Swift Servant for WONDER -5ページ目

バッサラー??

ちまちまと資料を見ていたら、高津の神話辞典でバッサリスの項に

ディオニューソスの男性の従者をバッサラー、女性(=バッケー)をバッサリスと呼ぶこともある。

とあるんだけど。
このバッサラーはバッサレウスの間違いだよなぁ。
たぶん。

というのも、男性名詞の主格ではaで終わるものはないハズなんです。
aで終わるのは、aで終わる女性名詞単数か、onで終わる中性名詞複数くらいのハズ。
辞書でbassaraを見てみても、女性名詞になってます。

うん。
そういうコトにしておこう。

ディオドーロス・シクルスだった(バシレイア その2)

飯尾都人の抄訳についていた索引には出ていなかったけれども。
basileia titan mythを検索キーにしたら、THEOI PROJECTが引っかかった。

曰く、ディオドーロス・シクルスの3.56.1-3.57.8である、と。
飯尾訳にその部分は収録されているハズなので、確認。
高津の神話辞典に書かれている内容は、3.57-3-3.57.7だった。

ふむ。
これで、この部分に関しては一件落着、かな。

バシレイア

今は、バシレイアというキャラクターについて調べている。

ネットで検索をかけると、ティーターンのテイアーと同じとされています。
たしかに、どちらもヘーリオスとセレーネーの母でヒュペリーオーンの妻。

でも、出典が書いてないんです。

それにしても、「支配者」を意味するギリシア語が多くて、そのニュアンスの違いってなんだろう??と思う時があります。

アナクス/アナッサ、メドーン/メドゥーサ、バシレウス/バシレイア、デスポテース/デスポイナなど。
言葉が違えば、それを指す内容は若干でも違ってくるハズ。

あ。
でも、日本語でも「親方」「大将」「旦那」などを使い分けるからなぁ。
そう考えれば、『そーゆーもんだ』と思ってしまってもいいのかもしれない。

とりあえず、神話の登場人物としてのバシレイアが何に書いてあるのか。
チマチマ調べなきゃ。

ヘシュキオス

英語版wikipediaによると、ミーレートスのヘシュキオスには、3つの重要な著作があったらしい。
ということは、私が参照していない資料がまだある、ということ。

問題は、どうやって見つけるか、だけれども。

なんでこんなことが気になったかというと、バウボーについて調べていたら、やはりヘシュキオスを引用元としてデーメーテールの身の周りの世話をしていた人、とあったから。
日本語版のwikipediaでは、ヘシュキオスという項目がなかったので、英語版を参照。

ビュザースに討たれたハイモス(ハイモス その2)

ネットを検索して見つけたPDFによると、これはミレートスのヘシュキオスによるらしい。
ヘシュキオスは大まかにいって二人いて、一人はアレキサンドリアのヘシュキオス。
もう一人はミーレートスのヘシュキオス。

アレキサンドリアのヘシュキオスは辞書を編纂してかなり特殊な語彙なども記録した人。
ミーレートスのヘシュキオスは簡単な人名録を作った人みたい。

はい。
最初、この二人の区別がついていませんでした(自爆) <私

で、ミーレートスのヘシュキオスによる人名録を落として見てみたのですが、ハイモスやビュザースに関する見出しがありません。
神話的な人物に関する記述が見当たらないのです。

実は別にもう一種類データがあるのですが、こちらは特に知恵に優れたひとが、誰から生まれたかというような内容のようです。

うぅ~ん。
このくらいまでをコメントとして書いておいて、次に行った方がよさそうな気配が。

ハイモスはどこ??

そんなワケでチマチマと高津の神話辞典からエントリーを見繕ってファイルの入れ物を作っているワケです。
で、今はハイモスという人物のところ。

高津の神話辞典には2項目あって、一つはトラキアの王、一つはアイネイアースの仲間。
アイネイアースの仲間の方は、高津が「アイネイアース」中でと書いているので、今はリサーチしない。
問題はトラキアの王の方。

