ツゲにツツジを接いだそれ

ツゲにツツジを接いだそれ

感想と解釈のブログ

†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†



主にドルステやRejet作品についての感想や考察もどきをあげているブログです。

自己解釈やファンアートの要素を含むため、それらが問題ない方のみの閲覧を推奨します。
また、当ブログの文章や画像を転載したい場合は、当方に一度確認と許可をとってくださいませ。
公式・事務所・関係各社等とは一切関係ございません。

もしも何か伝言等がございましたら : zakuro040◆gmail.com(◆→@)


ブログ開設日:2011/05/11

†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†*:;;;:*†

ごきげんよう、柘榴です。


来たる2026年、年始の『Rejet Fes.2026 Answer』にて、愛してやまないディアヴォシリーズの新作『ディア♥ヴォーカリスト RISE』が発表されました。

ティザーPV公開のみの現時点、既に全バンド揃い踏みが確定して早くも新章の予感がしているので、今の内に無印から第8期における書きたい感想を各バンドごとにすべて書いておくことにします。
ポジティブからネガティブまでなんでもありのネタバレ感想です。本当に思いついたところから書いているので、万遍さの欠片もなければ主役よりサブキャラへの言及が多い箇所すらあります。その辺の偏りはご了承ください。

なお、自分は無印~第2期は『Rejet Fes.』と一部アルバムのみリアタイ、第3期からシリーズ通してのリアタイ購入勢です。作品の性質上、リアタイか否かでも感想の抱き方が変わりそうな手前、その辺りを加味してご覧いただけますと幸いです。





■LUMIERE


【©Rejet/ディア♥ヴォーカリストシリーズポータルサイトより】

LUMIEREは、ヴィジュアル系をルーツとする四人組バンドです。ヴォーカリストはクールな王子系のレオード、ギタリストは面倒くさい性格がにくめないシンバ、ベーシストは明るく幼い顔立ちのノエ、ドラマーは兄貴肌と親しみ深さを併せ持つトーマで、ノエがリーダーを務めます。

楽曲面においては、LUMIEREが毎シリーズのトップバッターを担うからか、癖が少なく誰にでも愛されるようなロックチューンを表題曲にすることが多い印象です。一方、カップリング曲としてどこか退廃的な世界観を描いた攻めた音楽を発表する傾向にもあります。
ベーシストのノエがリーダーであり物語のキーマンになったこともある関係からか、『アンビシャスナイト』や『Dilemma』などベースの音を楽しめるナンバーも少なからず存在します。

本編ドラマはよく「初心者向け」と称されることが多いように、Rejet作品と聞いて想起されるようなハードな猫写はヴォーカリスト一少ないです。
レオード自身が比較的トラブルを生むタイプではなかったり(あくまで比較的ですが……)、ヒロインとの交際も非常に和やかなムードが続くことから、レオード本人の性格面をネックとした困難やヒロインとの喧嘩はあまり起こりません。そのため、自身が抱える生得的な身体的困難、あるいはまったくの外的要因をヒロインと共に乗り越えるストーリーになることが多めです。 いわば“ハードなRejet味”が少ない点、毎期ごとの発生する困難に連続性が低い点から、どの本編ドラマからでも入りやすそうな雰囲気なのが初心者向けと呼ばれる所以かもしれません。

では、このバンドで“ハードなRejet味”を担うのは誰か。
それは、前述したリーダーのノエです。



とにもかくにも公式公開音声を聴いてください。

ノエは初登場からもう大変だ。初登場は第3期『Wired』で、その際は「LUMIEREのリーダー」という半ネームドキャラでの登場でした。
第3期は主要キャラクターの交代、本編ドラマの形式がオムニバス仕立てからストーリー性重視に変わるなど重要な転換期でもあるのですが、では、そんな期のトップバッターでLUMIEREの物語はどのように描かれていったのか。
それはずばり「ノエが脱退騒動を起こしてレオードとヒロインの交際に波風を立てていく」という内容でした。初手からエネミー枠として出てくるお前は何なんだ。

自分の初ディアヴォ本編ドラマ視聴は、何を隠そうこの『Wired レオード』です。CD購入自体はまた別なのですが、該当CDが地獄みたいに怖いと噂のカレだったので覚悟が決まらず歌しか聴いていませんでした。
元々ベーシストのバンギャをやっていたため、よりによってベーシストの男に最初の交際への擬似体験をしっちゃかめっちゃかにされたことには、まさに頭を殴られたような衝撃を受けたと呼ぶほかありません。
これにより自分は、顔も声も名前もわからない男にハラハラさせられる怒涛のディアヴォ本編デビューを果たしました。


【©Rejet/Rejet公式サイトより】

なおこの『Wired』、大トリのCDも渡米した憧れのバンドマンのせいで彼氏が大荒れする話なので、余所の男のせいで交際が滅茶苦茶になる話に始まり余所の男のせいで交際が滅茶苦茶になる話に終わるすごい期です。

その後、ノエらバンドメンバー達は第5期『Evolve』で名前と簡単な話口調が開示され、第6期『Raving Beats!!!』でキャラクターデザインが発表、第7期『Unlimited』でCV実装と本格的なストーリー参入を果たしていきました。
とりわけ印象的な出来事は、やはり第6期のキャラクターデザイン解禁でしょうか。何せ、ノエにおいてはピンク・黒・金が基調のLUMIEREで、メインカラーが水色というあまりにも意外性に富んだビジュアルをしていたのですから。
あえてLUMIEREから“浮いた”容姿を持たせる点は、ノエがサブキャラクターの一人でありながらそれ以上のキーパーソンにもなり得る象徴に思えます。初めてのバンドメンバーのビジュアル公開であるLUMIEREで、バンドメンバーもただのモブキャラクターでは終わらなせないディアヴォシリーズの意思を感じられてとても好きな思い出です。


ところで純度100%の自慢ですが、キャラデザ発表時にノエのキャラデザが第3期から待ってた甲斐あって超サイコーという旨をキャラデザのスオウ先生へ連リプしたら、翌日先生にノエの人生の一部にされたのが終生の自慢なのでここで自慢させてください。心の底からの自慢なんです。

LUMIEREの中で水色基調のデザインという意外性や、リーダーというキャッチーなポジション、そして既に第3期で人物描写が存在していた点から、バンドメンバーの中でも注目度が高い印象のノエ。続く代表的なエピソードといえば、第7期の本編ドラマのバンドパートでしょう。

シンバ「そーゆーオマエの曲は、だいたいどれも地味すぎじゃん。
 勢いもないし、だからいつも表題曲には選ばれないんだよ」
ノエ「痛いとこ突くなあ……。
 ……でもさあ、オレはあーゆー曲、好きなんだよ。
 なんだかんだで、レオの声が一番映えると思うんだよね。
 たしかに、今のルミエにはみんなを引っ張ってく力が求められる気がするし、
 オレの曲がどれも表題に向かない曲調なのもわかってる。
 もっとアップテンポで、勢いや華やかさがある……
 まるで、ステージの上のレオ自身みたいな曲が求められてんだろーなって。
 でもさ、だからって、オレたちのほうからレンジ絞ってく必要はないじゃん?
 折角四人でやってんだし。だから、オレが狙ってるのは最初から2曲目──
 その代わり、表題曲とは全然違うルミエらしさを表現したいってゆーかさ」

(『ディア♥ヴォーカリストUnlimited エントリーNo.1 LUMIERE』DISC2 Track.2)

レオード「これまでもそーだったケド、アイツが作る曲は、結構大人っぽい曲調が多い。
 ……見た目はあんななのに」

(公式Youtube『CLIMAX TUBE』内投稿「LUMIERE / LUMIERE RADIO❤パート2【RADIO】」より)


ノエは楽曲の原案制作にも携わっており、LUMIEREの退廃的な世界観の音楽は大半がノエ作のものとされています。その根幹には「レオードの歌声が映える世界観の楽曲を生み出す」という、自己ではなくレオードを輝かさせるためというポリシーがある点は、ノエという人物を語るには絶対外せないファクターです。
一方、ノエのこの作曲傾向をレオード本人は「見た目はあんななのに」とレオードのための世界観だとはまるっきり思っておらず、このようなすれ違いも二人の関係性に面白味を感じさせます。

自分はこの、ノエのレオードに対して覚悟がキマりまくっているところが大好きです。上記の「最初から2番目狙い」という彼の楽曲制作のスタンスはそのままノエとレオードの現状を顕しているかのようで、半ネームドキャラとしての初登場『Wired』の時点で開始1分でレオードに冷たくあしらわれるノエが見られます。初登場から方向性が決まりすぎてるだろ。
二人のどこまでいっても平行線なすれ違いは、レオードの公式SNSアカウントの投稿を「リーダー」か「ノエ」で絞ってサーチするとだいたいわかるのでオススメです。


自分がノエからもらったリプライ返信。1個目は「この男は絶対レオードの話題につなげやすそうなリプを優先的に拾うだろう」と読んであえてレオードをちらつかせる文章にしたら本当にその通りになって大笑いしたやつで、2個目は純粋にノエと擬似恋愛エミュレートしたかったのに「どんな話題だろうとレオードの話につなげる」という現実をお出しされて謎の敗北を感じたやつです。清々しいくらい覚悟がキマってるなこの男……。

閑話休題。このように、ノエはレオードのことを人一倍気にしており、音楽活動でも日常でもレオードには気持ちよく接している、少し子どもっぽいけど楽しいリーダーとして描かれることが基本となりました。
しかし、そんなノエはまたしても、本編ドラマでトラブルの火種となるキーパーソンに抜擢されてしまいます。

第8期『Headliner』本編ドラマのバンドパート、ここでノエは、レオードの身体的困難をバラしてしまう展開を生んでしまったのです。

ノエ「耳、大丈夫? アレから悪くしてない? もし必要だったら、右側のアンプ、若干音大きくしとく」
レオード「……何の話だ。問題ない」
ノエ「なら良かった! オマエのソレを知った時は驚いたケド、毎回オーディエンスを感動させる歌を完璧に仕上げてくるんだから、オレやっぱ、オマエのコトすげーって思うよ!」
レオード「……ハ?」
シンバ「……何の話?」
トーマ「オマエ、さっきのは耳の調子が悪かったのか?」

(『ディア♥ヴォーカリスト Headliner エントリーNo.1 LUMIERE』DISC2 Track.2)


この展開は、シリーズどころかRejet作品としても異質な点を2点包含していると自分は強く感じました。

1点目は「キャラクター設定から逸脱した部分のモラルのズレ」です。
横暴な男が幅を利かせることで有名なRejet作品、しかしながら、意外にもその横暴さには一定の線引きがされています。たとえば、Rejetのオレ様代表『DIABOLIK LOVERS』逆巻アヤトは他者の攻略ルートでは実弟の身を案じる思慮深い側面があったり(『MORE,BLOOD』逆巻ライトルート、逆巻スバルルート等)、PSP時代の名作『月花繚乱ROMANCE』の鹿野葵は傲慢かつ性に奔放でありながら女性同性愛の攻略ルートでは同性愛を何ら気にしない言葉をヒロインへ返す、当時では非常に珍しいフラットな価値観を見せました(八重原ダリアルート)。
このように、Rejet作品は基本フォーマットとして、キャラクターの基本設定となるアヴァンギャルドな面以外のモラルには、ある程度社会的ハビトゥスに鑑みたまっとうなバランスで描かれることが大多数でした。

ところが、ノエはその線引きを踏み越えました。上記引用のように、本人が隠している身体的困難を勝手にバラすかなりヤバめな蛮行をしたのですから。やーいノエお前の倫理観逆巻アヤトと鹿野葵以下!!

