ごきげんよう、柘榴です。
来たる2026年、年始の『Rejet Fes.2026 Answer』にて、愛してやまないディアヴォシリーズの新作『ディア♥ヴォーカリスト RISE』が発表されました。
ティザーPV公開のみの現時点、既に全バンド揃い踏みが確定して早くも新章の予感がしているので、今の内に無印から第8期における書きたい感想を各バンドごとにすべて書いておくことにします。
ポジティブからネガティブまでなんでもありのネタバレ感想です。本当に思いついたところから書いているので、万遍さの欠片もなければ主役よりサブキャラへの言及が多い箇所すらあります。その辺の偏りはご了承ください。
なお、自分は無印~第2期は『Rejet Fes.』と一部アルバムのみリアタイ、第3期からシリーズ通してのリアタイ購入勢です。作品の性質上、リアタイか否かでも感想の抱き方が変わりそうな手前、その辺りを加味してご覧いただけますと幸いです。
■LUMIERE

【©Rejet/ディア♥ヴォーカリストシリーズポータルサイトより】
LUMIEREは、ヴィジュアル系をルーツとする四人組バンドです。ヴォーカリストはクールな王子系のレオード、ギタリストは面倒くさい性格がにくめないシンバ、ベーシストは明るく幼い顔立ちのノエ、ドラマーは兄貴肌と親しみ深さを併せ持つトーマで、ノエがリーダーを務めます。
楽曲面においては、LUMIEREが毎シリーズのトップバッターを担うからか、癖が少なく誰にでも愛されるようなロックチューンを表題曲にすることが多い印象です。一方、カップリング曲としてどこか退廃的な世界観を描いた攻めた音楽を発表する傾向にもあります。
ベーシストのノエがリーダーであり物語のキーマンになったこともある関係からか、『アンビシャスナイト』や『Dilemma』などベースの音を楽しめるナンバーも少なからず存在します。
本編ドラマはよく「初心者向け」と称されることが多いように、Rejet作品と聞いて想起されるようなハードな猫写はヴォーカリスト一少ないです。
レオード自身が比較的トラブルを生むタイプではなかったり(あくまで比較的ですが……)、ヒロインとの交際も非常に和やかなムードが続くことから、レオード本人の性格面をネックとした困難やヒロインとの喧嘩はあまり起こりません。そのため、自身が抱える生得的な身体的困難、あるいはまったくの外的要因をヒロインと共に乗り越えるストーリーになることが多めです。
いわば“ハードなRejet味”が少ない点、毎期ごとの発生する困難に連続性が低い点から、どの本編ドラマからでも入りやすそうな雰囲気なのが初心者向けと呼ばれる所以かもしれません。
では、このバンドで“ハードなRejet味”を担うのは誰か。
それは、前述したリーダーのノエです。
とにもかくにも公式公開音声を聴いてください。
ノエは初登場からもう大変だ。初登場は第3期『Wired』で、その際は「LUMIEREのリーダー」という半ネームドキャラでの登場でした。
第3期は主要キャラクターの交代、本編ドラマの形式がオムニバス仕立てからストーリー性重視に変わるなど重要な転換期でもあるのですが、では、そんな期のトップバッターでLUMIEREの物語はどのように描かれていったのか。
それはずばり「ノエが脱退騒動を起こしてレオードとヒロインの交際に波風を立てていく」という内容でした。初手からエネミー枠として出てくるお前は何なんだ。
自分の初ディアヴォ本編ドラマ視聴は、何を隠そうこの『Wired レオード』です。CD購入自体はまた別なのですが、該当CDが地獄みたいに怖いと噂のカレだったので覚悟が決まらず歌しか聴いていませんでした。
元々ベーシストのバンギャをやっていたため、よりによってベーシストの男に最初の交際への擬似体験をしっちゃかめっちゃかにされたことには、まさに頭を殴られたような衝撃を受けたと呼ぶほかありません。
これにより自分は、顔も声も名前もわからない男にハラハラさせられる怒涛のディアヴォ本編デビューを果たしました。

【©Rejet/Rejet公式サイトより】
なおこの『Wired』、大トリのCDも渡米した憧れのバンドマンのせいで彼氏が大荒れする話なので、余所の男のせいで交際が滅茶苦茶になる話に始まり余所の男のせいで交際が滅茶苦茶になる話に終わるすごい期です。
その後、ノエらバンドメンバー達は第5期『Evolve』で名前と簡単な話口調が開示され、第6期『Raving Beats!!!』でキャラクターデザインが発表、第7期『Unlimited』でCV実装と本格的なストーリー参入を果たしていきました。
とりわけ印象的な出来事は、やはり第6期のキャラクターデザイン解禁でしょうか。何せ、ノエにおいてはピンク・黒・金が基調のLUMIEREで、メインカラーが水色というあまりにも意外性に富んだビジュアルをしていたのですから。
あえてLUMIEREから“浮いた”容姿を持たせる点は、ノエがサブキャラクターの一人でありながらそれ以上のキーパーソンにもなり得る象徴に思えます。初めてのバンドメンバーのビジュアル公開であるLUMIEREで、バンドメンバーもただのモブキャラクターでは終わらなせないディアヴォシリーズの意思を感じられてとても好きな思い出です。
ノエくん推しの方からリプ頂いて朝からとても嬉しい。バンメン達についてはまだ多くは語られてないけど、全員それぞれの人生があって今まで生きてきたので
— スオウ (@sdurorhr) November 26, 2020
ところで純度100%の自慢ですが、キャラデザ発表時にノエのキャラデザが第3期から待ってた甲斐あって超サイコーという旨をキャラデザのスオウ先生へ連リプしたら、翌日先生にノエの人生の一部にされたのが終生の自慢なのでここで自慢させてください。心の底からの自慢なんです。
LUMIEREの中で水色基調のデザインという意外性や、リーダーというキャッチーなポジション、そして既に第3期で人物描写が存在していた点から、バンドメンバーの中でも注目度が高い印象のノエ。続く代表的なエピソードといえば、第7期の本編ドラマのバンドパートでしょう。
シンバ「そーゆーオマエの曲は、だいたいどれも地味すぎじゃん。
勢いもないし、だからいつも表題曲には選ばれないんだよ」
ノエ「痛いとこ突くなあ……。
……でもさあ、オレはあーゆー曲、好きなんだよ。
なんだかんだで、レオの声が一番映えると思うんだよね。
たしかに、今のルミエにはみんなを引っ張ってく力が求められる気がするし、
オレの曲がどれも表題に向かない曲調なのもわかってる。
もっとアップテンポで、勢いや華やかさがある……
まるで、ステージの上のレオ自身みたいな曲が求められてんだろーなって。
でもさ、だからって、オレたちのほうからレンジ絞ってく必要はないじゃん?
