二週間ぶりにオフをとってビリヤードに行く。
吊下げ式の低い照明が並ぶ場内は、紫煙とアルコールの匂いに空気がくすみ、
灯りの下のラシャのグリーンと的球のカラフルな色が鮮やかだ。
撞くのは久しぶりというのに、意外に調子よく的球がポケットに入る。
気分よくなって「絶好調じゃないか」と呟いたのが間違いだった。
勢いよく撞いた白い手球は見事に的球を外れ、不吉な音と共にポケットに沈下。
途端にツキが落ちた。
その後は思いがけない球の行方に驚きつつ、おもに雰囲気を味わって楽しんだ。
さて、ビリヤードといえば刑事コロンボ。子供の頃、ビリヤードというゲームを初めて知ったのも刑事コロンボ・シリーズだった。当時はルールも知らず、ピーター・フォーク氏の腕前もわからなかった。だが後年、再見した時に驚嘆した。第2話の『死者の身代金』でフォーク氏は、ワンカットの中で続けざまに球を落とした上で、最後に手球をポケットに落とすという凡ミスをわざと演じてみせ、やれやれと肩を竦めるのだ。聞くところによると、フォーク氏は当時ハリウッドでも名うてのビリヤード・プレイヤーだったそうだ。さすが。