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Battle Day0-Day246までのあらすじ (登場人物についてはサイドバーを参照してください)

 

 『BattleDay232-Day246あらすじ』Battle Day232-Day262までのあらすじ (登場人物についてはサイドバーを参照してください)  ある日、夜中に電話が鳴る。遼吾を待つコオだったが…リンクameblo.jp

 

BattleDay233~ここまでのあらすじ

結局、妹・莉子からは連絡がなく、父の希望していた老人ホームは、せっかくの空き部屋に入ることができず次の機会を待つことになった。コオはいら立ちを募らせる。莉子ばかり心配する父、同僚のソフィの事故のケア、などはコオを疲弊させる。その中で重症のアレルギー事故をを起こしたコオは、体調とともに心のバランスも大きく崩していた。そして父の誕生日がやってきて、父はケーキを持ってきたコオに、莉子は母と同じ、料理学校に通ったことがあること、それも続かず、アロマテラピーの資格を取ろうとしていたことを話す。コオは、莉子が《自分で働いて、食べていく》ということを考えてないのではないかと恐怖し、父の永住型老人ホーム入居のための資金プランを考え直さねば、と考える。思ったよりも、実家の財政は深刻なのかもしれない、これは8050問題、7040問題とよばれるもなのでは?とコオは思い始めた。

 膨大なストレスにコオは体調だけでなく、メンタルの調子も崩しつつあった。

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 二度目は母が亡くなる前に一度脳梗塞で入院した時だった。

 命には別条はなかったものの、母は半身に麻痺が残り、リハビリのためしばらく入院することになった。

 

 コオは、この時一度も見舞いに行かなかった。

 行くべきだったのかもしれない。でも行かなくてよかったのかもしれない。今もそれはわからない。

 実際、長男・遼太の友達のお母さんの中には「何故いかないの?」「後悔するよ、一目会った方がいい」と、コオに言ってた人も一人ではなかった。

 コオは思っていた。

 会いに行って、何が起こるのか。母がコオに何を言うのか。

 それはコオにはコントロールできないことだ。

 だからコオはひどく恐れていた。

 母に立ち直るのが難しいほどの言葉をまた、あのときのように投げつけられることを。

 

 今でも、コオは次男・健弥を妊娠事を報告した時のことを、苦い思いとともに生々しく思い出す。

 恥ずかしくて、なかなか言い出せなかった事。

 でも、ワクワクとしていた事。

 妊娠そのものではなく、今度こそ母に『おめでとう』と言ってもらえる、とコオはワクワクしていたのだ。

 長男・遼太は、結婚前の妊娠だった。だからおめでとう、と言ってもらえなかったのは仕方ない。でも、今度は、きっとおめでとう、と言ってもらえる。

 

 「え?」

 

 母は絶句し、期待を裏切られたコオはがっかりし、逃げるように、莉子の運転する車に乗って遼吾のマンションに帰ったのだ。その後の細かい展開はもう覚えていない。でも、莉子が遼吾のマンションまで送ってくれて、帰る時、コオは思い切って莉子に言ったのだ。母に、莉子から伝わることも期待して。

 

 「お母さんに、おめでとうって言ってほしかった。」

 

 コオは莉子に言った。莉子の反応は思いがけなかった。

 

 「お母さんはね、お姉ちゃんの体を心配して、遼太生んだ後にあんなに体壊したのに二人目だなんて。・・・だから、何も言えなかったんだよ!お姉ちゃんはそれがわかんないの!?」

 

 そして、莉子は半泣きになりながら帰ったのだ。母は、私を心配してくれたのか?でもそれなら何故そう言ってくれないのだろう。コオは思った。その時遼太がどうしていたのかはよく覚えていない。家にいた?あるいは保育園だったろうか。

 衝撃的だったのはそれから1時間もしないうちに母が来たときのことだ。

 自分はバカだったと思う。マンションの玄関モニターを見て、母が、祝いの言葉を言い直しに来てくれたと思ったのだから。

 しかし母は、開口一番言った。

 

 「莉子ちゃんが泣いて帰ってきた!!いったいあんたは何を言ったの!?」