折角四人でやってんだし。だから、オレが狙ってるのは最初から2曲目──
その代わり、表題曲とは全然違うルミエらしさを表現したいってゆーかさ」
(『ディア♥ヴォーカリストUnlimited エントリーNo.1 LUMIERE』DISC2 Track.2)
レオード「これまでもそーだったケド、アイツが作る曲は、結構大人っぽい曲調が多い。
……見た目はあんななのに」
(公式Youtube『CLIMAX TUBE』内投稿「LUMIERE / LUMIERE RADIO❤パート2【RADIO】」より)
ノエは楽曲の原案制作にも携わっており、LUMIEREの退廃的な世界観の音楽は大半がノエ作のものとされています。その根幹には「レオードの歌声が映える世界観の楽曲を生み出す」という、自己ではなくレオードを輝かさせるためというポリシーがある点は、ノエという人物を語るには絶対外せないファクターです。
一方、ノエのこの作曲傾向をレオード本人は「見た目はあんななのに」とレオードのための世界観だとはまるっきり思っておらず、このようなすれ違いも二人の関係性に面白味を感じさせます。
自分はこの、ノエのレオードに対して覚悟がキマりまくっているところが大好きです。上記の「最初から2番目狙い」という彼の楽曲制作のスタンスはそのままノエとレオードの現状を顕しているかのようで、半ネームドキャラとしての初登場『Wired』の時点で開始1分でレオードに冷たくあしらわれるノエが見られます。初登場から方向性が決まりすぎてるだろ。
二人のどこまでいっても平行線なすれ違いは、レオードの公式SNSアカウントの投稿を「リーダー」か「ノエ」で絞ってサーチするとだいたいわかるのでオススメです。
【NOE😺Ⓑ🎸】
— レオード (@reodo_lumiere) December 13, 2024
これからもオレらの演奏でレオの歌をもっとサイコーにするぞー!
RP 💗ノエ君💗
🐱【ノエ君のベースの音大好きだよ〜✨やっぱりリズム隊がばっちりキマってるとヴォーカルの歌声も映えてステキ🎸🅱️】
#ルミエ_エアリリイベ2024
【NOE😺Ⓑ🎸】
— レオード (@reodo_lumiere) December 13, 2024
そうそう こーゆー会話してみたかった! 毎日リアルタイムで共有できるレオが羨ましいー!
RP 💗ノエ君💗
🐱【私の最近のマイブームはお豆腐料理だよ〜!ノエ君といつマイブームの共有してみたかったからこの機会に🐈】
#ルミエ_エアリリイベ2024
自分がノエからもらったリプライ返信。1個目は「この男は絶対レオードの話題につなげやすそうなリプを優先的に拾うだろう」と読んであえてレオードをちらつかせる文章にしたら本当にその通りになって大笑いしたやつで、2個目は純粋にノエと擬似恋愛エミュレートしたかったのに「どんな話題だろうとレオードの話につなげる」という現実をお出しされて謎の敗北を感じたやつです。清々しいくらい覚悟がキマってるなこの男……。
閑話休題。このように、ノエはレオードのことを人一倍気にしており、音楽活動でも日常でもレオードには気持ちよく接している、少し子どもっぽいけど楽しいリーダーとして描かれることが基本となりました。
しかし、そんなノエはまたしても、本編ドラマでトラブルの火種となるキーパーソンに抜擢されてしまいます。
第8期『Headliner』本編ドラマのバンドパート、ここでノエは、レオードの身体的困難をバラしてしまう展開を生んでしまったのです。
ノエ「耳、大丈夫? アレから悪くしてない? もし必要だったら、右側のアンプ、若干音大きくしとく」
レオード「……何の話だ。問題ない」
ノエ「なら良かった! オマエのソレを知った時は驚いたケド、毎回オーディエンスを感動させる歌を完璧に仕上げてくるんだから、オレやっぱ、オマエのコトすげーって思うよ!」
レオード「……ハ?」
シンバ「……何の話?」
トーマ「オマエ、さっきのは耳の調子が悪かったのか?」
(『ディア♥ヴォーカリスト Headliner エントリーNo.1 LUMIERE』DISC2 Track.2)
この展開は、シリーズどころかRejet作品としても異質な点を2点包含していると自分は強く感じました。
1点目は「キャラクター設定から逸脱した部分のモラルのズレ」です。
横暴な男が幅を利かせることで有名なRejet作品、しかしながら、意外にもその横暴さには一定の線引きがされています。たとえば、Rejetのオレ様代表『DIABOLIK LOVERS』逆巻アヤトは他者の攻略ルートでは実弟の身を案じる思慮深い側面があったり(『MORE,BLOOD』逆巻ライトルート、逆巻スバルルート等)、PSP時代の名作『月花繚乱ROMANCE』の鹿野葵は傲慢かつ性に奔放でありながら女性同性愛の攻略ルートでは同性愛を何ら気にしない言葉をヒロインへ返す、当時では非常に珍しいフラットな価値観を見せました(八重原ダリアルート)。
このように、Rejet作品は基本フォーマットとして、キャラクターの基本設定となるアヴァンギャルドな面以外のモラルには、ある程度社会的ハビトゥスに鑑みたまっとうなバランスで描かれることが大多数でした。
ところが、ノエはその線引きを踏み越えました。上記引用のように、本人が隠している身体的困難を勝手にバラすかなりヤバめな蛮行をしたのですから。やーいノエお前の倫理観逆巻アヤトと鹿野葵以下!!
