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Battle Day0-Day262までのあらすじ (登場人物についてはサイドバーを参照してください)
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「残念なお知らせです。空いていた、お父様の希望されていた施設ですが・・・埋まってしまいました。」
藤堂から連絡が入った。
「仕方・・・無いですね。結局妹から連絡はなかったんですよね?」
「はい、・・・もしかして直接妹さんが施設に連絡されているのではないかと思いまして、聞いてみたのですが、施設の方にも、連絡はなかったそうです。」
「そうですか。・・・次の空きが出るまでにいつでも移動できるようにしておきたいですね…」
これだけ何度も見学や送迎で回ってくれた藤堂にひどくコオは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。見学どころか、連絡すら無いという。これでは、父の老人ホームの予算について話し合うどころではない。莉子が言い出さなければ、ことは進められないのだ。父の通帳を握っているのも、年金を管理しているのも、そしてキーパーソンも、莉子なのだから。
週末ごとの父への面会は続けていたが、コオは少しずつ、イライラするようになってきていた。
「ねぇ、パパ、あの子仕事してるの?カフェだかなんだかのアルバイトって前は聞いたけど?どれくらい働いてるの?」
「うーん、毎日じゃ、無いな。」
「…あのさ、前の会社で何があったのかちょっとしか聞いてないけど・・・甘ったれすぎるんじゃないの?あの子さ、私が最初の会社でうつ状態になってたときに、なんて言ったよ。《そんな事誰だってある、お姉ちゃんだけじゃないんだから、そんな事で辛いとかいうのやめてくれない?》って言ったんだよ?そうだよ、どこに行ったって辛いことはある。私は辛いって、自分の家族に言うことさえ許されずに働いてさ、あんまり辛いからやめたけど、でも食ってかなくちゃならないから、妥協して別の仕事についた。」
「ああ、お前は頑張ったな。」
「今の会社に拾ってもらえるまで、自分の学歴とかキャリアからしたら信じられない安月給だったけど、食ってかなくちゃならないから働いたし、私は大学院まで出してもらったからね、ずーっと働いてる。なのにあの子は何?ちょっとパパもお母さんも甘すぎるんじゃないの?」
お前は頑張ったな。
もっと早く言ってくれればよかったのに。
母は一度も言わずに死んだ。一度だって褒めてくれたことなんてなかった。授業参観だって母に見てほしくて、意見を言おうと先生に向かって一生懸命手を上げたって、母は“手を上げすぎだ”といった。
父だって。いつも二人は莉子・莉子・莉子ばかりだ。だから私はあんな家は一人ででて行きたかった。ずっとずっとあの家が嫌いだった。
「もう暗くなる前に帰りなさい。」
父が言う。子供の時と同じだ。聞きたくないことをコオが言い始めると聞いてはくれない。コオの言葉はいつも母を、父をすり抜けていく。 コオが家族を失うきっかけになったあの日だって、ただ「今日は帰りなさい」といったではないか。
自分の中の小さな子どもが、苛立って地団駄を踏んでいる。
コオはふとそんな映像を思い浮かべていた