この前代未聞のキャラクター描写は、彼が持つ異質さの2点目につながっていくのですが、2点目として「過ぎた罪に相応の罰が下らない」部分も目を引きました。
Rejetの男達は、横暴に働けば働く分大抵何かしらの代償や手痛いしっぺ返しを受けます。滅茶苦茶な言動を起こす彼らには大抵そうなってしまうに納得足り得るバックボーンがあったり、特に同情の余地がなければいずれ酷い罰が待ち受けています。ディアヴォシリーズにおいても、初期は全員満遍なく酷い目に遭っていたものの、近年ではトップ・オブ・クズことジュダとモモチが集中的にコメディシーンで可哀想なことになる傾向にあります。
事実、ノエにおいても、第3期で脱退騒動を起こした罪業にはしっかり向き合っている猫写が散見されました。


【動画をもって第3期公開贖罪フェーズがある男、ノエ】

ところが、第8期のノエに関しては、レオードの身体的困難をバラしたことへ何の罰も受けていません。

これは、罪業を負ってなお味方サイドに来るのなら罪業に対して洗礼と贖罪のプロセスがあってほしい自分個人の感性が大きい感想なのかもしれませんが、それでも客観的にもやらかしへお咎めなしなのはRejet作品内でもあまり類を見ず、この展開には非常に驚きました。
むろん、ドラマの主役はあくまでレオードなのでそこまでノエに比重を置かない方針だったのかもしれませんが、少なくとも視聴者視点で、ノエが第8期に背負った罪業への洗礼を受けたと読み取れる発言が現時点では描かれていません。
当てるべき焦点がノエではなくレオードで、ノエの罪業の清算には必ずしも描写が割かれないと言われてしまえばそこまでなものの、それでもなおお前本当大分ヤバいことしてんだぞわかってんのかノエ感は、自分がノエの覚悟とままならなさに心奪われた人間だからこそ強く抱きました。

ノエの状況をまとめると、レオードの歌が輝く世界観を至上としながら、その割にレオード関係でやらかしまくる、そんなどうしようもなさがクズ性・リジェ男子性に該当するキャラクターになりつつあります。なので、第9期では今度こそノエに罪業に対する罰が下るのか、このままお咎めなしでリジェ男子の特異点となるか、今後も目が離せません。
ノエは作中で五本指に入るほど大好きなディアヴォキャラクターなので、サブキャラクターとして描写が許される範囲を限界まで使って、彼にも光の差す明るい未来が待っていることを願うばかりです。

なお、自分はノエの担当声優である上村祐翔氏についてまだ初学者なのでノエの声音への想像の幅が乏しいのですが、個人的には怖いもの見たさであり得ないくらいの罪業への反省フェーズの演技が聴いてみたいです。ノエお前は一度ちゃんとレオードと話し合ったほうがいいよ……。


■NSFW


【©Rejet/ディア♥ヴォーカリストシリーズポータルサイトより】

NSFW(Not Safe For Work)は、自他共に認めるクレイジーを標榜した、エキセントリックなパフォーマンスが持ち味のスリーピースバンドです。溌溂とした最年少ヴォーカリストのエーダッシュ、おおらかでちゃらんぽらんなギタリストのシックス、オシャレでこだわりの強いドラマー&DJのナイトメアの三人で構成され、リーダーは特に決まっていません。

楽曲面ではデジタルミクスチャー系に強く、王道ロックチューンにおいては正規メンバーが担当するギターとドラムの腕が光る曲調が多いです。特に前者は、一見Cメロにきそうなメロディがイントロや1番サビ直後にくる構成等、クレイジーに相応しい意外性溢れる曲作りが印象的です。
それ以上に、歌詞がこれまたクレイジーな世界観や言葉選びでありつつも、同時に全人類を肯定するような優しさに満ちています。楽曲総選挙で上位にランクインした人気ナンバー『KKK→E』や『#HAPPY』でも、それぞれ無条件に聴いている人の存在を認めるような言葉を幾度も紡いでいます。

バンドとしての最大の特筆点は、中心人物であるエーダッシュが音楽知識へやや疎いように描写され、アレンジ等をメンバーへ一任することに躊躇いがない点です。
エーダッシュは実兄の代役をルーツとする成り行きで音楽を始めたからか、自らの得意ジャンルを「ピコピコ系?」と曖昧に表現するなど、他のヴォーカリストに比べ知識面で大味な印象を与えます。また、他のヴォーカリストは弾き方ひとつでメンバーと喧嘩するほど編曲にも強いこだわりがありますが、エーダッシュはメンバー達に任せきっており、完成した作品にも異論は唱えません。
そんなエーダッシュに対して、シックスはエーダッシュにも伝わるような噛み砕いた言い回しで希望する楽曲イメージをヒアリングし、やがて完璧なアレンジを提供していきます。ナイトメアもシックスから無茶な依頼を受ければ悪態をつきながらもシックスが褒めそやすほどの仕事ぶりを発揮するなど、各自が自由奔放でありながら息ぴったりのバンド体制をみせています。
この辺りのバンドの在りようは、全員真面目な気質でありながら音楽的部分の意思疎通が上手くとれなかった、後述のヨシュア属するBrave Childと対照的ではないでしょうか。

なかんずく、NSFWの肯定のスタンスで象徴的人物と呼べるのが、ギタリストのシックスです。

シックス「とにかくねー、オレが必要なのは、オマエのその声なんだ。
 オレさー、どんな楽器でも、思い通りに音が出せる自信あるんだよ。
 でも、人間の歌声だけは──そうはいかない。
 歌う技術は努力で底上げできても、声色そのものは変えられないからね。
 オレが生み出せる音で、唯一気に入らないのが、自分の歌声なんだ」
エーダッシュ「そんで? ここまでの話を超ザックリまとめると……オレに歌えってコトなワケ?」
〔…〕
ナイトメア「この話、ナイティになんか関係ある?
 今の流れじゃ、そっちの子だけで十分ってコトになるじゃん。
 それとも、出来上がった曲を更にリミックスしたりしてって話なの?」
シックス「いや? オマエは単に、いたら面白そーだなって。
 存在自体が特殊だし、いるだけここまでのインパクトを与えてくる人間なんてなかなかないよ?
 ましてや、話したコトもないのに!」

(『ディア♥ヴォーカリストUnlimited エントリーNo.6 NSFW』DISC2 Track.2)


前述のバンド体制も然りですが、シックスは作中バンドマンでは珍しくとてもおおらかな人物として描かれています。元々代役で歌を始めたエーダッシュの声を代役ではないエーダッシュその人のものとして魅力を覚え、ナイトメアに至っては「存在が面白い。そこにいるだけでいい」と彼の存在そのものを全肯定します。どころか、彼らの声と存在は必要不可欠だと謳うだけに留まらず、NSFW結成の発端が「自らの音楽の完成に必要な声を探している」という弁が下敷きにあるにもかかわらず、途中からエーダッシュに作詞作曲まで挑戦させ、本来必要事項に含んでいなかったナイトメアのドラムやMIXも取り入れる滅茶苦茶ぶりです。
シックス本人は二人のことを「ただの玩具としか見ていない」と声高に主張しているものの、それは結果的に、彼らをシックスなりに大切にしている在りようにつながっていきました。

更に、これだけで終わらないのがディアヴォの面白いところです。というか、仮にも乙女向けコンテンツとして無茶苦茶なことさえします。
シックスはあろうことか、視聴者が感情移入すべきヒロインに対して敵愾心を向ける猫写が存在します。

ナイトメア「……ナニ。エーたんにカノジョができると都合悪いワケ?」
シックス「いや別に。でも……、とにかく、ヘンな影響与えないでくれたらイイなって」
ナイトメア「ヘンな影響って──」
シックス「いや、だって? オレが面白いと思ってるのは、放っておいたらナニするかわかんない──ヤバい目したアイツだから。
 なんて言えばイイのかなー……『ああコイツ、その内ぶっ壊れちゃうんだろうな』みたいに思うコト、ナイティにだってあるんじゃない?」

(『ディア♥ヴォーカリストUnlimited エントリーNo.6 NSFW』DISC2 Track.3)


これが乙女向けコンテンツに登場する女好きキャラの言い分でたまるか。

女好きなのにエーダッシュのヒロイン=つまり視聴者に敵愾心を向ける、ともすれば矛盾めいてすらいるこの強烈な狂気がシックスの為人をより華やかにしていきます。Rejetの十八番であるアンタッチャブルな男をまた別の切り口で表現したような面白味も相まって、それまで安全地帯にいたこちら側へ鎌首をもたげる彼には度肝を抜かれました。
そして、一見恐ろしいこの一面を確固たる魅力まで昇華していったのが、その後のシックスの心境変化の描写です。

シックス「──ねえ、ナイティ。エーは、大丈夫だよね」
ナイトメア「ハ……? ついでにジジイも診てもらえば? エーたんなんかよりよっぽど顔色悪いよ」
シックス「……オレが……? そう、かな」

(『ディア♥ヴォーカリストUnlimited エントリーNo.6 NSFW』DISC2 Track.3)


上記引用のような、エーダッシュが倒れた際に垣間見せた動揺からなるギャップにより、シックスはぐっと魅力的なキャラクターとして印象づいていきました。
メンバーはオレの玩具と宣った人でなしを演じるシックスが覗かせる人間味、この複雑な内心こそ、NSFWの狂った肯定の精神を克明に示しているように感じます。

ところで、シックスのこのような“掴みどころのない男”としての面白い点をもうひとつ。
Rejetは不思議キャラの扱いがとにかく苦手らしく、『DIABOLIK LOVERS』無神アズサは人気投票下位、『MARGINAL#4』シリーズの滝丸アルトも初期のRejet生放送のランキングで作中メインキャラ唯一の選外になったことがあるなど、この手の掴みどころのないタイプのプロデュースが相当アレでした。
ところが、エーダッシュの公式SNSの投稿を見る限り、シックスはバンドメンバーの中ではなかなか人気なようです。ぜひこのままミステリアス系リジェ男子の一端を華やがせてほしいと思います。