この前代未聞のキャラクター描写は、彼が持つ異質さの2点目につながっていくのですが、2点目として「過ぎた罪に相応の罰が下らない」部分も目を引きました。
Rejetの男達は、横暴に働けば働く分大抵何かしらの代償や手痛いしっぺ返しを受けます。滅茶苦茶な言動を起こす彼らには大抵そうなってしまうに納得足り得るバックボーンがあったり、特に同情の余地がなければいずれ酷い罰が待ち受けています。ディアヴォシリーズにおいても、初期は全員満遍なく酷い目に遭っていたものの、近年ではトップ・オブ・クズことジュダとモモチが集中的にコメディシーンで可哀想なことになる傾向にあります。
事実、ノエにおいても、第3期で脱退騒動を起こした罪業にはしっかり向き合っている猫写が散見されました。
【動画をもって第3期公開贖罪フェーズがある男、ノエ】
ところが、第8期のノエに関しては、レオードの身体的困難をバラしたことへ何の罰も受けていません。
これは、罪業を負ってなお味方サイドに来るのなら罪業に対して洗礼と贖罪のプロセスがあってほしい自分個人の感性が大きい感想なのかもしれませんが、それでも客観的にもやらかしへお咎めなしなのはRejet作品内でもあまり類を見ず、この展開には非常に驚きました。
むろん、ドラマの主役はあくまでレオードなのでそこまでノエに比重を置かない方針だったのかもしれませんが、少なくとも視聴者視点で、ノエが第8期に背負った罪業への洗礼を受けたと読み取れる発言が現時点では描かれていません。
当てるべき焦点がノエではなくレオードで、ノエの罪業の清算には必ずしも描写が割かれないと言われてしまえばそこまでなものの、それでもなおお前本当大分ヤバいことしてんだぞわかってんのかノエ感は、自分がノエの覚悟とままならなさに心奪われた人間だからこそ強く抱きました。
ノエの状況をまとめると、レオードの歌が輝く世界観を至上としながら、その割にレオード関係でやらかしまくる、そんなどうしようもなさがクズ性・リジェ男子性に該当するキャラクターになりつつあります。なので、第9期では今度こそノエに罪業に対する罰が下るのか、このままお咎めなしでリジェ男子の特異点となるか、今後も目が離せません。
ノエは作中で五本指に入るほど大好きなディアヴォキャラクターなので、サブキャラクターとして描写が許される範囲を限界まで使って、彼にも光の差す明るい未来が待っていることを願うばかりです。
なお、自分はノエの担当声優である上村祐翔氏についてまだ初学者なのでノエの声音への想像の幅が乏しいのですが、個人的には怖いもの見たさであり得ないくらいの罪業への反省フェーズの演技が聴いてみたいです。ノエお前は一度ちゃんとレオードと話し合ったほうがいいよ……。
■NSFW

【©Rejet/ディア♥ヴォーカリストシリーズポータルサイトより】
NSFW(Not Safe For Work)は、自他共に認めるクレイジーを標榜した、エキセントリックなパフォーマンスが持ち味のスリーピースバンドです。溌溂とした最年少ヴォーカリストのエーダッシュ、おおらかでちゃらんぽらんなギタリストのシックス、オシャレでこだわりの強いドラマー&DJのナイトメアの三人で構成され、リーダーは特に決まっていません。
楽曲面ではデジタルミクスチャー系に強く、王道ロックチューンにおいては正規メンバーが担当するギターとドラムの腕が光る曲調が多いです。特に前者は、一見Cメロにきそうなメロディがイントロや1番サビ直後にくる構成等、クレイジーに相応しい意外性溢れる曲作りが印象的です。
それ以上に、歌詞がこれまたクレイジーな世界観や言葉選びでありつつも、同時に全人類を肯定するような優しさに満ちています。楽曲総選挙で上位にランクインした人気ナンバー『KKK→E』や『#HAPPY』でも、それぞれ無条件に聴いている人の存在を認めるような言葉を幾度も紡いでいます。
バンドとしての最大の特筆点は、中心人物であるエーダッシュが音楽知識へやや疎いように描写され、アレンジ等をメンバーへ一任することに躊躇いがない点です。
エーダッシュは実兄の代役をルーツとする成り行きで音楽を始めたからか、自らの得意ジャンルを「ピコピコ系?」と曖昧に表現するなど、他のヴォーカリストに比べ知識面で大味な印象を与えます。また、他のヴォーカリストは弾き方ひとつでメンバーと喧嘩するほど編曲にも強いこだわりがありますが、エーダッシュはメンバー達に任せきっており、完成した作品にも異論は唱えません。
そんなエーダッシュに対して、シックスはエーダッシュにも伝わるような噛み砕いた言い回しで希望する楽曲イメージをヒアリングし、やがて完璧なアレンジを提供していきます。ナイトメアもシックスから無茶な依頼を受ければ悪態をつきながらもシックスが褒めそやすほどの仕事ぶりを発揮するなど、各自が自由奔放でありながら息ぴったりのバンド体制をみせています。
この辺りのバンドの在りようは、全員真面目な気質でありながら音楽的部分の意思疎通が上手くとれなかった、後述のヨシュア属するBrave Childと対照的ではないでしょうか。
なかんずく、NSFWの肯定のスタンスで象徴的人物と呼べるのが、ギタリストのシックスです。
シックス「とにかくねー、オレが必要なのは、オマエのその声なんだ。
オレさー、どんな楽器でも、思い通りに音が出せる自信あるんだよ。
でも、人間の歌声だけは──そうはいかない。
歌う技術は努力で底上げできても、声色そのものは変えられないからね。
オレが生み出せる音で、唯一気に入らないのが、自分の歌声なんだ」
エーダッシュ「そんで? ここまでの話を超ザックリまとめると……オレに歌えってコトなワケ?」
〔…〕
ナイトメア「この話、ナイティになんか関係ある?
今の流れじゃ、そっちの子だけで十分ってコトになるじゃん。
それとも、出来上がった曲を更にリミックスしたりしてって話なの?」
シックス「いや? オマエは単に、いたら面白そーだなって。
存在自体が特殊だし、いるだけここまでのインパクトを与えてくる人間なんてなかなかないよ?
