切な家庭に生み落とされたり、そして真っ当な人格形成時期から外れた「不良」な選手が多々登場します。吉良ヒロトもその一人と言えばそうなりますが、しかしながら彼は、個人的にそのカテゴライズをぶち抜く程かつてなく"刺さる"生き方をしていました。


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン アレスの天秤』第18話より】

高所得家庭出身だけど適切な育ちを与えられなくて、


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン アレスの天秤』第18話より】

最悪なストレス発散方法しか覚えられなくて、


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン アレスの天秤』第18話より】

自分なりに居場所を探して、


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン アレスの天秤』第18話より】

出自についてどこかコンプレックスを抱えてしまう。
そういう子どもだったのです。吉良ヒロトというストライカーは。

シリーズにおける「不良」選手は、大抵見るからにボロボロな家庭環境であったり凄惨な事故被害者であったりするのですが、吉良家は家庭内がわかりやすく荒れているというわけでもないし、今期では全員生存しているし、むしろ家なんて大豪邸の高所得家庭です。
だからこそ、一見何不自由なさげな「裕福な子ども」でありながら自立のための養育を放棄された「不健康な子ども」として生きる吉良ヒロトの姿が、自分には見れば見るほど鮮烈で眩しく映りました。

わかりやすく滅茶苦茶な家庭でなくても、当人にとっては世界からはみ出たと感じてしまえばどうしようもないんですよ。


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン アウターコード』第2話より】

吉良ヒロトは「不良」を強調する演出として度々口元(風船ガム)と挑発的な決めポーズの動作、また大量のアクセサリーが映されますが、あれらは文脈としては喫煙とピアスのメタファーであると自分は思っています。
まあその解釈がこじつけにしろ、ヒロトはメタファーとして自分の身体を傷付ける行為をしている、もしくはそのまま「見た目が"怖そう"と称される」「家に帰らない」「悪い仲間とつるんでいる」「喧嘩ばかりしている」と悪そうなことは一通り行っていることが示されています。
吉良ヒロトは異常にストレスのかかる星の下に生まれさせられたうえ、適切なストレス発散方法も身につけてこられなかった子どもでもあるのです。そりゃあグレたって言われるわ。


他者との望ましい交流能力が養われていないヒロトは、そんな風に適切なストレスへの向き合い方を知る機会も与えられなくて、宜なるべきかな社会的居場所も持っていません。
ヒロトの「不良」描写としてもうひとつ、「学校に行っていない」という不登校児設定があります。永世学園サッカー部に所属済の本編時間軸では「クラスや授業に出席していない」と言ったほうが厳密かもしれません。いずれにせよヒロトは、作中では最後まで制服描写もなければろくな学生描写もありませんでした。


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン アレスの天秤』第18話より】

当たり前のように私服で時間外登下校してきます。

自分が吉良ヒロトに惚れ込んだきっかけでもあるのですが、この「御曹司/不登校児/ゴッドストライカー」のトリプルスタンダードが滅茶苦茶好きなんですよ。言ってしまえば"部活もの"ジャンルであるアニメで制服も着ず授業にも出ずサッカーをする時間だけふらっとやってきて、あまつさえエースの座にいるんですよ……最高だしヤバくないですか……ヤバいですよ……(脳内奥入)


吉良ヒロトは学校に行きません。そも、彼が在学する永世学園自体が吉良財閥の建てた施設で、永世サッカー部も吉良財閥をスポンサーとして成り立っているチームなのです。
よりによって親が出資して親の銅像が建っている学校にヒロトがわざわざ足を運ぶだけでも彼の精神的労力は想像に難くないのに、親の強制で入部した永世サッカー部内でも、ヒロトは独りよがりな態度から当初チームに馴染めていませんでした。

とりわけ、財閥が運営する児童養護施設出身で、ヒロトの実父から自身にない愛情を注がれている(とヒロトには映る)チームキャプテン・基山タツヤに対しては、ヒロトは「親父から期待されている奴にはわかんねーよ。何も、何一つな」と愛されなかった自身と比較し強く当たっていきます。
タツヤもタツヤで「父さん(ヒロトの実父)に本当に愛されてるのはヒロトだ」と反論してくるし、この認識の違いも解消できないままヒロトはタツヤ、ひいては彼率いる永世イレブンのことを大会直前に突っぱねてしまいました。


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン アレスの天秤』第18話より】

今のヒロトが持ち得る価値観での選択肢は「家庭内で愛されている」か「家庭内で愛されてこなかった」の二択のみです。
適切な養育を受けず成長した子どもが考えつける選択肢はあまりにも少ない。健全な価値観形成のタイミングを逃したまま、そんな視野が狭い状態で自分の居場所を模索する道のりは大変な徒労となってきます。
くわえて、日頃は傲慢なまでにオレ様で自信過剰に振る舞うヒロトですが、前述したタツヤとの口論でも顕れたように、家庭やコミュニティの問題になると途端にセンシティブに苛立ちます。
すなわち、吉良ヒロトに生まれながら蔓延る親問題とは、彼に対し"コンプレックス"という大きな足枷として、自己承認にも対人関係にも蝕んできてしまっているのです。

