2024年6月29日(土)大劇場で、30日(日)配信で、宙組『Le Grand Escalier-ル・グラン・エスカリエ-』を観劇しました。
劇場と配信では、同じ作品でも体感が異なることはよくあります。
でも、「こんなに違うのか」と驚きました。
劇場での生の迫力に呑まれましたが。
映像だと、「…あれ?」みたいな。
劇場の熱気は、客席がつくりあげてた部分も大きかったのね。
ファンの有難みですね。
宙組スターのファンはもちろん、宝塚を愛する方々の。
それでは、個別感想のつづきです。
★天彩峰里(100期・研11)
宙組『Le Grand Escalier』の歌唱ソロは男役が多い。
その中で、綺麗な高音ソロが響くと、まず間違いなく天彩峰里。
娘役ソロは春乃さくらと天彩峰里で分け合ってました。
高音が苦手な春乃さんに対し、難なく高音クリアの天彩さん。
天彩峰里を明確に認識したのは、星組『ベルリン、わが愛/Bouquet de TAKARAZUKA』でした。
天上から降り注ぐようなエトワールの声に驚きました。
宙組へ異動し、舞台技術が高い娘役として活躍。
圧と艶のある演技と歌声は、ご周知のとおり。
『Le Grand Escalier』でも、綺麗な高音が聴こえたら、それは天彩さん。
ただ、圧と艶が消え、クセのない「綺麗な高音」でした。
それでも、充分上手いのは流石ですが。
ヘアアイロンの件も悪意の有無など、当事者間でしか分かりません。
有愛きいさんはLINEで「故意」を疑っていたようですが。
「故意に火傷を負わされた」と被災者に思わせた背景には、いくつかの要件があったからでしょう。
「断ったのに、強引に」ヘアアイロンを取り上げられたこと。
そして火傷を負ったにも関わらず、軽い対応で済まされたこと。
責任を感じ、きちんと謝っていれば。
すぐに対処(流水や氷水で冷やす等)に当たっていれば。
ミスに対して、できる範囲で精一杯のフォローをしていれば。
一言でいえば、誠意を見せていれば。
被災者も、故意だと思わなかったはず。
謝罪文の提出も、遅れてましたよね。
書こうにも、書けなかったのかもしれません。
どう書けばいいのか、試行錯誤していたのかもしれない。
それ以前に、向き合えなかったのかも…。
…ですが、外から心の中は見えません。
見えたのは「提出が間に合わなかった」という事実です。
そのため、「きちんと謝れない」という印象を残しました。
火傷を負わせた時と同じように。
謝罪文を書けないほど、精神的に弱っていたのか…と優しい人は想像してくれるでしょう。
同時に、「他人が痛がっても平気なのに、自分の痛みには敏感なんだね」と痛い処を突いてくる人もいるでしょう。
世間一般は、有愛さんの肩をもつ人が多い印象を受けます。
それは何故でしょうか。
これは、私の想像ですが…
世の中には、理不尽に踏みつけられている人間がそれだけ多いって事かな、と。
自分を投影して辛くなったり、同情する人が多いのだろう、と。
天彩さんも辛い思いをし、耐え忍んできた「立場」を経験していると思います。
天彩さんも「より強い立場の人々」から、足蹴にされたり、軽く扱われてきたのかもしれません。
たまたま、自分が強い立場として対応した相手が死んでしまった。
タイミングが悪かった。
そう捉える事もできます。
様々なことの一部を切り取られ、クローズアップされた訳ですし。
同時に、それは氷山の一角だったろうとも想像できます。
外部からは、見えるピースから想像するしか出来ません。
そして人間の脳は「想像」と「現実」を区別しないそうです。
背筋がヒヤッとしたり、
ワクワクしたり、
涙が出たり、
思い出し笑いしたり、
フラッシュバックに苦しんだり。
思い浮かべただけでも脳の中では、現実として再体験してるそうな。
天彩さんと有愛さんの関係性を記事で読み、そこに己を投影した場合。
