ガットハロのブログ’混石’ -23ページ目

L-L-Lies

「もしもし。」


『突然のお電話失礼いたします。スリーエル代行カンパニーと申します。』


「はあ。」


『新年度につき当社の代行サービスを無料お試しのご案内なのですが。』


「代行って、車の?」


『いえ、お電話の代行です。』


「電話を…何です?」


『はい。一般に電話代行と言えば秘書代行など主に法人利用のサービスです。しかし当社では個人様で電話をお使いになる状況全般をサポートさせていただいております。内容も出前の注文、お勤めの会社へ当日の休暇願やケチで怖いあの先輩に借金返済請求など広く承りますが、今回はそのお試しとして、お客様のご友人へ、無料で季節柄のご挨拶を代行させていただきます。』


「…は、はあ。んあ?ええと、友達に、電話するってこと?俺の代わりに?」


『左様でございます。通常友人様宛てであれば同窓会や結婚披露宴等の連絡代行を承っておりますが、今日と言う日に合わせまして。』


「はあ。」


『嘘つきを代行いたします。』


「ええ?」


『ご承知のとおり、本日エイプリルフールでございます。ご友人に一度は仕掛けたこともおありかと思います。電話口でのたわいない嘘。これを、ハイセンス・ハイレベルで代行いたします。』


「やー、まあ、やったことはあるけど。…代行で?いるの?頼む人。」


『はい。話術に自信が無い方の依頼はもちろん、長く連絡を取らずにいて電話し難いかつての親友へ、旧交を温めると共にちょっとした贈り物の意味も含めて、ご依頼いただくケースもございます。』


「はあー、いろんな商売があるなあ。」


『確かに、以前はこうした遊びはあくまで当人同士の物でした。しかしながら昨今では詐欺などの手口に電話を用いるものが多く、こうした明るく罪のない遊びが失われつつあります。』


「それは、まあ。」


『そこで、こうした社会環境の改善を願い日頃の感謝も込めて、当社の技能を最大限に利用して皆様に楽しんでいただこうと、そういう事なのです。そして…失礼、ここから具体的な説明になりますがもう少々よろしいですか?』


「…んー、…ええ、どうぞ。」


『ありがとうございます。では代行の形式ですが、まずは嘘であることは明かさず、完璧にご友人を騙します。しかし最後の最後でもちろんネタばらしと申しますか、ご説明はさせていただきます。当然オレオレ、など詐欺を疑わせる悪質な騙し方はいたしません。』


「ははあ。」


『そしてメッセージの伝え方ですね。これはお客さまからのメッセージ代行であると明確に断りを入れた上、お客様の語り口を嫌味のない程度に再現した文章を読み上げます。』


「ふんふん。まあちょっと、面白そうかな。」


『ひっ………げほっ。…恐れ入ります。そこでまずは口頭によりご本人様の話し方のクセなどお伺いしまして。』


「へえ。なかなか手が込んでますね。」


『現在録音中の会話からも語り口を検証し、メッセージ文を作成します。』


「あはっ、って、え、ちょっと。録ってんの?今録ってんの?嘘っ。」


『く………えふっ。ふぐ。…失礼、ご心配なく。この音源は当社で責任を持って管理処分させていただきます。』


「何か嫌だなあ。個人情報とか大丈夫?それ。」


『お客様の代行という職業柄、ここは厳重にやらせていただいております。信頼を失うことが致命傷になる業務ですので。』


「あー、成程。そうですよねえ。わかるわかる。大変だなあ。どこでも。」


『は、ぅい。どこでも大…へうっ』


「?」


『あははははははははははははははははははははははははははははははは』


「は、はは。」


『うははははははははふはふはははははははははははっはひぃひぃきぃー』


「あの…。」


『失礼しました。そこで今回の無料AF代行についてですが。』


「は?」


『失礼、無料エイプリルフール代行です。説明は以上なのですが。』


「ええ。でもまあ、適当な友人も別にいないし、いりま」


『いい加減おわかりですね。』


「せん、って、な、何が。」


『だからそんなサービスはないです。ありえない。オロナイン。ぷぷっ。』


「え、え。何それ急にどういうこと。あとオロナインてちょっと。」


『あーやだやだ信じすぎ。低いわセキュリティ低い。耳にセコム刺さんと。ぶすって刺さんと。いやいやそのトロさでダチば騙したいとか。ないわー。』


「いや言い出したの俺じゃねえよ。…え、まさかここまで引っ張っといて。」


『まあ暇つぶしにはなったでしょが。後半とか知った風な口きいちゃってもー。ぷひー。どうせ電話する彼女も友達もいなくて休日持て余してたろ独身男爵。鼻毛出てるぞ。』


「いい加減にしろやお前。鼻毛も出てねえ。これ、つまりあれだろお前。」


『はぁいそうそうそうイェス。ここまでの会話ぜーんぶ、嘘。うそーん。あと鼻チェックしたべ。今触ってみたべ。』


「してないね!触ってないね!イタ電か。手間ヒマかけてイタ電か。」


『AF代行ご利用ありがとうございました。またのご用命を。なんちて。ぷぷー。』


「待て。ご利用もご用命もしてないしお前結局誰だ。お前もかなり暇だなこらちょっ」


『ラブジアース・ラブザムーン!』


「何それ!?」


『シャラララ・サヨナラ……ザッツライっ!』


「だから何だそ」


 がちゃん。つー、つー、つー。


「れ!?…………あぁー……はい。さて電話帳は、と。どこにかけようか。」