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Battle Day0-Day231までのあらすじ (登場人物についてはサイドバーを参照してください)
Day232-これまでのあらすじ
ある日、夜中に電話が鳴る。遼吾を待つコオだったが、期待に反して電話は、T大学病院。コオの同僚ソフィ李が事故を起こし、救急車で運ばれた連絡だった。
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「事故って・・・」
「自転車の横で倒れているのを発見されたんです。かなりひどいけがで血だらけです。それで、意識は戻られているんですが、何せ外国の方なので…」
「あー、でも彼女、日本語は話せないけど、聞く方は大丈夫ですよ?」
コオはそう言ったが外国人だというだけで、腰が引けてしまう日本人がたくさんいることもよく知っていた。ただ、T大学病院・・・東京の大学病院なのに、英語を話す人がいない、というのも奇妙だと思った。
「彼女の上司の方がいらっしゃるようでしたらそちらに連絡取ってもらえませんか?」
病院のスタッフは、コオとソフィの上司と連絡を取りたいようだった。しかし、上司は今日は確か他県に泊まっていて、しかも不便なことに携帯を持っていないのだ。大概はe-mailで事足りるのだがこういう時は困る。コオは言った。
「上司は・・・無理です。今他県ですし・・・連絡が簡単に取れる状況にないんです。」
「それでは、ともかく嶋崎さん、お願いします。電話はソフィさんに代わりますから。」
「はい。」
コオだって、英語が自由自在なわけじゃない。ただ、職場には多くの外国人がいるから、慣れているだけだ。
「はい、ソフィー、大丈夫?何があったの?」
「わからない。わからないの。気が付いたらベッドの上で。」
ソフィの口調ははっきりしてはいたが、混乱しているようだった。
「親切な人が、あなたが倒れててるのを発見して救急車を呼んでくれたのよ。もう、電車がないし、私今車がないから迎えには行けない。でも明日にはいくからね。」
「嶋崎さん、アレルギーがないか聞いてください。これから、傷を縫いたいんですが、局所麻酔をしたいので。」
とちゅうで病院スタッフの声が割り込んでくる。
「ソフィ?あなたけがしてるの。だから傷を縫いたいんだって。麻酔をかけるけど、あなたアレルギーとか持ってる?」
「ううん、何もない。」
「わかった。じゃ、これから麻酔かけるそうだから。」
これくらいの事は大学病院なんだから、しゃべってくれよ。コオは夜中、薄いアパートの壁の向こう側を気にしながら、声を押し殺して話続けていた。

