元武雄市長樋渡啓祐「役所を動かす質問の仕方」
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市役所職員は議員をどう見ているか?
1.
何も知らないくせに煩い
2.
選挙の前だけ頑張る
3.
何をしているのか実態不明
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市民は議員をどう見ているか?
1.
世話好きの身近な存在
2.
自分の生活にはあまり関係ない
3.
女性の声を聞いてほしい
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市長は議員をどう見ているか?
1.
足をひっぱる存在
2.
頼りになる存在
3.
首長と違って楽でいい
【地方創生時代の議会と地方議員の仕事】
市長から見て頼りになる議員とは「知識のある人」「情報発信力のある人」。市長に出来るのは提案。決めるのは議会。地方創生時代の議会と市長は二人三脚。だから議会対策は市長の仕事。
【議会を見てもらうためにすべきこと】
そこで一般質問。聞いている人はちゃんと聞いている。一般質問の中継はネット配信だけでなくコミュニティFM放送や地元のケーブルテレビで流したほうがいい。ライブと再放送。その際、暫時休憩中の協議は別室でやるのではなく議場でそのやり取りも見せれば、市民の関心は自然と高まる。武雄市の統一地方選挙での投票率は70~80%。本気で投票率を上げたいと考えるのなら「密室でのやりとり」をやめてオープンにする必要がある。
「説明」をするのは行政の仕事、議員は「物語」を語る、それが議員の仕事。
【一般質問によって役所では何が行われているか】
役所は実はきちんと捉えている。毎年「一般質問対応状況表」を提出させよ。その結果どんな検討が行われたか判るようになっている。
(そこでQ&A)
Q1「本当に自治体にお金は無いの?」
A:借金は多いが基金や調整金も多い。一般企業でこうした死蔵資産を積めば犯罪だが、役所は基金を自由に使えない。使って価値を生む方法を考えれば「埋蔵金」は存在する。
Q2「市長には絶大な権力がある?」
A:議会が無力なら相対的に市長に権力は集中する。しかし市長は孤独でアイデアも枯渇してしまう。一般質問には例外はない。法律で禁止されている事以外は何でもできる。議会は企業でいう「取締役会」にあたる。決めるのは議会。議会に必要なのは主体性と自律性。市長は議会を巻き込む。議会は市長を囲い込む。市長に絶大な権力があるというのは間違い。
Q3「自治体はスピードが遅い?」
A:それは大嘘です。民間でいう「株主」がいないので決めるのは早い。定例会を待つ必要はない。臨時議会を開けばよい。議会の招集権は市長にある。
住民サービスの肝は「病院」と「本屋」と「住宅」。役所は臨時議会をいやがる、そりゃ社員だから。でも社員をつかうのは社長の仕事。そこが市長の腕の見せ所。武雄市立図書館は一年でリニューアル出来た。民間委託の条例がなかったので臨時議会、委託先を決めることで臨時議会、それから着工。そうして逆算することは役人にはお手の物。だが目標を役人に決めさせてはダメ。役人に決めさせるから先延ばしになる、楽をしたいから。繰り返しになるが決めるのは議会。
Q4「議員の提言は実現不可能?」
A:議員は役所を毎日歩け。なめられるな。住民の顔ばかり見ているな。実現させるには味方を見つけろ。
Q5「なんでも公募や入札にすべき?」
A:そうした風潮はマスコミが悪い。悪平等がスピードを遅らせている。「安くて良いもの」は無い。随契でOK。なかには「高くて悪いもの」もあるが、なんでも公募しろというのは間違い。
Q6「議員の給料は高い?」
A:皆さんの働きによる。給料分は働くのが務め。
(次に会場から質問)
Q「うちの質問時間は一人20分しかないんですが、どうすれば?」
A:それはお気の毒。そんな時は一問に絞る。揚げ足取りが一番効果的。
Q「答弁調整は必要か?」
A:そんな馬鹿な因習はすぐ廃止したほうがいい。項目を伝え、前もって数字を聞いておく位はいいが、真剣勝負でなければ市民に見透かされる。いつまでもそんなことをしているから学芸会になる。
より良い一般質問のために~応用編~
1.
導入は大きな話。全国の話とかを地域に当てはめて訊く。
2.
次に褒める。きちんと評価する。
3.
方策を言わせる。数字を言わせる(精神論ではダメ)。
4.
最後に提言する。
パターン②「共感」から「応援」、そして「実行」
例えば殺処分ゼロ。
僕は被災地支援のときに、震災ペットを受け入れようってしたんですけど、もう市民から猛反発。がれきの受け入れも猛反発。ええ、それが結構知事選に響きました。うん猛反発食らって。
僕はそのときに、保健師の人と実際被災ペットを見に行ったときに、いや樋渡市長ね、違うって、じつは身の回りにね、殺処分をしなきゃいけない動物があふれかえってるの知ってますかって言われて、僕保健所3軒くらい行ったんですよ、はしごして。もうね、もう気持悪くなった。殺処分する、特に犬は2時間前、完璧に分かってます。自分は殺されるって。もう聞いたことのないような声が出てきます。うめき声が。で、僕いまだにそれ夢に出ます。夢に出る。
捨てるのも人。拾うのも人。
「殺処分の多い市町村ほど活気がない」これは事実です。何故って、心がベースですから。僕は言っておきますけど、イデオロギーの人じゃありません。よく偏った動物愛護団体の方々が、なんかすごくイデオロギー的なこと言うじゃないですか。僕それ分からない。で、僕はあのとにかく自分でできなかったことを、これ、でもね、ネットからは焼け石に水だとかね、善人ぶりやがってって。悪人がね、いいことやったらそりゃ善人ぶるに決まってるじゃないですか。だからそれは当たってるんですけど、ある意味。
だから、とにかく、何も、世の中的には役に立たないかも知んないけど、震災の時に言われた、微力は無力じゃない、っていう言葉ね、あれ僕も使ってたし、僕はそれにすごく励まされていて、自分に何ができるんだろうって考えた。
とまあ、そういう話をすべきなんです。共感から応援。そして実行へと。議員を英語でいうとステーツマンつまり「述べる」人なんです。
行政は「公平中立」。だから共感はできない。でも市長は政治家です。行政マンじゃない。政治家が政治家に訴えるんです。「市長、あなたは市民に選ばれた政治家じゃないですか。行政には言いませんよ」ってね。焼け石に水かもしれない。でも微力は無力じゃない。これがパターン②。身近なテーマから社会を動かして下さい。
一番伝えたかったことを最後に言います。
私は決して議会と対立していたわけではありません。最初はそうでしたが、それでは何も実現できないんです。議長室と市長室は同じ部屋でもいい。情報が共有できますから。市長・副市長・議長・議会運営委員長・そして所轄の委員会の委員長、この5者会議を、それこそ何度でもやりました。議会を巻き込んで、議員さんにも力を借りて政策を前に進める。それが武雄市のやり方です。
議会はただすところではありません。物語をつむぐところです。ストーリーを語ってください。ヒストリーは「大いなる」ストーリーです。
街の歴史をつくっていくのがあなた方、議員の仕事です。