『影のあるオンナ』~アロッタファジャイナ番外公演観劇記その3・キテレツゥ
アロッタ番外公演の最終弾は、藤澤陽雨さんと大石奇味さんのユニット・キテレツゥの『影のあるオンナ』。
独特のシュールな作風に、アロッタの屋台骨であるナカヤマミチコさんという題材が加わって、強烈に面白い作品となりました。
藤澤さんの作品を観たのは『みつ子の魂あくまで』『遠吠えが聞こえるか。』に続き3回目なのですが、こんなに笑ったのは初めてでした。そのシュールさが、今まで私のツボにヒットしなかったので(^-^;)これも主演のナカヤマさんの存在の偉大さ故かと思います。
物語は2部構成。ナカヤマさんの半生を描いたpart1は、観ている間中本当の出来事だと信じこんでしまい、ブラック過ぎるその内容に、笑うことへの罪悪感を感じました
ちなみにその内容。ナカヤマさんの父親が収賄で逮捕されて、 それが原因で両親は離婚、ナカヤマさんは父親に引き取られて虐待を受けて育って。
変な男に貢いだ上に、子供が出来たら捨てられて。
再婚相手と幸せに暮らしたものの、子供が5歳で事故死。
その夫に触れられたとき、夫の心が声として聞こえてきて、その声が「子供はまた作ればいいじゃん、俺とお前の子を」という酷いもので。
その特殊能力を見込まれたナカヤマさんがX-MENにスカウトされるという。
ここまでがpart2への大きな前振りなのですが、
後でナカヤマさんに聞いたら、これ全部大嘘ですって 爆
私は大筋は本当なんだろうと信じきっていて、 過去に子供を亡くしてたんだな、怒涛の人生なんだなとしみじみしたりとか、やばい、ナカヤマさんと握手したことあるじゃん、と焦ったりとか
結局取材も一切されてなくて、藤澤さんが勝手に書いたフィクションだということでしたが、そういう人生を背負ってると普通に思わせるナカヤマさんが凄いと思います 笑
そしてpart2は特殊能力を持ったナカヤマさんのX-MENとしての活躍を描いたコント集。
ちなみに、お見合いを成功させるとか、痴漢(?)とかそんなショボい活躍ばかりですが(笑)お見合いが成功した小岩井竹次郎さんの喜びの手紙がクモノスのDMだったり、X-MENのナカヤマさんの衣装がジャンヌの神の声のコートだったりと小ネタも充実していてかなり楽しかったです
そして、藤澤さんはこの長さの作品の方がいいなと改めて思いました。太宰治をモチーフにした『遠吠えが聞こえるか。』の2時間弱より、ナカヤマさんを題材にしたオムニバス45分の方が断然リアルで面白かったです。
こんな感じで、とても楽しかったアロッタファジャイナの番外公演。
邪魔な柱とは反対側に配置した舞台や、後ろの席にも伝わるようにと工夫された演技など、観客に優しく温かい公演だったことも記しておきます。
来年の本公演も楽しみにしています![]()
『11月戦争とその後の6ヶ月』~アロッタファジャイナ番外公演観劇記その2・松枝組
はい、アロッタ番外公演その2は、松枝佳紀さん率いる松枝組の
『11月戦争とその後の6ヶ月』。
前の日記に書いた金子組の「王国」が時代というマクロの中での一人の人間のミクロを描いた醜い物語だとしたら、松枝組の描いたものは、人間というミクロの存在から大きな大きなマクロ的宇宙愛を描いた美しい物語。
松枝さんの秀作といえば、短編『スノー・グレーズ』や『今日も、ふつう』ですが、そのフェティッシュに溢れる美しい愛の物語に比べ、今作は限りなく透明で清らかな永遠の愛の物語。モデルとなったのは松枝さんのご両親だそうですが、何十年も連れ添ったその二人の愛を、20代の男女が完全に演じるということは奇跡に近く、かなりの産みの苦しみを味わったのではないかなと想像します。
2回観せていただいたのですが、主演のカップルの鈴木信二くんと安川結花ちゃんの演技がやはり一筋縄ではいかない状況で。浮気性ではあるけれど、優しい笑顔で包容力に溢れた信二くんは安定感があったものの、結花ちゃんは最後まで「究極の愛のカタチ」を模索し続けていた気がします。
きっとそれは、結花ちゃんがもっともっと人生経験を積んだら答えが見つかるのかなって思う部分で。
だから私はこの作品の完成形を観ていないし、私の観ていない回でも完全な回はなかったのかななんて想像しています。
それほどまでに、今回の松枝さんの脚本は難しく。シンプルなのに、昇華させるのが難しい作品。
