日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -134ページ目

彼が逝った日

バイトの帰り道。

疲労と睡魔の泥沼に、沈み込んでいた。

ぼんやりとした頭のまま、俺はラジオを聴いていた。

しばらくすると、ラジオDJが信じられない言葉を口にした。

「本日はマイケルジャクソンを悼み、予定を変更してお送りしております」

冗談だろう?

俺はなんだか泣きたくなってきた。




彼はとんでもない男だった。

今後、破られる事はないだろうアルバムセールス記録を樹立し、人種や国境を越えて売れに売れた。

日本でも、老人から子供まで、彼のスタジアムライブに殺到した。


映画のようなミュージックビデオ。

繊細で、時に悲しげな歌声。

圧倒的なダンスパフォーマンス。

外見も含めて、唯一無二の存在感。


しかし、絶頂期をむかえた彼のその後は、ひどいものとなった。


世の中、出過ぎた杭は叩かれ、打ち砕かれ、粉々にされる事になっているのか?


幼児虐待の嫌疑で、表舞台から引きずりおろされた。

噂では、とても大きな力が関与し、彼を豚箱へ押し込もうと、必死になって証拠を集めまくったらしい。

インターネットの通信記録から、ネバーランドの壁紙の裏まで徹底的に。隅々まで。

しかし、訴えを裏付ける証拠は何一つとして、出てはこなかったらしい。

それでも、彼を貶めるには十分すぎた。

その後、表だった活動は殆ど、なくなってしまった。


彼は日本が好きだったらしい。

そして、遊園地も。

東京ディズニーランドには、マイケルジャクソンの3D映画のアトラクションが過去に存在した。

学生の頃、クリスマスにTDLへ女の子と行った。

とんでもない混雑ぶりで、比較的に空いていたそのアトラクションに、二人で入った。

終わった後、女の子からそのアトラクションに登場するキャラクターのぬいぐるみを、プレゼントされた。



考えてみれば、俺もマイケルも有色人種だった。

そして、マイケルジャクソンのレコード会社は、日本の会社だった。

仮に、マイケルジャクソンが白人だったら、ここまで貶められる事は無かったのではないか。

今となっては、意味のない仮定話だった。

マイケルジャクソンは、甚大な風評被害にあい、復活を遂げる事なく、死んだ。

そう。

ロンドン公演は、幻となったのだ。



会社に着いた。

おばちゃん達が忙しく、立ち働いていた。

いつもと、何一つかわらなかった。

マイケルジャクソンが亡くなったんだぞ。

俺は心の中で、呟いた。


廻りを見回した。

おばちゃん達は、ただ、忙しそうだった。

マイケルじゃなく、演歌の大御所あたりが亡くなった場合、おばちゃん達は衝撃と共にうちのめされてしまうのだろうか?

それでも、泣く奴などいないだろうな。

俺は勝手に納得し、仕事場へ向かった。

詩 「何もない」

財産も。


誇りも。


地位も。


名誉も。


役職も。




何もなかった。




十分な睡眠時間も。


愛し合う相手も。


心安らぐ場所も。


希望を語り合う相手も。




何もなかった。




唯一、失うことなく持ち続けているもの。







それは






夢だけだった。




日々を生きる。~妻よ。おまえはいったい何を望んでいるのか。


↑いつもクリックありがとうございます。




ペタしてね

詩 「睡眠」