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これまでの話
Battle Day0-Day135 のあらすじは、以下のリンクをご覧ください、
登場人物は右サイドに紹介があります、
Day170- あらすじ
コオの父は、紅病院から北寿老人保健施設(通称北寿老健)に移った。大部屋に入った父は、前回の個室より、いいと漏らす。
父は、コオにノートを買ってきてくれるよう頼み、コオは父の回復ポテンシャルを感じる。
妹・莉子との考え方は違うが、父に長生きしてもらいたい、というのは同じなのだ、とコオは思う。北寿老健での週末に時折訪問してくるカラオケサークルのボランティアイベントで、コオは音楽療法の有効性を感じる。文字を書くことに問題がある父に買っていった、般若心経の写経セットもまた、別の形で父の意欲を引き出し、父は般若心経の本を読みたい、と、コオに頼む。また、父の趣味だった囲碁の簡易セットを、コオは父に持っていき、相手になろうとする。
離婚後の一人暮らしは孤独であったコオだが、息子たちと訪れた父の施設での夏祭りなど、ひと時、穏やかな時を過ごしていた。1ヶ月がたち、父は自宅にもう戻らず、施設にはいるつもりであることを話し、永住型の施設を探してくれるようにコオに頼む。
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永住型の老人ホームを父は探してくれ、といった。
さて、どうしよう?
父が老健を出た後に老人ホームに入ること自体はコオは賛成だ。自宅に帰ってもまた莉子に軟禁状態にされることは目に見えているし、それをコオはどうすることもできないことはわかっていた。だからこそコオは父が今入っている北寿老健に入所してからは毎週末欠かさず父に面会に来ている。父が自宅に戻ったが最後、莉子は決して父をコオに会わせることはないだろう、きっとこの老健に居るときしか父にはもう会えない。だから、会えるうちにあっておこう、と思っていたからだ。
もっともそこまで父を好きなのか、と言われると、正直コオはよくわからない。ただ、はっきりしていたのは、もう85歳を過ぎた父には穏やかに最後の時を過ごしていてほしい、ということだけだった。
コオは久しぶりに、父がお世話になっていたケアマネージャー・立石に連絡を取ることにした。そして、友人、邑木響子(人物紹介参照)にも。
「立石さん、お久しぶりです。島崎…深谷はじめの娘です。」
「まぁ、ご無沙汰しております。お元気ですか?お父様。」
「ええ、おかげさまで。父は順調に回復してます。今また、前と同じ老健に居るんですけど、妹から、自宅に戻る話とか、聞いていますか?」
莉子が父が帰ってきたときの準備をしてる可能性もゼロではない、だから、コオは初めにそんな聞き方をした。いや、それはコオのただの願望だったのかもしれない。
「いいえ。全くないですね。」
「そうですか。いえ、父の回復が順調だから… もともと老健の性質上ずっと居るってわけには行かないし、もしかしたら妹がもう自宅に戻ることを考えてたら、と思っただけです。それで…ご相談したいのですけど…」
コオは立石に、父が妹と暮らすのは難しいと考えている、といったこと、コオに永住型の施設を探してくれないかと言ったことを知らせた。
「それで、まぁ、一応ネットでざっとは見てみたのですけど、なんていうか、情報が…あることはありますけど・・・・つまり、どういう手順で探していったらいいのか、何を基準にしていけばいいのかとか、ここから私がやるべき作業の流れがよくわからないんです。それで、立石さんにもし教えていただければと思ったんです。もちろん、自宅に戻る可能性もまだ、妹次第であるわけですから、それも伺いたかったんですけど。」
「ああ、そうですよね、最初はわかりませんよねぇ。」
立石は、メモを用意してください、とコオに言った。
