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これまでの話
Battle Day0-Day169 のあらすじは、以下のリンクをご覧ください、
登場人物は右サイドに紹介があります、
Day170- あらすじ
コオの父は、紅病院から北寿老人保健施設(通称北寿老健)に移った。
父の回復は順調で、カラオケを歌い、写経をし、本を読み、好きだった囲碁にも手を付けるようになっる。離婚後の一人暮らしは孤独であったコオだが、息子たちと訪れた父の施設での夏祭りなど、ひと時、穏やかな時を過ごしていた。1ヶ月がたち、父は自宅にもう戻らず、施設にはいるつもりであることを話し、永住型の施設を探してくれるようにコオに頼む。コオはケアマネージャー・立石に連絡を取り、高齢者住宅専門の業者を紹介してもらい探し始める。その過程で、コオは、父の年金額を知らなければ話をすすめられないと認識するが、莉子を経由しなければならず、いつまでたっても情報は手に入らない。コオは父と同年代の親戚をもつ職場の長田から得た情報をもと検討をつけたところで、コンタクトを取った業者のうちの一つと連絡をとり、候補施設を見学を3件すませた。コオは藤堂に、1件目が気に入ったこと、次は父に実際に見てもらいたいということを話す。担当業者の藤堂は、コオが、妹・莉子と事情を聞いた後尋ねる。『それでいいのですか?』
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「でも…嶋崎様はそれでよろしいのですか?」
「・・・ええ。父が穏やかに暮らすためにはそれ以外の選択肢はないと思ってます。妹とは・・・話しあうにしても、ともかく言葉が・・・日本語なのに、言葉が通じない。意志の疎通がないので。・・・でも、もう父の前で争うのを見せるのも嫌なんです。父には、最後まで穏やかな日を送ってもらいたいです。長いこと・・・2時間も片道かけて通勤して、文句も言わず働いていたんですから。」
そうですか、と藤堂は言った。
「それでは、老健から妹様に私もらうためのパンフレットも用意いたしましょうか?」
「そう、ですね。よろしくお願いします。」
コオは、この時点で夢を見ていたのだった。
父はあの、老人ホームにはいる。比較的元気な人たちと、囲碁を楽しんだり、テレビを見て談笑したりできるようになるだろう。支払いは、コオがいくらか援助することは、父から莉子に伝えてもらえればいい。今日の説明だと、業者に頼めば定期的に莉子が洗濯物を取りにいったりすることもしなくてもいいようだ。莉子は洗濯物を取りに行く、というプレッシャーからは解放され、父に時々会いに行くだけでいい。コオも、老健や病院にいるときと同じように時々会いに行くことができるだろう。もしかしたら、いつかはコオが施設を決めたことが耳に入り、莉子がコオに感謝する日もやってくるかもしれない。
そして、もしかしたら、父が施設で落ち着けば。コオはまた自分の家族、遼吾と遼太と建弥との生活を取り戻せるような、そんな夢を、見ていた。
いつかはくる最後の日まで、穏やかに、父に暮らしていってほしい。同じくらい強く、コオは自分の家族を取り戻したい、そう思っていたのだった。