ましてや、話したコトもないのに!」
(『ディア♥ヴォーカリストUnlimited エントリーNo.6 NSFW』DISC2 Track.2)
前述のバンド体制も然りですが、シックスは作中バンドマンでは珍しくとてもおおらかな人物として描かれています。元々代役で歌を始めたエーダッシュの声を代役ではないエーダッシュその人のものとして魅力を覚え、ナイトメアに至っては「存在が面白い。そこにいるだけでいい」と彼の存在そのものを全肯定します。どころか、彼らの声と存在は必要不可欠だと謳うだけに留まらず、NSFW結成の発端が「自らの音楽の完成に必要な声を探している」という弁が下敷きにあるにもかかわらず、途中からエーダッシュに作詞作曲まで挑戦させ、本来必要事項に含んでいなかったナイトメアのドラムやMIXも取り入れる滅茶苦茶ぶりです。
シックス本人は二人のことを「ただの玩具としか見ていない」と声高に主張しているものの、それは結果的に、彼らをシックスなりに大切にしている在りようにつながっていきました。
更に、これだけで終わらないのがディアヴォの面白いところです。というか、仮にも乙女向けコンテンツとして無茶苦茶なことさえします。
シックスはあろうことか、視聴者が感情移入すべきヒロインに対して敵愾心を向ける猫写が存在します。
ナイトメア「……ナニ。エーたんにカノジョができると都合悪いワケ?」
シックス「いや別に。でも……、とにかく、ヘンな影響与えないでくれたらイイなって」
ナイトメア「ヘンな影響って──」
シックス「いや、だって? オレが面白いと思ってるのは、放っておいたらナニするかわかんない──ヤバい目したアイツだから。
なんて言えばイイのかなー……『ああコイツ、その内ぶっ壊れちゃうんだろうな』みたいに思うコト、ナイティにだってあるんじゃない?」
(『ディア♥ヴォーカリストUnlimited エントリーNo.6 NSFW』DISC2 Track.3)
これが乙女向けコンテンツに登場する女好きキャラの言い分でたまるか。
女好きなのにエーダッシュのヒロイン=つまり視聴者に敵愾心を向ける、ともすれば矛盾めいてすらいるこの強烈な狂気がシックスの為人をより華やかにしていきます。Rejetの十八番であるアンタッチャブルな男をまた別の切り口で表現したような面白味も相まって、それまで安全地帯にいたこちら側へ鎌首をもたげる彼には度肝を抜かれました。
そして、一見恐ろしいこの一面を確固たる魅力まで昇華していったのが、その後のシックスの心境変化の描写です。
シックス「──ねえ、ナイティ。エーは、大丈夫だよね」
ナイトメア「ハ……? ついでにジジイも診てもらえば? エーたんなんかよりよっぽど顔色悪いよ」
シックス「……オレが……? そう、かな」
(『ディア♥ヴォーカリストUnlimited エントリーNo.6 NSFW』DISC2 Track.3)
上記引用のような、エーダッシュが倒れた際に垣間見せた動揺からなるギャップにより、シックスはぐっと魅力的なキャラクターとして印象づいていきました。
メンバーはオレの玩具と宣った人でなしを演じるシックスが覗かせる人間味、この複雑な内心こそ、NSFWの狂った肯定の精神を克明に示しているように感じます。
ところで、シックスのこのような“掴みどころのない男”としての面白い点をもうひとつ。
Rejetは不思議キャラの扱いがとにかく苦手らしく、『DIABOLIK LOVERS』無神アズサは人気投票下位、『MARGINAL#4』シリーズの滝丸アルトも初期のRejet生放送のランキングで作中メインキャラ唯一の選外になったことがあるなど、この手の掴みどころのないタイプのプロデュースが相当アレでした。
ところが、エーダッシュの公式SNSの投稿を見る限り、シックスはバンドメンバーの中ではなかなか人気なようです。ぜひこのままミステリアス系リジェ男子の一端を華やがせてほしいと思います。
閑話休題。
しかしながらこのシックス、第8期で狂気がナーフされました。
というのも、第8期では第7期と同様エーダッシュがピンチに陥る流れではあるものの、その時のシックスは、前期とは打って変わってまるで平静な素振りでいました。本来サブキャラクターに位置するシックスにそう何度もリソースを割けないと考えれば致し方ないとはいえ、前期で圧倒的狂気と隠しきれないエーダッシュへの情を見せてきた手前、エーダッシュのピンチへまったくのノーリアクションというのは少し物足りなく感じました。
迸る狂気と人間臭さのバランスこそシックスの魅力であると、自分は考えます。
他のバンドメンバーの大多数がイマドキなキャスティングの多い中、シックスの声優にはベテランの立花慎之介氏が起用された辺りにも、高い演技力を要するアヴァンギャルドなキャラクター性がシックスの骨子になっていると読み取れませんでしょうか。
(理想の声と存在に囲まれて良い空気吸ってんなコイツ……)🐼㊗本日リリース!
— クライマックスレコード広報 (@climax_records) December 21, 2022
💚NSFW NEW SINGLE💚
『🌈そらからふるゆめ🍭🍬』
『📽️THE MIRROR HOUSE🎞️🥤🍿』
NEWシングルのリリースを記念し、CRスーパーバイザー・スオウ先生による撮り下ろしショットを電撃公開📸✨
まさに只今、事務所にて💚#ディアヴォーカリスト#ディアヴォ#NSFW😎6️⃣🌃👻#Season7 pic.twitter.com/12TgqsPDEN
さて、そんなシックスと強い結びつきのある人物として、ナイトメアは欠かせません。
ナイトメアは、NSFWが主役のエーダッシュ+他二名の楽器隊によるスリーピースバンドという体制上、シックスとペアで扱われることが少なくないです。見た目的にも正反対なのがなんとなく収まりが良く、ドラマパートでは二人の会話劇を通してエーダッシュが置かれている状況を暗に示す手法も見受けられます。
二人の関係性の最大の特徴は、ナイトメアの恰好が受容されている点です。
「ねえねえナイティ。悪いんだケドー、その帽子、今だけ脱いでくれないかなー?
