Swift Servant for WONDER -2ページ目

アルキュオネウスの娘クトニアー

ギガースであるアルキュオネウスの娘のクトニアー(Chthonia)というのを調べているのだけれども。
元ネタは英語版wikipediaのChthoniaの項目
それによれば、エウスタティウスのホメーロス注解776, 16だそうな。

そのあたりでそれらしい記述といえば、イーリアス9巻558行への注解でアルキュオネウスの娘の名前でプトニアー(Phthonia)というのが出て来るくらい。
他のギリシア語ではChとPhは全然別の文字。
他の写本があるのだろうか。

悩む。

ギリシア神話をゆるゆると読んでいく

そんな名前のFacebookグループを作りました。
ブログだと、情報発信が一方的になっちゃうし。

もっと、イーブンで、誰もが発言ができる場所が欲しかったので。

解釈の学術的な正確さは、あまり求めていません。
その部分は、個人の判断に委ねようと思っています。

どんな資料に、どんなことが書いてあるのか。
それらを、どう読み込んでいけばいいのか。
そういったことを、ゆるゆると共有していければ、と思います。

カテートス

カテートスなる人物を調べているのだけれども。
英語版wikipediaにも、欲しい情報がない。

カテートスのラテン語表記はCathetusなのだけれども、これを検索するとperpendicular、つまり垂直または垂直線に関する記述が出てきてしまうのだ(苦笑)

高津の資料を見ていると、どうもローマ時代の記述みたいなんだけど。
何を調べるかなぁ。

アラボスの娘カッシエペイア

カッシオペイアについて予備リサーチをしています。
他の読みにカッシエペイアとかカッシオペーというものもあるようです。

有名なのはカシオペア座の元になった、ケーペウスの妻ですよね。
でも、その人とは違うカッシエペイアがいるというのです。

英語版wikipediaでは、ポイニクスの妻というのが出てきます。
その出典としては、ヘーシオドスの『名婦列伝』の断片138とあります。

Loebの旧版No.57を見ても、断片番号は100までしかありません。
そういえば、京都大学学術出版会から西洋古典叢書F078として、ヘーシオドスの『全作品』という断片まで収録している訳本があります。
その索引を見てみると、カッシオペイアではなくカッシエペイアとしてエントリされているようです。

エントリされている箇所は2か所。
一つはストラボーン1.2.34ですが、こちらはカッシエペイアの名前は直接出てきません。
恐らくは、もう一つの言及であるアポローニオス・ローディオス『アルゴナウティカ』2.178への古注の内容を踏まえたものと思われます。

そんなワケで、もう一つはアポローニオス・ローディオス『アルゴナウティカ』2.178への古注。
特にSCHOLIA EDITAと呼ばれる古注です。
しかし、西洋古典叢書の訳文を見ると、ポイニクスの母として読める訳文が。

どういうことなんでしょう??
原文を見てみると

ὡς δὲ Ἡσίοδός φησιν, (Φινεύς) Φοίνικος τοῦ Ἀγήνορος καὶ Κασσιεπείας.

という文の解釈の違いという結論になりました。
原文はLoebから引いてきています。
単語レベルで直訳していくと

一方で ヘーシオドスは 言っている (ピーネウスは) ポイニクスの アゲーノールの そして カッシエペイアの。

という感じでしょうか。
要するに、ピーネウスはポイニクスの子であることを言っているのですが、

1. ピーネウスはアゲーノールの子ポイニクスとカッシオペイアの子(英語版wikipediaの解釈)
2. ピーネウスはアゲーノールとカッシエペイアの子ポイニクスの子(西洋古典叢書の解釈)

のどちらとも読めるのです。
つまり「καὶ Κασσιεπείας」が「Ἀγήνορος」にかかるのか、「Φοίνικος」にかかるのか、ということですね。

実は『アルゴナウティカ』への古注は他にSCHOLIA EX COD. PARISと呼ばれるものもあります。
そちらにはヘーシオドスへの言及としてではないのですが

Ἐκ γὰρ Κασσιεπείας τὴς Ἀράβου γίνεται Φοίνιξ καὶ Κίλιξ καὶ Φινεὺς καὶ Δόρικλος.

という記述があります。
こちらはアラボスの娘カッシエペイアがポイニクス、キリクス、ピーネウス、ドリコスを並立した存在として生んだ、と読めるように思うのです。

私の作っているデータベースでは、htmlのファイルを冗長性の高いもので記述するようにしています。
ですからここで結論を出さないと
cassiopeia_wife_of_phoinix.htm
にするか
cassiopeia_mother_of_phoinix.htm
にするかが決められないのです。

で??
私の結論は??
アラボスの娘であることは確かなので
cassiopeia_daughter_of_arabos.htm
にしようと思います(苦笑)



ポリュボイア

高津の資料には、二つの項目。
英語版の資料にも、二つの項目。
ということは、英語版の資料に出ている出典を二つ調べれば楽勝、と思っていた。

高津の一つ目の項目はヒュアキントスの姉妹。
これはパウサニアース3.19.4が出典。
あれ??
アルテミスまたはペルセポネーと同一視されている女神という記述はないなぁ。
まぁ、いいか。

高津の二つ目は、オイクレースの娘。
英語版ではエウスタティウスのホメーロスへの注解、パラグラフ321と書いてある。
調べてみたけど、そこには「アクトールの最初の妻」としか書いてない。
このアクトールは、ミュルミドーン族がどうのと書いてあるから、恐らくは高津の資料の1番目に書いてあるテッサリアの英雄のこと。

