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Battle Day0-Day262までのあらすじ (登場人物についてはサイドバーを参照してください)
BattleDay233~ここまでのあらすじ
結局莉子は連絡がなく、父の希望していた老人ホームは、せっかくのアイテル部屋に入ることができず次の機会を待つことになった。幸い北寿老健には更に3か月の在所が許可されたが、コオはいら立ちを募らせる。
そんな頃にコオは職場で小さな傷をつくり、そこからなにかにアレルギーを起こす。
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コオはとりあえず職場の医務室に行った。抗アレルギー薬でももらえたらいいくらいに思っていたが、職場の医務室は、医務室だと言うのに誰もいなかった。(昼休みだけど・・・職場の医務室って・・・時間ずらして必ず人がいるものだと思ってたけど)
ここの医務室は基本的に見た目無駄飯食らい、と陰口を叩かれる部署だが必要なときにいないから余計叩かれるのだろうな、とコオは思った。そう思っているうち、医務室勤務の年配の女性たちは揃って帰ってきた。
「どうしました?」
うん、まぁ、昼ごはんから帰ってきてすぐ働くの嫌なんだろうけど、露骨にそんな顔しなくてもいいのに、とコオは思った。
「動物のいる部屋で…傷を作ってしまって。それは大したことなかったんですけど、アレルギーを起こしたみたいで。全身かゆいし・・・目の裏とか鼻の中まで腫れ始めて。傷から、アレルゲンが入ったんだと思います。流水であらったけど、1,2分だったし。」
同僚が目をむくほどだったから、看護師資格のある医務室の職員は流石にどれくらいの状態かわかるだろう、と思ったが、全くそんなことはなかった。
「えーっと、今お昼休みかもしれませんが、ここの病院で診てもらえると思いますよ。自分で行ってください。」
コオは丸がついた簡単な地図を渡された。職場周辺の病院の地図のうち、一つに目の前で丸がつけられた。
「・・・はぁ。・・・わかりました。」
結果的にコオのアレルギーはかなり重症だった(らしい)。病院についたときは、病院自体が昼休みだったが、コオをひと目見た途端、にわかに病院内がざわつき、院長が飛んできた。
「あなた!!これアナフィラキシーですよ!!ステロイド点滴!!すぐ用意!呼吸は苦しくないですか!?」
医者は看護師に叫びながら、コオはあれよという間に点滴棒に繋がれた。
「職場から来たって・・・一体ここまでどうやって来たんです。タクシー?」
「・・・いえ、自転車で。15分?くらいだし。」
「自転車!?信じられない!!危ないですよ!」
「医務室に行ったんですけど・・・自分で行ってくださいっていわれたんで。」
「とんでもない。途中で倒れたりしたら大変なのに・・・」
ステロイドの点滴は劇的に効いて、1時間も立たないうちに、かゆみも、浮腫も急激に収まっていった。ただ、体全体の違和感は、続いていて、医者は、コオに既往症や傷を作った状況などを聞き、今後もエピペン(アナフィラキシー対処用のアドレナリン注射剤)を携帯するように勧めてくれ、更になにか薬をくれた。
医師は自分の仕事をこなしただけなのかもしれないが、コオは昼休みにも関わらず、すぐに対処してくれたことも医師の言葉も、自分を心配してくれたような気がしてただ、嬉しかった。
この頃コオは、気遣ってもらうことに飢えていたのだと思う。
毎日泣き暮らし、それでも毎日仕事をする。同僚が事故を起こせば病院までの送迎をし、書類の手配をし、付添をする。でも、仕事場で同僚に驚かれるほどのアレルギーを起こしても、誰も私のことなど心配しない。医務室にさえ放り出される。
感情に酔っていたとも言える。しかし、何をしても妹莉子のことしか心配しない父にも、事故を起こした同僚のソフィの病院の付添にも、コオは疲れていたし、何よりも離れたかつては自分の心の支えだったはずの家族が恋しかった。

