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Battle Day0-Day246までのあらすじ (登場人物についてはサイドバーを参照してください)
BattleDay233~ここまでのあらすじ
結局、妹・莉子からは連絡がなく、父の希望していた老人ホームは、せっかくの空き部屋に入ることができず次の機会を待つことになった。コオはいら立ちを募らせる。莉子ばかり心配する父、同僚のソフィの事故のケア、などはコオを疲弊させる。その中で重症のアレルギー事故をを起こしたコオは、体調とともに心のバランスも大きく崩していた。そして父の誕生日がやってきて、父はケーキを持ってきたコオに、莉子は母と同じ、料理学校に通ったことがあること、それも続かず、アロマテラピーの資格を取ろうとしていたことを話す。コオは、莉子が《自分で働いて、食べていく》ということを考えてないのではないかと恐怖し、父の永住型老人ホーム入居のための資金プランを考え直さねば、と考える。思ったよりも、実家の財政は深刻なのかもしれない、これは8050問題、7040問題とよばれるもなのでは?とコオは思い始めた。
膨大なストレスにコオは体調だけでなく、メンタルの調子も崩しつつあった。
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「ねぇ、パパ、莉子にちゃんと言わないと。施設のこと。パパが、このままがいい、っていうんだったら私は別にそれでいいんだよ?ただ、移りたいなら、もう莉子に話さないと。もう、いつでも移れる、って状況にしておかないと、ホームに移りたいって言ったときに、いつでも移れるわけじゃないんだよ?入りたくて待ってる人がたくさんいるんだから.。空きました、って言われてからじゃあ、これから相談します、なんてできないんだよ?」
「そんなにいっぺんに言われても、俺の脳は壊れてるんだ!!」
父はコオの言葉に怒り出すこともあった。
あるいはときに心細そうに言う。
「莉子ちゃんもなぁ、考えてくれてると思うんだよ?」
そして父は、引き出しから、薄手の青いセーターを取り出してみせる。
「パパの誕生日だからって、これを買ってきてくれたんだ。かなり高そうなセーターだろ?」
(でも、そのお金は、莉子がパパの口座から引き出したんじゃないの?)
コオはその言葉を飲み込んだ。
確証もない。莉子のことだから、自分の稼ぎから買ったのかもしれない。そして、足りない自分の生活費を父の口座から出しているのかもしれない。
いや、コオの知らない貯金がある可能性がゼロでない。ゼロではないのだ。
コオは自分に言い聞かせながら、それにかけていたのかもしれない。
今もコオ自身が自分の気持がよくわからないのだ。
コオが家族を失うことになった半年前の莉子との最後の争い。
その際に莉子がコオを罵った言葉。それがきっかけでコオが失った家族。
でもその言葉に見合うことを莉子がやっていなかったのなら、彼女の言葉にコオがダメージを追うこともなく、ましてや遼吾や子どもたちと別れて住むことにもならなかったはずなのに。
わからない。わからないのだ。
莉子を憎んだ。憎みながら、自分が家族を失った正当な理由がほしかった。たとえそれがコオ自身を攻めるような内容だったとしても。
父への問いかけ、得られない明確な答えの中で、莉子への嫌悪と期待、自責と別れた家族の思慕などのなかを、コオの思いはまるでは賽の河原で石を積むように、あるいは山頂に岩を運び続けるシジフォスの神話のようにただぐるぐると回り続けていた。