さっきからツバが肩にぶつかっててー」
(公式Youtube『CLIMAX TUBE』内投稿「NSFW / CRAZY RADIO特別版❤前編【RADIO】」より)
「(ナイトメアの今日の服装を質問され)
いつもヤバイからオレからはノーコメントで 着る服は自由だし、なんでも良いケドね」
(エーダッシュ公式X(@a_nsfw)2024年6月6日投稿より)
「(ナイトメアの好きなところを質問され)
なんか光ってて面白いよ」
「なんてゆーか 毎日?」
(エーダッシュ公式X(@a_nsfw)2024年12月23日投稿より)
一見するとナイトメアの装いを馬鹿にしているような文言ばかりですが、その実かなり譲歩しているのが読み取れますし、変装等の合理的理由がない限りでは「だから着替えろ」という文脈に着地することはありません。特に、他のディアヴォキャラクターならもっとボロカスに拒みそうなシークエンスで「“今だけ”脱いでくれない?」と根本を否定しない言い回しが前に出る辺りには彼らの関係値が暗に示されています。
ナイトメアが前所属バンドを「ヴォーカリストより目立つからチームを外された」という脱退背景を加味すると、ナイトメアがNSFWという滅茶苦茶なことは言ってくるけど根本では存在を否定してこない今のチームの居心地をどう思っているか、想像してしまうものがあります。

【©Rejet/ディア♥ヴォーカリスト公式X(@climax_recoads)より】
ちなみに、ナイトメアのファッション趣味についてはまだ全身が映ったビジュアルが少ないため断片的な情報しかありませんが、リボンやフリル、ヘッドドレスやスカート状のボトムスといったドレッシーなものを好んでいるようなヒントが節々にちりばめられています。
個人的にスオウ先生撮り下ろし(描き下ろし)ショットのナイトメアで印象的なのは、リボンモチーフ、ストロングトーンのピンク、フリルや巻きスカートといったヒラヒラ系全般です。と書いたところで上とほぼ同じこと繰り返してたから実質全部でした。ナイトメアの全部が好きです。
NSFWの楽曲傾向やナイトメアのクラブDJ出身という経歴から、クラブカルチャーを源流とするサイバーゴス系のほうが相性が良さそうなところ真逆の装いで身を包み、そんなまったく異なる系統の装いさえ受け容れてしまう彼らのスタンスには、NSFWのクレイジーな肯定の精神を覚えずにはいられません。
そもそもナイトメアはファッションやメイクを含めて「自分は自分」であると謳い、シックスはそんなナイトメアの存在そのものに惚れ込んだわけですから、目立つ恰好や頭がおかしいとは表現しても、シックスがナイトメアの存在の一部たるファッションを剥奪という形での否定はしないのは、キャラクターの一貫性を感じる点でしょう。
NA●S受け取ったよ イイ感じだった🌃👻
— A’@サバイバルイントロ駆け抜け中9️⃣🏃💨 (@a_nsfw) December 23, 2024
RP ゴメン私ナイティの誕プレNA●Sのコスメにしちゃった!!!!!外資系が好みだったら気持ちだけ受け取って…🥹#ナイティおめでとうとクレガのための会2024
自分がナイトメアからもらったリプライ返信の中で一番ときめきが凄かったもの。
この直前のリプ返に外資系ブランドの香水を使っている情報が初出しされたので、この流れでナイトメアの好きなブランド傾向の読める内容が来ればいいな~とか気持ちが嬉しい的甘い言葉でもいただいて擬似恋愛エミュレートできれば御の字だな~とかいう意図で投げたリプライだったのですが、一枚も二枚も上手で通知見た瞬間ぶっ倒れました。
着飾るものへのこだわりが強いことが何度も示されたきたナイトメアからの「受け取ったよ」発言、痺れる。
ナイトメア、本当に好きなんですよ……銀髪平成盛り髪メイク激濃リボン大好きヒラヒラファッション趣味のバンドマンとか好きになる要素しかない。それでいて過去の音楽活動で言外に湿った部分が仄めかされるのもNSFWに加入すべくして加入した納得につながるし、目立ちたがり屋に見えてドラマーやDJという本質的に後ろで音楽を支えるポジションについている意外性とその立場へのプロ意識がきちんと己がすべき仕事を相手に問う声色から見え隠れするのも奥深くて本当~~~にこの男……。ていうかナイトメアのドラマーキャラとしての特異性も話していいですか!?ディアヴォのドラマーって比較的エキセントリックな要素は抑えられる傾向にあるのにナイトメアだけエキセントリックの塊で~すと言わんばかりに打ち出してきて、しかも後々エーダッシュのこと気にかけていたりシックスの狂気には引いたり灸を据えたりする情に厚い一面を開示してきた構造、実質やってることが主役格のヴォーカリスト達と同等の手の込みようなの、聴いててサイコー楽しくないですか!?!?あとこれは担当声優の田丸篤志氏とRejetの監修の匙加減に他ならないんですがキャストフリートークでのナイトメアとして一言残すパートでエーダッシュの物真似は大分テキトーだったのにシックスの物真似はまあまあ“ガチ”だったの、お前、どういう感情をそこのイカれギタリストに向けてんだよ、お前、ちょっと、こっちを見ろ。
閑話休題。
ここまでNSFWが持つ肯定の存在讃歌について語ってきましたが、その矜持を抱くに至るまでのエーダッシュの物語は、とても険しいものでした。
エーダッシュは、何も初めから他者の肯定を旨とする人物として打ち出されてきたわけではありません。むしろ真逆で、実兄にまつわるとある事情で価値観が壊れてしまい、物語開始時点で希死念慮に支配された破綻ギリギリの生き様を披露してきました。
エーダッシュとの交際は、彼の価値観に向き合い、彼が交際を経たことによる価値観の柔軟化を辿る物語となっています。調子がいい時はプリティーで甘々な恋愛模様、しかし一度不調になれば怒りの矛先すら他者と自己を行ったり来たりする不安定さを有する激情家のエーダッシュ。これで視聴者視点であるヒロインへ八つ当たりでもしてくれたらまだ物事がシンプルになれたのに、心根の優しい彼はそれすらできず、あっても自嘲的発言を叫んでくるだけなのが、エーダッシュの感情の複雑さを物語っています。
やがて、エーダッシュはヒロインとの二人三脚で紆余曲折あり、己の希死念慮と向き合い、そして過去の出来事とも向き合い、段階的に困難を清算していくことになります。
顕著なターニングポイントとしては第2期、第5期、第7期が挙げられ、彼の心境の変化を反映させた楽曲としては『KKK→E』や『#HAPPY』が浮かびます。
くれくれくれ→Everybody タラレバならいらんもん
端から仕留めるつもりです
じぇらじぇらじぇら→EveryNight ショゲてる暇はないから
可笑しくなれる?
可笑しくなろう!
(『ディア❤ヴォーカリスト THE BEST ROCK OUT!!』収録、エーダッシュ『KKK→E』より)
神様はいないよ 十字を背負ったぼくらの
最前線は、エーたん!