閑話休題。
しかしながらこのシックス、第8期で狂気がナーフされました。
というのも、第8期では第7期と同様エーダッシュがピンチに陥る流れではあるものの、その時のシックスは、前期とは打って変わってまるで平静な素振りでいました。本来サブキャラクターに位置するシックスにそう何度もリソースを割けないと考えれば致し方ないとはいえ、前期で圧倒的狂気と隠しきれないエーダッシュへの情を見せてきた手前、エーダッシュのピンチへまったくのノーリアクションというのは少し物足りなく感じました。

迸る狂気と人間臭さのバランスこそシックスの魅力であると、自分は考えます。
他のバンドメンバーの大多数がイマドキなキャスティングの多い中、シックスの声優にはベテランの立花慎之介氏が起用された辺りにも、高い演技力を要するアヴァンギャルドなキャラクター性がシックスの骨子になっていると読み取れませんでしょうか。

(理想の声と存在に囲まれて良い空気吸ってんなコイツ……)

さて、そんなシックスと強い結びつきのある人物として、ナイトメアは欠かせません。
ナイトメアは、NSFWが主役のエーダッシュ+他二名の楽器隊によるスリーピースバンドという体制上、シックスとペアで扱われることが少なくないです。見た目的にも正反対なのがなんとなく収まりが良く、ドラマパートでは二人の会話劇を通してエーダッシュが置かれている状況を暗に示す手法も見受けられます。

二人の関係性の最大の特徴は、ナイトメアの恰好が受容されている点です。

「ねえねえナイティ。悪いんだケドー、その帽子、今だけ脱いでくれないかなー?  さっきからツバが肩にぶつかっててー」
(公式Youtube『CLIMAX TUBE』内投稿「NSFW / CRAZY RADIO特別版❤前編【RADIO】」より)

「(ナイトメアの今日の服装を質問され)
 いつもヤバイからオレからはノーコメントで 着る服は自由だし、なんでも良いケドね」

(エーダッシュ公式X(@a_nsfw)2024年6月6日投稿より)

「(ナイトメアの好きなところを質問され)
 なんか光ってて面白いよ」
「なんてゆーか 毎日?」

(エーダッシュ公式X(@a_nsfw)2024年12月23日投稿より)


一見するとナイトメアの装いを馬鹿にしているような文言ばかりですが、その実かなり譲歩しているのが読み取れますし、変装等の合理的理由がない限りでは「だから着替えろ」という文脈に着地することはありません。特に、他のディアヴォキャラクターならもっとボロカスに拒みそうなシークエンスで「“今だけ”脱いでくれない?」と根本を否定しない言い回しが前に出る辺りには彼らの関係値が暗に示されています。
ナイトメアが前所属バンドを「ヴォーカリストより目立つからチームを外された」という脱退背景を加味すると、ナイトメアがNSFWという滅茶苦茶なことは言ってくるけど根本では存在を否定してこない今のチームの居心地をどう思っているか、想像してしまうものがあります。


【©Rejet/ディア♥ヴォーカリスト公式X(@climax_recoads)より】

ちなみに、ナイトメアのファッション趣味についてはまだ全身が映ったビジュアルが少ないため断片的な情報しかありませんが、リボンやフリル、ヘッドドレスやスカート状のボトムスといったドレッシーなものを好んでいるようなヒントが節々にちりばめられています。
個人的にスオウ先生撮り下ろし(描き下ろし)ショットのナイトメアで印象的なのは、リボンモチーフ、ストロングトーンのピンク、フリルや巻きスカートといったヒラヒラ系全般です。と書いたところで上とほぼ同じこと繰り返してたから実質全部でした。ナイトメアの全部が好きです。

NSFWの楽曲傾向やナイトメアのクラブDJ出身という経歴から、クラブカルチャーを源流とするサイバーゴス系のほうが相性が良さそうなところ真逆の装いで身を包み、そんなまったく異なる系統の装いさえ受け容れてしまう彼らのスタンスには、NSFWのクレイジーな肯定の精神を覚えずにはいられません。
そもそもナイトメアはファッションやメイクを含めて「自分は自分」であると謳い、シックスはそんなナイトメアの存在そのものに惚れ込んだわけですから、目立つ恰好や頭がおかしいとは表現しても、シックスがナイトメアの存在の一部たるファッションを剥奪という形での否定はしないのは、キャラクターの一貫性を感じる点でしょう。


自分がナイトメアからもらったリプライ返信の中で一番ときめきが凄かったもの。
この直前のリプ返に外資系ブランドの香水を使っている情報が初出しされたので、この流れでナイトメアの好きなブランド傾向の読める内容が来ればいいな~とか気持ちが嬉しい的甘い言葉でもいただいて擬似恋愛エミュレートできれば御の字だな~とかいう意図で投げたリプライだったのですが、一枚も二枚も上手で通知見た瞬間ぶっ倒れました。
着飾るものへのこだわりが強いことが何度も示されたきたナイトメアからの「受け取ったよ」発言、痺れる。

ナイトメア、本当に好きなんですよ……銀髪平成盛り髪メイク激濃リボン大好きヒラヒラファッション趣味のバンドマンとか好きになる要素しかない。それでいて過去の音楽活動で言外に湿った部分が仄めかされるのもNSFWに加入すべくして加入した納得につながるし、目立ちたがり屋に見えてドラマーやDJという本質的に後ろで音楽を支えるポジションについている意外性とその立場へのプロ意識がきちんと己がすべき仕事を相手に問う声色から見え隠れするのも奥深くて本当~~~にこの男……。ていうかナイトメアのドラマーキャラとしての特異性も話していいですか!?ディアヴォのドラマーって比較的エキセントリックな要素は抑えられる傾向にあるのにナイトメアだけエキセントリックの塊で~すと言わんばかりに打ち出してきて、しかも後々エーダッシュのこと気にかけていたりシックスの狂気には引いたり灸を据えたりする情に厚い一面を開示してきた構造、実質やってることが主役格のヴォーカリスト達と同等の手の込みようなの、聴いててサイコー楽しくないですか!?!?あとこれは担当声優の田丸篤志氏とRejetの監修の匙加減に他ならないんですがキャストフリートークでのナイトメアとして一言残すパートでエーダッシュの物真似は大分テキトーだったのにシックスの物真似はまあまあ“ガチ”だったの、お前、どういう感情をそこのイカれギタリストに向けてんだよ、お前、ちょっと、こっちを見ろ。


閑話休題。
ここまでNSFWが持つ肯定の存在讃歌について語ってきましたが、その矜持を抱くに至るまでのエーダッシュの物語は、とても険しいものでした。

エーダッシュは、何も初めから他者の肯定を旨とする人物として打ち出されてきたわけではありません。むしろ真逆で、実兄にまつわるとある事情で価値観が壊れてしまい、物語開始時点で希死念慮に支配された破綻ギリギリの生き様を披露してきました。
エーダッシュとの交際は、彼の価値観に向き合い、彼が交際を経たことによる価値観の柔軟化を辿る物語となっています。調子がいい時はプリティーで甘々な恋愛模様、しかし一度不調になれば怒りの矛先すら他者と自己を行ったり来たりする不安定さを有する激情家のエーダッシュ。これで視聴者視点であるヒロインへ八つ当たりでもしてくれたらまだ物事がシンプルになれたのに、心根の優しい彼はそれすらできず、あっても自嘲的発言を叫んでくるだけなのが、エーダッシュの感情の複雑さを物語っています。

やがて、エーダッシュはヒロインとの二人三脚で紆余曲折あり、己の希死念慮と向き合い、そして過去の出来事とも向き合い、段階的に困難を清算していくことになります。
顕著なターニングポイントとしては第2期、第5期、第7期が挙げられ、彼の心境の変化を反映させた楽曲としては『KKK→E』『#HAPPY』が浮かびます。

くれくれくれ→Everybody タラレバならいらんもん
端から仕留めるつもりです
じぇらじぇらじぇら→EveryNight ショゲてる暇はないから
可笑しくなれる?
可笑しくなろう!

(『ディア❤ヴォーカリスト THE BEST ROCK OUT!!』収録、エーダッシュ『KKK→E』より)

神様はいないよ 十字を背負ったぼくらの
最前線は、エーたん!
〔…〕
“なにものか”は証明放棄して
きみはきみで、いいから
〔…〕
きみを、必要としてるよ
この世界、ずっと

(『ディア❤ヴォーカリスト Evolve エントリーNo.6 エーダッシュ』収録、エーダッシュ『#HAPPY』より)


『KKK→E』は本編ドラマと独立したアルバム限定楽曲ですが、希死念慮を乗り越えようと決意したドラマの後に展開されたナンバーとして完璧すぎる歌詞で大好きです。
個人的思い出としては、初めてディアヴォのリアタイ購入を決意させた歌こそこの『KKK→E』でした。原住Rejet作品的にモモチとレオードとシエルくらいしかキャラクターがわからなかった中、試聴でクレイジーな肯定の世界を軽やかに歌い上げるヴォーカリストと突然出会い「とんでもないキャラクターがいるぞ!?」と唸ってRejet shopに駆け込んだ、あの時の興奮は今でも覚えています。
おそらく『MARGINAL#4』シリーズでUNICORN Jr.の世界観に惚れたことのある人間はNSFWの世界観も好きだと思います。

そして『#HAPPY』は、彼が肯定と祝福を標榜する現在のキャラクター方針になった象徴とも言える名曲です。 本編ドラマでも、少しダークな言葉選びのデジタルチューン『宵闇に相乗り』とセットの盤面であることに意味がある点がわざわざ言及されていたりと、本編ドラマ=彼の生き様と強い結びつきを持つ一曲だということが示されています。
また、ギターとドラムの音が気持ちいい構成も、シックスとナイトメアがエーダッシュの生き様に応えているようで嬉しさがこみ上げてきます。


【触れられたくない異常に対して追及も糾弾もしない存在肯定。「きみはきみで、いいから」を地で行く彼ら】

愛するヒロインは破綻寸前の生き方に真っ向から向き合い続け、クレイジーな部分も肯定し代役から始まったヴォーカルもオリジナルのものに昇華させてくれるメンバーには不安定な生き様を肯定され続け、そして今度はエーダッシュ自身が周囲を祝福する世界観の歌を歌う、この美しい循環が自分はとても好きです。
クレイジーな肯定の精神を有するNSFWが大好きです。

ディアヴォにおいて「作中時系列が進むにつれバンド活動を通してのやりたい目標・見せたい在り方が決まる」という作劇は、エーダッシュが唯一無二です。これは、常に人生を棒に振る思考かつ、元々成り行きでヴォーカリストになったエーダッシュだからこそできる変化ではないでしょうか。
じっくり時間をかけて積み上げてきたエーダッシュの物語だからこそ、楽曲を聴いた時の感動やこれからの物語への期待もひとしおです。


