********************* 

これまでの話

Battle Day0-Day169 のあらすじは、以下のリンクをご覧ください、

登場人物は右サイドに紹介があります、

 

Day170- あらすじ

コオの父は、紅病院から北寿老人保健施設(通称北寿老健)に移った。

父の回復は順調で、カラオケを歌い、写経をし、本を読み、好きだった囲碁にも手を付けるようになっる。離婚後の一人暮らしは孤独であったコオだが、息子たちと訪れた父の施設での夏祭りなど、ひと時、穏やかな時を過ごしていた。1ヶ月がたち、父は自宅にもう戻らず、施設にはいるつもりであることを話し、永住型の施設を探してくれるようにコオに頼む。コオはケアマネージャー・立石に連絡を取り、高齢者住宅専門の業者を紹介してもらい探し始める。その過程で、コオは、父の年金額を知らなければ話をすすめられないと認識するが、莉子を経由しなければならず、いつまでたっても情報は手に入らない。コオは父と同年代の親戚をもつ職場の長田から得た情報をもと検討をつけたところで、コンタクトを取った業者のうちの一つと連絡をとり、候補施設を見学を2つ済ませ、3件目に向かうところで、紹介業者の藤堂が自分の施肥説を選ぶ一つの基準はにおいだ、という。

 ****************************

 

 「施設の臭い、ということですよね。」

 

 「ええ・・・もちろん職員の方が一生懸命、下の世話までされているのはわかっているのです。それでも、施設の廊下を歩いているときにどんな匂いがするのかがとても大事だと思っているんです。」

 

 実は、2件目の施設の部屋を見学しているとき、明らかに排泄物の匂いがした。偶然、入所者が粗相をしたときにあたってしまったのかもしれないし、あるいは偶然処理している傍を通ってしまったのかもしれない。いずれにしても、下の世話をしてくれる人がいる、それに対して、臭いが・・・というのはコオにはためらわれたのだ。

 

 「私も、介護の現場で働いておりました。その時の実感です。ちゃんと臭いにまで気を使えるのかどうか。それは私の中では大きな施設選びの基準になっています。」

 

 藤堂は言った。

 コオは藤堂の言うことは多分本当だろうな、と思った。排泄物の臭いそのものを言っているのではないのかもしれない・・・

 これから数カ月後、コオはしみじみと、この藤堂の言葉を思い出すことになる。

 

 「最後のホームですが1件目と同じ経営母体です。違いは、元気な方が比較的多いっていうことでしょうか。あと・・・そのせいでしょうが、症状によってのフロア分けは一応してありますがあまりはっきりしていません。」

 

 

 3件目は1,2件目より、ずっと寿市の西側だった。寿市の西部は土地が低く、開発が遅れた。コオが小さい頃は、不便で陸の孤島、と呼ばれていたこともうっすら覚えている。今は輸送道路、幹線のバイパスが通っていて、鉄道が通ってからは、一気に無秩序とも言える開発が始まったようだが、未だ不便なことには変わりない。

 

 「Oバイパスの本当に側です。」

 「ええ、地図で見ました。まぁ、不便な地域の中では・・・まだ、便利な方ですよ。駅までほぼ一本だし。」

 

 コオは言いながら、莉子が父のところに自転車で行くのに、行きはいいけど帰りは上りだな、と考えていた。