〔…〕
“なにものか”は証明放棄して
きみはきみで、いいから
〔…〕
きみを、必要としてるよ
この世界、ずっと
(『ディア❤ヴォーカリスト Evolve エントリーNo.6 エーダッシュ』収録、エーダッシュ『#HAPPY』より)
『KKK→E』は本編ドラマと独立したアルバム限定楽曲ですが、希死念慮を乗り越えようと決意したドラマの後に展開されたナンバーとして完璧すぎる歌詞で大好きです。
個人的思い出としては、初めてディアヴォのリアタイ購入を決意させた歌こそこの『KKK→E』でした。原住Rejet作品的にモモチとレオードとシエルくらいしかキャラクターがわからなかった中、試聴でクレイジーな肯定の世界を軽やかに歌い上げるヴォーカリストと突然出会い「とんでもないキャラクターがいるぞ!?」と唸ってRejet shopに駆け込んだ、あの時の興奮は今でも覚えています。
おそらく『MARGINAL#4』シリーズでUNICORN Jr.の世界観に惚れたことのある人間はNSFWの世界観も好きだと思います。
そして『#HAPPY』は、彼が肯定と祝福を標榜する現在のキャラクター方針になった象徴とも言える名曲です。 本編ドラマでも、少しダークな言葉選びのデジタルチューン『宵闇に相乗り』とセットの盤面であることに意味がある点がわざわざ言及されていたりと、本編ドラマ=彼の生き様と強い結びつきを持つ一曲だということが示されています。
また、ギターとドラムの音が気持ちいい構成も、シックスとナイトメアがエーダッシュの生き様に応えているようで嬉しさがこみ上げてきます。
【触れられたくない異常に対して追及も糾弾もしない存在肯定。「きみはきみで、いいから」を地で行く彼ら】
愛するヒロインは破綻寸前の生き方に真っ向から向き合い続け、クレイジーな部分も肯定し代役から始まったヴォーカルもオリジナルのものに昇華させてくれるメンバーには不安定な生き様を肯定され続け、そして今度はエーダッシュ自身が周囲を祝福する世界観の歌を歌う、この美しい循環が自分はとても好きです。
クレイジーな肯定の精神を有するNSFWが大好きです。
ディアヴォにおいて「作中時系列が進むにつれバンド活動を通してのやりたい目標・見せたい在り方が決まる」という作劇は、エーダッシュが唯一無二です。これは、常に人生を棒に振る思考かつ、元々成り行きでヴォーカリストになったエーダッシュだからこそできる変化ではないでしょうか。
じっくり時間をかけて積み上げてきたエーダッシュの物語だからこそ、楽曲を聴いた時の感動やこれからの物語への期待もひとしおです。

【©Rejet/Rejet公式サイトより】
■Brave Child

【©Rejet/ディア♥ヴォーカリストシリーズポータルサイトより】
Brave Child(ブレチャ)は、シリーズの途中から登場したバンドです。朗らかながらどこか陰の差すヨシュアがヴォーカリスト、派手な容姿と控えめな性格を持つソータがギタリスト、竹を割ったような言動のマツがベーシスト、作中バンドマン最年長のユキがドラマーを務めます。物語当初はソロバンドでしたが、中盤から4人バンドとなり、現在リーダーはユキが担います。
Brave Childの音楽はミドルバラード調を得意とし、またヨシュアにピアノの心得があることから、ロックチューンの中に鍵盤の音を取り入れた楽曲も少なくありません。
とはいえ、第5期『Evolve』でバラード調が鳴りを潜めたCDを発売するなどバラード系を完全に主力とする傾向は今のところ感じられず、時にメロディアスなナンバーもこなすなど、かなり幅広い音を展開しています。ヨシュアとソータがチーム内で特別な信頼関係にある本編ドラマを反映してか、ギターと鍵盤のコンビネーションが光る一曲も見逃せません。
ヨシュアは自分にとって特別なキャラクターです。
なぜなら、作中におけるヨシュアの自傷癖の描写が、驚くほど高いクオリティとリアリティに満ちていたからです。
ここから暫くの間、ヨシュアの自傷描写の感想がひたすら続きます。どうかお付き合いください。
まずヨシュアの自傷猫写で目を見張るのは、「そもそも自傷癖だと悟らせなかった点」にあります。
ヨシュアは先述通り、シリーズの途中から登場したキャラクターのため、他のヴォーカリストに比して「シリーズの構造を把握した状態でどんな“クズ”か予想する」という前提条件の違いが存在します。このため、第3期『Wired』発売前はヨシュアがバンド活動の裏ではどんなクズ=困難を抱えているのだろうと予想を立てる声も見受けられ、運用された公式SNSでも困難をまったく醸さない優男な出で立ちをしていたこともあり、予想される内容も様々でした。
ところが、少なくとも自分の観測範囲では、ヨシュアが自傷癖を抱えたキャラクターであることを見抜けた人はひとりもいなかったと思います。
この結果はなるべくしてなったと感じます。
なぜなら、この時既に既存キャラクターの本編ドラマにて手首を切る猫写が存在していたからです。これにより、おそらくシリーズをひと通り聴いている視聴者の大半が「さすがに二度も三度も自傷猫写はこないだろう」と無意識に考え得る環境ができあがっていました。まさか一人で二度目と三度目を担当する男がやって来たとは誰も思わなかったでしょう。
Rejetの歴代自傷描写持ちキャラクターの半数が銀髪だったので(『大正黒華族』伏美メル、『嘘月シャングリラ』ヘル)、そこから予測するのもあるいは可能だったかもしれませんが……だとしても難しそう……。
このように、既存のRejet作品ユーザーであればあるほど、ユーザーの虚を突く華々しいRejetデビューを果たしたヨシュアですが、その上で、開示されたこの習癖がただ一発ネタで終わらなかったのが彼の物語の真髄です。
ヨシュアの自傷描写において、更に革新的だと自分が感じたのは「シチュエーションCDという媒体を最大限に活かしている点」に他なりません。
「……どーかした? ああ……腕の傷?