【©Rejet/Rejet公式サイトより】


■Brave Child


【©Rejet/ディア♥ヴォーカリストシリーズポータルサイトより】

Brave Child(ブレチャ)は、シリーズの途中から登場したバンドです。朗らかながらどこか陰の差すヨシュアがヴォーカリスト、派手な容姿と控えめな性格を持つソータがギタリスト、竹を割ったような言動のマツがベーシスト、作中バンドマン最年長のユキがドラマーを務めます。物語当初はソロバンドでしたが、中盤から4人バンドとなり、現在リーダーはユキが担います。

Brave Childの音楽はミドルバラード調を得意とし、またヨシュアにピアノの心得があることから、ロックチューンの中に鍵盤の音を取り入れた楽曲も少なくありません。
とはいえ、第5期『Evolve』でバラード調が鳴りを潜めたCDを発売するなどバラード系を完全に主力とする傾向は今のところ感じられず、時にメロディアスなナンバーもこなすなど、かなり幅広い音を展開しています。ヨシュアとソータがチーム内で特別な信頼関係にある本編ドラマを反映してか、ギターと鍵盤のコンビネーションが光る一曲も見逃せません。



ヨシュアは自分にとって特別なキャラクターです。
なぜなら、作中におけるヨシュアの自傷癖の描写が、驚くほど高いクオリティとリアリティに満ちていたからです。



ここから暫くの間、ヨシュアの自傷描写の感想がひたすら続きます。どうかお付き合いください。





まずヨシュアの自傷猫写で目を見張るのは、「そもそも自傷癖だと悟らせなかった点」にあります。
ヨシュアは先述通り、シリーズの途中から登場したキャラクターのため、他のヴォーカリストに比して「シリーズの構造を把握した状態でどんな“クズ”か予想する」という前提条件の違いが存在します。このため、第3期『Wired』発売前はヨシュアがバンド活動の裏ではどんなクズ=困難を抱えているのだろうと予想を立てる声も見受けられ、運用された公式SNSでも困難をまったく醸さない優男な出で立ちをしていたこともあり、予想される内容も様々でした。

ところが、少なくとも自分の観測範囲では、ヨシュアが自傷癖を抱えたキャラクターであることを見抜けた人はひとりもいなかったと思います。

この結果はなるべくしてなったと感じます。
なぜなら、この時既に既存キャラクターの本編ドラマにて手首を切る猫写が存在していたからです。これにより、おそらくシリーズをひと通り聴いている視聴者の大半が「さすがに二度も三度も自傷猫写はこないだろう」と無意識に考え得る環境ができあがっていました。まさか一人で二度目と三度目を担当する男がやって来たとは誰も思わなかったでしょう。
Rejetの歴代自傷描写持ちキャラクターの半数が銀髪だったので(『大正黒華族』伏美メル、『嘘月シャングリラ』ヘル)、そこから予測するのもあるいは可能だったかもしれませんが……だとしても難しそう……。

このように、既存のRejet作品ユーザーであればあるほど、ユーザーの虚を突く華々しいRejetデビューを果たしたヨシュアですが、その上で、開示されたこの習癖がただ一発ネタで終わらなかったのが彼の物語の真髄です。
ヨシュアの自傷描写において、更に革新的だと自分が感じたのは「シチュエーションCDという媒体を最大限に活かしている点」に他なりません。

「……どーかした? ああ……腕の傷?
 わかんない。気付いたらこーなってたんだ。どっかで引っかけたのかも。
 平気平気。治りかけだし、長袖着てれば見えないよ」

(『ディア♥ヴォーカリストWired エントリーNo.2 ヨシュア』Track.3)


まず、ヨシュアは“どこ”に自傷にしているか明言されたことがありません。いわゆるアムカかリスカかわかりません。
判断材料になりそうなのは上記引用の台詞くらいなもので、腕といっても狭義の腕部分なのか手首含む意なのか、狭義の腕だとしても外側なのか内側なのか、以降の描写でも絶妙にぼかされています。

自傷行為の偏見パブリックイメージとして手首が最初に思い描く箇所として想定されたか、あるいはRejetが生んだフィクション自傷キャラクターの巨匠こと無神アズサのようなしっちゃかめっちゃかオーバーキルがRejetユーザーの想定とされているのか……それは2026年現在まで、視聴者の想像力に委ねられています。これにより、それぞれが思い描くもっとも生々しい位置で自ずと“その行為”に苛まれた光景が補完され、シチュエーションへの没入感が深まります。
これは、ディアヴォがシチュエーションCDという、視覚情報を持たない媒体だからこそ得られるコンテンツ体験ではないでしょうか。

なお、眉唾な話にはなりますしアーカイブが残っていないので深く言及することはしませんが、実は想像を巡らせてくれる要素なら出たことがあります。
2020年配信のシリーズの生放送『Raving Beats!!! 収録楽曲総選挙♥開票速報!!!』でヨシュアの担当声優である島﨑信長氏がヨシュアを紹介する際、一度だけ自傷行為のジェスチャーをされました。ディアヴォシリーズはキャストフリートークでの逸話曰く「初期から細かい設定まで呈示されている」らしいので、それらの情報を総合するとあの時の位置はもしかしたら……という、推測の域を出ない事象ではありますが。


とはいえ、徹頭徹尾視聴者の想像力に丸投げというわけでもありません。ヨシュアの自傷描写は、こちらの想像力を掻き立てる土壌が完璧に築かれています。
ひとえに、音声演出のクオリティの高さがヨシュアの本編ドラマ最大の武器です。


【©Rejet/Rejet公式サイトより】

上記引用ジャケット『Wired』収録の本編ドラマの時点でもう凄いです。まず、担当声優の島﨑信長氏の演技が恐ろしいほど生々しくて素晴らしい。
自傷行為と聞いて一般的に連想されるような恐怖やインパクトを与える方向性ではなく、あくまでヨシュアの苦しみがリアルに伝わるような実直な音声演出が、ヨシュアの自傷衝動パートでは繰り広げられます。それまでの優しい声音とは打って変わって衝動に駆られ刺々しく様変わりするヨシュアの声、余裕のない呼気、みるみる内に自暴自棄になっていく声色、そして衝動に屈してしまった後の虚脱感が手に取るようにわかる呟き……どれもとっても真に迫るものがありました。
どう考えてもフィクションのお話としての盛り上がりならインパクト重視がベターそうなのに、それをあえて行わずリアリティを追求したディレクションとお芝居には驚愕するしかありません。

なおかつ、その声を彩るSEも生々しさに満ちていて、決して島﨑氏の演技に負けていない点も書き記したいです。ヨシュアの習癖にまつわるシークエンスは物が散らかる音から始まり、肝心要のカッターの刃を出す微細な音に至るまで、どれもが緊張感を高めていきます。これら追随するSEも、声のお芝居と同じくらいに場景をはっきり浮かび上がらせる重要な要素なんだと、自分は初めて視聴した時から強く印象に残りました。
以上のような、音声作品であることをこれでもかと活かした音声面の細やかさは、ヨシュアの本編ドラマの十八番だと自分は思います。これらが、自分がヨシュアの持ち味に「シチュエーションCDという媒体を最大限に活かしている点」を挙げた所以です。


ヨシュアの習癖にまつわるプロセスは、コンテンツが当時取り巻く環境とも噛み合いの良さを感じています。具体的にそう感じたのは、ヨシュアの習癖と、それを寛解しようとする彼の意思が視聴者に周知されてきた第5期『Evolve』の頃です。
その頃は前期『Extreme』で習癖に屈してしまったヨシュアが今期も切るか切らないか不安と期待が入り混じる段階で、新曲『WRONG』が過去一番陰のある世界観だったこともあり、発売前から「もしかして今期も何か異変があった……!?」というハラハラ感に拍車がかかっていきました。

同じ空気 吸う価値がない
“生きててごめんなさい”と叫ぶ
街にすがり、いつもいつでも
承認欲求

(『ディア❤ヴォーカリスト Evolve エントリーNo.2 ヨシュア』収録、ヨシュア『WRONG』より)


結論から言えば、この「新曲が陰のある歌詞だったから、本編ドラマのヨシュアにも異変があったのでは」という見解は、彼の歌と物語を追っていけば誤りだと気付きます。
なぜなら、ヨシュアは自らの欠点を秘匿する傾向にあり、アーティストとしてのヨシュアは全能的な世界観を得意とすることが多い(得てしてそれとは真逆な弱い部分は隠したがる)というのが定説で、しからば、ブレチャの世界観に後ろ向きな事象が描かれれば、逆説的に清算された出来事と見做すほうが妥当です。

すなわち、自分含むリアルタイム勢は『WRONG』が発表された時点で、今期のヨシュアは逆に大丈夫だと溜飲を下げる予想すらできたはずだったのです。それでもなお当時の自分がその予想すらできなかったのは、ヨシュアの生き様へ没頭してしまうくらい、ヨシュアに視聴者を引き込ませる魅力があったからだと考えています。



余談ですが、ヨシュアのこの世界観の傾向にまつわる面白かった思い出をひとつ。
上記動画はヨシュアの歌のメドレー試聴動画ですが、これがリリースから順番を入れ替えて「よくある精神不安定キャラのキャラソンの変遷」っぽくして初見を騙す気満々で笑いました。『WRONG』の無駄遣いにして有効活用にもほどがある。

こうして、無事に自傷癖の寛解まで丁寧に描かれていったヨシュア。更にヨシュアの本編ドラマに驚かされる点は、初登場の2017年から2026年現在に至るまで、約10年自傷一本でドラマを作っているところです。
彼の物語がどれほど自傷猫写ファーストで動いていたかというと、ヒロインと幼馴染だというデカすぎる設定が特典CDでさらっと初出しされたくらいです。

なあヨシュア……本当に恋愛コンテンツとして正しいのかその優先順位!?!?

ヨシュアは回を追うごとに「幼馴染」「ピアノが得意」「意外と大食い」等キャッチーな要素がどんどん追加されていきました。裏を返せば、それらとっつきやすい要素を押しのけて自傷癖に注力した物語作りがなされていた点に、ヨシュアの本編ドラマの気合いと覚悟と凄みのようなものを感じざるを得ません。


ヨシュアからは何度かファンレター返信をもらったことがあるのですが、上記引用はそのファンレ返の初代にして傑作選。
そんな短い言葉で心を掻き乱してくるな…………本当ヨシュア…………お前…………本当に…………お前………………。


これほどまでに自傷経験者の人生へ生々しく向き合った物語は、自分は出会ったことがありません。そのようにして、第5期以降のヨシュアの物語は、寛解に向かう途中の生き様としてステージを進みます。
第6期『Raving Beats!!!』は音楽アルバム+ショートドラマという特殊な構成の期であったため、本格的にヨシュアの自傷経験者としてのストーリーが動いたのは、第7期『Unlimited』からです。果たして、そこでヨシュアには、どのような景色が待ち構えていたのでしょうか。



第7期『Unlimited』にて手始めにフィーチャーされた内容、それは、「親しい友達に自傷経験がバレる」というものでした。



いや……早速ギア全開でヨシュアを追い詰めるな!!!!!!!