天彩さんに対し、処罰感情が働くのは自明の理でしょう。
ただ、立場が変われば、向けられる目や感情も変転します。
ハイローと同時上演の『Capricciosa!!』にて、デュエットダンスの相手役から冷たくあしらわれた天彩さんは、多くの宝塚ファンから同情されました。
立場が変われば、行動や言動、印象もガラリと変わる事があります。
それは誰にでも起こり得ること。
「私も上級生から理不尽な事をされてきた」
「同じような事をしただけだ」
「なのに何故、私だけが責められるのか?」
宙組で槍玉に上がっている生徒たちは、そう思っているかもしれません。
納得できないだろうし、反省も謝罪もできる心境ではないだろうと想像します。
「他の人だってしてるのに」
そう思う気持ち、わかる。
わかります。
ですが、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」に繋がりますよね、それ。
赤信号を皆で渡ってきて、たまたま車に轢かれました。
「ひどい! 何故わたしだけ?」
いやいや、それは赤信号なのに渡ったからやん。
「他の人も渡って来たのに」
それはおそらくタイミング。
運が悪い。
そうかもしれません。
同時に、とても幸運です。
だって、赤信号を何度も渡ってきたのに、今まで無事だったのですから。
そこに目を向けてみたら、見える景色は変わって来ます。
天彩さんはまだ生きています。
この先の人生は、まだまだ長いでしょう。
再出発する為の第一歩を踏み出す上で、真摯な謝罪と反省は不可欠だと思います。
悪気があるとは証明できないから、悪くない?
悪意の有無以前に、明白な事実があるでしょう。
人が嫌がる事を。強引に押し付けるのはアカン。
めっちゃ基本ですやん。
悪気あってもなくても、人が嫌がる事はしたらアカン。
親切心やったんかな?
遠慮してると思ったんかな?
それでも相手が重ねて断ったなら、尊重せな。
それが、対等な人間同士の在り方やねんな。
実際にやるのが一番手っ取り早いと思ったのかもしれませんね。
その発想は判る気がします。
ただ、人任せにするには勇気がいる事ってありますから。
高温で顔に近づけるヘアアイロンは、めっちゃ怖いよ、ホンマ。
助けたい気持ちがあったなら、少し方法を変えてみたら良い。
一旦引き下がって、様子をみたり。
困ってるようなら、もう一度、声をかけてみたり。
もし親切心が伝わらなかったのであれば、それは悲しいですね。
そうだとしても、わかってくれない相手を責めるより、伝わりやすい方法を工夫した方が早いでしょう。
誰もが理解し合えるわけじゃないので。
色々エラソーに書いてしまいました。
すみません。
本件は時間が経っても、考えるたびに胸が痛みます。
私自身が弱く、流されやすい人間なので。
弱さ・狡さを弾劾できるほど、私は正しい人間ではない。
迷いは常にあります。
天彩峰里を擁護するなら、彼女の人生スパンで考えてあげてほしい。
相手が断った事を強引に押し付け、怪我をさせたことは事実。
それを認め、真摯に謝罪する。
そこから始めないと。
「もう謝ったでしょ、それは」という意見もあると思います。
実際、すでに本人は深く反省している可能性もあります。
もしそうなら、劇団はそれを明確にできる場を設けてあげてほしい気がします。
そうでなければ、ずっと誤解されたままです。
「人の噂も75日」は、きちんと対処した場合の話です。
今はもう有耶無耶にできる時代ではありません。
インターネット・タトゥーとして、ずっと残り続けるでしょう。
一度彫られたタトゥーは消えません。
ですが、誠意を見せることで上書きしていく道は残っています。
劇団に所属している以上、個人の判断では動けないのが現状でしょう。
劇団さん、お願いします。
生徒さんを真の意味で守り、救ってあげて下さい。
∇頼みます