わかんない。気付いたらこーなってたんだ。どっかで引っかけたのかも。
平気平気。治りかけだし、長袖着てれば見えないよ」
(『ディア♥ヴォーカリストWired エントリーNo.2 ヨシュア』Track.3)
まず、ヨシュアは“どこ”に自傷にしているか明言されたことがありません。いわゆるアムカかリスカかわかりません。
判断材料になりそうなのは上記引用の台詞くらいなもので、腕といっても狭義の腕部分なのか手首含む意なのか、狭義の腕だとしても外側なのか内側なのか、以降の描写でも絶妙にぼかされています。
自傷行為の
これは、ディアヴォがシチュエーションCDという、視覚情報を持たない媒体だからこそ得られるコンテンツ体験ではないでしょうか。
なお、眉唾な話にはなりますしアーカイブが残っていないので深く言及することはしませんが、実は想像を巡らせてくれる要素なら出たことがあります。
2020年配信のシリーズの生放送『Raving Beats!!! 収録楽曲総選挙♥開票速報!!!』でヨシュアの担当声優である島﨑信長氏がヨシュアを紹介する際、一度だけ自傷行為のジェスチャーをされました。ディアヴォシリーズはキャストフリートークでの逸話曰く「初期から細かい設定まで呈示されている」らしいので、それらの情報を総合するとあの時の位置はもしかしたら……という、推測の域を出ない事象ではありますが。
とはいえ、徹頭徹尾視聴者の想像力に丸投げというわけでもありません。ヨシュアの自傷描写は、こちらの想像力を掻き立てる土壌が完璧に築かれています。
ひとえに、音声演出のクオリティの高さがヨシュアの本編ドラマ最大の武器です。

【©Rejet/Rejet公式サイトより】
上記引用ジャケット『Wired』収録の本編ドラマの時点でもう凄いです。まず、担当声優の島﨑信長氏の演技が恐ろしいほど生々しくて素晴らしい。
自傷行為と聞いて一般的に連想されるような恐怖やインパクトを与える方向性ではなく、あくまでヨシュアの苦しみがリアルに伝わるような実直な音声演出が、ヨシュアの自傷衝動パートでは繰り広げられます。それまでの優しい声音とは打って変わって衝動に駆られ刺々しく様変わりするヨシュアの声、余裕のない呼気、みるみる内に自暴自棄になっていく声色、そして衝動に屈してしまった後の虚脱感が手に取るようにわかる呟き……どれもとっても真に迫るものがありました。
どう考えてもフィクションのお話としての盛り上がりならインパクト重視がベターそうなのに、それをあえて行わずリアリティを追求したディレクションとお芝居には驚愕するしかありません。
なおかつ、その声を彩るSEも生々しさに満ちていて、決して島﨑氏の演技に負けていない点も書き記したいです。ヨシュアの習癖にまつわるシークエンスは物が散らかる音から始まり、肝心要のカッターの刃を出す微細な音に至るまで、どれもが緊張感を高めていきます。これら追随するSEも、声のお芝居と同じくらいに場景をはっきり浮かび上がらせる重要な要素なんだと、自分は初めて視聴した時から強く印象に残りました。
以上のような、音声作品であることをこれでもかと活かした音声面の細やかさは、ヨシュアの本編ドラマの十八番だと自分は思います。これらが、自分がヨシュアの持ち味に「シチュエーションCDという媒体を最大限に活かしている点」を挙げた所以です。
ヨシュアの習癖にまつわるプロセスは、コンテンツが当時取り巻く環境とも噛み合いの良さを感じています。具体的にそう感じたのは、ヨシュアの習癖と、それを寛解しようとする彼の意思が視聴者に周知されてきた第5期『Evolve』の頃です。
その頃は前期『Extreme』で習癖に屈してしまったヨシュアが今期も切るか切らないか不安と期待が入り混じる段階で、新曲『WRONG』が過去一番陰のある世界観だったこともあり、発売前から「もしかして今期も何か異変があった……!?」というハラハラ感に拍車がかかっていきました。
同じ空気 吸う価値がない
“生きててごめんなさい”と叫ぶ
街にすがり、いつもいつでも
承認欲求
(『ディア❤ヴォーカリスト Evolve エントリーNo.2 ヨシュア』収録、ヨシュア『WRONG』より)
結論から言えば、この「新曲が陰のある歌詞だったから、本編ドラマのヨシュアにも異変があったのでは」という見解は、彼の歌と物語を追っていけば誤りだと気付きます。
なぜなら、ヨシュアは自らの欠点を秘匿する傾向にあり、アーティストとしてのヨシュアは全能的な世界観を得意とすることが多い(得てしてそれとは真逆な弱い部分は隠したがる)というのが定説で、しからば、ブレチャの世界観に後ろ向きな事象が描かれれば、逆説的に清算された出来事と見做すほうが妥当です。
すなわち、自分含むリアルタイム勢は『WRONG』が発表された時点で、今期のヨシュアは逆に大丈夫だと溜飲を下げる予想すらできたはずだったのです。それでもなお当時の自分がその予想すらできなかったのは、ヨシュアの生き様へ没頭してしまうくらい、ヨシュアに視聴者を引き込ませる魅力があったからだと考えています。
余談ですが、ヨシュアのこの世界観の傾向にまつわる面白かった思い出をひとつ。
上記動画はヨシュアの歌のメドレー試聴動画ですが、これがリリースから順番を入れ替えて「よくある精神不安定キャラのキャラソンの変遷」っぽくして初見を騙す気満々で笑いました。『WRONG』の無駄遣いにして有効活用にもほどがある。
こうして、無事に自傷癖の寛解まで丁寧に描かれていったヨシュア。更にヨシュアの本編ドラマに驚かされる点は、初登場の2017年から2026年現在に至るまで、約10年自傷一本でドラマを作っているところです。
彼の物語がどれほど自傷猫写ファーストで動いていたかというと、ヒロインと幼馴染だというデカすぎる設定が特典CDでさらっと初出しされたくらいです。
なあヨシュア……本当に恋愛コンテンツとして正しいのかその優先順位!?!?