なんなんだこの会社!!!!自傷経験者の人生において上位の怖いことを投下するな!!!!!!!なんでこう的確に痛いところを突けるんだ!!!!!!




本当…………勘弁してくれよ……………………。



第7期本編ドラマでは、自傷癖も寛解し、バンドの絆も強まり、順風満帆なアーティスト活動を送るヨシュアが、バンドメンバーのソータに自傷痕を見られるところから物語が急展開を迎えます。
この期からCDがヒロインとの交際を収録した盤面とバンド活動に焦点を当てた盤面の2枚組となり、自分はヒロイン盤→バンド盤の順で視聴しました。ヒロインとしての盤面では突然声色を曇らせるヨシュアへまた自傷関係で何かあったのかと心配になり、そしてバンド盤で明かされた「ソータに自傷痕を見られて気まずくなってしまった」という真相を聴いた時は、筆舌に尽くしがたい気持ちに駆られました。

ヨシュア「あ……そーだよね。……それじゃあ、また、来週……」
ソータ「うん……。またね……」

(『ディア♥ヴォーカリストUnlimited エントリーNo.2 Brave Child』DISC2 Track.2)


この場面の気まずさ、本当に苦しい。聴く度気まずくて苦しくなるから感想書く時しかこの場面が聴けない。島﨑信長氏と永塚拓馬氏にノーベル自傷周辺描写の演技上手すぎ賞を献上しろ。

人選がソータというのものまたキツい。本当に苦しい。ソータは当時のブレチャメンバーでは既にキャラ付けがしっかりしており、一からキャラ説明描写を挟まずとも最短距離で一番ギクシャクし得る人選だとわかってしまうのが頭を抱えました。
ディアヴォシリーズは気の強いキャラクターが多数なため、第7期で起こった「自傷痕がメンバーにバレて気まずくなる」という展開は、控えめな性格のソータとしか成立しなかった展開でしょう。なおかつ、それがとってつけたかのようなキャラ付けではなく、既にそういう為人であると十分に描写されていたソータというのも非常に自然な展開でした。第7期当時はまだバンドメンバーの事前のキャラクター付けに差が大きかったため、ソータを選出したのは膝を打ちましたし、あまりの気まずさに苦しさで膝の皿を叩き割りました。
「ヴォーカリストとの秘密の共有」というヒロインの特権であるべき要素をあえてバンドメンバーで解禁し、それが本編たる交際描写を食わないバランスとキャラクター描写で成り立っていたのは、Brave Childの関係性の妙だと感じます。


【©Rejet/ディア♥ヴォーカリスト公式X(@climax_recoads)より】


さて、ここまでとにかくヨシュアの物語に心動かされた旨を書きに書いてきましたが、同時に自分には、今後のヨシュアの本編ドラマについてある一抹の不安があります。



それは「いつまで自傷ネタで引っ張るの?」と思われかねない懸念です。



いつまでもに決まってるだろうが!!!!!完治の概念がない習癖なんだから!!!!!!



順調に寛解しているストーリーを重ねていってきただけに、いつヨシュアがまた窮地に追い込まれるかは予想もできません。特に、ヨシュアは初登場『Wired』時点で作中時系列で苦しんでいる自傷癖が再発だと語られているため、あの世界線にも習癖の再発の概念が明示されているから余計に怖い。
ヨシュアのドラマチックな要素として他に「前バンドが最悪の形で解散した」「ヒロインとは幼馴染」と多数控えが揃っているので、段階的にそちらのドラマ性にシフトしていくのかな~という予想半分、10年自傷癖に向き合ってきたなら最後まで習癖寛解ストーリーを貫徹する覚悟もありそうだな……という畏怖の念半分で次回以降の困難に身構えています。

恋愛パートにおける今後の注目点は、相反するふたつのテーマ性の衝突をどう免れていくかでしょうか。
ヨシュアの物語は自傷猫写の他に、その習癖に屈したり抗ったりしながら精神的自立を描く軸と、ヒロインとの甘めの交際猫写を描く軸に大別されます。前者は習癖の寛解の度合いと連動した地道な変化が積み重ねられ、後者はレオードに次ぐ甘々系で、どちらもクオリティは安定しています。
しかしながら、片や「強くなる」というヨシュアの台詞に代表される精神的自立の文脈、片や他者と深い関係を持っていくということで、後者に傾倒しヒロインにしなだれかかりすぎると前者の精神性の文脈が破綻する、ある意味複雑なバランスのもとヨシュアというキャラクターが成り立っているのだと言えるのではないでしょうか。

ヨシュアは自分にとって大切なキャラクターです。だからこそヨシュアには幸せになってほしいです。ヨシュア本編ドラマの評価の物差しを自傷猫写に全振りした人間が言うのもなんですが、第9期以降では自傷描写のクオリティと同じくらい、この交際描写が抱える複雑さへ良い落としどころを見つけたシナリオに恵まれ続けてほしいです。


ヨシュア、ずっとずっと大好きです。


「オレ──もっと強くなるよ」
(『ディア♥ヴォーカリストEvolve エントリーNo.2 ヨシュア』Track.5)







ひとまず今回は以上です。
当初の見通しではアメブロの1記事最大文字数(全角3万字)ギチギチ×2記事になる見通しだったはずが、思ったよりも早々にギチギチになってしまい、どこでぶった切ればいいか頭を抱えながらとりあえずキリよくしました。
果たしてこの感想ブログは何記事になるのか、そもそも第9期ティザー期間内で書き終わるのか、まだまったくわかりませんがなんとかします。


それでは。

ごきげんよう、柘榴です。

今回が2025年最初のブログとなります。今年もよろしくお願いします。
さて、自分が年始めから何をやっていたかというと、ドルステの催事が沢山来たので片っ端から行ってきました。


 


『ネルフェス2024 後夜祭!』ではプライムーンとGS382とアンプラネット!
 

 


『CHaCK-UP メモリートリップ~勝手にCUFオフ会!~』ではCHaCK-UP!


そんなわけで、今回はこれらふたつのイベントに行った上での『ネルフェス後夜祭』のGS382パートの感想を書いていけたらと思います。公演から数ヶ月経ってなお書き上がらず最早サグラダファミリアの様相を呈してきているのですが、このままだと映像公開期間すら終わってしまいかねないので、埒が明かないため無理矢理体裁を整えてアップすることに至りました。
また、タイトルで察せられる通りCHaCK-UPの話もします。なぜGS382の感想で接点のないユニットの話をする流れになったのかは現時点では気にしないでください。



※あくまで深読みこじつけなんでも有りの個人的解釈に終始します。もし大きく感想が異なっても、色々な解釈ができる楽しい作品なんだなと割り切ってください。

※三人体制時のGS382を「元祖GS382」、五人体制のGS382を「現GS382」として区別化します。特に区別を要しない場合はそのまま「GS382」と表記しています。





 




■三人という己のまほろば:原点回帰による魅力の再認識

今回のGS382の最たる特徴といえば、何より「三人でのパフォーマンス」という点でしょう。
GS382は元々加賀深友・焼田侑弥・富蛇野仁のトリオユニットとしてデビューし、約一年後にメンバーが追加され五人になった経緯を持ちます。以来、元祖GS382の体制は前回のイベント『いろいろ ドルフェス2023』のオープニングでごく僅かに演出されたのみで、ここまで本格的に三人でのステージを披露するのはメンバー追加以来初めてのことでした。

 

【たまたま江副さんも元祖GS382呼びが一緒でちょっと嬉しい】

だからといって、元祖GS382時代の映像を穴が空くほど見てきた身からは見慣れたものかと思いきや、実はそうではありません。
何しろ、今回は人数が減少したにもかかわらず、ステージのほうはむしろ規模が大きくなっていました。基本的に小劇場やそれと同程度の規模を主とする公演形態だっただけに、今回のTDCホールという場はGS382にとって過去最大レベルのハコに値します。
乱暴な言い方をすれば、今イベントはGS382からすると、人数は減っているのにステージは広いアンバランスさを有しているのです。

しかし、そんな危地すら歯牙にもかけず、逆手に取った魅せ方をしてくるのが元祖GS382でした。

すなわち、今イベントは従来より少ない人数で広いステージに立つ特性上、GS382一人ひとりのカバーするスペースが広くなるためか、おのずと振り向く・顔や視線を他方へ遣るという仕草が印象的になっていました。
自分は前方上手側での観覧でしたが、圧倒的センターでありながら不意打ちでサイドにも眼光を射抜く深友こちら側へ来るなり涼やかに笑んでくれる侑弥過ぎ去りざまにキュートな笑顔を残してくれる仁など、端の席まで抜かりなく彼らのビジュアルの機微が届いていたお陰で、今思い出しても物足りなさは一切感じられません。
一見、距離が遠くなったことで損なわれるかと思われた視線・表情の魅力がむしろ際立っていた意外性と安定性が、自分がこれまでと同等以上に彼らへ魅入られた一因だと振り返ります。

また、視線・表情の注目点といえば、更にはアイドル同士のやり取りが顕著でしょうか。
たとえば『暁』で仁ソロパートで仁が前方センター、深友と侑弥が後方というフォーメーションの際、深友は素の強気な態度とも客席へ向ける鋭い眼光の色の違う、棘のない明るい笑みを侑弥に向けていました。これもまた、メインの1名・他の2名という構成が生まれたことによる三人だからこそな要素でしょう。
その後、仁が深友の背後を通り過ぎるフォーメーション移動時での、深友に見えないよう彼へイタズラする仕草を見せる仁も愛らしかったです。バリバリの恰好いいダンスの中でこういった愛嬌を挟んでくるのも、彼らが持つ様々なキャラクター性を味わえました。

蛇足ですが、別日に公演されたドルステの先輩ユニット・アンプラネットのステージでは準惑星マケマケ人☆マーニィが準惑星エリス人☆エリィに直接的にちょっかいを出していました。同じ赤担当アイドルにイタズラする黄色担当アイドルというシチュエーションでも直接触れてイタズラしない辺りに仁の元々の内向的な性格が出ていて……そういうとこだぞ……。

GS382は五人体制になって以来、その多人数を活かした連携的なダンスや歌割りが主軸となっていました。一方、今回は三人時代の振付に原点回帰していて、なおかつステージ規模に併せたダイナミックなパフォーマンスから多人数の連携とは異なる楽しさを覚えました。
元祖GS382による元祖の振付が見れた懐かしさがあり、しかしながら旧来のものだという詰まらなさは露ほどもない、彼らの原点の魅力を再認識できたステージは際限なく嬉しかったです。


■加賀深友という個の輝き:キャラクター像の変遷と顕在化

今回はステージ規模と人数の差異から個々の魅力をより感じやすい印象でしたが、なかんずく自分が注目していった存在は加賀深友です。
これは自分が深友の撫子だからという理由に留まらず、こと「個の魅力を追っていく」というシチュエーションにおいては、深友は他のアイドルとは少し異なるキャラクター変遷を有していると感じているからです。