でも、アクトールの妻であるポリュボイアがオイクレースの娘であるかどうかは、この時点では謎。

英語版wikipediaを見ると、全部で6人の同名異人がいることが判明。
つまり、アクトールの妻とオイクレースの娘というのは、まったく別の出典。

高津の二番目の項目に書いてあったオイクレースの娘というのは、ディオドーロス・シクルス4.68.5が出典。

そして、先に謎だったアルテミスまたはペルセポネーと同一視されている女神というのは、ヘシュキオスの辞典が元ネタだったことも判明。
ポリュボイアの項に
Πολύβοια· θεός τις ὑπ᾽ ἐνίων μὲν Ἄρτεμις, ὑπὸ δὲ ἄλλων Κόρη
と書いてある。
アルテミスとコレー(ペルセポネーの異称)なのね、ということも判明。

残る二人はそれぞれ古注が出所みたい。
こっちはゆるゆる調べていこう。

コメーテース(その3)

ということは、オレステースの子というのもかなり怪しい情報なのかもしれない。
ティーサメノスの子とゴッチャにしている可能性があるのだ。
このティーサメノスはオレステースとヘルミオネー(メネラーオスとヘレネーの娘)の間にできた子のことだろう。
パウサニアース7.6.2には、次のように書いてある。

アカイア人の間で一番強い勢力を持っていたのはティサメノスの子供たちのダイメネス、スパルトン、テリス、レオントメネスだった。
一番年長のコメテスはそれ以前すでにアジアまで船で渡っていた。
残った子供がこの時期にアカイア人を支配し、これにオレステスの子ペンティロスの子で、ティサメノスの子供たちとは父方の従兄弟にあたる、ダマシアスも加わった。
(飯尾都人 訳)

確かに、ヤヤコシイ書き方だよなぁ。
それとも他に、何か出典があるのだろうか。

コメーテース(その2)

ネットで検索をかけていると、版権の切れた辞書が見つかる。
それを見ると、ケンタウロスのコメーテースとしてオウィディウスの「変身物語」が。

つまり、参照した他の神話辞典の記述が間違っていた、ということ。
これは、結構ありそうなこと。
というのも、高津の資料では「蛙と鼠の戦争(バトラコミュオマキア)」でも、OXFORD companion to classical literatureを抜き書きしたような説明になっているから。

高津の資料ではアテーナーの要請によってゼウスが調停のアクションを取り始めると書いてある。
私も、ずいぶん前に英訳から読んだことがあるけど、そんなコトにはなっていない(苦笑)

まぁ、ギリシア神話の情報は膨大で、そのすべてに目を通すなんて酔狂なことしてたら、寿命がいくらあっても足りない気はする。
私は、可能な限りそうできるようなデータベースを目指しているけれども。

コメーテース

この前アクトールを調べていたとき。
関連する人物でコメーテースなる人物が出てきた。
高津の資料にも、複数の人物が出てくる。

1. ステネロスの子。
これは簡単。
アポロドーロスE.6.10が出典の一つ。

2. オレステースの子。
アポロドーロスには出てこない。
ヒュギーヌスにも出てこない。
パウサニアースにも出てこない。
ストラボーンにも出てこない。
謎。

3. ラピテース族の戦いで殺されたケンタウロスの一人。
これもよくわからない。
オウィディウスの「変身物語」12.284には味方のラピテース人であるカラクソスが投げつけた大石のとばっちりで押しつぶされたコメーテースが出てくる。
高津の読み違いなのか。
もっと他に出典があるのか。

4. テスティオスの子。
これはパウサニアース8.45.6が出典。
テスティオスの多くの伝承にはコメーテースの名前は出てこない。
けど、パウサニアースの本文の中でアルタイアー(メレアグロスの母)の兄弟と書かれているので、一般にテスティオスとして思い浮かぶ人と同一であると判断。

5. アステリオーン(またはアステリオス)の父。
高津の資料にはリストされていない。
アポローニオス「アルゴナウティカ」1.35やワレリウス・フラックス「アルゴナウティカ」1.356はアステリオーン。
アポロドーロス1.9.16はアステリオス。
アルゴナウテースたちの中でもモブっぽいので、たぶん、アステリオーンもアステリオスも同じ人なのだろう。

6. ティーサメノスの子。
高津の資料にはリストされていない。
パウサニアース7.6.2が出典。

先に挙げた3.の項目で、味方の投げた石に巻き込まれたコメーテースを、高津がケンタウロスと読み違えたのか、別に資料があるのか、で悩む。

終了(アクトールがいっぱい その3)

1件を除いて、ほぼ予備リサーチを終了。
その結果はアクトールのインデックスファイルに。

調べた内容はコメントアウトしているので、ブラウザで「ソースを表示」させると、どんなこと調べているのか(または調べていないのか)がわかります。

アクトールがいっぱい(その2)

英語版wikipediaに出ているアクトールをチマチマとウラを取りながら。

今回は、スタティウスの「テーバイ物語」に出てくるというアクトール。
確か、他の動機で前にLoebを取り寄せていたよなぁ、と該当部分を見ると…アクトールの名前が見当たらない。

この付近でアクトールの名前が出てくるのは、もう少し先の151行目。
アドラストスが戦況を徐々に理解し始めてきたときに、モプソスやアクトールが同様の報告を上げてきた、という感じらしいのですが。

Loebはラテン語と英語でしか書かれていないから、よくわかりません(自爆)!!