近江八幡市視察報告 | 富士市議会議員 鈴木幸司オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 平成12年4月、地方分権一括法が施行され、これによって各自治体は自らの責任と意思決定によるまちづくりを求められるようになりました。もはや国や県が指図してくれる時代は過去のものになったということです。

 富士市が現在「地域の力こぶ増進計画」を進めているのは、そういう理由からです。

 私たち「民主ネット」は富士市の将来を見据え、そうした「地域の責任と意思決定による」まちづくりを進めている先進事例としての近江八幡市を視察し、そのプロセスと取り組みの問題点を探りましたので報告いたします。

 

☆まず、近江八幡市の「協働のまちづくり」へのあゆみを記します。

 

平成19年

 基本理念【自然の恵み、歴史と文化に根付く「生業」が広がり、起業する活力とすべての人々が支えあえる、ぬくもりあふれたまち】の策定と同時に、「協働のまちづくり基本条例」を制定。

 このまちづくり基本条例第30条に「学区まちづくり協議会」の設置を規定し、「コミュニティセンター(旧公民館)」を、その活動拠点として位置づけた。

平成20年

 「地域まちづくり支援助成金」を制度化し、市税の1%を市民の活動に還元することを決定した。これは上記の「学区まちづくり協議会」からの事業申請に基づき、事業費の80%を交付するもの。

平成22年

 学区公民館を学区コミュニティセンターに移行。正規職員である公民館主事を引き上げ、「学区まちづくり協議会」が主体となって地域の運営を行いはじめる。

 そして、地域からの強い要望により、まちづくりの「助成金制度」から「交付金制度」に改めた。その資金は、各まちづくり協議会が独自に職員の雇用ができるよう、学区の規模に応じた金額を交付している。(平成24年度の交付金は1億840万円)

 

 この「学区まちづくり協議会」については八幡学区まちづくり協議会のウエブサイトに、その詳しい活動内容、解説がありましたのでご参照ください。
http://www.zc.ztv.ne.jp/gmy3jsue/index.html

 

☆近江八幡市 協働のまちづくりの特徴

 

 公設である「コミュニティセンター」の維持管理などのため、市職としての嘱託職員と非常勤特別職のセンター長が置かれている。 全部で11あるコミュニティセンターのうち5学区ではまちづくり協議会の会長がセンター長を兼務している。センター長の報酬は月額55000円。

 センター長並びにセンター職員の仕事は

①施設の維持管理業務

②施設の貸館、備品の管理・貸し出し業務

③文書の告示・掲示

④緊急通報・緊急時の避難場所の運営

⑤まちづくり協議会との連携

とされている。

 そして、各まちつくり協議会では、平均して1000万円というこの交付金を活用し、まちづくり協議会職員を独自に雇用(平均すると3名)し以下の活動を行っている。

①地域まちづくり計画に基づく事業の推進

②公民館で行っていた事業(社会教育事業を除く)

③地域の課題解決のための事業

④構成団体の育成指導

⑤市からの受託事業

 

☆市からのヒヤリングによって判ったこと

 

 公民館主事を引き上げ、後任のセンター長はまちづくり協議会会長との兼務も含め給与は55000円とし、市職OB等をセンター職員としてパート活用することで大幅な経費削減に成功している。また、交付金を使って地域独自の雇用も生み出している。

 しかし、せっかくの交付金のうち6割がこの人件費にあてられてしまうため、まちづくり計画に基づく事業の推進には、どの学区も苦労しているとの話だった。

 例えば中学校区としては小さいほう(2000世帯)の「北里地区」でも、協議会の会長がセンター長を兼務し、地域で4名を雇用している。その陣容で昨年は

・防犯パトロール・子供安全懇談会・防災研修会・非行防止の集い・市民バレーボール大会への参加・学区内軟式野球大会の開催・危険箇所への「子供飛び出し注意」看板の設置・学区内市民運動会の開催・学区内ビーチボールバレー大会の開催・学区内町別対抗元旦駅伝大会の開催・市民駅伝大会への参加・ゴムバンド体操教室の開催・福祉フェスティバルの開催・文化福祉懇話会の開催・びわ湖岸一斉清掃活動・夏のフェスティバルと地引網体験・子育て支援「おひさま広場」の開催・こども110番の家スタンプラリー・フナの稚魚放流事業・なれ寿司づくり体験・チャレンジ和太鼓・子ども会フラッグフットボール教室・生け花体験「クリスマスリース作り」・人権のまちづくり推進講座・夏野菜の育て方教室・東北を応援しよう「きりこワークショップ」・すっきり爽快「歌声広場」・アロマテラピー教室・ホテルニューオウミのシェフに教わる「洋風おせち教室」・・・

といった多くの行事を運営した。

 驚くことに5000世帯を越える比較的大きな他の学区では、これらの行事の他に「学区広報誌」の発行まで自力で行っている。行政主導ではなく「協働のまちづくり」というのはこういうものかと感心させられた。

 

☆市民からのヒヤリングで気づいた問題点

 

 翌日、上に例としてあげた「北里地区」に30年以上すんでいるご一家にお話を伺った。

「実際に年間を通じていろんな行事が行われている。ただ、自治会を熱心に運営して、中心になっているのは地元の方々ばかりで、自分達のようによそから家を求めてやってきた世代には関わりが薄い。そういえば公民館の人たちが増えたことは気づいていたが、そうして雇用されているとは知らなかった・・・」

 

 つまり、歴史のある街にはやはり地元に昔から住む人たちがおり、お互い顔の見える付き合いをしている。地域のコミュニティがしっかりしていることを意味しているが、よそから来たサラリーマン世帯には少し敷居が高いのかもしれない。

 大きなお金を交付するだけに、公的な監査をうけるなど透明性の確保が必要だろう。

 

☆富士市の目指すべきところ

 

 目指すべきゴールは違うのかもしれないが、富士市も昨年まちづくり活動推進計画を答申し、近江八幡市の5年ほど後ろを追いかけている形になっている。富士市の計画は近江八幡市の当初計画のように「事業助成金」を支出するものだ。これが支出目的を定めない「地域一括交付金」のような形に発展していくのかどうかは判らない。
 しかし近江八幡市民が「強く要望」したように、地域の自主性を生かそうとすれば、助成金よりも交付金にして、センター長も民間から選出する形になれば、経費削減と雇用創出の効果は高いだろう。ただし、一部の住民によって地域活動が壟断されるおそれなしとはいえない。そのあたりは今後の啓蒙活動を通じて、慎重に見極めていく必要がある。市当局が、まずは「地域の人材育成」だというロードマップを示したのも頷ける。

 

 視察研修からもどり、「富士市まちづくり活動推進計画(案)」に対するパブリックコメントを読み返してみた。

 (仮称)まちづくり協議会という新しい組織へ移行することに対して市民から疑問の声が寄せられていた。それに対する市当局の回答を記して、結びとしたい。

 

 新しいまちづくり組織への移行の目的は、活発なまちづくり活動を行っていただいている各地区団体の連携、情報交換を促進し、地区住民の皆様自らが、まちづくりの将来像を描いて、効果的・効率的なまちづくり活動を推進することです。

 新しいまちづくり組織への移行については、様々な課題があり、各地区のまちづくり活動の経緯・現状・課題についても様々です。

 新しいまちづくり組織は、現在のまちづくり推進会が母体となることが想定されますが、第6章実施計画の中でもお示ししている通り、計画の推進に当たっては、各地区団体の役員の皆様と各所管課に、丁寧な説明と十分な協議を行い、各地区の特性を尊重しながら、推進していきます。

報告者:民主ネット 鈴木幸司