そもそも、GS382のデビューは他のユニットと少し状況が異なり、前半公演と後半公演に分かれた公演形態な上、公演期間中に番外イベントまで挟まるという、非常に変則的な変遷を辿っています。


【当時の公演。概要欄にも当時の分割の公演形態の記載があります】

その中で深友は、初登場前半公演では笑顔少なめのクール系→イベントでバラエティ色の強いカバー曲を披露したりMC解禁→その後の後半公演で笑顔も交えたパフォーマンスを披露するという、デビュー期間だけでも一人だけ独自の展開がありました。簡単に言うと、かのCHaCK-UP本編のコンテクストを一人でやってのけていったようなものです。すごい。

このような変遷があったため、GS382の中ではキャラクターとしてのパフォーマンスの選択肢がとりわけ多い深友。今回のような久し振りのステージはすなわち、深友が何の楽曲でどのようなパフォーマンスを選択してくるか読めないのと同義です。
自分はデビューから加賀深友を追ってきた身として、この予想できなさには毎回ワクワクせざるを得ません。ゆえに、今回も特に注目した存在として挙げられます。

果たして、令和7年に顕現した令和の大和男子はというと、

 


この笑顔を客席まで届けてきたのだからサイコーすぎた。

今回のGS382の初曲は王道の『まほろば』でした。深友の口上から始まるこのナンバーで強気な笑みを見せてくれた深友は、先述のデビュー時のパフォーマンスの変化を想起させ物語として繋がっている印象を与え、初登場から加賀深友を追いかけている身としては御託抜きに胸に刺さるものがあります。

なおかつ、ただ笑顔一辺倒ではなく『まほろば』の世界観に合った鋭い眼光も健在でした。GS382センターとして真正面を真っ直ぐ射抜く深友の姿は上手側席から見ていても鮮烈で、彼の眼光が持つ変わらぬ魅力が嬉しかったです。
そんな矢先にギラリと上手側に視線を遣られた時には本当加賀深友あの男……いや……圧倒的センターでありながら端から端までブチ上げてくれるの!?

加賀深友、本当にすごかった。何時何時までも大好きです。

 

【バチバチに恰好いい表情も惜しげもなく見せてくるからなおのことサイコー】


■人はなぜ加賀深友に惹かれるのか:歴代アイドルと比較する“嘘と衝動”

実は、今回のブログはこれで締めようと、コンパクトなネルフェス感想文のつもりで筆を進めていました。 ところが、書き進めている途中でGS382以外のユニットのイベントにも足を運んでいったことで、結果こんなサグラダファミリア状態になってしまいました。
とはいえ、今年のドルステイベントのスケジュールと登場するキャラクターに鑑みれば、こうなることはある意味予見できることでした。


お前のことだよ美波旅生。





美波旅生…………。



令和以来公言していたか忘れましたが、自分はCHaCK-UPではもっぱらの青チャームです。美波旅生水星人★ミミタが特に好きです。
得てして、先日の『勝手にCUFオフ会』で当時の映像を大画面で目の当たりにしたことで、美波旅生に惚れ込んでいった時の記憶と加賀深友に滅茶苦茶になっていった時の記憶が脳内でごちゃごちゃに溢れて出していきました。有体に言えば和やかに感想書いてるどころじゃなくなりました。
なので、このままでは自分の『ネルフェス後夜祭』は終われないため、今一度自分の人生滅茶苦茶にしたアイドル達の魅力と自分がそれに気付くまでの経緯を比較してみます。

 

【インターネット上に現存するミミタの静止画を懐かしみたい方は上記公式ブログからなんとか遡ってください。というか美波旅生に至ってはこれしか見つかりませんでした……10年という時の流れ……】

まず、旅生と深友の共通点といえば兎にも角にも、性格がキツいというところでしょう。ダンスが上手いとかは?
そして大方、このブログを読んでいる何名かは自分の嗜癖からして「性格キツい男が劇中で滅茶苦茶になっているから好きなのだろう」とお思いでしょうか。

ところが、実態は似ているようでまるで異なります。
というか、実は最初は美波旅生が苦手でした。

自分が美波旅生/水星人★ミミタを好きになった由来は、徹頭徹尾ミミタとしてのステージパフォーマンスです。未だ映像不出のイベント『E.T.L vol.4+ ~電波受信!電波受信!至急集合せよ!』でプレゼント◆5の茅嶋暁とデュオ曲『恋愛至上主義』を披露する華麗なミミタに見事撃ち抜かれました。同時にCHaCK-UPの話題でも独り越境デュオの話をし始める代償を背負いました。
その後CHaCK-UPの主役公演『CHaCK-UP』(通称サマトリ、ST)で美波旅生としての姿が初めて描写されたわけですが、主人公の天宮王成へ嘘を吐き陰湿な陥れ方をする姿が当時の自分の感性には合わず、エンタメとして十分に味わえませんでした。
つまり、当時の自分は「旅生は苦手だけどミミタは好き」というアンビバレンスな感情で応援していったことになります。


と思ったらマチネ公演で全部覆されました昼のミミタに。


 


こんな自己紹介あってたまるか。


旅生が扮する水星人★ミミタは「昼と夜とじゃ別の顔」のキャッチコピーの通り、昼夜で性格が変わるというキャラクター設定を持ちます。しかもこれは表層上の死に設定ではなく、実際にマチネ公演ではにこりともせずクール一貫、ソワレ公演は微笑を湛えるパフォーマンスの差異化に繋がっていました。
そしてこのサプライズじみた設定反映がぶっ刺さった。初めて入った『CHaCK-UP』通路席がマチネ公演だったのが運の尽き、客降りハイタッチで冷たい美貌で視線を突き刺し「ありがと」と冷淡に呟きながらハイタッチしてくる昼の姿のミミタは、自分の雷に撃たれたような衝撃を与えてきました。

自分が今Rejet好きなのって美波旅生がルーツかもしれないな……。

この出来事は、単に昼のミミタが好きになっただけに留まらず、その冷たさのお陰で旅生の性格のキツさも受け容れられるまでに至る大きなターニングポイントとなりました。
『CHaCK-UP』での旅生は天宮を陥れようとヒール寄りに描写されていきます。途中までは旅生の意のままだったのものの天宮が奮起したことで旅生の思惑は瓦解し、それでもなお天宮とはチームの繋がりを結んでいきました。
このような物語を、来場し始めの自分は旅生が苦手だったため消去法で天宮側の視点で観劇していましたが、旅生への苦手意識が消え彼へ目を背けることがなくなって以降の観劇では、旅生側の視点でも思いを馳せることでまるで味わいの違う「面白み」を感じられようになったのです。

CHaCK-UPが代表する「面白み」とは、素の姿と宇宙人アイドルとしての姿の相互作用にあると自分は考えます。
彼らの宇宙人設定は基本的に天宮発案のものと劇中で示されています。それを踏まえると、旅生の持つ「平気で嘘を吐く裏表のある性格」が「昼夜で性格が変わるアイドル」として昇華された様は旅生の歪な性格を暗に肯定されたような、もしくは旅生な歪な性格ごと受け止めて天宮は仲間として認め合ったような美しさがあり、素の彼らのバックボーンを知ることで深みが増すCHaCK-UPのシリーズ独自の奥深さが詰まっていました。
当時の自分は眼前のミミタ(昼)に夢中でここまで言語化はできていなかったものの、裏を返せば言葉にするまでもなくこの面白みを肌で感じていたのかもしれません。

このように、旅生/ミミタにおいてはステージパフォーマンスありきで、やがて作劇の独自性から苦手意識があった部分すら愛おしく感じられるようになっていきました。これもまた、天宮王成という天才の掌の上なのでしょう。

 

【これの13:20頃から茅嶋暁と並び立つ美波旅生が見られます。節々に性格のキツさが滲み出ていて愛しいです】

かくして、美波旅生とミミタによって性格のキツいキャラクターに目が離せなくなる人生を歩み出し、彼によって築かれた土壌はのちの自分のドルステ観劇へも大いに関与してきました。


きたる第5弾、加賀深友へは一目惚れでした。




上記は公式MVです。このサビ前の眼光に射抜かれました。
ご覧の通り、深友はMVの分だけではもっとも歌割りが少なく、また演出上ダンスもじっくり観察できるようなカメラワークではないため、他のメンバーよりも好悪の決め手となる要素が明瞭ではありません。ましてや、どんなステージパフォーマンスを見せてくれるかなど全容は杳として知れません。
にもかかわらず、気付けば自分の手は一心不乱に深友のうちわを作っていました。それまで“お友達”由来ではなければ生のステージを見てから担当アイドルを決めていた自分にとって、ある種賭けみたいな行動をとっていました。


結果、自分の文字通りの一目惚れは間違っていませんでした。





歌、ダンス、性格のキツさ……サイコー!!!!!


蓋を開けてみれば、歌もダンスも声も表情も衣装も性格も好みでした。そんなことある!?
もっとも、元祖GS382の“お友達”がシリーズでは珍しい全員既に場数を踏んでいるキャスティングであった時点で、一定水準以上のレベルを打ち出す前提なことは予想して然るべきでした。眼光が好きすぎて全部忘れてた。

加賀深友は美波旅生と同様、劇中で嘘をつき、内に衝動を抱え、後にユニットメンバーとなる学友への対応も決して良いものとは呼べません。
昔の自分ならその不良気質な振る舞いにリタイアしていたかもれしれませんが、美波旅生という途轍もない男に人生滅茶苦茶にされていたお陰で平気でした。

一方で明言すべきは、深友と旅生が類似する噓と衝動を内包した気質を持っていても、行動原理はまったく違うことです。

前提として、旅生はヒール然とした言動が目立ちがちでしたが、実は劇中で衝動的に動いたのは終盤の天宮へ声を荒らげるシーン一度のみです。
旅生の嘘と衝動は深友のそれとは異なります。それまでクールに策を講じるかのように振る舞っていたのに、天宮が旅生の妨害にも挫けず輝き始めた途端、急激に感情のブレーキが壊れ初めて衝動的に手が出てしまいます。あろうことか、己が衝動を省みるフェーズすらなく、自らの感情がどこにいるのかすら思考が追いつけない様相のまま天宮に手を差し伸べられていきました。
『勝手にCUFオフ会』で改めてあの旅生の感情の起伏を見た時は、深友を知った今でなお旅生だからこそ発露される唯一性がありました。旅生の心情描写は、GS382を始めとする他のユニットでは決して出せない「素の人格と宇宙人設定が乖離しているようで実は繋がっている」という複層的な要素を持つCHaCK-UPならではの味わいと呼べるのではないでしょうか。

対して、旅生/ミミタがCHaCK-UPならではの楽しさを有するように、深友もGS382だからこそ光り輝く魅力が存在します。
深友の最大の短所にして最大の魅力は、旅生とは違い衝動的に嘘やハッタリをかます点です。