ヨシュアは回を追うごとに「幼馴染」「ピアノが得意」「意外と大食い」等キャッチーな要素がどんどん追加されていきました。裏を返せば、それらとっつきやすい要素を押しのけて自傷癖に注力した物語作りがなされていた点に、ヨシュアの本編ドラマの気合いと覚悟と凄みのようなものを感じざるを得ません。
2通目:ZIPの封筒devil💞💞
— ヨシュア (@joshua_brachi) March 19, 2018
詳しくは書かないけど、オマエが少しでも前向きになれたなら、良かったなって思う👌🎶 ずっとオレのdevilsでいてね💋💞💞💞
ヨシュアからは何度かファンレター返信をもらったことがあるのですが、上記引用はそのファンレ返の初代にして傑作選。
そんな短い言葉で心を掻き乱してくるな…………本当ヨシュア…………お前…………本当に…………お前………………。
これほどまでに自傷経験者の人生へ生々しく向き合った物語は、自分は出会ったことがありません。そのようにして、第5期以降のヨシュアの物語は、寛解に向かう途中の生き様としてステージを進みます。
第6期『Raving Beats!!!』は音楽アルバム+ショートドラマという特殊な構成の期であったため、本格的にヨシュアの自傷経験者としてのストーリーが動いたのは、第7期『Unlimited』からです。果たして、そこでヨシュアには、どのような景色が待ち構えていたのでしょうか。
第7期『Unlimited』にて手始めにフィーチャーされた内容、それは、「親しい友達に自傷経験がバレる」というものでした。
いや……早速ギア全開でヨシュアを追い詰めるな!!!!!!!
なんなんだこの会社!!!!自傷経験者の人生において上位の怖いことを投下するな!!!!!!!なんでこう的確に痛いところを突けるんだ!!!!!!
本当…………勘弁してくれよ……………………。
第7期本編ドラマでは、自傷癖も寛解し、バンドの絆も強まり、順風満帆なアーティスト活動を送るヨシュアが、バンドメンバーのソータに自傷痕を見られるところから物語が急展開を迎えます。
この期からCDがヒロインとの交際を収録した盤面とバンド活動に焦点を当てた盤面の2枚組となり、自分はヒロイン盤→バンド盤の順で視聴しました。ヒロインとしての盤面では突然声色を曇らせるヨシュアへまた自傷関係で何かあったのかと心配になり、そしてバンド盤で明かされた「ソータに自傷痕を見られて気まずくなってしまった」という真相を聴いた時は、筆舌に尽くしがたい気持ちに駆られました。
ヨシュア「あ……そーだよね。……それじゃあ、また、来週……」
ソータ「うん……。またね……」
(『ディア♥ヴォーカリストUnlimited エントリーNo.2 Brave Child』DISC2 Track.2)
この場面の気まずさ、本当に苦しい。聴く度気まずくて苦しくなるから感想書く時しかこの場面が聴けない。島﨑信長氏と永塚拓馬氏にノーベル自傷周辺描写の演技上手すぎ賞を献上しろ。
人選がソータというのものまたキツい。本当に苦しい。ソータは当時のブレチャメンバーでは既にキャラ付けがしっかりしており、一からキャラ説明描写を挟まずとも最短距離で一番ギクシャクし得る人選だとわかってしまうのが頭を抱えました。
ディアヴォシリーズは気の強いキャラクターが多数なため、第7期で起こった「自傷痕がメンバーにバレて気まずくなる」という展開は、控えめな性格のソータとしか成立しなかった展開でしょう。なおかつ、それがとってつけたかのようなキャラ付けではなく、既にそういう為人であると十分に描写されていたソータというのも非常に自然な展開でした。第7期当時はまだバンドメンバーの事前のキャラクター付けに差が大きかったため、ソータを選出したのは膝を打ちましたし、あまりの気まずさに苦しさで膝の皿を叩き割りました。
「ヴォーカリストとの秘密の共有」というヒロインの特権であるべき要素をあえてバンドメンバーで解禁し、それが本編たる交際描写を食わないバランスとキャラクター描写で成り立っていたのは、Brave Childの関係性の妙だと感じます。

【©Rejet/ディア♥ヴォーカリスト公式X(@climax_recoads)より】
さて、ここまでとにかくヨシュアの物語に心動かされた旨を書きに書いてきましたが、同時に自分には、今後のヨシュアの本編ドラマについてある一抹の不安があります。
それは「いつまで自傷ネタで引っ張るの?」と思われかねない懸念です。
いつまでもに決まってるだろうが!!!!!完治の概念がない習癖なんだから!!!!!!
順調に寛解しているストーリーを重ねていってきただけに、いつヨシュアがまた窮地に追い込まれるかは予想もできません。特に、ヨシュアは初登場『Wired』時点で作中時系列で苦しんでいる自傷癖が再発だと語られているため、あの世界線にも習癖の再発の概念が明示されているから余計に怖い。
ヨシュアのドラマチックな要素として他に「前バンドが最悪の形で解散した」「ヒロインとは幼馴染」と多数控えが揃っているので、段階的にそちらのドラマ性にシフトしていくのかな~という予想半分、10年自傷癖に向き合ってきたなら最後まで習癖寛解ストーリーを貫徹する覚悟もありそうだな……という畏怖の念半分で次回以降の困難に身構えています。
恋愛パートにおける今後の注目点は、相反するふたつのテーマ性の衝突をどう免れていくかでしょうか。
ヨシュアの物語は自傷猫写の他に、その習癖に屈したり抗ったりしながら精神的自立を描く軸と、ヒロインとの甘めの交際猫写を描く軸に大別されます。前者は習癖の寛解の度合いと連動した地道な変化が積み重ねられ、後者はレオードに次ぐ甘々系で、どちらもクオリティは安定しています。
しかしながら、片や「強くなる」というヨシュアの台詞に代表される精神的自立の文脈、片や他者と深い関係を持っていくということで、後者に傾倒しヒロインにしなだれかかりすぎると前者の精神性の文脈が破綻する、ある意味複雑なバランスのもとヨシュアというキャラクターが成り立っているのだと言えるのではないでしょうか。
ヨシュアは自分にとって大切なキャラクターです。だからこそヨシュアには幸せになってほしいです。ヨシュア本編ドラマの評価の物差しを自傷猫写に全振りした人間が言うのもなんですが、第9期以降では自傷描写のクオリティと同じくらい、この交際描写が抱える複雑さへ良い落としどころを見つけたシナリオに恵まれ続けてほしいです。
ヨシュア、ずっとずっと大好きです。
「オレ──もっと強くなるよ」
(『ディア♥ヴォーカリストEvolve エントリーNo.2 ヨシュア』Track.5)
ひとまず今回は以上です。
当初の見通しではアメブロの1記事最大文字数(全角3万字)ギチギチ×2記事になる見通しだったはずが、思ったよりも早々にギチギチになってしまい、どこでぶった切ればいいか頭を抱えながらとりあえずキリよくしました。
果たしてこの感想ブログは何記事になるのか、そもそも第9期ティザー期間内で書き終わるのか、まだまったくわかりませんがなんとかします。
それでは。


