初蝉 | 脚本家/小説家・太田愛のブログ

明け方、今年初めて蝉の声を聞いた。まだ薄暗い並木道で、一匹だけ鳴いていた。しばらく鳴き、やがて鳴きやみ、野鳥が時折鳴く薄闇の朝に戻った。終わらない夏を思わせる盛夏の蝉の声とはちがって、初蝉は夏の予感に消えていく。

   初蝉に朝の静けさなほのこる  加藤楸邨

この国に暮らす者にとって、夏は特別な記憶と結びついている。それぞれの世代で抱える思いは異なるだろうが、夏はもうそこまで来ている。

木洩れ日