東電の現体制維持前提の賠償スキームの愚劣さ
東京電力の福島第一原発事故に対する賠償スキームに関して、アドバルーンがあがっているが、愚劣極まりない内容で唖然とした。
原発賠償4兆円、政府が試算 電気料金値上げ前提(5/3朝日新聞)
(以下引用)
賠償は東電が担う。東電は自己資金で足りない分について、電力各社で新たにつくる「機構」から支援を受ける。機構には国も公的資金を拠出。公的資金は、東電を含む電力各社が毎年4千億円を10年間にわたって返済する。 東電は毎年1千億円を特別負担金として拠出。残る3千億円は原発を保有する電力9社(東電を含む)が負担する。
各社は電力量に応じて負担し、全国の電力量の約3分の1を占める東電は、約1千億円の負担となる。これらの賠償資金を確保するため、東電管内は電気料金の大幅な値上げを想定している。
東電以外の8社は、約2千億円を負担。これは、約2%の料金値上げ分に相当する。4兆円の賠償額の負担割合は、東電が約2兆円、東電以外の8社が計約2兆円になる見込みだ。
機構は東電が発行する優先株1.6兆円分を引き受ける。賠償負担による東電の信用低下や東電債の格下げを避けるためだ。
(引用終わり)
新しく作られる「賠償支援機構」への国の拠出金がいくらかという、肝心な部分が見えない点はさておき、このスキームの一番の目的は、「発送電一体の既存体制の維持」に見える。
もちろん、5兆円にもなる東電社債の保護など、他にも理由はあげられるだろうが、根源は各電力会社の利害が一致する上記の理由に行き着く。東電以外の電力会社も年間二千億円、10年で二兆円の負担となるが、これを断れば発送電一体体制が崩れる、と脅かされ、同意することになるだろう。
しかし昨日も書いたが、東電を今のままの形で残すことが、本当に国家、国民のためになるのだろうか?今回の賠償スキームでは、ただで高い電気料金が、更に高くなることが前提となっている。
電気料金の国際比較(資源エネルギー庁ホームページより)
ここで比較されている7カ国の内、2009年時点で日本より料金が高いのはイタリアだけである(ドイツは2008,9のデータなし)。
米・韓と比較すると、家庭用・産業用とも倍以上の電気料金になってしまっている。
ただでさえ、世界中の企業が日本の地震・原発リスクに敏感になり、工場新設がストップし、更に海外への流出の動きもある中で、電気料金が更に上がるということは、日本の工業国としての死に直結する。特に大幅値上げが想定されている東電管内はなおさらである。
これだけ高い電気料金を収受していながら、最低限の安定供給もできず、あまつさえ広範囲の国土を放射能汚染にさらすような現在の電力供給体制に、今メスを入れずしていつ入れるのか!
既に地方自治体すら、既存電力会社の電気料金に疑問を抱いている。以下は東電以外から電力を購入することで、大幅にコストを削減している立川市の例である。
特定規模電気事業者(PPS)で電気代節減 立川市は今年度53施設で契約(たまプレ!)
(以下引用)
立川市では、平成22年度の立川競輪場の電力購入先として、東電を含む4社の入札(見積もり合わせ)でサミットエナジー株式会社を選んだ。平成21年度の東電からの合計請求金額約6200万円に対し、22年度は4月から12月までの実績で前年の73%の料金で推移。1年間では約4500万円になる見込みで、1700万円もの電気代節約になりそうだ。
市立小中学校30校の「グループ1」については、1kWhあたり単価が東電比マイナス19%の17.68円で応札した丸紅株式会社と契約。福祉会館、学習館(他自治体の公民館に相当)、一部の保育園・図書館を含む22施設の「グループ2」は、1kWhあたり単価17.26円(東電比マイナス18%)のイーレックス株式会社が落札。立川競輪場の「グループ3」は1kWhあたり単価20.31円のエネットが請け負う。東電はグループ3の入札を辞退したが、平成21年度の1kWhあたり単価は27円だったという。
(引用終わり)
サミットエナジーは電力の一部自由化が実施された直後から事業を開始し、少しずつ顧客を増やしつつある。ちなみに発電設備はガスタービン、石炭、バイオマス、風力で、当然ながら原子力はない。
電力小売は競争相手の電力会社から送電網を借りなければならないため、送電網の使用料や手続きなど、有形無形の妨害を受けやすい。そのような中ですら、このように割安な電力供給をビジネスにしつつある事業者が出てきている。
今回の福島原発事故はとんでもない災厄である。しかしせめて発送電分離を実現することで、将来の日本の電力供給体制を改善し、コストを下げる道筋をつけるべきではないか。
※前にも紹介したが、衆議院議員の河野太郎が原発事故に関し精力的に情報発信をしている。私個人として彼を支持しているわけではないが、原発に関する主張については首肯する点が多い。ご一読を薦めたい。