主役公演『GS382─暁の章─』の感想でも深友の衝動性について書いています。詳しくはそちらをご覧ください。

比較論で言うなら深友はどうしようもないです。旅生ほど賢しらな態度もとれなければ、旅生が衝動的な行動に及んだのは劇中終盤のみなのに深友は一貫して己が衝動性に振り回され続けています。挙句の果て、深友はこの自らの気質に自覚的なのか、弁明しようと目で訴えたりのちに頭を抱える姿さえしばしば見られます。
加賀深友は衝動的にハッタリをかましては後悔するような、どうしようもない嘘つき気質の根治しようがない衝動性の持ち主です。しかしながら、GS382とは深友が嘘をついたからこそ結成のきっかけが生まれ、深友が虚勢を張ったからこそ真の仲間と認め合う出来事へ繋がったユニットである点を忘れてはいけません。
元祖GS382は、加賀深友の衝動的な嘘によって生まれた奇跡のユニットです。

つまり、旅生の嘘と衝動がユニットの魅力の一要素だとすれば、深友の噓と衝動はユニットの根幹という、一種の主人公らしさを包含しています。
このような「主人公なのに主人公とは思えないほど衝動的」という深友ならではの特色があったからこそ、自分は深友を単なる旅生に次ぐ性格のキツいキャラクターとしてではなく、唯一無二の加賀深友の生き様として今日まで目を奪われているのだと思います。

なお、先述の「性格キツい男が劇中で滅茶苦茶になっているから好きなのだろう」という美波旅生への感情として想定されそうと挙げた一例ですが、どちらかというと現GS382の一橋キリコへの感情がそれに近いです。
キリコは深友の輝きに心を動かされてアイドルを志した経緯のキャラクターですが、なんとシリーズ初の「明確にステージ上でアイドルの表情が瓦解して内に秘めた素の表情が露呈する」という演出が採用されたアイドルに該当します。
仮にもキャラものアイドルであるCHaCK-UPやアンプラネットすらあけすけにはやらなかった演出だけに、ライブパート中に深友を見てそれまでの笑みが消え真顔になるキリコの姿は非常に強烈で、どれほど深友の眩しさに網膜を焼かれたのかが一目瞭然なそれは見ているこちらまで衝撃を受けました。ちなみに案の定彼も己の衝動的な嘘で己の首を絞めて滅茶苦茶になるサイコーの男です。



■おわりに

もしも、深友が単に旅生をなぞっただけの人物像であったら、自分は「旅生のこと思い出すな~」程度の感想で終わり今ほどの熱量で応援していなかったかもしれません。もちろん、今年の『ネルフェス後夜祭』に至るまで追いかけ続けることなどもなかったでしょう。
ですが、実際の自分は今日まで一瞬も美波旅生の肖像を重ねず、どこまでも加賀深友の個として彼の活躍を楽しんでいました。それほどまでに、後発ユニットでありながら初登場時から無二の輝きを持つ深友のキャラクター造形の味わい深さをひしひしと感じます。

2025年もまだ始まったばかりです。次にまた彼らと会った際には、どのような驚きを与えてくれるのか今から楽しです。





 



え!?!?!?!?!?


未来を照らすダイヤモンド!?!?!?!?!?



びっくりしすぎて危うくプレゼント◆5を詠唱し始めるところでした。世界名画?????
近年のドルステで「アイドルと“お友達”が事実上の共演」という体裁のイベントでは恒例化しているこの手のツーショットですが、まさか深友もやってくれるとは思わず本当に盲点でした。盲点すぎて投稿されてから一週間くらいは毎日一時間眺めていました。

余談ですが、深友の“お友達”たる山縣さんご本人名義での『ネルフェス後夜祭』の登壇内容はご出演した恋愛作品の紹介だったので、命尽きる直前に愛を告げる超シリアスシーンをGS382ライブ後の汗だく状態で解説する様子が周囲からネタにされていました。加賀深友、後発コーナーまで滅茶苦茶にするな。

『ネルフェス後夜祭』のアーカイブ配信はこちらで暫く行われるそうなので、公開期間ギリギリまでGS382の輝きを目に焼き付けたいと思います。




それでは。

 

ごきげんよう、柘榴です。


今月7月は映画『ペテン狂騒曲』観たさに映画館に通いつめる日々を送っています。
普段は友人に薦められない限り映画鑑賞はあまりしないのですが、とんでもない男がわんさか出てくるコンテンツに常駐していたお陰で自分とは相性が良く、なかなかどうして楽しく足を運べました。
先日には地元の上映期間が終わったものの、まだまだ上映自体は続いているので、今の内に感想を色々残しておこうと思います。誰のことを主題にするかは記事タイトルですべて察してください。



※あくまで深読みこじつけなんでも有りの個人的解釈に終始します。もし大きく感想が異なっても、色々な解釈ができる楽しい作品なんだなと割り切ってください。

※本記事には『ペテン狂騒曲』上映本編のネタバレを含みます。スピンオフ小説やメイキング映像は現時点未履修です。





 




■内田光流という“いびつ”な存在

まず、自分が本作品で事前にもっとも注目していたキャラクターは、山縣悠己さん演じる半グレチームの一員・内田光流です。
本作品は先行試写会に至るまでの情報発表が比較的ライトで、事前に作品へ予想を立てられる要素はキービジュアルや公式SNSの紹介文、作中シーンを用いたブロマイドくらいでした。
光流において開示された事前情報は、大きく分けて「キャストの容貌とキービジュアル」「作中の社会的立場」が相当します。

 

(夢みたいにカッコイイ~……)

当時の少ない情報の中では、光流を演じる山縣さんの郡抜きの見目麗しさがまず目を引きました。
自分が最初に存じ上げた山縣さんの役柄がかなりカッコイイ系のキャラクターであった経緯もあり、今作品ではダーティーな内容の紹介文含め、それらのビジュアルと社会的立場双方に釣り合うようなクールなキャラクターがくるかもしれないと予想するのは容易かったです。

ところが、蓋を開けて見ると実際の光流はまるで違いました。

 

「俺、先生が困ってるって言うから助けてあげたんだよ?
 だってほら、俺、先生に借りがあるし」

(映画『ペテン狂騒曲』)


初登場時の光流は予想されたイメージに反して、口調や表情に年不相応かつ立場不相応な幼さが目立ちます。
ウイスキー片手に暴言暴力を静観するいかにもアウトロー然としたシチュエーションからも浮いている、光流がみせた情緒の幼さはかなり異質です。このキャラクターの意外性は印象的で、光流という男が額面通りには収まらない為人を有していることを早々に想察させていきました。

恫喝飛び交う場にそぐわないアンバランスな幼さによって、登場早々鑑賞の目を惹き付けてきた光流。初見時は「暴言や暴力は他のキャラに任せて、光流はそういうことしないのに圧のある異質さで攻めてくるのかな~」と予想を改めて今後の動向から目が離せなくなったのをよく覚えています。


と思った矢先に、直球の暴力も振るい始めたんですよこの男。


 

(砕けた酒瓶を片手に携えながら)
「一番ムカつくんだよね。こういうドジな奴が」

(映画『ペテン狂騒曲』)


度肝を抜かれました。ややあってからのシークエンスで、相手がミスをした途端、それまでの無邪気な仕草が嘘のように光流は興味なさげに酒瓶を振りかざす。その豹変ぶりは作中でも随一の強烈さを誇ります。
自分は先述通り演者の山縣さんにはクールで恰好いいビジュアルイメージを第一義的に抱いていたわけですが、初登場時点でキャラクター予想と異なる光流の年不相応な振る舞いにすっかり油断していたため、更なる反転をさせた冷めた物言いには驚きがありました。
この幼さの内から突如表出したヒステリックな一面も、光流が持つキャラクターの意外性のひとつと呼べるでしょう。

では、以降はヒステリックな人嫌いが本性として描かれていったかといえば、そうとも言えないのが内田光流という男です。
むしろ、以降の光流からは人とのつながりに関する発言が交わり始め、中でも主人公である弁護士・坂木誠人に対する執着は特筆的なものがありました。

 

「俺はさ、先生と仲間になりたいんだよ。
 だって俺、先生のこと好きだもん」
「先生のこと、いつでも待ってるから」

(映画『ペテン狂騒曲』)


事前情報では「誠人に恩を感じている」と紹介されていた光流でしたが、実態はひどく文面との乖離を覚えます。
光流と誠人のどこか噛み合っていないようすら感じる空気の会話シーンからは、「弁護士と被疑者の関係として受けた擁護を仲間意識と履き違えているのではないか?」「あくまで弁護士として味方してくれた経験が光流の中で理想化されいるのではないか?」と勘繰らざるを得ません。
上記の誠人への振る舞いがもっともわかりやすいものの、光流は誠人に対してのみならず、総じて「仲間」という概念への強い執着が見受けられました。


このように、光流は作中中盤までの時点で既に様々な姿を見せてくれましたが、出番が比較的多かった分、動けば動くほど彼のひとつの大きな特徴が否が応でも目に飛び込んできます。
すなわち、「行動原理に一貫性が無さすぎる」という点です。

しかしながら、自分はこれらの為人の一貫しなさにこそ、光流というキャラクターの面白味を覚えました。


思えば、アウトローなのに仕草に幼さが残ったり、仲間への執着があるのに突然冷淡に吐き捨てたり、その後も同じ相手への態度が二転三転したり……“なのに”だらけな光流の振る舞いは傍目には支離滅裂でちぐはぐに映る懸念も否めません。
一方で、個人的にちぐはぐであれ設定矛盾には感じなかったのは、光流の描写が「そういうキャラクター」としてしっかり捉えられる構成が出来上がっていた点に起因していると考えます。

 

(主人公に視線を突き刺す光流……)

とりわけ、最たる例として光流の表情遣い、中でも誰かに注ぐ眼光は彼のことを述べるにあたって外せません。
誠人をやおら見つめる光流のゾッとするくらい目を奪われるような、誠人にすればおぞましさから目を逸らしたくなるような、興が乗っている時のあの視線。それ自体もさることながら、興味の素振りが一気に冷たい温度へ様変わる瞬間は、期待していた人間へ失望した眼差しとして凄まじいものがありました。
全体的に明度の低い作中でギラリと光る彼の眼は、光流が他者への理想化と脱価値化の速度が異様なまでに目まぐるしい人物像を持つと自分へ受け取らせるにはあまりにも雄弁でした。

このような、光流の意外性が意外性を呼ぶ言動のいびつさが「恰好いい山縣さんが思いもよらない役柄を演じられている」という自分自身の映画鑑賞までの経緯ともマッチし、意外性が矛盾ではなく面白味に変換される土壌ができていたのも鑑賞体験として大きいかもしれません。
つまるところ、光流の一挙一動でインパクトを与える演出から光流自身の表情の変容に至るまで、スクリーンに映し出されたその姿は衝動性にも似た歪みに紐付いて行動しているように感じ取れました。