いくら家出を繰り返しても、悪い仲間とつるんでも、たまに学校にきてみても、吉良ヒロトはコンプレックスに足をとられ独りきりです。
ついには大会をフケて、居場所のない世界をふらふらとし、自己を見放し、幼少期から愛していたサッカーすら手放そうとしていきました。



それでも、吉良ヒロトは自らの足を動かし続けました。大好きなサッカーを諦めませんでした。




【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン アレスの天秤』第18話より】

タツヤがかつて家庭外で自己を承認してくれたことを思い出し、


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン アレスの天秤』第19話より】

タツヤが今いる場所へ自らの足を進ませ、


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン アレスの天秤』第19話より】

タツヤと共に走り出すために!

吉良ヒロトが切り拓いた道は「親問題を切り離してしまうこと」でした。
ヒロトはタツヤによって家庭の外界に気付き、家庭不和に振り回されること自体からバッサリ切っていったのです。「親に認めてもらう」ことよりも「タツヤの夢の助っ人となる」ことを選択し、自身の足でタツヤがいる場所まで飛び込む。そのことを実現した瞬間の世界の目映さは、ヒロトの視界ではどんな必殺技よりも強い光を放っていたことでしょう。
基山タツヤの夢の助っ人として初めて家庭外の景気を見た吉良ヒロトの前に、親にまつわるコンプレックスなんてもう敵ではありません。そこにいるのは掛け値なく傲慢で、オレ様で、自己肯定感に祝福された最強のストライカーなのです。

文字通りに家庭の外界へ飛び出した吉良ヒロトは、文字通りに自らの力で上昇していきます。この溢れだすパワーは、ヒロトの超次元サッカーとしての演出に一貫される「自らの力で高く上昇する」パフォーマンスで顕著に表れています。


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン アレスの天秤』第19話より】

オレ様に駆け抜けてく!地平線越えてゆく!!

ヒロトの得意な戦法は、抜群の動体視力でぐいぐい上昇して攻めるワンマンプレー。それは今日まで一人で価値観を形成してきた彼の生き様の象徴でもあります。
同時にそれは、吉良家のことに縛られながらもギリギリのところで自暴自棄にならず、自己と自身の大好きなサッカーを愛し通せたヒロトの誇り高さと呼べるのではないでしょうか。

吉良ヒロトへの祝福は終わりません。彼の次なる幸福は、初めて気付けた基山タツヤという外界との繋がりが、現在のコミュニティを自身の居場所に転じさせる土壌となっていたことです。


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン アレスの天秤』第20話より】

吉良ヒロトの苛烈なワンマンプレーを、永世イレブンは次第に受け容れ、なんとそのままチームプレーへ組み込んでのけました。
シュートと変わらない威力の強烈パスに代表される歪なコミュニケーションしかとらないヒロトと、それを字義通り全部受け止めるタツヤ率いる永世イレブン。これはサッカーに留まらず、比喩的にも直接的にもヒロトの人間性がコミュニティで受容された瞬間です。
吉良ヒロトは、家庭の外の居場所を見つけ、掴み取りました。


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン アレスの天秤』第20話より】

家に一人きりでサッカーをしていたヒロトが初めて外に出たきっかけはタツヤです。そして、ヒロトが初めて家庭以外の選択肢に気付けたのもタツヤがきっかけでした。この「家の中で一人でサッカーをやっていたヒロトが、タツヤと出会い家の外でサッカーするようになった」流れが「親の愛情と家庭の居場所しか選択肢を持てなかったヒロトが、タツヤへの夢の手助けと愛情で家庭外の居場所を掴めた」メタファーに直結しているのはあまりにもストレートで、ヒロトの纏うオーラのように輝いてやみません。
吉良ヒロトは基山タツヤに自身の在り方を承認されるし、基山タツヤは吉良ヒロトに夢を後押しされる。それらの爆発的な相互作用により、サッカーチームという吉良ヒロトの居場所は強固さを増していきます。

居場所を見つけた吉良ヒロトは、合体必殺技だって放てる!!