この人はボレアースとオーレイテュイアの子で、ストリュモーン河神の娘ロドメーを娶り、自らゼウスとヘーラーを名乗って山に変えられた、とあります。

まず、最初に見るのはアポロドーロス。
ハイモス山は出てくるけれども、ハイモスは出てこない。

次にヒュギーヌス。
やっぱり索引には見当たらない。

マイナーな伝承ならばパウサニアースなんかが多く拾っているけど。
索引を見る限りでは見当たらない。

他には、山になったのだから同じく地誌のストラボーンには…Loebの索引を見る限りハイモーン山くらいしか見当たらない。
ディオドーロス・シクルスの抄訳の索引を見ても、ハイモス山脈くらいしか見当たらない。

ん??
山というんだから地名のリストであるStephanus Byzantinusに書いてないかな??
うん「トラキアの山。ハイモスはボレアースとオリテュイアの子」くらいは書いてある。
(リンク先の本文32ページ)

うぅ~ん。
山に変えられた経緯が書いてない。

おや??
山に変身したというのだから、オウィディウスの「変身物語」とか、アントーニーヌス・リーベラーリスの「メタモルフォーシス」があるぢゃないか。

アントーニーヌス・リーベラーリスには、なかった。
オウィディウスには…6巻の87行目、アラクネーと機織りの技量を競ったアテナー女神が、人々への警鐘として第一の隅に織り込んだのが、このハイモスとロドペーでした。
でも、ここでは「兄妹」って書いてあるなぁ。
書いてある内容は非常にそっけなくて

第一の隅にはトラキア生まれのハイモスとロドペを描く。
今では、寒風すさぶ山となっているが、かつては人間であり、自分たちをユピテルとユノーと呼んだ兄妹だ。
(中村善也 訳)

としか書いてない。
まぁ、高津も山に変じられたのは「後代の作りもの」と書いているから、この変身譚は恐らくは早くてもヘレニズム時代、たぶんローマ時代の作品なのだろう。

時代が下った作品で書かれていそうなというと、ノンノスの「ディオニューソス譚」なんかがあるけど、Loebの索引を見ると山としてのハイモーンしか出てこないみたいだ。

たぶん、まだ確認していない資料があるハズ。
それに、同じ人物のこととして、ビューザンティオンの名祖であるビューザースとハイモス山で一騎打ちのすえ敗れたという記述も見つかっていない。

もう少し、他の資料をあたってみないと。



現時点では(パイオーンその4)

日本語版wikipediaのように、パイオニアー人の名祖とヘレーの子は分けて考えておくのが無難そうだ。

このことだけにかかずらわっていても、ファイルの入れ物の作成は進まないし。
うんうん悩んでいるだけだと、ブログのネタにもならないし(自爆)

エラトステネースにも書いてない(パイオーン その3)

エラトステネースの名で伝わっているが真作ではないと言われている星座に関する記述がある。
リンク先は他の作品も入っているけど、本文ページでp.252あたりが今回のターゲット。

その19節にやはり牡羊座に関する記述で、ヘレーの子パイオーンが出てくる。
とはいえ、やはりパイオニアー人への言及がない。

ここで少し考えてみる。

エンデュミオーンの子であるパイオーンは、王国の継承をめぐる競技に負けたことを恥じて地の果てであるアクシオス川の向こうへと行き、パイオニアー人の名祖となった(パウサニアース 5.1.5)。
このアクシオス川はカルキディケ半島の西側を流れる大きな川であるらしい。
飯尾都人のストラボーンの訳本(I P.588-589)によると、現在の名前もアクシオス川。

歴史上で認識されているパイオニアー人たちは、もう少し北側にいたらしい。
そして、パイオニアー人はトロイア戦争の際、トロイア方への援軍に来た人たち。
実はストラボーンには小アジアにもパイオニアーがあったと書いている。

もう一人のパイオーンはアンティロコスの子。
このアンティロコスはネストールの子で、トロイア戦争でギリシア方として参加した人。
ネストールということは、ピュロスの王。
ピュロスということは、ペロポンネーソス半島の南西に位置する都市。
この人がパイオニアー人の名祖では時代設定に整合性がない。

ヘレーが黄金の羊から落ちたのはヘレースポントス(現在のダーダネルス海峡)。
落ちた場所は、ギリシア本土に比べれば遥かにトロイアに近い。
だから??こっちのパイオーンとエンデュミオーンの子でギリシア本土から見れば東の地の果てに行ったパイオーンと同一視された??のかなぁ。

