土下座な、一日
とある一日。
妻からボトルが2本渡された。
一本が、床をクリーニングする液剤。
もう一本が、ワックスだった。
説明を良く読んで、一本目に取りかからなければならない。
説明文はこんな感じだった。
使用時は30倍に薄める。
ワックス除去の時は原液で使用する。
???
要するに、どう使ってもかまわないと言うことか。
俺は勝手にそう判断し、濡れたぞうきんに、適当に洗浄液をまぶして床を拭いた。
這い蹲るように、リビングを拭いてゆく。
まるで土下座だ。
そんなことを思いながら、黙々と作業を続けた。
面倒なのは、拭き取りを2度せよ、とあった点だ。
俺は説明通りに、水拭きをきちんと二度行い、洗剤を除去した。
工程の多さと、体調不良のために、思うように捗らなかった。
お茶を飲んで一服する。
それから二本目のワックスに取りかかった。
最初は二度塗り込め。
ボトルのラベルにはそう書いてあった。
また、二度かよ。
何度、床をはい回らなければならないのか。
一回目のワックスが終わり、乾燥に30分。説明に書かれたとおり、素直に従った。
俺はまた、お茶を飲んで待つことにした。
妻がこちらを睨み付けている。
かまうものか。
ワックスの乾燥なんだよ。
茶碗に視線を落としていると、いきなり妻が怒鳴った。
「何まったりしているわけ」
俺はすかさず、乾燥させていると答えた。
妻はそんな答えで引き下がるような女ではなかった。
「乾燥している時間で、階段と廊下が出来るでしょうよ」
俺は不意を突かれた。
リビングだけじゃねえのかよ。
湧き出した疲労が体の周りを取り巻き、俺を押し流してゆく。
それでも何とか2回目のワックスまでかけ終わると、妻は上機嫌になり、どういう訳か外で飯を食うことになった。
飯でごまかす気か。
そう思ったが、空腹に抗しがたく、俺は黙って車に乗り込んでいた。
↑クリックよろしくお願いします。