『スノー・グレーズ』も然りですが、いつかまた、完成形が観られるといいなと思っています。
そして今回の特筆すべきこと・・・それは、もう一組のカップルを演じた峯尾晶くんと井川千尋さん。
千尋さんが死ぬ際の演技では、二人がどんなに愛し合っていたか、どんなに互いを大切な存在として必要としていたかがその仕草や労わり方から痛いほど伝わってきて胸がキュンキュンしました。
観客の女性は全員峯尾くんに惚れるだろうし、男性は千尋さんに全員惚れてしまうと思うほど、素敵な素敵なカップルでした![]()
暗闇でのラブシーンでは、峯尾くんの全力喘ぎ声が聞けて、ちょっとお宝気分です 笑
それと、またもや弟キャラの斉藤新平くんがいい味を出してました。
悲しい物語の中で唯一ホッとする存在で、鈴木信二くんとの演技の相性の良さもあり、普段はあまり笑いの起きないアロッタの舞台で、しっかりと笑いを取っていたのでありました。
彼はビジュアルが特撮系なので、映像の方も頑張れるといいなと密かに応援しています。
あ、あともう一つ。今回のこの作品、アロッタには珍しくオシャレ感が漂ってました![]()
イケメン&美女揃いでしたし、ファッションもさりげなく素敵で。
ロックテイストなオープニング映像もその音楽もめっちゃカッコよかったです。
フェティッシュもいいけれど、またこういうの希望です![]()
『王国』~アロッタファジャイナ番外公演観劇記その1・金子組
私が演劇を観るきっかけとなり、今でも贔屓にさせていただいている
劇団アロッタファジャイナの番外公演
『11月戦争とその後の6ヶ月』を観てきました![]()
場所はすっかりお馴染みの、渋谷ルデコ。
アロッタのルデコ公演は珠玉の短編が多いので、今回も期待大。
作品は3つからなるオムニバスでした。
感想が長くなりますので、それぞれに分けて書きます。
まずは現役高校生・金子鈴幸くん率いる金子組の『王国』。
高校の演劇部で却下されたという鈴幸くんのその脚本は、学生運動を生きた男の「公」と「私」を描いた秀作でした。
先日観た、同じく学生運動をモチーフにしたタカハ劇団の『モロトフカクテル』も、作り手の時代への壮絶な苛立ちを感じた衝撃的な作品でしたが、「王国」は鈴幸くんの時代をも超えた人間への警鐘であり、このような深くて激しい脚本を高校生が書いたのかと思うと、安穏としたものとして描かれた今の時代も捨てたものじゃないなと思いました。
とにかくこの作品、高校で上演するのは不可能だけれど(野口雅弘さん演じる元学生運動家を、高校生が演じられるとは思えないため)、高校で上演していたら『モロトフカクテル』同様伝説になっていたと思われます。
驚くべきは、その攻撃性。どんなモチーフであれ、人間をここまで貶めた作品を観たのは初めてです。
学生運動家を徹底的に時代の敗者として描き尽くしつつ、ターゲットを「時代」というマクロに留めずにミクロな「家族」として、しかも強烈な悪意をもって、尻穴レベルまでおとしめています。
そこには微塵の愛もない。
時代の敗者は個人のちっぽけな、くだらない「王国」の主である、と。
そしてそれは肛○性○(伏字ですみません。アメブロなので 笑)という象徴をもって、実に原始的で野蛮であると高校生である鈴幸くんがぶった切っているのです。
そして最後に、その下卑た男がインタビュアーである女性記者に「お前も同じだろ」と突きつけるテーマ・・・
それは、学生運動を生きた人間だけでなく、どの時代にも通じる人間の本性への問い掛け。目や耳を塞ぎたくなるようなその痛い現実は、鋭利な刃物を突きつけられるような感覚で、観ていた私達に突きつけられたのでした。
金子鈴幸くん。すごい高校生がいたものです。
彼自身も学生運動家の妄人として出演していましたが、役者としての才能も驚くほど感じました。
お父さんより年上で(多分)リアルタイムで学生運動を経験している野口さんと、人生経験のまだまだ少ない鈴幸くんがどのように渡り合って作品を作り上げたかは知りかねますが、きっと凄まじい現場だったんじゃないかなと想像しています。それが垣間見えるのもまた、演劇の醍醐味かと。
・・・長々と語ってしまいましたが、それほどまでに凄まじい作品だったということです、はい。
その2に続きます![]()