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン アレスの天秤』第20話より】

「「コズミックブラスター!!!!」」

コズミックブラスター、吉良ヒロトが基山タツヤとゼロ距離になる技なんですよ……あの他者との距離が開けに開けてた吉良ヒロトがですよ……ヤバくないですか……ヤバいですよ……(脳内奥入)

接戦の末、この試合でヒロトたちの所属する永世イレブンの敗退が決まりました。しかしながら、ヒロトはサッカーを手放すこともしなければ、大会後も自分の意思で永世イレブンに留まることを選びました。
吉良ヒロトは家庭以外の居場所を見つけ、選択し、自己決定し、祝福されたのです。


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン アレスの天秤』第24話より】

結局のところ、吉良ヒロトの家庭問題はいまひとつ解決していないし、最後まで部活動以外は不登校のままでした。しかし、ヒロトにとってはそんな今がサイコー幸せなのです。タツヤとのサッカーチームという選択肢に気付いたヒロトは、家庭を切ってそこでなんだかんだ仲良くやっていけている姿が描写されていきました。それが、彼が導いた社会的居場所に対するアンサーなのでしょう。
初めは親の強制で入れられたコミュニティである永世イレブンだったけれど、そのような出会いも結果としては悪くなかったのかなと自分は思います。親の問題は強制的でも、子ども同士のかかわりは子ども一人ひとりの意思で決定づくのですから。


『イナズマイレブン』シリーズに触れた現実世界の子どもにも、ヒロトのような「裕福で不健康な子ども」や不登校児は確実に存在します。ならば、外れたり不登校のままエースストライカーの座にいる子どもが登場して然るべきじゃないですか。
「御曹司/不登校児/ゴッドストライカー」のトリプルスタンダードの属性を祝福されるまで内包した吉良ヒロトの存在は、ある種の救いであると、少なくとも自分は思っています。

おそらく、自分が風丸や佐久間やアフロディとはまるでタイプの違うヒロトに惹かれていったのもそういったところが起因しているのでしょう。
吉良ヒロトの生き様には、子どもの頃の自分をハグできたような嬉しさと愛しさが込み上げてきてしまうのです。


だって吉良ヒロトは、祝福されたゴッドストライカーだから!!



【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン アレスの天秤』第20話より】

出生家庭に恵まれなくても!!違う出生境遇の子のパートナーになれる!!!


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン アレスの天秤』第20話より】

不登校児でも!!!フットボールフロンティアに出場できる!!!!


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン アレスの天秤』第20話より】

家庭外の居場所にたどり着ける!!!!!


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン オリオンの刻印』公式サイトより】

日本代表にだってなれる!!!!!!







全力でハグしたい…………代表入りおめでとう…………。

基山タツヤと共に部活のユニフォームを脱いでサッカーをする。この約束されたゴールこそ、吉良ヒロトにとって何よりの福音だと思います。親が建てた学校の部活動・親がスポンサーであるチームから脱してサッカーができることはそのまま家庭からの侵食を防いだことを意味しており、ヒロトにとってこれほどの祝福はありません。
※チームやメンバーとしての「永世イレブン」がよくなかったという意味ではなく、あくまで「親の傘下で運営される組織」という運営形態に焦点を当てた場合の話です。誤解なきよう。

家庭のしがらみをすべて断ち切ったヒロトに怖いものはありません。コンプレックスであった親問題を振り切ったヒロトには、あとはもう自身を好きになる要素しか残っていないのだから。
吉良ヒロトは、こちらには計り知れないくらい、自己のことが大好きなんですよ。


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン オリオンの刻印』第2話より】

OPで物語的キーパーソン(後ろの一星くん)を差し置いて一人ノリノリでキメていたり、


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン オリオンの刻印』第1話より】

ポージングのセンスが一人だけ少し違ったり(かわいい)、


【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン オリオンの刻印』第1話より】

完敗しても一人だけ自信満々でいられたり。つくづくサイコーな性格か。

というよりも、ヒロトって土台「他者の機微を読み取りながら物事を見る」という人的環境・対人経験からくる能力がまったく養われていないような言動がちらほらあるんですよね……そういうとこだぞ……愛しすぎか……。
自分一人で価値観を作ってきたから感性が少しズレているけど、きっと今はそれでいいんです。ヒロトが自身で決めた居場所の中で、自己を愛せて楽しそうならそれでいいのだと思います。

てっぺん目指すどころか突き抜ける、大舞台に乗っても負けない天井知らずの自己肯定感さえあれば、吉良ヒロトは名実共にゴッドストライカーなのです。



【©LEVEL-5/FCイナズマイレブン・テレビ東京/『イナズマイレブン オリオンの刻印』第2話より】

がんばれゴッドストライカー!!!!


今記事で書いてある解釈は、あくまでいち視聴者が感じた個人的見解です。まとまりのない文章でしたが、吉良ヒロトがそれほどの熱量を生み出すような選手であることが伝われば嬉しいです。もし伝わらなくても「コイツまたヤベーCV:増田俊樹キャラ引き寄せてんな」くらいには何か感じていただければ幸いかと。
次週の『イナズマイレブン オリオンの刻印』第3話ではヒロトがひと暴れするようなアオリ方がなされているので、なんだかマジで勝利してほしいです。
吉良ヒロトの今後の活躍に、心の底から期待しています。

これからも吉良ヒロトと、吉良ヒロトと同じ道を生きざるを得ない子どもたちに溢れんばかりの祝福を。

それでは。


(追記)
『オリオンの刻印』第3話の吉良ヒロトが最高過ぎたのでまたヒロトについて書きました。