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これまでの話

Battle Day0-Day169 のあらすじは、以下のリンクをご覧ください、

登場人物は右サイドに紹介があります、

 

Day170- あらすじ

コオの父は、紅病院から北寿老人保健施設(通称北寿老健)に移った。

父の回復は順調で、カラオケを歌い、写経をし、本を読み、好きだった囲碁にも手を付けるようになっる。離婚後の一人暮らしは孤独であったコオだが、息子たちと訪れた父の施設での夏祭りなど、ひと時、穏やかな時を過ごしていた。1ヶ月がたち、父は自宅にもう戻らず、施設にはいるつもりであることを話し、永住型の施設を探してくれるようにコオに頼む。コオはケアマネージャー・立石に連絡を取り、高齢者住宅専門の業者を紹介してもらい探し始める。その過程で、コオは、父の年金額を知らなければ話をすすめられないと認識するが、莉子を経由しなければならず、いつまでたっても情報は手に入らない。コオは父と同年代の親戚をもつ職場の長田から得た情報をもと検討をつけたところで、コンタクトを取った業者のうちの一つと連絡をとり、候補施設を見学することになる。

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 「本日は、お父様のご自宅に近い順番で回らせていただこうかと思います。最初の施設は、食事が非常にこだわっている施設で、試食ができます。二つ目はそこにごく近いところにあります。3つ目がちょっと離れておりまして、バイパス沿いにある施設です。母体は1つ目の施設と一緒なのですけれど、立地の関係でお値段が違います。ここは・・・バスじゃないとちょっと厳しいでしょうかね。」

 「うーん、地図は見ました。私なら自転車コースですけど・・・確かにちょっと距離はありますね。でもバス停は近いんですよね。」

 「さようでございます。ただ、本数があるかと申しますと・・・いかがでしょうか。」

 「父がよく自転車でその辺にあるDIYの店に通ってたから、土地的には一番なじみがあるとは思うんですけどね…」

 

 コオは後部座席から、藤堂と話しながら、ちょっと申し訳ないな、と考えていた。藤堂は大きな道を通っていくのだが、これは幹線なので、ひどく混む。迎えに来て、見学ツアーをして、更にまた職場にまで送ってくれる、と藤堂は言っていた。

 でも、正直言って体は楽で本当に助かる。

 藤堂は、自分はもともと介護の現場にいたのだ、といった。年齢は見た目は30代前半といったところだが、もしかしたらもう少しいってるのか。恐ろしく丁寧な、話し方は、車の中でコオと話していても変わることはなかった。

 

 「ご自宅から、自転車で行ける距離ですか?」

 「少なくとも1つ目の施設は妹でも行けるはずです。3番目は・・・私ならいける。でも妹は嫌がるかもしれませんね。すくなくとも行けない距離じゃないとは思います。まぁ、雨とか降ったらバスの方が便利だし、バス停が近くなら特に問題はないと思います。」

 

 最初の施設についた。コオは扉を開けてもらい、もうすこしちゃんと綺麗な恰好にして来ればよかっただろうか、とふと思った。

 とても新しい、というわけではないが、古い感じもしない。北寿老健と同じくらいの感じだろうか。3階建ての低層。 

 老人ホーム、という感じはしなくて、普通の低層マンションのようだった。

 

 「お待ちしておりました。どうぞ。」

 

 出てきたのは、40代にはなっていないと思われる女性で、その施設の所長、と名乗った。