■闡明していく人間的欠落

アウトローとして暴力も辞さず、いびつな言動から立ち振舞いが二転三転する光流ですが、一本通してフォーカスされた点を挙げるとすれば「仲間」に対するスタンスだと思います。
それが描かれるにあたっては当然、他のキャラクターとの対人関係が大きく関わってきます。もちろん、歪んだ恩義の先にいる誠人や同じ半グレチームの人間達とのやり取りへも十分な楽しさがありましたが、光流と他者の関係性へ間接的に影響をもたらしていったキャラクターとして、刑事・大谷和希の存在が印象に残りました。

 


和希は刑事と聞いて浮かぶイメージに違わぬ、大きな眼鏡が特徴の物静かな雰囲気のある人物です。これは作中序盤の演出に鑑みても、かなり明示的に堅物そうな刑事のイメージがプッシュされていることが読み取れます。

こう書くと社会的立場のみならず内面も光流とは正反対な位置にいますが、実はこういった「静かでお堅そう」と感じられる和希のような人物像は、むしろ作中では少数派です。
何せ、主人公の誠人の「過去に光流の弁護実績をあげておきながら今は落ちぶれて金にも目敏い」という敵を作りやすい性格と性質上、出てくる周囲の人物はだいたい誠人の現状にイライラしています。ヒステリック男の楽園?
得てして、必然的に落ち着き払った和希の安心感たることや……誠人の不真面目さや光流の蛮行が目立つ中だと、鑑賞中は気付けば「頼む和希……大丈夫そうな男お前しかいねえよ……なんとかしてくれ……」と謎の願いを和希に送っていました。


だって主人公もライバルも半グレチームもみ~んなイライラしてるし、もう安心して見られるのお前しかいねえよ……!


頼む和希……なんとかしてくれ……大丈夫そうな男がいないこの状況を……!



 

「先輩は、邪魔なんで」
「ハイエナの悪徳弁護士が……」
「あんた、悔しくないのかよ?
 あのゴミみたいな弁護士に二度もしてやられて!」

(映画『ペテン狂騒曲』)



こいつも大丈夫そうじゃないな……。


とにかくこの和希という人物、静かな印象とは別にふとした時に物凄く口が悪い。
特に、過去の実績に比してちゃらんぽらんな態度をとる誠人が気に入らないのか、誠人へチクチクと棘のある言葉を放つ頻度は作中一です。
かくして、和希もただ刑事の普遍性を体現するのではなく個の正義とプライドがあり、彼もまた光流ら他のキャラクターと同じくサイコーヒステリック男の土俵に上がってきました(実際に和希は作中終盤で誰よりもとんでもない行動にも出てブチあがってます)。

ですが、たとえ同じ土俵に上がろうと、和希と光流の人物描写では決定的に異なる部分があります。
有体に言えば、対人関係の強かさの差異です。

 

(相手を自身と手錠で繋ぎ壁際へ追い詰めながら)
「君らはもう檻の中なんだよ。
 でも……もし、君が僕に協力してくれたら、
 君だけは無事に檻から出られる」

(映画『ペテン狂騒曲』)


和希、お前はシチュエーションCDに来い。

やはり和希の作中の活躍といえば、光流の仲間のひとり・篠塚多恵との関係描写ではないでしょうか。
該当シーン自体は刑事キャラのアイコンとして手錠を用いたさりげない描写でしたが、これがユーザーの間でなぜかときめきのシチュエーションとしてウケた声があったらしく、キャスト陣を始めとする公式サイドも「手錠ドン」と称して登壇イベントでしばしば取り上げるくらい和希の鉄板となっています。

 


さて、一応光流中心に書く触れ込みなのになぜここまで和希のことを述べたかというと、この「手錠ドン」ムーブメントが相対的に光流の評価を浮き彫りにしてくるからです。
面白いことに、こういった見立てが話題に挙がるのは和希だけで、仮にも冗談とはいえ口説き文句じみた台詞が作中にある光流には、自分の観測範囲では色めきだった声が一切見られていません。

これは、先にも述べた光流の情緒の幼さに由来しているものだと自分は思いました。
公式でそれっぽい描写があるのに上述の評価は和希にばかり偏っている現状は、そういう見立ての対象になり得ないほど情緒が幼すぎる光流のいびつさの裏付けのようで、個人的にこの二人の評価の差異は見ていて面白いです。転じて、ときめきよりももっと大枠の「他者との信頼関係を結べ得るか否か」という視点で考えてみれば、光流がどう思われるような対人描写を培ってきたかは火を見るよりも明らかでしょう。
皮肉なことに、光流にとって重要な仲間でいる・徒党を組むという事象において、光流が他者に劣る作劇がなされていったのでした。

ところで、このような「ユーザー目線でときめきの対象から外れるくらい作中の信頼に欠ける」という光流の要素については、外面情報のバランスの妙もあると感じています。
なかんずく、山縣さん演じる光流と阿部冬夜さん演じる鹿島大輔において光流は年不相応な幼さや短慮な振る舞いで、大輔は片メカクレと体型の出ないファッションで物理的にルックスを隠して、キャスト本来の美形然とした佇まいを潰してキャラクターのノイズを軽減している点には膝を打つものがありました。


光流と和希の対比はあくまでスクリーンの外での結果論でしかありませんが、ところが作中世界でも光流はこれ以降、和希に限らずあまり他のキャラクターよりも単身で優位に立てている描写がありません。
それまでの光流が受けていた演出は、不穏なBGMや顔を引き攣らせた周囲の反応など、アウトローの立場まさしく怖さを醸すものが主となっていました。それでもなお、仲間達がどんどん他のキャラクターと関わりを持っていくにつれ、いびつな言動の内から恐怖の材料にも使われない光流の人間的欠落がじわじわと闡明していった印象があります。
よりによって自身が大切にしている「仲間」との関係性で天秤にかけられてしまうような、言外に示される光流の欠落を受け、これからの展開を思い暗雲が立ち込めていく気分にもなりました。


■アウトローから憐憫の対象へ

案の定、一貫性のない光流の言動は、とうとう彼の行く道へ大きく皹を入れてきました。
上述シーンで光流の仲間であるはずの多恵が和希と組んでいった時点でお察しの通り、光流は終盤以降、他者からの怒涛の裏切りを経験します。
短慮で傍若無人な行動がそう長く安定することもなく、光流は物語が佳境に入るにつれ、立て続けに裏切られるシークエンスにぶつかります。広い意味の敵ポジションである都合メタ的にはある程度予想していた展開ではありますが、それでもなお光流の歪みきった居住まいにはあっと言わされました。

何を隠そう、裏切られて1分経たずにもう掌返して笑っていたのですから。

 

「健太。お前も俺を裏切るのかよ」
〔…〕
「へえ。健太、お前ヤクザとつるんでたのかよ。やるじゃん!」

(映画『ペテン狂騒曲』)


一昨日映画館で心の中で数えたらこの間わずか15秒でビビった。
光流の対人描写は大抵の場合、信頼からの裏切りあるいは裏切りからの面白がりといった風に、執着と裏切りがセットになっています。となれば、これまでの物語と同様、たとえどれだけ期待の眼差しを向けようと意に沿わなければ光流は冷淡に応じます。
にもかかわらず、失望の相手が何か琴線に触れる行動をしていれば、描写量の多寡を問わずたちまち光流は面白げに笑っているのです。

裏切って早々に逃走した多恵に対してを除き誰もに首尾一貫性なく振る舞っていった、こういうところにも光流のいびつな人格が顕れていてある種見逃せないものがあり、言動として散らかっていても「そういう男だ」と受け取れる懐の深さを光流のキャラクター性から感じました。

急に違う話になりますが、逆にキャラクター性に幅が無さすぎて職業的な諸問題を主張するだけで個人としてのプライドや葛藤を丸っきり描かれなかったキャラクターも存在するので、光流の描写が比較的しっかりしていた分思い返すと歯噛みしそうになります……我妻泰史お前だよ……あんなにドでかくハイパー美形キービジュアル出されてるのに……もう少しプレッシャーを背負って滅茶苦茶になってる過程があれば光流に並ぶサイコーヒステリック男になり得た逸材……。


では、ここまで激しい掌返しを起こせるのなら、そもそも光流は最初から相手に思い入れがなかったのでは?というかといえば、自分はどうしてもそう思うことはできません。


あの時の、裏切られた瞬間の光流の容貌は、確かにそれまで積み重ねた「仲間」への執着が効いてくる画を見せてくれていました。


目の前のスクリーンに映された光流の様相は、離反を是としない冷徹さというよりも、仲間が自身を拒むことが信じられない風な視線を相手に注いでいました。
序盤から悪役寄りに描かれていた彼にすら見ていて簡単には言い表せない気持ちを与えてくるひと時の視線は、たとえその後に何度も態度を変えせせら笑っていようと忘れられません。これもまた、序盤で仲間への執着と示してから終盤で急展開を味わわせる構成と、それにより著しくも鮮明に変化する光流の表情の機微が成せるものではないでしょうか。

そのように、睨むにしても目を見開くプロセスを経てしまうような光流の姿を見ていると、アウトローに向けるべき感情ではないのはわかっていても、自分の中ではいつしか恐ろしさよりも憐憫が勝っていったのをよく覚えています。

もしも、光流があまねく人間を意のままに振り回す人物として描かれ続けていたら、彼に抱く感情もまた異なっていたでしょう。しかしながら、スクリーンの中にいる彼はいかなる窮地でも己の衝動性を糊塗することもできない、最後までいびつな振る舞いを旨とするとんでもない男でいました。
それがどこか物悲しくも、それでもいびつでちぐはぐに生きる光流の情緒に、自分は作品のキャラクターとしての面白味を感じずにはいられませんでした。



 

くたびれたヒールの底で撃つ
君と僕のワルツのリズムも
救われない輪廻の中なら
わりとうまく踊れそうじゃない?

(Veronica『魔言の愛』)


本記事のタイトル引用元の歌です。帰りに好きなバンドの歌聴いてたらただでさえ光流で滅茶苦茶になっていたのに余計に滅茶苦茶になりました。やっぱりフィクションのとんでもない男を見たシメはヴェロニカに限る……。

元々あらすじ的に「普段ヒステリック男の多いコンテンツに慣れてるから、1616屋所属のお二方のどちらかがヒステリック暴力男演じてくださったら嬉しいな~」といった期待値で鑑賞に臨んだわけですが、いざ観てみれば両方ヒステリック暴力男の役でしたし、その上で光流はヒステリーの更に奥行きを見せてくれたため、単純なファーストインプレッション以上の見応えがある描かれ方をされていたと言えます。
幸いにも前売り券がまだ手許に残っているので、この後も適宜彼の生き様を目に焼き付けておきます。





それでは。