日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -159ページ目

世の中捨てたものではない

妻と一秒たりとも、接していたくはなかった。


起床し、歯を磨き顔を洗う。


リビングには娘がいて、俺の表情を見て顔色を変えた。


口元に手を添えて、なにか小声で囁いてくる。


何を言っているのかはわからなかったが、俺はわかったという意味を込めて一度首を縦に振った。


娘もそれに合わせて、かすかに微笑んだ。


そのまま、家を出た。



行く当てなどなく、いつもの駐車場に引き寄せられていった。


シートを倒し、フロントグラスから空を眺めた。


晴れ渡った空に雲ひとつなく、遠くに鳥の鳴き声が聞こえた。



眼を閉じる。


こめかみに微かな痛み。


時間の経過とともに、痛みは大きくなってゆく。


ここ数日間は、ずっとそうだった。



眠ることもできずに、シートを起こし車を走らせた。



本屋に入ってぶらぶらとした。


ほしい本があった。


しかし、買う金などあるわけもなく、少し立ち読みをして元に戻した。





頭痛が次第に強くなってゆく。


こめかみが脈打っているのがよくわかった。


無意識に、指先を強くこめかみに押し当てていた。




車に乗り込み、しばらくじっとしていた。


車がやってきて、俺の左前のスペースにバックで止める。


男が降りてきて、その場に立ち尽くした。


ちょうど、俺の車の前の空きスペースを凝視している。


足元に落とされた視線の先は、ダッシュボードで遮られみえなかった。


男は一度、店のほうへ足を向きかけ、まだ戻り、一瞬姿が見えなくなった。


立ち上がると、ドリンク剤の便と、雑誌と新聞を掴んでいた。


俺ははっとした。


ひょっとして、ここの店員ではあるまいか。


駐車場に打ち捨てられたごみを拾う理由として、最も考えられるのはそれくらいだった。


俺は男を眼で追っていた。


店先のごみ箱にごみを捨て、店内に入っていった。



こうしがたい好奇心が沸いて、俺は車を降りて男を追った。



店内に、男の姿はあった。


ディスプレイされたモニターに映し出されたデモに眼を向けている。






男は店員ではなかった。





俺は驚きとともに、その場に立ち尽くしてしまった。


心の中に、清々しいものが通り過ぎてゆく。


いまこの瞬間に、このような僥倖を眼にする意味はきっとあったのだ。


そう思わずにはいられなかった。





世の中、捨てたものではないな。




俺は心の中でつぶやき、店を後にした。




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部屋は精神状態を表す?

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脱いだ服が、そのままうち捨てられ、洗い終わった服もまた、クローゼットにしまわれることなく、ソファーに積み上げられていた。


自室である。


ものを仕舞うスペースがなかった。

仕方なく、部屋の隅に服を置く。

いつの間にかそれが当たり前となり、山となる。


布団もたたまなくなった。


精神状態とともに、部屋も荒れていった。


どうでもいいと思っている。


それは妻との関係性であり、部屋の中の状態であった。




服と本。



散乱するものはそれだけなのに、何故かひどく汚い部屋にみえた。





明日は方付けよう。



いつも思うことだった。


そして次の日、部屋を方付けるどころでは無くなってしまう。


それが日常だった。




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限界~最も言われたくないこと