自分で書いていて、とても違和感がある。
ということは、私のハートは今現在では他に何か根拠があると感じている、ということ。

もう、資料に対しても何も思いつかなくて涙目になってるけど。
もう少し探してみよう。
まずは、こんな時間だから一眠りして。

ヘレーの子パイオーンの記述は見つかったけど(パイオーン その2)

英語版wikipediaに、ヒュギーヌスの星座に関する記述が出典とあり、そこまでは確認。
2.20の牡羊座のところに、ネプトゥーヌスとヘレースポントスに落ちたヘレーの間にパイオーンが生まれたことが書いてあります。

あ。
記述がラテン語だから、パイオーンはPaeonと書いてあります。
本文は59ページ目、データページだと68/146の下の方。
格変化しているから、Paeonaと本文では書いてありますが。

ラテン語をゴリゴリ読めるほど教養高くないので、英訳を参照しています。
Star Myths of the Greeks and Romans: A Sourcebook Containing the Constellations of Pseudo-Eratoshenes and the Poetic Astronomy of Hyginusですね。
星座ごとにヒュギーヌスとエラトステネースの偽作と伝えられる星座に関する記述をまとめてあります。

これで一件落着と言いたいのだけれども、まだパイオニアー人の名祖であるという記述を見つけていません。
日本語版wikipediaのように、項目を分けてしまうのも一つの手なのですが。
高津の神話辞典で同じ人物としているということは、何らかの根拠となるものが存在していると思うのです。

つまり、パイオニアー人の名祖となったポセイドーンとヘレーの子パイオーンは他にも記述があるだろう、ということになります。
Theony Condosの脚注ではパウサニアースの5.1.4を挙げ、他の系譜によるパイオーンもあることを紹介し、彼がパイオニアー人の名祖となったとしています。
残念なことに、それがどこで結び付くのか、私には理解できていません。

この部分は、もう少しキチンと調べていく必要があります。
私が自分で納得していくために。
そして、それを見た人たちが少しずつでも辿っていけることにワクワクできるように。


名祖であるパイオーン

ファイルの入れ物をつくってるうちに、パイオニアー人の名祖であるパイオーンを調べることに。

高津の神話辞典だとエンデュミオーンの子またはポセイドーン神とヘレーの間の子となっている。
日本語版wikipediaだと、これを分けている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%B3

まぁ、どっちでもいいんですけどね。

エンデュミオーンの子はパウサニアース5.1.4に名前だけ出てくる。
このエンデュミオーンの子パイオーンは王国を継ぐ競技に負けたことを悔やんで、最果ての地へ逃げ、アクシオス川の向こうの地方が彼の名にちなんでパイオニアと呼ばれた(5.1.5)かぁ。

ポセイドーン神とヘレーの子が見つからない。

パウサニアースに他に載っているのは、アンティロコスの子(2.18.8)くらい。
アポロドーロスにも、ヒュギーヌスにも索引を見た限りでは見当たらないし。
Loebのヘーシオドスな訳本にも見当たらないし。
LoebのEpic Fragmentsな訳本にも見当たらないし。

第一、ヘレーといったらプリクソスと一緒に黄金の羊に乗って逃げる途中、海に落ちて死んだというのが一般的な説。
その落ちた海がヘレースポントス(ヘレーの海)で現在のダーダネルス海峡。

つまり
a. ポセイドーンとヘレーの子でパイオーンという名の人物がパイオニアー人に名を与えた、という記述がどこかにある。
b. エンデュミオーンの子パイオーンがパイオニアー人に名を与えたという記述が、どこかにある。
ということ。
(これはパウサニアースの5.1.4-5に書かれている)
の両方の記述がどこかにあって、その結果、両者を同一人物としているハズ。

他の地誌だったらストラボーンかなぁ。
とはいえLoebの索引を見る限りでは、パイオニアや小アジアとトラキアのパイオニア人は出てくるけど、パイオーンは見当たらない。
Stephanus ByzantinusやEtymologicim MagnumにはPaionとかPaioniaという項目がないし。

どこか。
あっけないくらいに簡単な資料を見落としているハズ。
見落としているからこそ、気づけないだけで。